レスティーナ達への報告が終わった翌日、友希はラキオス城に登城していた。
本来、早くマロリガンとの戦争の最前線であるランサに向かうべきなのだが、軍の司令官であるレスティーナの名前で命令されては仕方がない。出立前にヨーティアと合流し、その後ランサに向かえとの仰せだった。
そして、城の前で出迎えてくれたヨーティアとイオに案内され、城の裏に建てられている、ある施設へと向かった。
「ラキオスの中央エーテル変換施設……いいのか? ここって、王族と高級官僚以外は、一部の技術者と作業員しか入れないんじゃ」
スピリットと一緒に警備任務に就いていた時も外縁部の警備しかさせてもらえず、立ち入りは固く禁じられていた。
「あー? 私がいいって言っているんだから、いいんだよ。それに、立入禁止は昔の話だ。今は、自由にとまではいかんが、軍事行動のためならスピリットが入ってもいいことになってる」
「そ、そうなのか? でも、エーテル変換施設にスピリットが一体何の用で……」
マナから変換されたてのエーテルの方が効率がいいとか、そういう話は聞いたことがない。となると、警備くらいしか心当たりがないのだが、ヨーティアの言いようだと、他になにかがあるように聞こえた。
「それは後で説明してやる。現物を見たほうが早いしね」
「? 本当、一体なにがあるんだよ」
「そうだな……一言で言うと、すごいものだ」
天才は、物事の略し方も天才的らしい。凡そ、常人には理解できないレベルで話をすっ飛ばしてくれる。
「いやだから、それがどうすごいのか具体的に説明を――」
「後で、って言ったろ」
どうやら、答える気はないらしい。
もういいか、と友希は諦めて、大人しく付いて行く事にする。
コツコツと、人気の少ない施設の中を慣れているらしいヨーティアの後ろについて歩く。
と、暇だったのかヨーティアがそこで世間話を振ってきた。
「そういや、トモキ。久し振りのラキオスの宿舎はどうだった? よく眠れたかい?」
「あー、うん。久し振りに熟睡した。サーギオスは緊張で眠りが浅かったから」
欲を言えば、久し振りにハリオンの手料理でも食べたかったが、第二宿舎の面々はみんな前線に出ているから望むべくもない。
残念だったが、みんなに合流するまでの辛抱だ。
「あ、でもちょっと気になることが」
「うん?」
「いや、マロリガンとの戦争が始まってもう結構経ってるだろ? とっくにみんなランサに行ってるはずなのに、宿舎が妙に小奇麗で食材も残ってて……」
お陰で、食事を作ることに不自由しなかったから助かったのだが、どう考えても変である。
留守にしている間、前線に出ていない二線級のスピリットが使っているのかとも思ったが、それなら話くらい通ってるだろう。
「ああ、連中、ちょくちょく帰ってきてるからね。四六時中、戦場に出ずっぱりってのは、予想以上にストレスも疲労も溜まる。
緊急でない限り、この状況でもちゃんとローテーションで休みは取らせるのがレスティーナ殿の方針らしい」
「はあ?」
休みを取るのはわかるが『ちょくちょく帰ってきている』というのは意味がわからない。休暇のためだけにラキオスまで戻るなんて、無駄の極みだ。
「ヨーティア。それって一体どういう意味だ?」
「ふっふっふ……まあ、丁度中枢に着いたところだし、今説明するよ」
友希が見知らぬスピリットが警備を固める重厚な扉の前で、ヨーティアはそう言って、両開きのその扉を開け放つ。
扉の向こうは、学校の体育館ほどの面積の空間があり、。
「な――」
見るからに奇怪な光景が広がっていた。金属とも石とも知れない奇妙な素材で出来た壁面は、幾何学的な文様が刻まれ、淡く発光している。
そして、なによりも圧倒されたのは、部屋の中央に鎮座している巨大な結晶体だ。どういう原理かその結晶体は浮遊しており、その中心を規格外のサイズの永遠神剣が貫いていた。そんなどこか幻想的なオブジェの周りには、機械類が取り付けられていて、凄まじいギャップを生み出している。
そして、幾人かの技術者と思われる人たちが、それらの機械の周りで忙しなく働いていた。
「こ、ここが、エーテル変換施設の、中枢?」
「ああ、そうさ。ま、感動するのはいいけど、これから何度も来るんだから早いとこ慣れなよ」
ヨーティアはそれだけ言って、自分はさっさとクリスタルの方へ歩いて行った。
取り残されそうになった友希は、慌てて追いかける。
そうして、ヨーティアが足を止めたのは、結晶体の真下にあるとある機械の前。
これだけは、他の機械とどこか違う意匠で、後から取り付けたような不自然な配置だった。
「? これって」
魔法陣が地面に刻まれ、その上空に冠状の水晶が浮かんでいる。そして、中央部には扉らしきものがある。友希にはどんな用途で使うのかまるでわからない。
脇に設置された調整用と思われる機械を操作して、ヨーティアはふむふむと頷く。
「うん、特に異常はないみたいだ。イオ」
「はい。『理想』よ」
イオが短剣型の永遠神剣を取り出し、その機械と共鳴させる。
「なんだなんだ!?」
「ちょっと大人しく待ってろ。ええと、今日はニムントールとファーレーンだっけ?」
「その予定です」
第二宿舎のスピリット二人の名前を上げるヨーティアに、イオは頷く。
「向こうさんはもうスタンバってるみたいだね。いいよ、イオ」
「了解しました」
コアクリスタルから供給されるマナがその装置に集まるのを友希は感じた。
それは、イオの『理想』によって『なにか』と結び付けられ、徐々に形を成していく。
それが人型を取ろうとしている、と友希が気付いた頃には、そのマナの塊に少しずつ色彩が定着し始めていた。
緑の髪がまず現れ、目、鼻、口と顔が出てきて、そこからは一気に首から足元までが実体化する。
『彼女』の手には、ちゃんと槍型の永遠神剣も握られており、
「ふぅ」
マナの乱れが収まった頃には、グリーンスピリット・曙光のニムントールが、その姿を現していた。
「は、はああああああああああ!?」
「……うっさい、トモキ」
心底仰天する友希に、ニムントールは一言だけ言って、扉を開けて装置から離れる。
次いで、同じように今度はファーレーンが出現した。
彼女は、傍にいる友希に気が付くと軽く頭を下げて、
「あ、トモキ様、おかえりなさい。ご無事でなによりでした」
「う、うん」
「お姉ちゃん、早く行こ」
「こ、これニム。トモキ様に挨拶はしたの?」
さっさと行こうとするニムントールに、ファーレーンは慌てて、
「あの、トモキ様。申し訳ありません、ちゃんとニムには言い聞かせておきますから」
「そ、それはいいんだけど、今どうやって――」
「お姉ちゃんー」
いきなり出現したのは何故かを問いただそうとすると、ニムントールの声が遮った。
……ニムントールからは、相変わらず嫌われているようだ。
「ニム! ちょっと、待ちなさい。で、では失礼します、トモキ様、ヨーティア様、イオ」
ファーレーンが追いつくまでの間、ニムントールはこっちを見たまま待っている。
ファーレーンの方を見ていると思いきや、その視線はまっすぐ友希を見ていて、
「……り」
なにかを呟いた。
その言葉に、友希は少し驚く。
ニムントールに追いつき、ぺこぺこ頭を下げながら去っていくファーレーンに、適当に手を振って返す。
『……ニムントールも"おかえり"って言ってくれたな』
『よかったじゃないですか、主。一応、無事を喜んでくれたみたいですよ』
『まあ、難しい子だから、なんにも言わないほうがいいだろうな』
ありがとうの一言でも言ったら、ニムントールはさっき言ったことを必死で否定するだろう。野良猫を餌付けするように、少しずつ距離を埋めるしかなさそうだ。
まあ、それはともかく、
「ヨーティア? 今のは一体……」
「ふ……ならば教えてやろう! これはこの大天才が発明した『エーテルジャンプ装置』さ!」
腰に手を当て、それほど豊かでもない胸を張るヨーティア。
「エーテル、ジャンプ……?」
「そう! ボンクラたるお前にもわかりやすく言うとだ。これがあれば、どんなに距離が離れた場所でも一瞬で移動できるという、画期的な代物だ」
ヨーティアの言葉と、先程現れた二人、そしてラキオスに帰ってから疑問に思っていたことが繋がる。
「そ、それって、つまり、タイムラグなしに、ラキオスとランサを移動できる、ってことか?」
「おおー、お前さんはユートよりは柔軟だね。そうさ、瞬間移動ってやつだ」
「マジで!?」
それが本当ならば画期的どころではない。歴史に刻まれるような偉業だ。
それに、軍事的に考えても、移動手段はスピリットの徒歩が一番早いというこの世界において、これは圧倒的なアドバンテージとなりうる。
「すごい……本当にヨーティア、天才なんだな」
「ふふん、当たり前だ。まあ、問題がないわけじゃないけどね」
ヨーティアが、『いいか? ボンクラのお前にもわかりやすく説明するとだ』と前置きして、説明を始める。ボンクラボンクラ言いながらも、別に説明を嫌そうにはしていない。意外に、他人に話をするのが好きなのかもしれない。
「こいつは、純粋にマナで構成されたものしか転送できない。送れるのは、スピリットやエトランジェ、永遠神剣、後はスピリットの戦闘服みたいな純粋なエーテル由来の品、ってとこでね。
人間は送れないし、食料みたいな普通の物資も無理なんだ」
「? ええっと、それはまた、なんで?」
「原理の問題さ。この装置は、わかりやすく言うと存在情報――要は心だけを飛ばして、送り先の装置に蓄えられたマナで肉体を再構成する、ってものだからね」
肉体を再構成。その不穏な響きに、友希は恐る恐る尋ねる。
「……それって、本当に大丈夫なのか? 転送事故とか起こったりしたら」
「一応、何重もセーフティがかかっているから大丈夫さ。それに、もし万が一失敗しても、転送途中のどこかでちゃんと復元できる……はずだ」
「『はず』って!?」
「今のところ、無事故だからね。実験じゃあそうなったが、永遠神剣やスピリットで試しちゃいない。トモキが進んで被験体になってくれるっていうんだったら、事故時のデータも取りたいところなんだが……」
ぶるぶるぶる、と友希は首を横に振った。
友希の脳裏に、物質転送装置のせいでハエと合体してしまった映画が思い起こされる。ああいう風になってしまうのはゴメンだ。
『あれは怖かったですねえ』
『……チェックしてんのかよ』
ぶるぶると震える友希を無視して、ヨーティアは話を続ける。
「それに、まだ完璧とは言えない。永遠神剣同士の繋がりを強化するイオの『理想』の力がないと、まだ不安定だ。
ま、そっちに関してはデータが揃ってきたから、ゆくゆくはイオの協力なしにジャンプできるようになるだろうがね」
「へえー。なんか、聞くと僕の『束ね』と同じような力だな」
「ああ、そうだね。聞いてるよ。そのうち、お前さんの『束ね』でもエーテルジャンプ装置を稼動できるか、試してみたいところだね」
さて、とヨーティアは言葉を切って、
「まあ、論より証拠。装置に入りな。ランサまで送ってやる」
「……そのためにヨーティアと合流するって命令が来たのか」
不安に思わないでもないが、さっきのファーレーンとニムントールの例があるので、躊躇しながらも友希はエーテルジャンプ装置に入る。
まだ起動していないはずだが、なにかふわふわして妙な感覚がした。
「抵抗するなよ、転送できないから。楽にしてろ」
「わかった」
「よし、イオ」
ヨーティアが声をかけると、イオが装置の近くに来て『理想』を掲げる。
『理想』と『束ね』の間にリンクが形成され、それがイオを介してエーテルジャンプ装置の魔法陣に接続された。
『ほう。確かに私に似た力ですね。私より、繋げる力自体は弱い代わりに、遠くまで繋げられる感じです』
『わかるんだな』
『似たタイプなので。ただ、意志は殆どないですね』
などと話しているうちに、ヨーティアが装置を起動させる。
「よし、ランサのクライアントに接続完了。んじゃ、いってこい、トモキ」
瞬間、体が足元から崩れ始めた。
「お、おお!?」
肉体が喪失する虚無感と不安に、思わず抵抗しそうになるが我慢する。
やがて、装置の中の友希の肉体は全て純粋なマナと化し、その心だけがエーテルジャンプ装置の機能に従い、遥か彼方へと飛んだ。
「〜〜っぷは!?」
ランサのエーテルジャンプクライアント。
一瞬のことなのでよくわからないものの、移動する感覚だけを残して、友希の肉体が再生された。本当に一瞬のことで、本当にあったことなのかどうかすら疑わしい。
「ええっと、終わったのか?」
再生された自分の体を見ても、特に違和感はない。しかし、自分の体を構成するマナが、まったく新しいものに変わっていることだけは感覚的にわかった。
「本当にこんな事出来るんだな」
装置を出ると、まったく違う景色が広がっている。ここはどこかの室内らしい。
ラキオス側の装置と違い、エーテル変換施設の中にあるというわけではない。石造りの、恐らくは砦の一室だ。
このままここで待てばいいのか、それとも外に出るべきなのか、友希が迷っていると、部屋の扉が開いた。
「あ、トモキさまだっ!」
「トモキさまー」
「って、ネリー、シアー?」
扉を開けて出てきたのは、ネリーとシアーの姉妹。満面の笑みを浮かべて、友希に寄ってくる。
「おかえりなさい! サーギオスってどうだった? 面白いものあった?」
「おかえり〜。おいしいものはあった〜?」
「い、いや。まあ……劇場とか、娯楽施設は多かったみたいだし、食い物は美味かったけど」
律儀に答えるが、久し振りに会って第一声がそれなのはどうかと思う。この二人らしいといえばそれまでだけれども。
「まあ、二人共久し振り。元気だったか?」
「元気元気!」
「元気だったよー」
それはよかった、と友希は安堵する。
戦いの最中にも明るい二人に思うところがないわけでもないが、二人の笑顔には純粋に癒される。
「迎えに来てくれたのか?」
「うん? 違うよ。近くをたまたま通ってたら、エーテルジャンプする気配があったから」
ネリーが首を振る。まあ、考えてみれば昨日悠人といつ合流するか明確に打ち合わせてはいなかったから、それも当然だろう。
ひとまず、二人に案内してもらって部隊長である悠人の元へ向かうことにした。
向かう途中、ネリーとシアーに戦況などを聞いてみる。
子供っぽくはあるものの、そこはスピリット。この手の話だと、淀みなく正確に答えてくれた。
「それじゃ、今は膠着している状態なのか」
「うん。たまーに攻めてくるけど、防衛施設もあるからすぐ追い払えるし」
「もうすぐ準備が出来るから〜、そしたらユートさまも攻勢に出ようかって話してた〜」
どうやら、友希はいい時期に合流できたらしい。前線に出ていたら、合流するだけで一苦労だっただろう。
「そっか、でもおかしいな。マロリガンのスピリットって、そんなに少なかったっけ?」
防衛に相当苦労していると思っていた友希は拍子抜けする。
「なんか〜、ほとんどのスピリットは動いてないらしいよ。稲妻って部隊が殆どで……ええと……『ぎかい』がどうとか」
成る程、と得心がいった。
マロリガンは共和国であり、議会の人間は一応は選挙らしきもので選ばれる。ただ、所謂普通選挙とは違うため、選出されるのは殆どが土地の有力者――要は貴族だった。そして、その貴族たちは基本的に自分たちの地盤である街から、戦力であるスピリットを離したがらない。
国として戦争をすることに決まったのだから、少しは出しているが地元の抵抗も強いだろう。
女王という絶対権力者の元、ほぼ一枚岩であるラキオスと比べ、投入出来る戦力には限りがあるようだった。
そうすると、これは好機だ。向こうが危機感から団結する前に、マロリガンの交通の要衝である街スレギトを落とせればこれからの展開はぐっと楽になる。
「なら、チャンスかもな」
「うん。でも、もう少し様子見だって。まだネリー達ももうちょっと訓練するみたいだし」
「エーテルがね、たくさん回ってきたの〜」
広がった領土によって得られたマナを急ピッチでエーテルに変換しているラキオス。
新たなエーテル変換施設も建てられ、それらがスピリット隊に回っている。
エーテルを与えればスピリットは強くなる。……が、それには訓練士の適切な指導と、なにより時間が必要だ。
恐らく、悠人の考えとしては、ある程度スピリットたちのレベルが上がってから攻め込もうとしているのだろう。防衛施設の恩恵のあるランサでの籠城戦と違い、野戦や都市への侵攻は、個々のスピリットの実力を底上げしてから臨まないと厳しいと判断しているのだ。
「なるほどなぁ。悠人も色々考えているんだ」
「うん、そーゆーことで……とうちゃ〜くっ!」
「到着〜」
ネリーとシアーと話し込んでいると、ある部屋の前に着いた。ここが、隊長室らしい。
「ありがとう、二人とも」
「うん!」
「いいよ〜」
笑って二人に礼を言う……と、扉が開き、中から一人のスピリットが顔を見せる。
「あら?」
「お」
出てきたのはセリアだ。相変わらずの背筋のピンと伸びた姿勢と引き締められた口元に、懐かしい気持ちになる。
「トモキ様。帰ってきたの?」
「ああ、今さっきエーテルジャンプでこっちに来たところ」
「そう。見たところ怪我もないようでよかったわ。おかえりなさい」
セリアの台詞に、友希は少し面食らった。
そんな反応に、セリアは少し不機嫌になって、
「なに、その意外そうな顔は」
「いや、心配してくれたんだな、と」
「……仲間の心配をしてなにが悪いのかしら」
ふん、とそっぽを向いた。
なんとなく、嬉しくなる。
セリアだけではない、ファーレーンやニムントールも、ネリーとシアーも、『おかえり』と出迎えてくれる。
我ながら安いとは思うが、ラキオスに付いたのは間違いではないと思えた。
「いや、嬉しかった。ありがとう」
「……ええ」
「じゃ、僕は悠人と話すから。多分、どっかの部隊に合流することになると思う。一緒になったときはよろしく」
「わかったわ。それじゃあ」
セリアと入れ違いに、悠人の部屋に入る。
と、そこでセリアが声のトーンを下げて、声を荒げるのが聞こえた。
「それで貴方達? これでもかってくらい散らかしていた部屋の片付け、もう終わったの? それは感心ね。今から見せて頂戴」
「え、ええと〜」
「と、トモキさまを案内してて〜」
しどろもどろに、ネリーとシアーの言い訳の声が聞こえる。
(……サボりだったのか)
やれやれ、と思いながら、部屋の中央の作業机で、同じく呆れ顔になっている悠人に向き合う。
まあ、あの二人も仕事や訓練については真面目なので、友希としては心の中でガンバレと応援しておいた。彼自身、一人暮らしの時代はやや無精だった。
気が抜けてしまい、ややおざなりになった敬礼を悠人と交わす。
「エトランジェ友希、スピリット隊に合流しました、っと」
「ああ。そんじゃ友希、とりあえず、情勢の説明と、警備シフトとか決めなきゃいけないから、ちょっとかけてくれ」
椅子を勧められ、友希は悠人の向かいに座る。
この日より、友希はマロリガン戦線に身を投じる事になるのだった。
|