……あの後。実際の戦いは僕は死んでいたので見ていないが、生き返った後、一人空を飛んでいた宇佐見に事情聴取をしたところ、マミゾウさんに宇佐見は勝利したらしい。

 いや、勝利したのはまだいい。宇佐見の実力の程は今ひとつ計れないが、僕が計れないレベルの超能力者だということはわかる。状況によっては、マミゾウさんに勝てる目もあるのだろう。

 しかし、宇佐見の『楽勝だったわ』の言葉には違和感しかない。
 あのマミゾウさんを雑魚扱いできるほどぶっ飛んだ実力は流石にないはずだ。

 と、すると、マミゾウさんがわざと手を抜いたに違いないのだが、

「うーむ」

 結局、そのことを指摘することなく、昨日は宇佐見とは別れた。
 ……何故かと言うと、ポケットにいつの間にかメッセージが書かれた木の葉が紛れ込んでいたのだ。間違いなく、僕がマミゾウさんにブッ殺されたあの時に忍ばせられたのだろう。

 曰く、『余計なことを抜かして邪魔したら、本気で喰うぞ』らしい。

「はぁ……」

 トボトボと、仕事を終えて帰路につきながら、昨日のことを思い出して、僕は一つ大きく溜息をつく。

 まあ、だいたい分かる。宇佐見は、マミゾウさんに勝利した結果、戦利品として幻想郷のパワーストーンを受け取り、それでオカルトボールを作るらしい。
 それを使うと、幻想郷に行けるという触れ込みだが……多分、そのパワーストーンを渡すこと自体がマミゾウさんの狙いなのだろう。

 変なことに遭遇した経験ならば、僕はそこそこのものがある。マミゾウさんの警告と合わせて考えてみれば、なんとなく推測くらいは付く。
 マミゾウさんの、悪いようにはしない、という言葉を信じて、口を噤んだ形だ。

「…………」

 でも、やっぱちょっと心配だ。
 どれ、様子くらいは伺っておこうか、と僕は帰路の足を一旦止めて携帯電話を取り出し、登録した宇佐見の電話番号にかける。
 今日は残業で時間的には遅くなってしまったが、まさか高校生にもなってこの時間に寝ているってことはないだろう。

 プルル、とややあって、宇佐見が出た。

『なに、せんせ。今取り込み中なんだけど』
「いや、昨日マミゾウさんからもらったっていうパワーストーンはどうしてるかな、と」
『そんなこと? 週末に幻想郷に行くため加工中よ。……ああ、なに? ちょっと、タイムよ、タイム。電話中なの。見てわかんない?』

 はて。

「すまん、誰かと一緒にいるところだったか」
『誰かっていうか、また幻想郷から来た人よ。今、戦っている最中』

 ……昨日の今日でかよ!?
 昨日別れる時、幻想郷から誰か来ても無視しろ、危ない奴は危ないから、と口を酸っぱくして警告したというのに!

「誰だ!? どんな奴だ!?」

 ロリ吸血鬼とか、胡散臭い隙間妖怪とか、鬼とか、そーゆー洒落にならん奴らじゃないだろうな!?

『なんか白髪で、サスペンダー付きの……もんぺっていうのかしら? そういう服着た人。なんか火とか出してくる』
「妹紅かよ!?」

 これは意外な人物が来た。
 こっちに来るためには幻想郷にバラ撒かれたオカルトボールとやらを集めないといけないらしい。まさか、あまり俗世のことに興味のない妹紅がそんなんを集めるとは。

『またせんせの知り合い?』
「そう! そいつは一応、話せばわかる奴だ。ここは大人しく話し合いで……」
『今良い所だから、また後でね』

 と、一方的に切られた。

 くっ、と周囲を見渡す。
 僕と同じような帰宅途中のサラリーマンや学生がたむろしており、まさかここから飛んで行く訳にはいかない。
 人目につかない……適当な公園か路地裏辺りまで行って――ああもう、放っておければいいんだが、万が一があるし。スルーしてなにかあったら寝覚め悪すぎるし!

 くっそ!































 そして、僕がおっとり刀で駆けつけた頃には、もう戦いは終わっていた。

 宇佐見と妹紅が双方ボロボロになりながら、妙にさわやかな笑顔で見つめ合っている。

 ……よかった。妹紅のやつ、蓬莱人だから死生観が斜め下である上、人間の命が非常に軽い時代を生き抜いてきた奴なので、いざやるとなったら割とガチなんだが、子供を焼き殺すほどぶっ飛んじゃいなかったか。

「割と楽しかったよ、お前。今度は幻想郷でやろうぜ……って、良也じゃないか」
「よう」

 別れの台詞を述べようとしていた妹紅がこちらに気付き、僕は手を上げて挨拶する。

「そっか。お前の住処はこっちだったな」
「忘れてたのかよ」
「そうは言うが、お前こっちに馴染みすぎだからな」

 ……そうだろうか。慣れたとは思うが、まだ幻想郷とこっちの常識の違いに戸惑うことが多いのだが。

「久し振りに外の世界に来たが、随分変わっていて驚いた。少し興味が出てきたから、今度幻想郷に来たらちょいと教えてくれよ」
「良いけど……珍しいな。お前が輝夜のこと以外で興味持つなんて」
「私はほとんど枯れた人間だが、別に好奇心が皆無ってわけじゃない。そりゃここまで変貌してりゃ、話の一つも聞きたくなるさ」

 すぅ、と妹紅の身体が透けていく。

「っと、ほんとにそろそろ時間みたいだ」
「? 幻想郷に帰るのか?」
「ああ。どうも、こっちに来れるのは時間制限付きらしい。少し位見物していきたかったがね。まあ、そっちの……」

 ちら、と妹紅が宇佐見を見る。

「菫子よ。宇佐見菫子」
「その菫子とやりあったのも、中々面白かったし、悪くなかった。まあ、今回も死ねなさそうだし、また来る機会もあるだろう」

 って、言いたいことだけ言って帰ろうとしているが、ちょっと待った! 僕からも、妹紅に言っておかないといけないことがある。
 こっちに来そうな奴がいたら止めてくれだとか、無理なら来そうな奴に心当たりはないかとか。

「妹紅、ちょっとストップ!」

 慌てて妹紅に近付いて、引き留めようとする。
 しかし、どうも別に妹紅の意志で帰還するわけではないらしい以上、止められない――

「…………ん?」
「……あれ?」

 かと思っていたが、僕が近付いた途端、今にも消えそうだった妹紅がはっきりとした実体を取り戻す。

 しばし僕も妹紅もぽかんとするが、

「……ああ、そうか。多分、お前の能力の範囲は幻想郷でも外の世界でもない変な場所扱いなんだ。だからバグってるんだな、うん」
「人の能力をバグ扱いしないでくれますかね!?」

 なんか、引き止められるらしいよ。


























 とりあえず、真っ先に先程考えたことを聞いてみた。

 『こっちに来そうな奴がいたら止めてくれ』→『断る』
 『来そうな奴に心当たりはないか』→『知らん』

 ハハハ、引き止めた意味ねえ〜。

「……もういいよ。僕の用は済んだから。帰るの邪魔して悪かったな」

 と、妹紅から離れようとすると、ガシッ、と肩を掴まれた。

「おいおい、寂しいこと言うなよ、良也。折角こんなところで会ったんだ。もう少し付き合えよ」
「……もしもし?」
「さっき言ったろ。出来るなら、見物くらいしたかったなって」

 こ、こいつ。僕の頼みごとはオールスルーの癖に、こっちには要求を通す気だ!

「せんせ、そちらの妹紅さんとやらとお出かけですか?」
「い、いや。僕はもう帰って酒呑んで寝る……」
「ああ、そうだ! 菫子だったな! 今日は楽しかったぜ」
「はあ。まあいいけど……せんせ、こんな夜更けに明らかに未成年の女性とデートなんて。いやはや、人は見た目によらないなー」

 なんかとんでもねぇ誤解をしつつ、宇佐見が去って行く。ちょっと待て! と言おうとしたが、ぐい、と妹紅に首の辺りをロックされて言葉が出せなかった。

「わかった、わかったから。とりあえず離せよ」
「おう」

 拘束を解かれて、はあ、と僕は溜息をつく。
 まあ、妹紅は割と付き合いやすい方であるし。なんだかんだで同類になった僕には気を使ってくれたりするし。

 外の世界の案内くらいは、別にいいか。

「とりあえず、降りるぞ。こっちじゃ空飛ぶ人間は基本的にいないんだから」
「ん? あの菫子はどうなんだ」
「あれは絶対に基本じゃないから」

 妹紅から離れないよう気を付けながら、近場の人通りの少ない公園に降り立つ。
 隠蔽の魔術は解除……と。

「ここは少し自然が残ってるなあ」
「ここらへんは結構都会だからな。田舎の方に行けば、緑はまだ残ってるぞ」
「へえ。しかし、改めて見ると高いなあ。あのへんの建物は貴族のお屋敷かなにかかい?」

 ズレた予想を立てる妹紅に、ビルのなんたるかを説明しつつ、とりあえず歩き始める。
 公園から出て、とりあえず物珍しいであろう繁華街に向かう。

 妹紅の格好は相当目立っているが……まあ、たまにコスプレして歩き回る人もいるし、奇異の目で見られるくらい妹紅は屁とも思っちゃいない。僕はちょっと居心地が悪いが、まあいいだろう。

「ほへー。こりゃまた、随分と明るい。昼間と変わらないじゃないか」

 街灯や店の明かりで照らされる道を、妹紅がおっかなびっくり歩く。

「おい、良也。この人の多さはどういうことだ。夜だってのに、往年の藤原京より多いぞ。今日は祭りかなにかか?」
「落ち着け。昔に比べると、人もずっと増えてんだ。普通だ、普通」

 ていうか、飛鳥時代と比べられても困る。

 しかし、きょろきょろと周囲を見渡しながら落ち着かない様子で歩く妹紅は、どう見てもおのぼりさんである。いや、この場合はタイムスリッパーの方がニュアンス的に近いか。

「洋装が多いな」
「和服は今は普段着にしてる人は殆どいないなあ」
「おい、良也。あれはなんだ。平面に人が入ってるぞ」
「あれは広告用のテレビだ。遠見のまじないが掛かった鏡……のようなもんだ」
「ほう。じゃああの乗り物は? 馬も牛もいないのに走ってるぞ」
「自動車。動力はエンジンつって……特別な油を燃やしたりして、動かしてるんだ」

 矢次早に飛んで来る質問に、僕は答えていく。
 しかし、ここまで楽しそうにしている妹紅は本当に珍しい。

 と、そこで、ぐ〜、と僕の腹が鳴った。

「おいおい、下品だぞ、良也」
「いや、晩飯食ってないんだよ」
「お前は私と同じで、食わなくても大丈夫だろうに」
「いや、大丈夫じゃないな」

 そりゃ生きるだけならできるだろうが、飯が食えないと精神的に相当クる。
 最近になるまでほとんど食ってなかったという妹紅が平気だったのは、これはもう年季の差としか言いようがない。

「よし、そこらの飲み屋にでも入るか。こっちの酒も呑んでけよ」
「ゴチになる」
「今度、向こうで奢れよ」
「んじゃ、久し振りにどぶろくでも作ってみるか。私、一時期どぶろくにハマっててな。割と自信があるんだ」

 確か、以前竹細工も本職顔負けのを作ってたし、意外と多芸なやつである。

 そんな感想を抱きつつ、適当な店を探す。
 ……まあ、時間を掛けてもあれなので、手近なところに入った。妹紅がちょっと目立つし、屋内だと僕達の微妙な会話を聞きとがめられるかもしれないので、個室席のある店だ。

 迎えてくれた店員さんが、妹紅をちょっと訝しげに見るが、特に言及されることもなく席に案内される。
 妹紅、見た目成人していないように見えるが、まあ多少子供っぽい大人なんてよくいるので、酒を頼んでも突っ込まれたりしないだろう。店側も、クレームに繋がるようなことは余程じゃないと言わないだろうし。

 ……もしなんか言われたら、悪いけど暗示辺りで解決を図ろう。

「おい、良也、おい。この刺身盛り合わせを頼んでいいか? 海の魚なんて数百年振りなんだ」
「あー、好きに頼めよ。そんな高い店でもないし」
「よし。酒は……なんだ、酒は幻想郷とそう変わらないんだな」

 あれは幻想郷の酒の種類がおかしいだけです。なんでその他の文化は日本のものばっかりなのに、酒だけあんなに多種多様なんだ。

「あ、でも味は結構違うぞ。醸造技術が天地の差だから、並品のクオリティは段違いだ。麦酒とか、キンキンに冷えてて、味わいも……」
「いや、外の麦酒ならお前が何度か持ってきただろ。しかも、丁寧に魔法で冷やして」

 ……そうだった。

「ええい、とりあえず麦酒……生でいいな。こっちの居酒屋じゃ、最初に生中を頼むのが定番なんだ」
「そうなのか」
「まあ、酒自体苦手な人とか、別の酒が好きな人はその限りじゃないけど、特にこだわりがなければな」

 妹紅も異論はなさそうなので、店員さんを呼んで注文をすることにする。

「すみません、生中二つ、刺身の盛り合わせ一つ、煮込みと唐揚げ、だし巻き、たこわさ、枝豆、大根サラダ……ひとまず、以上でお願いします」

 かしこまりましたー、と元気よく返事をして復唱する店員さん。生中と枝豆、たこわさは待ち時間もなく、程なく運ばれてくる。

「ほれ、妹紅。乾杯」
「ああ、乾杯」

 グラスを打ち交わす澄んだ音が響き、ぐいっと生を半分ほど煽る。

 妹紅はジョッキの中身全てを一気に飲み干し、『ほぅ』と溜息をついた。

「……旨い」
「っていうか、はえーよ。すみません、生中……いや、生大を二つください」

 僕も残りを胃に流し込み、つまみに手を伸ばす。

「……うん、うん。タコか、これは。久し振りだな」
「あっちじゃ海のものは手に入らないからなあ。……考えてみれば、それであの食文化は割と謎だ」

 僕も、なま物はあんま持って行ったりしない。
 ならば、とたこわさは妹紅に譲り、僕は枝豆の攻略にかかる。

 運ばれてきた生大を味わいつつ、おかわりしつつ、続々と運ばれてくる注文の品を二人で食べ進める。

「……随分たくさん頼んだな」

 気付けばテーブルいっぱいに並べられた料理を見て、妹紅が呟く。

「そうか?」
「そうだよ。お前、自分が健啖家ってこと自覚したほうが良いぞ。普段はあんまり食わない私にはこの量はキツい」

 えー? この後、洋風の料理も味わってもらおうと思ったのに。ジャーマンポテトとか、ピザとか、アヒージョとか。

「ま、代わりに酒はたっぷりいただくよ。おい、すまないが、この焼酎くれ。水割り? いや、そのままでいい、そのままで」

 ちなみに妹紅、この時点で生中一杯、生大三杯を飲み干している。しかも、まだ全然余裕の様子。
 ……支払いの時はカードの出番になりそうだ。

「しかし……随分流行ってるな、この店」
「ああ、そうね。適当に入ったけど、当たりだったかな」

 酔客のゴキゲンな声がそこかしこから聞こえてくる。

「ここは、お偉方の集まるお店だろう? 随分と景気のいい話だ」
「……ん?」

 なんか微妙な勘違いを感じる。

「いや、最初に言ったろ。ここは安い店だって」
「そりゃお前は高給取りだろうからそうかもしれないが……」

 え?

「……いや、僕、同年代の中だとそこそこだけど、決してそれ以上じゃないぞ」

 裕福な私立高の教師とは言え、所詮僕はまだまだ新米の若造である。
 将来的にステップアップしたら結構増えるかもしれないが、今もらっている額はボリュームゾーンを抜けない。

「はあ? 教師……師範だろ? 若手でもそれなりにもらってそうなもんだが」
「いや……妹紅、お前の考えている教師と、今のこっちの教師は結構違う」

 どうも、学習できる環境がそもそも裕福な層の特権であり、知識階級が高級職だった頃の常識で固まっているらしい。
 丁寧に解説して、誤解を解いた。

「……そうなのか」
「そう」

 多少特殊ではあるが、教師も今は普通の職業と大して変わらない。

「つーことは、今食ってるこれも、別に特別なものじゃないってことか?」
「まあ」

 サラリーマンが飲み会に普通に使うお店だ。ザギンでシースーとか料亭とかと料金的に比べられるものではない。

「そっか……また、随分と裕福になったな、日本も」
「そうかね」
「そうさ。幻想郷も、食べ物は恵まれているけど、あそこだけ特別だと思ってた」

 妹紅が遠い目になる。
 千年を超える年月を生きているという妹紅は、当然いろいろあったんだろう。僕も、ちょっとした話は聞いているが、まあ深く詮索することでもない。

「こっちはさ。まあ、色々遊びも発達しててな。この後、ボーリングでも行くか?」
「んにゃ、遠慮するよ。十分、生きる気力をもらった」

 妹紅は運ばれた焼酎を、水か何かのように一口で呑み、おかわりを注文する。
 僕は注文を取った店員さんを呼び止めて、グラスじゃなくてボトルに変えてもらう。こいつはそれくらいは呑む。

 運ばれてきたボトルの中身を、妹紅のグラスに注いでやる。

「昔とは比べもんにならんくらい発達した町並みに、珍しい食いもん。これも、時間が経てば幻想郷に来るだろう? そんときまで、長生きしてみる気になったさ」
「そうか」
「やれやれ、死ねるかと思ってオカルトボールを集めたのに、なんか妙なことになったね」

 そんな理由で集めてたのか、こいつ。

「あのなあ。死ぬとか、簡単に言うなよ」
「簡単じゃないさ。私が昔、どれだけ悩んだと思ってる」

 いや、それを言われるとぐうの音も出ないが。

「その。妹紅はそうでもさ。僕としては、知り合いがいなくなるのは寂しいから。もうちょい、頑張って欲しいなー、と思ったりするわけだ」
「……ふん」

 妹紅は嘆息してから焼酎を煽り、無言でグラスを差し出す。僕も無言で酌をする。

 しばらく淡々と呑んだ後、『まあ』と、妹紅は酒臭い息とともに吐き出して、

「仕方ないから、お前が別れに慣れるまでくらいは付き合ってやるさ。どーせ死に方もわからないしな」
「おう、ありがとう」

 妹紅に酌をして、焼酎ボトルをもう一つ注文し。

 なんやかんや、妹紅との奇妙な飲み会は、それから三時間ほど続いた。










 ちなみに翌日。朝の職員室にて。

「ちょ、土樹先生? 顔色悪いですよ?」
「……大丈夫です。ちょっと二日酔いで頭痛いだけで。今日、二時間目からだから、それまでには回復します」
「まったく、酒を呑むなとは言いませんが、生徒たちに示しが付かないので、次の日に残らない程度にしてください」
「すみません。ちょっと珍しい友達と会って……飲み過ぎて」
「……土樹先生、飲み会じゃ相当ザルじゃないですか。どんだけ呑んだんです?」
「確か麦酒を四、五杯呑んだ後、二人で焼酎のボトルが……十本はいかなかったと思うんですが」

 この後、無茶苦茶お説教を食らった。
 ……しまった、七割は相方の妹紅が呑んだことを言っておけばよかった。



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