放課後、いつものように英文学部――通称、オカルト部の監督をするため、文化棟の部室に向かった。一応、これも実習のうち。サボることはできない。 ぽけーっと、部室にある適当な本(英語だ)を流し読みしながら、他のメンバーの様子を伺う。 「…………ふむ」 一際真剣な目で、辞書片手に魔導書を読み解いているのは、部長の西園寺。彼女は、知識だけはあるのだが、霊力とかそういうのがないため、魔法は使えない。……今後とも、使わないよう、言い含めておかなくては。 「ふんふーん♪」 んで、こっちの軽いのが藤崎。彼女が読んでいるのは、普通の乙女チックな占いの本だ。どうも、彼女は『英文学』の冠のついた部に所属している癖に、ああいう本しか読んでいないらしい。 ……まあ、話によると、部員の少ないこの部を存続させるために、西園寺が適当に目についた彼女を無理矢理引っ張ってきたというのだから、それもむべなるかな。 そして―― 「…………」 「な、なあ高宮」 「はい?」 英和辞書と本を必死で見比べていた高宮に声をかける。……彼女は、多分この部で一番『らしい』活動をしているのだけど、その、なんだ。 「あ、土樹先生。ここの文法なんですけど……」 「え? ああ、そこは――」 質問され、答える。 一応、僕は英語教師の卵なので。 「なるほど。ありがとうございます」 「いや、別に構わないけど、高宮?」 声をかけるが、既に高宮は本の世界に没頭していた。 邪魔するのもなんだか引けて、僕はそこで注意をするのを諦めた。 ……どうも、彼女の位置が近い。 いや、それほど広くない部室の中に、本棚やら見るからに妖しげな魔法グッズやらがところ狭しと並べてあるのだから、物理的に仕方ない面もあるのだけど、それでも高宮の座っている位置は僕に近すぎる。 所謂、パーソナルスペースというのが、なんか大分近くに設定されているっぽい。 どうしたもんかね。 「あ、師匠」 「師匠はやめろ」 西園寺が声をかけてきた。……彼女は、以前の悪魔召喚の一件から、僕のことを師匠などと呼ぶようになっていた。 休み時間にも弾に来て『師匠、師匠』と言うものだから、僕は一体なんの達人かと噂されてしまっている。 ……ぶっちゃけ困る。 「この、サラマンダーについてなんですが」 「そこは――」 しかも、彼女の聞いてくることがなまじわかってしまうものだから、教師としては答えてやらなければならない。そうすると、ますます彼女は僕を師匠視して……という悪循環だ。 っていうか、西園寺の興味のある分野が僕の習得しているカテゴリと被りすぎなんだよねえ。 「つっちーせんせが来てから、気が楽になったねえ」 「……なんのことだ、藤崎」 「いや、だってさ。前なら、わからないことがあると西園寺先輩ってば、ぶつぶつとなんか不気味なことを呟きながら、考えることに没頭してたんだもん。あれは気持ち悪かったよ」 「気持ち悪いとは失礼な」 西園寺が憮然として眼鏡をくいっと直し、藤崎を睨む。タハハ、と誤魔化すような藤崎は笑った。 ……なんかこの二人の力関係はよくわからん。 「ああ、お前ら。そろそろ下校時間だ。帰る準備をしろ」 「もう少し待ってください。この章だけ読み込んで……」 「駄目だ。家でやれ」 僕はこの後も仕事があるのだ。下校時間を超過されても困る。それに、彼女達は全員車の迎えがあるはず。あんまり遅いと、運転手さんを待たせてしまうし。 「まあ、いいじゃん、先輩。これから買い物行くんだし」 「……そうですね」 ん? 「買い物に行くのか?」 「そうだよん。部員の親睦を深めようって、三人でねー」 ふむ……まあ、あまり遅くならないなら、僕が口を出すことでもないか。 「まあ、あんまり繁華街の方とかには近寄らないようにな」 「およ? せんせ、自分が行っておいて、その説教は説得力がないにゃ〜」 ぐっ。痛いところを。 ……先週の土曜日、べろんべろんに酔っ払って、高宮さんと杵島先生とで勢いから繁華街に繰り出し、繰り出したところで力尽きて杵島先生にタクシーで送ってもらったんだけど、それが生徒に目撃されていたのだ。 それを新聞部にスッパ抜かれ、『教育実習生、夜の繁華街へ!?』なんてセンセーショナルな見出しの記事にされたもんだから、さあ大変。 僕と杵島先生は教頭に呼び出され『業務時間外とは言え、この学園の教師らしい行動をしやがれ』的なお説教を受け、生徒達にもからかわれ、どんなとこだったのー? とか聞かれ、散々な思いをした。 「あれは、酔っていたからな……」 「言い訳、言い訳ー」 うるせい。 「あ、あの」 「うん? なんだ、高宮」 藤崎相手には分が悪いので、高宮が話しかけてくれたことをこれ幸いにと、向き合った。 「先生も、一緒に行きませんか? その、西園寺先輩は、魔法の道具も買いたいそうなので、一緒に来てくれると、その」 「お、高宮ちゃんがいったぁ」 藤崎がなんだか騒いでいるが、よくわからないので無視する。 しかしなあ、誘ってもらってありがたいんだけど、 「うーん、僕はこれから仕事あるし、三人だけで楽しんできな」 この後、安藤先生に今日一日の報告とかしなくちゃいけない。まあ、すぐ終わるので、その後付き合うことは出来なくないけど……でも、やっぱり放課後に生徒と一緒にいるのは、ちとマズい。 「あ……そうですよね」 「なんだよー、現役女子高生の誘いを断るって、それでもつっちーせんせは男かー?」 やかましいのだよ、藤崎。 しかし……高宮もかなり残念そうにしているな。……心が痛む。 「ま、まあ。またの機会にな」 背の低い高宮の頭をぽんぽんした。……うーむ、直接接触も本当はよくないんだけどな。 「は、はい」 「おおっと、今度は撫で撫でだぁ!」 「やかましいわっ」 ……うーん、まるでどっかの主人公みたいなことをしているな。 んで、三人娘を見送って、安藤先生に今日の業務の報告。他に特にすることもないので、さあ帰るか、と校門に向かっていたら、 「せんせっ! 大変、大変!」 つい二十分か三十分ほど前に分かれた藤崎と……後ろに大分遅れて西園寺が、血相を変えて走ってきた。 「ど、どうした?」 「高宮ちゃんが誘拐された!」 ……は? 融解? 幽界? って、どういう意味? 「あ、愉快?」 「誘拐だよ、誘拐っ! 変な連中が、高宮ちゃんを車に押し込めて、連れてったっ!」 ……誘拐!??!! 「ちょっ!? な、なんでそんなことが!?」 「高宮さんの家はお金持ちですし、家の格も高いですからね」 ……って、そうだったっ! そりゃ、誘拐犯にとってはおいしい獲物だよっ! い、いやいや、待て。 「お前ら、駅の方に行ったんだろ? あんな人通りの多いところでどうやって!?」 時刻は夕方。学校帰りや、仕事帰りの人間でごった返す時間だ。ここから駅までの道の中に、人一人を攫えるような場所はない、はず。 「それが、おかしかったんだよ。周りに人はたくさんいたんだけど、誰も高宮ちゃんが誘拐されることに気が付かなかったみたいで」 「はい。ことが起きる前に、鈴の音のようなものが聞こえました。恐らく意識を逸らす魔術の類かと」 あ、相手は魔法使い? いや、確かに高宮は前にも呪術師に呪いをかけられていたくらいだから、そういうこともありえるかも……。 「ま、まずは警察……いやっ、高宮さんちに連絡を――!」 あそこのお爺さんの人脈にかかれば、誘拐程度簡単に解決するはず。自分とこの私設部隊まで持っている、どこかの漫画の世界の金持ちだからっ。 「そんなの、待ってらんないよっ! こうしている間にも、高宮ちゃんは誘拐犯にエロエロなことを……」 「不謹慎な冗談はやめろぉ!」 あながち、ありえないとも言い切れないから怖い。そんなことになったら、高宮さんはもちろん、僕だってぶち切れるぞ。 「師匠。貴方の力で、なんとかなりませんか?」 「僕の力?」 ……う、うーん。あんまり、魔法を使ったりはしたくないんだけど。でも、相手もそっち系らしいし、何より教え子のピンチ。 仕方ない、か。 「とりあえず、高宮の実家に連絡を頼む。電話番号わかるか?」 「あ、はい」 西園寺が頷いて、携帯電話を取り出した。 ……その間に、財布から五円玉を取り出し、ワイシャツのボタンを留めている糸を解く。 そして、鞄から街の地図も取り出した。……この学園のある辺りの地理がよくわからないからって、買っといてよかった。 「……よし」 「せんせ、それって」 「これくらい知っているだろ。ダウジングだ」 糸の先に五円玉。 誰でも使える、簡便な魔術の一つだ。 モノホンの魔法使いが使えば、それなりの精度で探索とかが出来る。 「能力は解除、と」 この手の魔法を使うのに、僕の能力は障害にしかならない。普段は無意識に発動しているそれを、意識的に解除して、地図の上に五円玉を揺らす。 「わ、わかるの? それで」 「まあ、任せろ、藤崎」 路上で誘拐されたんだったら、まだ十分くらいしか経っていない筈。ここから十分圏内……っていうと、 「発見」 「早っ」 藤崎が小さく驚きの声を上げる。 僕はというと、地図上の一点を凝視していた。 「ん……ここって、なにかわかるか?」 地図上に、建物をあらわす四角があるだけで、なんの建物かが書いていない。けっこう広い敷地があるから、マンションとかじゃないと思うんだけど。 「あ……そこって、この間閉鎖になったなんかの工場だよ」 「廃工場ね……」 ベッタベタだな、と不謹慎だとわかってはいるが、思った。 「師匠、高宮さんの実家に連絡がつきました。かなり怒っていて、すぐに取り戻すと言っています。先ほどの場所も伝えましたが……」 「……まあ、一応、僕も行くか」 僕の出番はない気がするけど。 訂正。どうにも、僕の出番は一応あったようだ。 「良也さん。それと、栞の友人さんたち。どうも、連絡をありがとう」 「……いや、いいんですけど。これ、どうしたんですか」 屈強な男が二十人ばかし、なんか怪しい装備をして佇んでいる。おいおい、ここ日本だよな? と聞きたくなるほどの物々しい感じ。 懐からチラっと見えているのは……見てない見てない、僕は黒光りするナニカなんて見ていないぞ。 「スゲー、拳銃だ」 藤崎、僕は見ていないことにするって言っただろうが! とりあえず、それは聞かなかったことにして、高宮さんに向き直る。 「連絡を受けて、仕事を抜け出してすぐ来たんだが……。なぜか、ここから先に進めない」 この先は、人家も殆どない、都市の中でぽつんと忘れ去られたような一角。 ……特に、バリケードなんかもないように見えるけど。 「結界、か」 霊視すると、なにか薄いベールのようなものが、この一角を覆っているのがわかった。 「魔法か……そういえば、西園寺さん、だったかな? そこの子もそのようなことを言っていたが」 「多分、人払いの結界でしょうね。ねえ、師匠?」 「まあ、そうだろうな」 良くある、ポピュラーな結界だ。物理的な作用はないけれど、人の無意識に干渉して『前に進めなくする』。 魔法に対する抵抗力があれば、潜り抜けることも可能だけど……フツー無理だよな。 「なんとかなるかね?」 「結界を解けるか、っていうと、無理ですね。術者を叩かないと」 外側から相手の魔法に干渉して無効化する、みたいなことは、ちょっと難しい。多分、この結界を張った相手は、中にいるんだろうし…… 「良也さん、どうにかならないか? まだ、誘拐犯たちはこちらが気付いていることは知らないし、まだ連絡をしていない状態で不用意に人質を傷つけるとは思えないが」 「……えーと」 高宮さんの顔は、あからさまに焦燥が現れている。孫娘が誘拐されているのだから、当然だろう。 連中の目的は、多分お金だろうが、身代金を要求する前に『なにか』をする可能性は否定できない。 ……仕方ないかあ。 「はあ……。僕が一人で突貫します」 「ひ、一人で!? それは無茶だ。中には何人いるかもわからないし、武器も持っているかも」 「多分、大丈夫です」 結界を解くことは出来ないけど、張るために使ってある力は全然大したことがない。術者のほうは特に問題はないだろう。 銃とか持っていたら、はっきり言ってヤバいけど……。 「……とりあえず、うまくいったらまたあの料亭で奢ってください。美味かったんで」 「え?」 軽く、宙に浮く。 高宮が捕らえられている工場は、ここから五十メートル先。 ダウジングで、大まかな位置は判明しているので、窓を突き破って建物内部にエントリー。即奪還。 問題は、多分この結界が侵入者を感知する仕掛けをしているってことだけど。 「……全速力で、何秒かかるかね」 しかし、異常を察して行動する前に着けばいい話だ。 僕の最高時速+時間加速三倍で突っ込めば、数秒で着く。 「じゃ、行ってきます」 軽く手を上げて、僕は全速力で路上を飛んだ。 時間間隔が引き伸ばされた状態で、ぐんぐんと件の廃工場が近付いていく。 三倍のスピードで通り過ぎていく風景を尻目に、僕は身体強度を強化。 廃工場の上部に位置する窓にぶち当たる寸前、拳をぐっ、と握り、 「っっっっしゃああぁ!」 硝子の破片が腕を浅く傷つけるのも厭わず、突っ込んでいった。 すぐさま下を見下ろし、三人の男と、それに囲まれるように座らされている高宮を発見する。 「ふっ」 更に加速して、高宮の前に着地。男たちと相対する位置に立った。 「先、生?」 「逃げるぞっ」 時間操作は精神的にかなり疲れる。限界だったので解いて、高宮を抱えた。 「な、何者だお前!」 「秘密だっ!」 律儀に答えて、高宮を抱えて飛―― パァンッ! と、ドラマやなにやらでよく聞く音に、思考が遮られた。 「がっ!」 足を押さえて、転げまわった。当然、飛び立つことも出来ず、高宮を放してしまう。 「先生、先生!?」 「ふぅ……飛行術を身に着けているとは。中々高位の術者らしいな」 つつつ……ええい、足が撃ち抜かれてる。痛みにはかなり慣れている方だけど、正直悲鳴を上げないだけが精一杯。 「私の結界を突破するとは。……大方、高宮家お抱えの術師、というところか」 「ま、まあ、そんなところ」 親分格と思われる、陰陽師風の格好をした男が銃を油断なく構えて一歩近付いてくる。 く、くそっ、お前陰陽師の癖に、なにそんな近代兵器使っているんだよっ! 「ふむ……もしや、以前私の呪術を解いたのもお前か?」 「って、あの呪いか」 ああ、確かにあれは陰陽系だったな。 ってことは、この人が、あの時高宮に呪いをかけていた呪術師ってことね。 「やはりそうか。これで私の溜飲も下げられるというもの」 「……じゅ、呪術の恨みは呪術で晴らすのが筋だと思うんですが」 なんとか時間を稼ぐために、会話して引き伸ばそうとする。 「成る程。それもそうか。……おい」 陰陽師が隣の男に命令すると、彼も懐から拳銃を取り出す。 「い、言っていることとやっていることが違うっ!」 「何を言う。彼は私の式神でね。立派に陰陽術の一つだ」 式神!? そ、そうか、それなら――って、納得できるか! 銃使わせてるじゃんっ! 「先生、逃げてください!」 「に、逃げられないなあ」 流石に、拳銃の弾を弾幕みたいに躱すことはできないし。それに、下手に動くと高宮の方が撃たれるかもしれない。 「……ふっ!」 霊弾を撃つ。逃げ場のないくらいの飽和攻撃。一つ一つは僕の全力パンチくらいの威力だけど、人間相手なら十分だ。 「遅い」 しかし、またしても空を引き裂くような銃声が、遮った。 霊弾の一つを貫通して飛び込んできた銃弾は、僕の胸を穿ち、 「終わりだ。……これだけの霊気を飛ばすとは。術では貴様が上だったな。しかし、生憎現代戦はそれだけでは勝てない」 「がふっ」 血を吐いた。 恐る恐る下を見ると、左胸……心臓のところから、じわ〜っと血が流れている。 僕が死んだことで霊弾も掻き消えている。 畜……生…… ばたっ、と倒れた。 「い、いやぁ」 悲鳴も上げられないのか、高宮が力のない声を上げた。……ああ、これこれ、そんな普通の反応されたらこっちも困る。 「さて……高宮家には感付かれているか。他の術師を呼ばれても面倒だな……移動するか」 カッカッ、と陰陽師が高宮に近付いていくのがわかる。 もうちょい、 「ふん」 がっ、と僕の頭が蹴られた。……し、死人になんてことしやがる。 「私に歯向かうからだ。地獄に落ちろ」 「生憎、地獄跡には知り合いしかいない」 がしっ、と足を掴む。 「な――!」 「遅い」 研ぎ澄ませた一発の霊弾を、驚愕の表情で拳銃を抜こうとした陰陽師に放つ。 顎を撃ち抜かれた彼は、そのまま背後にぶっ倒れた。 「ったく……一回死んだぞ」 式神の男二人は……ああ、術師が意識をなくしたら、停止したか。結界も解けてるな。 「あ、あれ? 先生?」 「さて……銃は物騒だから、取り上げとこう」 陰陽師のと、式神の。……ああ、もう片方のは持ってないか。計二丁ね。 銃は格好いいからこっそり着服したいけど、止めといた方がいいかな。 「先生っ」 「わっぷ」 緊張が取れたのか、高宮が抱きついてきた。……うーん、どこかのドラマのワンシーンみたいで大変よろしいんだけど、くっついたら血が着くぞ。まだ服にこびりついてるし。 「まあ、とっとと高宮さん……お爺さんの所へ行くぞ。ここのは、あの人たちに任せるから」 「あ、はい」 と、二人して廃工場を去ろうとしたその時、 「ふ、ざけるなぁ!」 ……はあ、やれやれ。 「まだやんの?」 きっちり顎を撃ち抜いたはずなのに、タフだなあ…… 「ふざ、ふざ、ふざけるな」 「……呂律回ってないし、立ってるのがやっとだろうに」 僕はどんなに傷ついてもすぐに治るのに対し、普通の人間はそうは行かない。フェアじゃないんだから、あんまり人間を傷つけたくないんだよなあ。 いや、個人的に凄くムカついているけど。 「はあっ!」 陰陽師の人が霊弾を放ってくる。……でも、呪術がメインの彼の霊弾はどう考えても威力不足だ。それに、数も弾幕というほどではない。 能力の『壁』のみで全部防ぎきってしまう。 銃取り上げといてよかった。拳銃の弾は流石に防げないし。 「……はあ」 ぴっ、と懐から一枚のスペルカードを取り出す。 「なん、なんだそれは」 「水符」 ピッ、とスペルカードを弾く。一応、水符なのは手加減だ。物理的には一番威力が弱いし。 「『アクアウンディネ』」 がぁぁ! という悲鳴を背景に、僕は彼に背を向けて歩き出した。……やれやれ、終わったか。 んで、例の陰陽師は、高宮さんが捕まえて、念入りに『お話』したそうな。 怖い、怖いよ、金持ち。 | ||
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