白雪姫はきれいな、やさしい、お姫様。
意地悪な継母は次から次へと仕事をさせます。そうじ、洗濯、床磨き。
「どーして私が継母で、ライルがお姫様なのよ!!」
「それは僕も聞きたい」
普通だと面白くないでしょう。
とにかく、そんな日々が続きました。
『白雪姫』で行こう!
継母は、魔法の鏡に聞きます。
「鏡よ鏡。世界でいちばん美しいのは誰?」
背中に薄い羽根をはやした鏡(兼風)の精霊は言いました。
「少なくともあんたじゃないわね」
継母は怒ります。
「ちょっと!!ちゃんと役しなさいよ!」
「うるさいわね!どーして私がこんな地味な役なのか納得いかないわ!!」
鏡の精霊も配役に納得がいかないようです。しかし、それでは話が進みません。
ちゃんとしないと出場停止にしますよ。
「う……仕方ないわね。……それはお妃様です。お妃様が世界でいちばん美しいです!」
半ばやけになって鏡の精霊は言いました。
「ふふふ。当然ね」
しかし、ある日鏡に聞くと。
「鏡よ鏡。世界でいちばん美しいのは誰?」
「それは、マス……じゃなくて、白雪姫です」
悔しくてたまらないお妃は、狩人に言いつけました。
「森の奥で白雪姫を殺すんだよ。証拠に心臓を持ってきなさい」
元世界を救った勇者(友情出演)の狩人は白雪姫を連れて、森の奥へ入りました。
「で、どーしてルーファスさんがココに?」←本編主人公
「うむ。なんか本編だけじゃ役が足りないらしい。名前も覚えられてないようなキャラを出すくらいならこーしたほうがいいと作者が無理矢理出させたんだ」←外伝主人公
こうして交流を深めた主人公達。
そのルーファスに彼を殺すことなどできません。
「どうか、逃げてくださいお姫様。二度とお城へ戻っては行けません」
台本を見ながら言う狩人。
狩人はお姫様を逃がしました。
ひとりぼっちになった白雪姫は、歩いていきました。でもどこへ行ったらいいのでしょう。
「ああ、もう歩けない」
さすがのお姫様も一週間も歩きづめだとへばってしまうようです。
お城暮らしにあるまじきサバイバル技術で生き残ってきましたが、さすがに精神的にも肉体的にも限界です。
「あれ?」
疲れてへばっている白雪姫の目に小さな家が飛び込んできました。
お城ではお妃がにやりと笑っています。
その手に持っている箱には心臓が一つ入っていました。
狩人がとってきた動物の心臓です。
「白雪姫は死んだ。私が世界でいちばん美しいのね」
「ああ、それはないない」
余計なことを言った鏡の精霊に、ケンカキックを一つくれてやると、お妃は高らかに笑います。
心臓は偽物ですが、お妃は気付きません。
なぜなら、狩人がお妃に幻術をかけているから。類い希なる魔法の才能を持っている彼女にこうもたやすく幻術をかけられるあたり、さすがはヴァルハラ学園物語最強のキャラです。
「けっこうきついんだけどね」
その夜、お妃の笑い声がいつまでも響いていました。
さて、白雪姫が辿り着いた小さな家に住んでいたのは七人の小人達。
名前はそれぞれ、クリス、ソフィア、キース、アレン、グレイ、リム、フレイと言いました。
それぞれのコメント。
「まあ、こんな所か……」
「えーと、こんにちは」
「一応、忘れられてはいなかったみたいだな」
「俺、一応レギュラーなのに……」
「納得いかーん!」
「ま、出れただけでよしとしときますか」
「何で俺が……」
いろいろ複雑な感情があるみたいですが、そんなことは気にせず、ソフィアさんが白雪姫に言いました。
「私たちと一緒に暮らしましょう」
「ありがとう小人さん達」
次の日から白雪姫は小人達のために楽しく働きました。
そうじをして、洗濯もして、料理も作ります。一人暮らしの頃の経験を生かして、狩りもすれば畑も耕します。
「どうして、こうこき使われるんだろう……」
小人達の半分が手伝わないのには納得がいかないようですが。
さて、お城の様子を見てみましょう。
「鏡よ鏡。世界でいちばん美しいのは誰?」
お妃は鏡に尋ねます。
「いつもセリフが変わり映えしないわね……それは白雪姫ですよ」
お妃は怒り狂いました。
狩人はうそをついたのです。しかし、危険を察した狩人はすでに自分の時代に帰ったあとでした。(一応、本編のお話だからね。精霊王はでてきても、ルーファスたちは本来いないのさ)
とりあえず、お妃は白雪姫を抹殺する方法を考えます。
他人は信用できない。殺るなら自分の手で確実に。
厄介なことに、お妃はただのお妃ではありません。かなりの実力を持った魔法使いでもあるのです。
「よし!これで行こう!!」
お妃の口に邪悪な笑みが浮かびます。
お妃は研究室に一つのりんごを持ち込みました。
「ふふふ……こいつに呪いをかけてライルのやつに食わせれば……」
呪い自体はうまくいきました。しかし、お妃はまだ納得いかないようです。
「どうせならもっとおいしそうなほうが食べさせやすいわね」
これは名案と、お妃はそのりんごを使ってアップルパイを作ろうとしました。
城の者は必死でお妃を止めようとします。
「お妃様!!おやめ下さい!!冗談じゃなく、死にます!!」
出所がないので、ここで兵士として働いている大地の精霊王、ガイアさんも死に物狂いです。
彼は、お妃の料理をつまみ食いして、死にかけたという痛い過去を持つのです。
「うるさいわね!!殺そうとしてんのよ!!」
「……………」
同じく、闇の精霊王、カオスさんも無口なりに止めようとしますが、お妃のパワーに二人とも敵いませんでした。
2時間後、見るからにおどろおどろしいアップルパイが完成したとき、城中の人は逃げ出したそうです。
「ふふふ……待ってなさいよ〜〜」
白雪姫には面が割れているので、おばあさんの格好に変装したお妃が小人達の家に行きます。
小人達の家につくとノックをします。
コン、ココン。
「はーい」
今、小人達はみんなで遊びに出かけているので、一人で留守番をしていた白雪姫がのこのことでてきました。
「かわいいお嬢さん。アップルパイでも食べませんか」
いきなりそう言うおばあさんを怪しみ、白雪姫はじろじろと見ます。
「……やです」
「いいから食べなさい。自信作なんだから」
そう言って、おばあさんに化けたお妃はアップルパイを取り出しました。
「うっ」
どす黒いオーラの漂っているアップルパイに思わず引いてしまう白雪姫。
「ちょ、ちょっとルナ。それは台本とかなり違うような……」
ずりずりと、間合いを取ろうとする白雪姫。
まあ、呪いとかまったく関係なしに食べたら死んでしまいそうなので当然です。
「いいから食べなさいよ!!」
お妃は、白雪姫の口を無理矢理開けると、手に持ったアップルパイを一切れねじ込みました。
「ぎゃー!!!?」
哀れ、白雪姫は死にはしなかったものの、生死の境を彷徨って寝込むことになりました。
帰ってきた小人達は白雪姫の様子を見て愕然とします。
「「「「「「「な、なにがあったんだろう(でしょう)」」」」」」」
すでに顔色が悪いとかを通り越して死相が出ている白雪姫の顔色を見て一同はそんな声を上げました。
「と、とにかく予定通り棺桶(?)につめよう」
アレンの言葉によって、白雪姫は花をいっぱいにつめた棺桶に入れられました。
とりあえず、白雪姫は死んだ者として認識されたようです。
「そういや、王子様役は誰なんだ?」
火の精霊王も兼任している小人、フレイは呟きました。
「さあ?あとでていない人と言ったら……」
噂では某国の王子様らしいクリスがあたりを見渡します。
そんなとき、むこうから白馬に乗った王子さまがやってきました。
「おお!なんという美しい……って、どうしたんですか?なんだかこの人、真面目に死んでますよ?」
なんと、王子様はそれはそれは美しい青い髪を持った水の精霊王でした。
あまりに悲惨な白雪姫の状況に、さすがに目を背けます。
「と、とにかく台本通りに話を進めましょう。えーと、キスをするんでしたね」
そう言いつつ、顔を白雪姫に近付けていきました。
しかし、それを止める者がいました。フレイさんです。
「ちょーっと待て!そんなことは俺が認めん!」
「なんでですか?」
「うっ!それは……その」
なんと、小人のフレイさんは王子様に一目惚れしてしまったようです。
「そんなやつに口づけなんぞしたら王子もとんでもないことになりそうだろう?」
例のアップルパイの影響で、白雪姫の口からはとっても体に悪そうなガスが出ていたのです。
「そ、それもそうですね」
あんまり洒落にならないので、王子様もあっさり引き下がりました。
そして、白雪姫はそのままご臨終してしまいました。
お妃は、それからも自分より美しいと鏡が予言した者には自称、アップルパイを食べさせたそうです。
それ以後、ルナお妃は「恐怖!りんごの魔女」として、後々の世にまで恐怖を振りまきました。
なんでも、監督のジュディさんは、生徒の死をどう隠蔽しようかと四苦八苦したそうです。
………………本気にしないでね