ラキオスにいた頃は、花を育てたり、謎資金によって食べ歩きをしたり、町まで散歩に出かけたりしていたスピリットたちも、ランサではそういう小さな趣味に精を出すことも中々出来ず、フラストレーションが溜まっていた。
 エーテルジャンプでランサとラキオスを往復しているため、本居であるラキオスから物は持ち込めず、混乱を避けるため市街への出歩きは制限され、おまけに毎日毎日マロリガンとの戦いに明け暮れるともなれば、それも当然である。
 ちょっとした時間と葉っぱが一枚あれば事足りるナナルゥは、数少ない例外だ。別に草笛が吹けなくても、彼女なら問題はなさそうだが、それはさておき。

 こんな状況では、食事はほとんどのスピリットにとって唯一と言っていい娯楽だった。

 美味い食事は士気が上がる。そんなフレーズは、地球での漫画や小説で見たことのある友希だったが、それを実感する毎日だ。
 ラキオス上層部もそれを知っているのか、スピリットの食費を二割ほど引き上げており、食事に関しては普段より贅沢をしている。

 つまり、食事はこのランサでの生活上、かなりのウェイトを占める要素、なのだが、

「あ、アセリア……これ、な、なんだ?」
「お料理」

 表情はいつもの仏頂面だが、かすかに胸を張っているように見える。
 そんなアセリアには悪いが、友希はスプーンを握ったまま、大皿に盛られたスープらしきものに手を付けるか否か、未だ決断できないでいた。

 ――エスペリア、オルファリル、ハリオン、ヒミカ、セリア、ヘリオン。この辺りの、『料理ができる組』が揃って当直に入っており、さて今日の夕飯は誰が作ろうか、と会議になったのが一時間前。
 互いを牽制し合い、仕方ないかと今いる面子の中では一番料理ができる友希が手を上げる直前に立候補したのがアセリアだった。

 曰く、少し前から料理を習い始めたのだとか。
 そういうことならと、全会一致でアセリアに任せることに決まり、アセリアは意気揚々と台所に向かい、

 ……思えば、あの時、悠人が顔を引き攣らせていたことから察するべきだった。

「え、ええと」

 テーブルに着いている面々も、困った顔で手を動かしていない。
 アセリアの作ったメニューは、パン、サラダ、シチューのような煮込み料理であるハトゥラ。ラキオスにおいてはごくごく一般的なメニューであり、ハトゥラの味付けを変えつつも何週間も同じメニューを回すことすらある。

 パンは、朝エスペリアが焼いたものを温めなおしているため問題なし。サラダは、少々盛り付けに失敗しているが、許容範囲。
 ……しかし、ハトゥラに関しては、友希が未だかつて見たことのない色――エメラルドグリーンに輝いており、異臭を放っていた。

「ゆ、悠人?」

 今テーブルに付いている中で、唯一の第一宿舎の人間である悠人に目を向けると、もはや悟りきったような顔で瞑目している。
 暫く待ってから、悠人は口を開いた。

「アセリア……確か、エスペリアに料理を習ってたんだよな」
「ん。サラダの作り方は習った」
「……こっちの、ハトゥラは?」
「まだ」

 ……果たして、料理に慣れていないからというだけの問題だろうか。友希には甚だ疑問である。
 サラダは、極論すれば野菜を切るだけだ。味付けは各自が食卓に並べられた各種塩を振って行う。ちなみに、ラキオスご家庭の格言によると、料理の腕を見るにはハトゥラを確認するのが一番なのだが――

「いいか、アセリア。前も言ったけど、誰だって最初から上手くなんてできっこない。アセリアも練習を始めているんだろうけど……その、剣で言うとまだ模擬戦もしていなくて、素振りしかしてない感じだ。実戦は、まだ早いんじゃないかな」
「……?」

 悠人の訴えに、アセリアはそうとわからないほどかすかに首を傾げる。
 ふう、と悠人はため息を付き、アセリアにハトゥラを食べるよう勧めた。

 ゴクリ、と唾を飲み込んだのは誰だったのか。テーブルに着いたスピリットたちが見守る中、アセリアは緑色のハトゥラを躊躇なく口に運び、

「ん、んぐ」

 いつもは殆ど動かない表情を、友希にすらわかるほどはっきりと歪ませて、一気に飲み込んだ。
 常より早い動作で水の入ったコップを取り、一気に飲み干す。

 そして、一言。

「……おいしくない」

 落ち込んでいるようだった。

「アセリア? 味見、してないのか」

 たまりかね、友希が発言する。料理をする上で、味見は必須だと思うのだが。

「そういえば」
「いやいや、しろよ」

 ぽん、と手を叩くアセリアに、思わずツッコミを入れる。

「みんな、ごめん」

 しゅん、となったアセリアが頭を下げる。別に友希も他のみんなも怒っているわけではないが、毎回これでは困ったことになる。食材を無駄にすると、予算にも響く。

 と、暗くなった空気を吹き飛ばすように、悠人が大きな声を張り上げながら、アセリアの背中を叩いた。

「……ま、今度からは気をつけろよ。友希、後で俺が責任持つから、明日の分の材料でなんか作ってくれないか。あ、俺の分はいいから」
「え?」
「みんなには申し訳ないけど、俺夜番入ってるから、先にいただくな」

 聞き返す前に、悠人は手を合わせて『いただきます!』と言うと、もしゃもしゃとアセリア作のハトゥラを食べ始めた。
 誰もが唖然とする中、悠人は旺盛な食欲を見せ、躊躇することなくスプーンを動かし、パンやサラダも一緒に貪る。

「トモキ、私の分もいい」

 アセリアもスプーンを取った。

 そんな二人の様子に、第二宿舎でもっとも無謀なネリーが意を決したように皿に向かう。

「う、う〜ん、意外に、これもくーるかも? いただきます!」

 一口口に含んだだけで、うええと顔を顰めさせるネリーだが、意外にもそのまま食べ続ける。
 そして、ネリーが食べるとなると、その姉妹としていつも同じような行動をとるシアーも口をつけ、

 そこからは連鎖的に集まった全員が食べることとなった。
 当然、友希も食べる。……苦いし、甘いし、どこかしょっぱい。むぐ、と一瞬詰まるが、パンとサラダを一緒に口の中に入れて強引に飲み込んだ。

 真向かいに座るアセリアが、じ、と友希を見る。付き合いはそれほど長いとはいえないが、友希の様子から、不安に思っているのは明らかだ。
 なにくそと一気に三分の一程を平らげ、アセリアにニヤリと笑いかける。頬が引き攣っているのはご愛嬌だ。

「ま、不味い……け、けど、サルドバルトの粗食に慣れた僕を舐めるなよアセリア。いくら不味くても、なんも食べられなかったあの頃に比べたら――」

 果たしてどっちがマシだろうか。真剣に検討するが、心の中の天秤はゆらゆらと揺らめいてどちらにも倒れこまない。
 当時は相当餓えていたはずなのに、その状況と釣り合うなんて、ある意味で凄い。

「比べたら?」
「……いや、こっちのほうがマシさ」

 美味しくない、不味いと口々に言いながら、みんな食べてる。賑やかな食卓なんて、あの頃にはなかったものだ。その分、片側に重さが加わった。

『……モノを食べられない神剣であることに感謝したのは、これが初めてです』
『『束ね』に味覚のフィードバックはないんだっけ。チッ、こういう苦しみをわかちあってこその相棒だろ』
『ちょっ、そんな相棒、ゴメンですよ私は!』

 『束ね』に適当に愚痴りながら食べ進める。確かに不味いが、見た目に比べると全然マシな部類だ。一体どんな調味料を使ったのか、生煮えのじゃがいももどきをガリガリ齧りながら友希は用意してある食材を思い浮かべる。食紅などあるはずもなし、そうするとこの緑は一体……青物の野菜をどろどろになるまで溶かし込んだのだろうか?

「よし。アセリア、おかわりだ」

 一足先に皿を空にした悠人がアセリアにおかわりを要求する。まるで苦行に臨む修行僧のような様子だった。

「ん。ユート、たくさん食べて」
「任せとけ! ……あ、でもやっぱ半分くらいにしといてくれ。流石にあんまり食べ過ぎると、夜番の最中に気持ち悪くなりそうだからな」
「むう」

 悠人のからかうような言葉に、アセリアが口を尖らせ、特盛りのおかわりを持ってくる。
 げっ、と悠人が顔を引き攣らせて、どっと笑いが起きた。

「くっ、でも、俺は負けないぞ。昔の佳織も、良く失敗してたんだ。これくらい、楽勝だ」
「カオリも?」
「ああ」

 うおおお、と掛け声まで上げながらハトゥラを食らう悠人。うっすらと涙すら浮かべている気がする。
 そこまで無理せんでも、と集まった誰もが思ったが、もうこれは意地になっているとしか言い様がない。

 はあ、と溜息をついて、友希は空となった皿を掲げる。

「アセリア、僕も……お、おかわり。……と、特盛りで」

 若干、声が震えたかもしれない。
 しかし、悠人がこれだけ食ってるのに、同じ男としてここで引き下がる訳にはいかない。なにか、間違った対抗心がメラメラと湧いている。

 と、その心は他のメンバーにも伝わったらしく、次々とおかわりの声が響く。
 アセリアは、冷静な顔であたふたしながら、全員分のおかわりをよそっていった。

 結局、大鍋いっぱいに用意されていた謎ハトゥラは、その日のうちに全て平らげられてしまった。
 この事もびっくりだが、最も友希が驚いたのは、食後にナナルゥの発した一言だろう。あろうことか、『いつもより美味しかったです』などと言い放ったのだ、彼女は。
 無論、ナナルゥの次の『是非、次回もこれを作ってください』という、彼女にしては珍しい要望は、全会一致で却下されたことは言うまでもない。

























 友希と悠人、及びスピリット隊のメンバーがアセリアの作った料理を食べていた頃。

 遠く、サーギオスの城でも、佳織が夕飯を取っていた。

「はあ」

 佳織の部屋に運び込まれた料理は、当然のように最上級のものばかりだ。
 佳織は小食なので、それに合わせて量は控えめ。しかし、品数は多く、各種珍味が取り揃えられ、サーギオス城のコック――要は、ファンタズマゴリアでも最高の料理人によって調理されていた。
 食器に至っては、庶民が一生をかけてても買えないようなものが使われている。こちらの芸術品など知るはずのない佳織でも、その雰囲気でわかるような代物だ。

 こんな食事を、自室で一人で取る。食べた気がしないのは、仕方のないことだろう。毎日ご馳走ばかりで、少し飽きも来ている

「……ウルカさん。ウルカさんも一緒に食べませんか?」

 なかなか食が進まないが、残してしまおうという思考は佳織には出てこない。部屋の隅に待機しているブラックスピリットに、少し協力してもらおうと声をかけた。

「いえ、手前は結構です」
「そんなこと言わずに。ほら、これなんて美味しいですよ」
「……はっ。では、失礼ながら」

 固辞するのも悪いと思ったのか、佳織が選んだ一皿をウルカは受け取り、口に運ぶ。
 鳥の肉を蒸して、特製のソースをかけたそれは極上だった。

「これは……確かに、美味しい」
「でしょう? あ、こっちのお皿も……」
「いえ、しかし」
「遠慮しないでください。今日、ちょっと食欲ないんです。残すのも悪いし」

 しばらくウルカは葛藤していたが、今ウルカに下されている命令は、『佳織を守り、そして可能な限り彼女の要望を叶える』というものだ。無論、サーギオスから逃げるだとか、そういう命令は聞かないよう戒められているが、日常のことについては強く突っぱねることはできない。
 結局、佳織に説き伏せられて、ウルカは佳織が食べ切らない分の料理を食べることとなった。食事と言えば、味も素っ気もない携帯食料ばかりなウルカにとって、それは衝撃的な体験だった。

「ウルカさんも一緒に食事ができたらいいんですけど。いつも、お食事はわたしが寝た後でしょう?」
「はい。しかし、手前がカオリ殿と食事を共にするとなると、シュン殿の不興を買いましょう」
「わたしが言えば、多分大丈夫だと思います」
「はあ」

 ウルカは曖昧に相槌を打つくらいしか出来なかった。
 佳織の護衛役に抜擢されてそれなりの期間が過ぎたが、佳織の言うことには日々驚かされてばかりだ。スピリットを、まるで人と同じように扱うその言動は、ウルカに新鮮な感動を与えてくれる。

 しかし、妙なことになったものだ、とウルカは思い返す。

 そもそも、サーギオスに来た直後の佳織に会うことが出来たのも、当時、それほど瞬が佳織の方を見ていなかったせいだ。瞬は佳織に執着しながらも、どこか遠ざけていた。
 それをいいことに、誘拐した当人であるウルカは、佳織が悠人の妹であることもあって彼女のことが気になり、城に戻るたびに話をしに行ったというわけだ。
 もしこれが、当時の瞬にバレていたら、間違いなく首を刎ねられていただろう。途中から、地球の面白い物語を聞かせてもらいに通っていたのは、割と軽率だったと今は反省するばかりである。

 それが、友希がサーギオスを去った後から変わった。
 瞬は頻繁に佳織の顔を見に部屋を訪れるようになり、もうこの密会めいた関係も終わりかと、内心少しがっかりしたが、すぐに状況は変わった。

 なんと、佳織が自身の護衛に、ウルカを指名したのだ。
 瞬と友希のやり取りを聞いて、少しだけ瞬と向き合うことにした佳織は、瞬に対して『お願い』までもするようになっていた。そして、一番最初に佳織が願ったことが、ウルカを自分の護衛にすることだ。
 特定の人間が佳織と親しくするのを許さない瞬だが、スピリット最強であるウルカを護衛にするのは安全を考えた場合最善だし、なにより佳織のたっての希望だ。せめて近くに信頼出来る人が欲しいと思った佳織のお願いを、瞬は不承不承ながらも認めた。

 わたしの勝手でウルカさんの仕事を邪魔してごめんなさい、と謝る佳織に、ウルカはとんでもないと言ったものだ。

 基本的に汚れ仕事をするウルカの部隊は、死傷者が出る確率も非常に高い。しかし、佳織の護衛にウルカとその部隊が配置されたことで、最近は一人の部下も失わなくて済んでいた。
 その分、他の部隊に皺寄せが行っていることを考えると申し訳ないが、部下とそれ以外のスピリットなら、ウルカは隊長として前者を守らねばならない。

「やっぱり、一人で食べるより、大勢で食べたほうがご飯は美味しいですから」
「はい、それはわかります。いつも食べている携帯食料でも、部下たちと食べると美味しく感じますので」
「……あ、普段は部下さんたちと一緒に食べているんですよね。じゃあ、わたしと一緒は……」
「いえ、気にされることはありません。カオリ殿と同じ食卓に並べるならば、貧相なものは出されぬはず。我々は、滅多にそのようなものを口に出来ませぬ故、役得です。少し残して配ってやれば、皆も喜びますよ」

 冗談めかして言うウルカに、佳織は少し笑ってから、『じゃあ、今度お願いしてみますね』と言った。

 少し話して、食欲も湧いてきたのか、それからは十分ほどで佳織は全ての食事を平らげた。下手に残したり、佳織が痩せ細ったりすれば、激高した瞬がコックを切り捨てることは確実なので、ウルカも安堵する。

 食器を部下のスピリットに下げさせ、入れ替わりに持ってこれらたお茶をウルカの手で注ぎ、落ち着いた空気が流れる。

 いつもなら、暫く食事休憩した後、入浴。その後は一、二時間程本を読んで就寝、というのが佳織のスケジュールだが、今日はその前にするべきことがある。
 お茶を飲んで、気持ちが落ち着いた佳織は、神妙な顔でウルカに問いかけた。

「……それで、ウルカさん。聞かせてもらえますか」
「はい。ラキオスとマロリガンの戦況ですが、未だラキオスはマロリガンのマナ障壁を突破できず、じりじりと押されているようです。しかし、ランサが陥落するのはまだまだ先かと。エトランジェであるユート殿に……守勢においては、トモキ殿がそれ以上に活躍されているそうです」
「……お兄ちゃん、御剣先輩」

 ウルカに頼んで、戦争の状況とラキオスにいる兄や先輩の様子を情報部から聞いてもらったのだ。佳織は、二人の無事に安堵する。

「続けます。マロリガン側のエトランジェは、週に一度程の頻度でランサ攻めに参加しています。毎回ユート殿やトモキ殿と交戦しておりますが、双方痛み分けで目立った負傷はないようです」

 光陰と今日子も生きている。犠牲になっているスピリットもいるが、まずは佳織はそのことに感謝した。
 しかし、やはり兄とその友達たちが戦っているのは悲しいし、悔しい。自分が瞬を説得できていれば、こんな事にはならなかったはずだ。

「ラキオスには、かの大賢者、ヨーティア殿が合流されているとのこと。私見ですが、この状況は遠からず崩れるでしょう。
 マナ障壁がなくなれば、ラキオスにも勝ち目は充分にあります。どうかご安心を」
「……はい」

 勿論、兄には生き残って欲しい。しかし、マロリガンにいる二人も、絶対に死んで欲しくない。
 ラキオスが勝った場合、あの二人は……

「カオリ殿」

 伏せる佳織に、ウルカは優しく語りかけた。

「これも私見で申し訳ありませぬが……心配は無用だと思います」
「え?」
「ユート殿も、トモキ殿も、そしてラキオスのスピリットたちも、立派な戦士。御友人が神剣に囚われているそうですが、そのような戒め、即座に解き放ってくれるでしょう」
「で、でも……」
「根拠のない話ではありません。……それは、シュン殿を見ているカオリ殿が、一番よくわかっていらっしゃるかと」

 友希とぶつかった前後で、明らかに瞬は変わっている。
 接し方を間違えれば即座に斬られることは変わっていないし、畏れられつつも敬われているのは同じだが、確かに何かが変わった。

 佳織はそれを、言葉にする術を持たないが……地球にいた頃の、怖いけれども自分のことを思ってくれていた『秋月先輩』に戻った、と言えるかもしれない。

「そう……です、よね」
「はい、その通りです」

 安心させようと、不器用に笑顔を作ろうとするウルカに、佳織はクスリと笑って、残り半分のお茶を飲み干す。

「じゃあ、わたしも頑張らないと。ウルカさん、明日、秋月先輩に会うことはできますか?」
「確認しておきます。よほど重要な用件がない限り、シュン殿は無理にでも会われると思いますが」
「お願いします。ウルカさんの食事の件もお願いしないといけませんしね」

 ウルカが苦笑する。
 そうと決まれば、今日は明日に備えて早めに寝ようと佳織は考えた。瞬との会話は『戦い』なのだ。いつか瞬の目を覚まさせてくれる人が来るまで、少しでも瞬を瞬のままいさせること。
 多分、これは自分にしか出来ない。自分からアポイントを取るのは初めてだが、きっと瞬はウルカの言うとおり無理にでも来てくれるだろう。

(お兄ちゃん、御剣先輩、今日ちゃん、碧先輩……わたし、頑張るよ)

 そう、佳織は決意を新たにするのだった。




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