俺って、そんなに嫌われているのか?

嫌われているんだろうなあ………なんせ、放課後、問答無用で体育館裏に連れてこられたんだから。

おまけに、その連れてきた連中というのが妙な変装なんてしているし………

「…………」

ま、正面で偉そうに立っているのはダルコだろう。

そういえば、シルフィとガイアはこいつらが登場した瞬間、散歩に行くとか言って逃げた。…………俺だってこんな奴らに関わりたくないなあ。

 

第8話「放課後の襲撃」

 

「っていうか、何の用だ、ダルコを始めとするクラスメイト諸君」

俺が、そういうと、その三人組は妙に慌てた。………気付いていないとでも思っているのだろうか?変装と言っても、マスクだけだ。

これで気付くなという方が無理なのだが………

だが、俺の予想を反して、連中は大まじめに変装したつもりらしい。

「ななななな………何を言っているのだね!?俺はあの格好良くて強くて素敵なダルコなどという人物とは全く無関係であるでござるよ!!」

「おおおお、俺もだ!!い、いつ貴様のクラスメイトなどになった!!」

「…………(明後日の方向を向いている)」

………こんな感じにまくし立てる3人。今思い出したが、こいつら全部、アルフレッドが言っていた『2年A組、ケンカを売ったらヤバイやつベストスリー』のメンバーではないか。

………と、言っても、昨日俺がぶっちぎりのトップに躍り出たらしいが。

「わかったわかった。で、結局あんたたちはなんなわけ?」

仕方がないので、気付かない振りをしてやる。

そうすると、三人は急に気を取り直して、

「よくぞ聞いてくれた!!」

「我らこそは学園のアイドル、リア・セイクリッドさんに愛を捧げ!」

「そして、彼女を悪漢共から守り抜く正義の組織!」

「「「我ら、リアちゃんファンクラブ!!!」」」(どーん!!)

……………………………

…………………………

…………………

……………

………

いや、まあなんと言うか………リアもこんな奴らに愛を捧げられたくなどないだろうに………

「そして、ルーファスくん、君が呼び出された理由はわかっているね?」

とりあえず、この中ではリーダー格らしい、ダルコが偉そうに話し始める。

「おい。“罪状”を述べてやれ」

そして、後ろのかなり背の高い男………(ノッポと命名)にそう命令する。

「はっ。被告、ルーファス・セイムリートはリアさんに第一次接触。また、昨日は家に招かれ、一緒に夕食をとった模様。あ、あまつさえ………今日の昼に手作り弁当などを………!!」

「ぐぅ……改めて聞くと腹の立つ……!!」

ノッポの報告に、さらに隣の小さいやつ(チビと命名)が悔し涙を流す。

つーか、俺もうヤダ。

「どぉーーだ!!?自分の罪の重さを思い知ったか!!」

「いや全然」

「なにぃ!!」

ダルコもダルコでやかましいし。

「っていうより、第一次接触ってなに?」

「ふん、仕方がないから教えてやろう。我々が独自に決めた基準で、リアさんに視線を送るのが第三次接触。次に、ごく事務的な会話が第二次接触。そして親しげに会話をしたりといった友好的な接触が第一次接触だ!!」

………聞かなきゃ良かった。

「よって、我らがリアちゃんファンクラブの規則第21条『抜け駆けはなし』に則り貴様に制裁を与える!」

「なんなんだそれは………」

今日は、この系統の言葉の出番が多いような気がする。

だってしょうがないじゃん。変なやつばっかりなんだし。

「それに、俺はそんな妙なクラブに入ったおぼえはないから、規則に従ういわれはないんだが」

「甘い!この規則は10歳以上、65歳未満の全ての男性に適用されるのである!!」

頭痛くなってきた。

「と、ゆーわけで諸君!制裁だ!!」

ダルコの一声とほぼ同時に、ノッポとチビが各々の獲物を取り出す。

ダルコは相変わらず剣。ノッポはごついメイス。チビは槍。

さすがに刃物は斬れないようになっているみたいだが、下手したら死ぬことに変わりはない。

「ちょっ……待っ……」

「かかれぇーーーー!!!」

俺の声は、あっさりとかき消されてしまった。仕方がない、相手してやるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(しばらくお待ち下さい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

ぽんぽんと手についた埃を払う。さすがに素手で三人相手はキツかった。

「「「(ピクピクピク………)」」」

三人はそろいもそろって痙攣している。まったく……こんなところで寝ていると風邪ひくぞ?(←あんたのせいです)

うむ。まあ徹底的に痛めつけてやったし、リアちゃんファンクラブとやらは今日で解散だと念を押しておいたし、少しは大人しくなるだろう。

「よし、とっとと帰ろう」

そう思って、近くに放り投げておいた鞄を拾い、寮の方へ向かおうとすると………

「見たぜ見たぜ見たぜ!」

体育倉庫の影から、うるさく叫びながらアルが登場した。どうやら、ずっと見られていたらしい。

いや、もちろん気が付いていたが。

「お前ほんっとうにすげえなあ。この三人を同時に相手してノしちまうとは………って言うより化け物か?」

アルはじろじろとダルコとノッポとチビを見ながらそう言う。

「別に、大したことじゃないさ」

「お前わかってねえな。俺様のデータから判断するとだな、お前は間違いなく学園でもトップクラスの実力を持って居るぞ」

言いながら、アルは持参の手帳に何かを付け加えている。

「それは言い過ぎだと思うが……」

「ま、お前がなんと思おうと構わないけどな。じゃ、俺は帰るわ。色々面白い情報も仕入れることが出来たことだし」

「なんのことだ」

「お前の化け物じみた強さとかだ。じゃあな」

そう言って、アルはさっさと帰ってしまった。

………目立たないようにすごそうと思っていたのに、俺ってバカかもしんない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………まいった」

いや、何がまいったって、今晩の飯だ。昨日はリアの家でごちそうになったので知らなかったのだが、寮生活者は自炊しなければならないらしい。

一応食堂はあるのだが、きっちりと料金は取られるし、寮の食堂では食券は使えない。奨学金で生活費その他全てをまかなっている俺としては、無駄な出費は極力避けたいところである。………だってけっこう高いんだもん。

俺だって一応料理らしきものは出来ないことはない。………いや、食えることは食えると言ったレベルだが。

どうも料理というか、家事だけは苦手だ。他のことなら大抵のことならこなす自信があるのだが…………

話がそれた。

つまり言いたいことは、同じ料理するのならなるべくおいしく作れるやつが作った方がいいと言うことだ。

「ルーファス、俺は腹が減ったぞ」

「私もーー!」

「やかましい!!」

寮の自室にいるので、遠慮なく姿を現し、声を出してしゃべる欠食児童共。ガイアとシルフィ。

「つーか、お前らは花の蜜でも吸ってろ!!」

別に食うこと自体必要ないくせに。

「やだよ。そんな味気ないの」

「マスター、横暴よ。おーぼー」

「………ふーん。そうか。そういうことを言うのなら俺にも考えがあるぞ」

ふふふ……と、自分でもかなり不気味だろうなと思う声で笑いながらガイアとシルフィの二人を睨む。

「な、なにをするつもりなの、マスター?」

「別に……念のため確認しておくが、俺が200年眠っていた間、お前らが料理を覚えたって事は?」

「んなわきゃねーだろが」

うむ。予想通りの答えをありがとうガイアくん。

「だろうな。で、俺も料理が出来るとは言い難い。それならどうすればいいと思う?」

ガイアは気が付いたのか、心なし青ざめながら「まさか……」と呟く。

対してシルフィの方は全くわからないようだ。

「う〜ん。出来合いの物で済ませるとか?」

「金がかさむから却下」

「マスターが気合い入れて作る」

「別に方法があるのに、わざわざまずい物を食うことはないだろう」

「え〜〜と、じゃあどうするつもり?」

心底不思議そうに、シルフィが聞く。そうやってのほほんとしていられるのも後少しだ。

「こうするんだよ。『我と契約せし者達よ。我が声に応じ、今ここに姿を現せ。我が名はルーファス・セイムリート。光と水の元素を司る者よ、我が呼びかけに答えよ。いでよ!ソフィア・アークライト、アクアリアス・ウォーターハートよ!!』」

俺が呪文を唱え終えた瞬間、床に輝く魔法陣が現れ、そこから精霊界への入り口が口を開く。

そこから、俺と契約している二人………ソフィアとアクアリアスが姿を現した。

ガイアに引き続き、シルフィも真っ青になってしまったな。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、飯作ってくれ」

「いきなりそれですか?」

いいじゃん。アクアリアス料理うまいんだし。意外にも(失礼)ソフィアも料理はうまい。

ちなみに、そのソフィアは部屋の隅の方で、仕事をさぼった二人を説教している。

普段大人しい分、ソフィアが怒ると非常に怖い。

「そんなくだらないことで呼び出さないで下さい」

「くだらないとはなんだ。俺は真剣に困っているんだぞ」

アクアリアスは力無く「はぁ、わかりましたよ」と言って、台所に向かっていく。

「で、マスター、材料は?」

うむ。確かに材料がなければ料理のしようがないな。

「あ、私も手伝いま〜〜す」

と、説教を終えたソフィアもこちらに来る。ちらりと見ると、ガイアとシルフィはぐったりとしていた。

「で、材料は?」

「俺の“家庭菜園”から適当に取ってきてくれ。まだ残ってるだろ?」

「おっけ〜です」

やけに張り切っているソフィアが、力一杯空間をこじ開ける。

切り裂かれた空間の向こうには緑いっぱいののどかな風景が広がっていた。

「じゃ、ちょっと行ってきますね」

そう言って、ソフィアとアクアリアスは連れだってその空間に飛び込んだ。

 

 

亜空間魔法………これはそう呼ばれる魔法だ。

今、俺がレヴァンテインを封じているのと同じ系統の魔法で、術者の任意の容量の(魔力によりある程度限定されるが)異空間を作り出す。

これを使うと、例えば俺が設定した印を組むことでその空間への小さな穴を開き、そこから亜空間に封印した剣を呼び出したり、この“家庭菜園”のように、こちらの土や酸素などを運び込んで植物を栽培したりすることが出来る。と、言っても、後者の使い方は色々な条件が必要になってくるので、俺がやっているように空間を精霊界に繋いで、空間に精霊を住まわせたりといったややこしいことをする必要がある。

ちなみに、亜空間への出入り口は術者が特別な設定をしない限り、何らかのコード(呪文だったり印だったり)を入力さえすれば誰でも自由に開けることが出来るのだ。

 

 

「と、いうわけだ」

「お前、誰に説明しているんだ?」

ガイアが怪訝そうな顔で問いかけてくる。

……そんなこと聞かれても、俺にもわからん。恐らく、なにか宇宙的な意志が働いているんだろう。

「とってきました〜〜」

「早速作りますね」

そうこう言っているうちに、ソフィアとアクアリアスが帰ってきた。

「ちゃんと閉じろよ」

二人に注意しながら、時空の裂け目をふさぐ。ほっとくとこのまま安定してしまうのだ。そしたら閉じるのにえらい時間と労力がいる。

「すみません。これからは注意しますね」

とか言いながら、台所へ行って調理を始める二人。

 

トントントン

ジューー!

ぐつぐつぐつ

 

何やらおいしそうな匂いと音だ。

やはり、俺の人選は正しかったな。

 

 

 

 

 

 

 

20分後、見事な料理の数々がテーブルに並べられた。まあ、全て野菜料理なのは仕方がない。これからは肉類や魚介類はちゃんと買って来なきゃいけないな。

「じゃあ、頂きましょう」

アクアリアスがそう言うと、みんな一斉に食べ始める。

「はぐはぐはぐ………うっ!み、みじゅ――――!!!」

一気に食ったせいで、のどに食い物をつまらせたシルフィ。………アホだ。

「………『クリエイトウォーター』」

仕方がないので、水を作ってやる。手元にコップがないので直接口の中に魔法の効果を集中する。

「ん……んーーーーーー!!」

………更にやばいことになったようだ。

「アホだな、二人とも」

ガイアの冷ややかな突っ込みが痛い。

「ほら、シルフィちゃん落ち着いて」

おろおろと、ソフィアが介抱するが、どうしようもないな、アレは。

「ぐ……ぐぐぐぐぐ………」

お、なんとか飲み込んだみたいだ。

「な、なにすんのよ、マスターーーーーーーーー!!!!!!!」

涙目で抗議するシルフィ。………さすがに悪いことしたかも知れない。

「失敬な。俺は助けてやろうとだな……」

「それでさらに追い込んでたら世話ないよ!!」

むぅ、それは確かに………

「はいはい、シルフィも落ち着いて。マスターだって悪気があったわけじゃないんだから」

アクアリアスがなだめにかかる。

「もう……ほんとに気をつけてよね」

何とか許してくれたらしい。再び、がつがつと食べ始める。

「………多分、もう一回同じ事するな」

「俺もそう思う」

ガイアの言葉に、思わず同意してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、シルフィは同じ事を後3回もしてしまった事を追記しておく。

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