ひょんなことから、チルノと大ちゃんと仲良くなって花見をしてしまった。

 まあ、ああいうのと仲良くなれたのは良かった。またいきなり襲われても敵わんし。

 ……んで、僕は人里に向けて飛んでいた。
 今は妖精の姿もあんまりなく、のんびり飛べる。

 とりあえず、人里に行ったら酒買って、花見しながら呑むかなぁ……

「って、ん?」

 今、後ろからカシャって音がしなかったか?

 振り向いてい見ると、なにやら黒い影が凄い速度で地面に向かい、隠れた。

「…………えーっと」

 確認しないのも気持ち悪いので、その影が隠れていると思しき場所に向かい、

「やーはー、バレちゃいましたか」
「射命丸じゃないか」

 出たな、幻想郷のパパラッチめ。

「なんの用だ?」
「そんな気にしないでください。私のことはカカシかなにかと思って、普通に行動してくださいな。面白いことがあれば、それを記事にするんで」
「個人情報保護って知ってるか?」

 芸能人でもない僕を勝手に記事にするのは許されないだろ。

「っていうか、なんで僕なんだよ。他にもオモロイ奴は幻想郷にはたくさんいるだろうに」
「そうなんですけどねー。最近、私の新聞に足りないものがあることに気付きまして」

 なんだ? 順法精神とかか?

「ズバリ、恋愛事です。ラブですよ、ラブ。購読者は女性の方が多いので、そういう乙女の興味をビンビンに刺激するネタが必要なのですよっ」
「……それで、なぜ僕に繋がる?」
「いやだって。幻想郷のつわものたちと繋がりのある男というと、貴方か香霖堂の店主さんくらいしかいませんし」

 いや、そうなのかもしれないけどさ。でも、ラブ的な要素は我ながら悲しくなるほどないぞ?

「いやぁ、それにしても、さっきは良い絵を撮らせてもらいました。『スクープ! 氷精、大妖精をタラシ込む外来人! 天狗は見たっ!』とかどうです?」
「待て待て待て! あれは普通に花見していただけだって!」
「大丈夫です。私は真実しか記事にしないので」

 信用できねぇ! 大体、新聞は新聞でも、それってスポーツ新聞とかのネタだよな!?

「大体だなぁっ。恋愛関係を記事にしたいなら、女同士でいいじゃないか!」
「……はい? 今なんと?」
「霊夢とか、女連中としか付き合ってないんだから、こう色々と捏造できそうじゃん?」

 禁断な感じがして、実によろしい。ふむ、咲夜×レミリアとか? レミリアのほうは興味ないけど。

「良也さん」
「な、なんだ射命丸。なんか視線が冷たいぞ?」
「個人の趣味をとやかく言うのはどうかと思いますが……その妄想、他の人たちの前では言わない方が賢明かと」

 ……うん、ソウダヨネー。こんな馬鹿な妄想、連中に知れたら軽く殺されるよネー。

「こほん。気を取り直しまして、ズバリ土樹さんが今気になっている女性は!?」

 ああ、射命丸である意味助かった。普通に流してくれた。
 でも、気になる女性ねぇ。気になる……気になる……ある意味、スキマの動向とか、霊夢の生活事情とか、魔理沙の茸(?)とか、気になるっちゃあ気になるが……

「それはどういう意味で?」
「無論、ラブ的な意味でですっ」
「だよなぁ」

 さっきまでの話の流れから、それしかない。
 でも、ラブ的な意味ねぇ……付き合っていいなら付き合いたいなぁ、って奴はけっこういるんだけど、そもそも僕男として見られてねぇし。

「恥ずかしいからヤダ」
「ま、ま。そう言わず、ここでブァーっと告白してくださいよっ」
「新聞越しに告白ってのも斬新だな」

 使えるかもしれん。新聞記事の三行広告とかに『花子さん、好きだー!』とか。それを見た彼女は余りに斬新な告白に感激し、見事二人は付き合うこととなった。めでたしめでたし。

「ええ、斬新結構です。どうぞ、好きなあの子の名前をっ」
「嫌だって。そんな、恥ずかしいって言ってるだろう」
「なぁーにウブなこと言っているんですか。ネンネじゃあるまいし」

 こういう語彙はどこから得てるんだろう。

「っさいなぁ。じゃあ射命丸でいいよ」
「へ?」
「うん、まあ結構可愛いし」

 これで万事解決。流石のパパラッチも、自分をネタにはしないだろう。

「あ、あややややや、そんな困ります。はっきり言って、土樹さんは私のストライクゾーンからビーンボール並みに外れていますしっ」
「……はっきり言うなよ」
「いやぁでも人間と付き合うのも面白いかも知れませんねぇ。火遊び的な感じで」
「スマン、さっきのは嘘だから本気にしないでくれ」

 いやいや、この天狗はちょっと。

「それはそれで、女としてのプライドが傷つきますね」
「あったのか……」
「ありますよ。そりゃ」

 女というか女(?)みたいな奴が多すぎるから、僕が勘違いするのも致し方なかろう。弾幕ごっこなんて、あれ女の子がする遊びじゃないぞ。

「ちぇー。じゃあ新聞に書いときますね。『文々。新聞の記者、土樹さんに弄ばれる』。衝撃的なタイトルで、注目を集めそうです」
「捏造じゃねぇかっ!」
「違いますよー。『土樹さんは私こと射命丸文に情熱的な告白をしましたが、身体目的だったらしくすぐに撤回し……』とか。嘘じゃ有りません」
「『身体目的だったらしく』あたりが嘘っ! あと情熱的じゃなかったしっ」
「ただの文章の修飾ですよ」

 その修飾のせいで、凄く文意が変わってしまっているぞ。日本語は正しく使おうぜ。仮にも記者だろ。

「それよりほら。この花の異変のことでも記事にすればいいじゃないか。よく知らないけど、珍しいんだろ?」
「そうですねー。六十年前のことなんて、私も当時の新聞を引っ張り出してようやく思い出したくらいですし、人間妖怪問わず、この異変の記事は読みたいでしょうねえ」
「……ん? 六十年前?」
「はい。確かにその当時、同じ花の異変のことを記事にした記録があります。百二十年前と百八十年前も」

 ……そんだけ昔から新聞書いていたのか。

「六十年ごとに花の異変は起こってるのか」
「みたいですねえ」
「……なんで?」
「さあ、そこらへんはなんとも。ほら、貴方と仲のいいあの隙間妖怪なら知っているんじゃないですか」

 しかしスキマに聞くのはなんというかリスクが高いからなぁ。別に興味ないし。

「まあ、その当時も放っておいたら戻ったらしいんで、気にすることはないんじゃないですか」
「そっかー。花は綺麗だから、このままでもいいんだけど……。ああ、妖精が暴れているのは問題だな」
「そうですね。うっとおしくて」

 気付くと、周りには興奮した妖精の群れ。

「射命丸。よろしく」
「あ、一人だけサボりはよくありませんよ。ちゃんと手伝ってください」
「でも、僕が手伝うよりも射命丸一人の方が早いだろ?」
「気分の問題です。気分の」

 やれやれ……あんまり霊力使いたくないんだけどなぁ。仕方ない。

 スペルカードを持ち、射命丸と背中合わせに飛ぶ。

「先に言っておくけど、僕はサボるから、気張ってくれ」
「そんなこと言ってると、うっかり私の弾がそちらに飛ぶかもしれませんよ」
「うへぇ」

 面倒くさいなぁ。
 まあ、頑張りますか。

「風符『シルフィウインド』」
「風符『風神一扇』」




 まあ、なんだ。
 共闘は意外と楽しいことに気付いた。



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