『世紀の歌姫、ツアーのスタートは、日本の海鳴市』 朝方。出勤の準備をしていると、つけっぱなしだったテレビがそんなニュースを流していた。 「へえ〜、ティオレさん、こっちに来るんだ」 僕は、ネクタイを締める手を止め、テレビに見入る。 ティオレ・クリステラさん。 いつぞやのボディガードの件でお世話になった……お世話した? クリステラ議員の奥さんであり、そして歌手としては世界でも指折りの有名人である。なんでも全盛期のファン数は、かのビート○ズに匹敵するとまで言われたとかなんとか。 なんでそんな人と知り合いなのかというと、フィアッセやクリステラ議員と共に日本に遊びに来たことがあり、高町さんちに滞在していた頃何度か顔を合わせたことがあるからだ。 ティオレさんは現在、クリステラソングスクールという歌手のための学校を経営していて、後進の育成に集中しているらしい。 なお、さざなみ寮のゆうひも、ここの卒業生だ。今はテレビで見かけない日はないほどの売れっ子になっているのだが、たまにさざなみ寮に帰ってくると、学生時代と変わらんテンションで騒いでいるので、あんまり有名人って感覚はない。 まあ、それはともかく。 ニュースを聞くに、収益を医療に恵まれない人たちへの募金にする、世界一周のチャリティ・コンサートを開催するらしい。 それも、クリステラソングスクールの卒業生が一同に会して。 ……確か、クリステラの卒業生っつーと、ハリウッドスターとかをはじめ、世界の芸能界を代表する人がたくさんいるんだよな。 収益全部寄付って……気前がいいってレベルじゃねーぞ。 「うーん」 音楽はアニソンと友達のよしみでCDを買ってるゆうひ@SEENAの曲くらいしか聞かないのだが、これはちょっと興味あるなあ。 ……ってか、うん。買っておこうかな。 「っと、遅刻遅刻」 次のニュースに移ったあたりで、時計が危うい時間を指した。 僕は慌ててネクタイを締めると、鞄を持って出かけるのだった。 うっかり、である。 ティオレさんのコンサート、僕も見に行こうと思っていたのだが、チケットを買うのをすっかり忘れていた。 流石は世界中の注目が集まるコンサートの初日である。チケットが販売開始して、三日後に気付いたのだが、とっくに完売だった。 海鳴の次は、東京、大阪、名古屋と、コンサートは続く。しかし、なんとか足を伸ばせそうな東京分も完売。まだチケットが販売していない大阪や名古屋のコンサートは、ちょっと遠すぎる。その後は海外に行ってしまうし、何をか言わんやだ。 確かにティオレさんは顔見知りではあるが、その程度でチケットを無心するのもどうかと思うし、 とか思っていたんだ。 時に、僕はよくポストの確認を忘れる。 手紙なんてレトロな手段で連絡を取る友達はいないし、入っているのは大抵ダイレクトメールばっかりだからだ。他は光熱費の通知くらいだし、別にいっかー、と一、二週間くらい放置することはしょっちゅうだ。 ……んで、今日開けてみると、十数通のダイレクトメールに混じって、エアメールが届いていた。 差出人はフィアッセとティオレさんの連名。もしかして、と思い開けてみると、時節の挨拶から日本でコンサートを開くことが書いてあり、そしてそのコンサートのチケットが同梱されていた。 場所は特等席で、出すトコに出せば多分十万は越える。いや、もちろん売ったりはしないけど。 「ってことがあったんですよ」 「はは、間抜けな話だな」 月一で通ってる翠屋にて、そう話すと、高町さんに笑われてしまった。 「ま、コンサートにはうちもお呼ばれしてるけどな」 「そりゃそうでしょう。海鳴が初日なのも、高町さんのところに見て欲しいからじゃないですか?」 いや、英国を本拠地とするクリステラソングスクールのコンサートツアーの初日が日本、それも首都の東京じゃなくて海鳴だってことには、ネットの掲示板とかでも物議を醸しているのだ。 「まあ、それもあるかもしれないけどな。なんでも、ソングスクールの子には海鳴に愛着がある子が多いらしいぞ」 「ゆうひと、フィアッセくらいじゃ?」 「その二人の縁で、ここに来たことある人多いらしいんだよな」 ……なんだろう、どこにでもある地方都市のはずなのに。 海鳴市って、局所的に有名人や変な人が集まり過ぎじゃないか? それとも、僕が気付いていないだけで、どこもこんなもんなのか? 「まあ、うちは家族一同、揃ってお邪魔する予定だ。良也は、恋人とでも行くのか?」 「……わかってて言ってるでしょう」 彼女いない歴イコール年齢である。 今更、この歳になってまでリア充爆発しろ的なことは考えたりは(ちょっとしか)しないが、指摘されると流石に落ち込むぞ。 なお、フィアッセ辺りが気を利かせたのか、チケットは二枚入ってた。一枚はお詫びの言葉とともに丁重に送り返した。 「なんでだろうな。お前は、割と良い奴だと思うんだが」 「さー、なんででしょうねえ」 独り身も気楽だし、そこまで積極的に彼女欲しいとは思ってないしなあ。 まあ、たまーに寂しいと思うこともあったりなかったりするが、そういう時は友達と呑めば大抵どうでもよくなるし。 ……だからって、それをネタにからかわれるのは嫌だけど。 「奥さんがいるってのはいいぞ〜、うちの桃子はな」 「あ、それじゃそろそろ僕失礼するんで」 高町さんのノロケが始まりそうな気配を感じ、僕は立ち上がる。 「まあ待て」 ぐ、と腕を捕らえられた。 達人である高町さんの握力は、聞くところによるとこの年で八十キロを越えているらしい。力強く引き止められ、僕は動けない――とでも思うたか! 「い、え。あんまり長居するのも、なん……ですし」 霊力を体に巡らせ、高町さんに抵抗する。 し、しかし高町さん、本気で強いなっ。単純な力比べで、霊力持ちじゃない人と拮抗するとは思わなんだ。単純な筋力なら、強化した僕が上っぽいが、力の使い方に圧倒的な差がある。 ……力比べになってる理由はとてもアホ臭いが。 「なに。今は暇な時間だから、構わないぞ。それより、俺に桃子の可愛さを語らせろ」 ダメダメだこの人!? 「なのはの話でもいいぞ」 「……いや、あの、本気で、勘弁、してくれませんかね」 その話になると長いんだよ、アンタ! ギリギリギリ、といい大人二人が実にくだらない理由で引っ張り合う。……くっ、こうなったら今誰も見ていないみたいだし、テレポートで逃げ、 「おとーさん、ただいまー」 「お、なのは、おかえり」 ふっ、と娘の来店に高町さんの力が緩む。 「今、席に座っちゃって大丈夫?」 「おう、今は混んでないからいいぞ。飲み物とおやつも持ってきてやろう」 「ありがとう。あ、二人共、いいってー」 なのはちゃんの呼びかけに、更に二人の小学生が入店した。……あ、片方は知ってる顔だ。 「アリサちゃんとすずかちゃんも。いらっしゃい」 「お邪魔しまーす」 「お邪魔します」 先程までの大人気ない様子はなくして、にこやかに娘の友人に対応する高町さん。……はあ、疲れた。 「あれ、良也さん?」 「……やあ、すずかちゃん」 「良也さん、いらっしゃい」 「お邪魔してるよ、なのはちゃん」 顔見知りのちみっ子二人手を上げて応える。 「?? ええと」 「あ、アリサちゃん。ええと、良也さんはおとーさんの友達で」 「うちは……ええと、なんて言えばいいのかな。わたしが生まれた時から知ってる人なんだけど……ファリンの、主治医?」 おう、もう一人の金髪の子が戸惑っとる。後、すずかちゃん、その説明は微妙。 「近くの市で教師やってる、土樹です。こんにちは」 初対面の小学生に挨拶って、これでいいのかね? 「あ、こんにちは。アリサ・バニングスといいます」 ぺこり、とお辞儀をしてくれる少女。……礼儀正しい子だ。 「まあ、僕は丁度帰るところだったから。んじゃ、高町さん、これお代です」 「おう、丁度、確かに。それじゃ、今度のコンサートでな」 支払いを済ませ、翠屋を出て伸びをする。 さーて、今日はこの後、耕介と呑む約束だ。 コンサートの約一週間前。。 チケットをもらったというのに、お礼もしないのは不義理かと、僕は早めに海鳴に入ったというティオレさん、フィアッセ母娘に挨拶をしに、彼女たちが泊まっているというホテルにやって来た。 事前に電話でアポを取ったところ、快く了承してくれたんで、高級ホテルに尻込みしつつも、最上階のスイートルームに。 「え、え……?」 んで、部屋を訪れた僕が遭遇したのは、片膝をついている高町さんと、恭也、美由希ちゃん兄弟という高町家武闘派組と、それに対峙する妙齢の美人さんだった。 「は……? あの、これは一体どういう状況でせう?」 美人さんの手には、短めの刀……小太刀が握られており、ぴりぴりした殺気がその手の気配には鈍い僕にまで伝わってくる。 「……良也、下がってろ。なにもするなよ」 「た、高町さん、怪我……!」 よく見ると、高町さんは肩から血を流している。結構な出血だ。 にも関わらず、短刀を片手に、目の前の女性を逃がさんとばかりに厳しく睨みつけている。 そして、恭也と美由希ちゃんも、そんな高町さんをフォローする位置に陣取り、女性と対峙するように…… と、この辺りで、鈍い僕にもおおよその状況が掴めた。 ……要は、強盗かなにかだ、あの女の人。 あんな美人さんが……とも思うが、高町さんが怪我をしている。多分、洒落にならない達人なのだろう。 「三日、待ちます。……コンサートを中止しない場合、あなたや、あなたの娘さんの血を見ることになる。たかが歌を歌うことと、自分や子供の命。どちらが大切か、よくお考えになってください」 体を強張らせている高町家一同に対し、その女性はあくまで余裕を持って、ティオレさんにそう警告した。 え、ええと……くそ、頭がついていかねえ。 僕が固まっている間に、女性は自然に、しかし恐ろしいほど隙のない歩き方で、入口側にいる僕や高町さんの隣を通り過ぎようとする。 ――いっそ、一発不意打ちかましてやろうか。 剣を持っていることからして、この人は剣術家なのだろう。少しかじっただけの僕でも、到底かなわないと確信できるほどの隙のなさだが……見た目丸腰の僕に、それほど警戒などしていないはずだ。 そして、僕は一息で数十発からの霊弾を叩き込む事ができる。 なんとかなるか……? やって……みせ――!? 「がっ!?」 僕が動こうとした途端、女の人は容赦無く僕の肩口に小太刀を抉り込ませた。 「……無駄な抵抗はしないでくれ。居合わせただけの一般人を殺すつもりはない」 い、いた、いたたたたた!? ち、畜生。いくらなんでも、動く前に察知するか、オイ!? 「良也! 美沙斗、やめろ!」 「これ以上はなにも。……兄さんも、向かって来ないでください。では、クリステラさん、先程の言葉、ゆめゆめお忘れなく」 そうして、今度こそ女性は去っていった。 部屋から逃げた後、美由希ちゃんが電話に取り付くこうとするが、高町さんに止められた。 「やめろ、美由希。警備や警察に連絡したって無駄だ」 「でも、とーさん」 「っつ、くそ、美沙斗のやつ、腕を上げたな。おい、良也、大丈夫か」 僕と同じく、肩を斬られた高町さんが声をかけてくれるが、こちとら怪我に関しては慣れたモンである。 通算三桁に及ぶ死亡数。いい加減、慣れたもので、以前は体全部が消滅した場合、再生に半日はかかっていたのが、今では二時間から三時間で済む。 当然、ちょっとした刀傷なんぞ、 「はい……ええと、ん……治りました」 集中すれば十秒で治る。シュゥ、と音を立てて、怪我は綺麗さっぱり消え去った。 血を拭って傷口を見せると、高町さんは呆れたように『相変わらず非常識なやつだ』と言う。 ……人外剣術を操る高町さんが言えたものではないと思う。 「え、ええ?! りょ、良也さん、それ一体?」 「美由希、落ち着け。世の中には、不思議なことがおれたちの想像以上にあるものなんだ」 忍と付き合っている恭也は流石に動じていないが、美由希ちゃんを驚かせてしまった。 ……しまったな、先に言っときゃよかった。 なお、リスティたちと同じHGSであるフィアッセや、そんなフィアッセの母親であるティオレさんは、もちろん驚いてはいない。一応、霊能の実在については、英国議員の家族であるため知っているらしいし。 「……ごめんなさい、士郎。ボディガードを引退したあなたに、無理をさせてしまいましたね」 「なんの、ティオレさん。これは身内の不始末です。止められなかった俺のほうが非難されるべきだ」 そういや、あの女の人、高町さんのこと『兄さん』って言ってたな。 「とーさん。とーさんの妹ってことは、あの人はわたしの……」 「……ああ。美由希、お前の実の母親だ」 そういや、美由希ちゃんって、恭也とは従妹だって話だったな。……そういや、あの人と美由希ちゃん、すげえ似てる。胸以外。 っと、その前に。 「高町さん、肩見せて。とりあえず、応急処置くらいだけど」 相変わらず、回復魔法は習得する意味が薄いので、あんまり覚えていないのだが、一応ちょっとくらいの傷なら治せる。 派手に出血してるけど、皮膚を裂かれただけみたいなので、多分治せるだろ。 「おお……悪いな、良也」 「いいえ。……で、さっきの……ええと、美沙斗さん? は、一体何の用で来たんですか」 「一言で言えば、脅迫だな。コンサートを中止しろ、だと」 ……ええと、そういえば去り際にティオレさんに脅しをかけてたな。 「って、なんでですか?」 んなことして、一体なんの得が。 「さあ……このコンサートが開かれると都合が悪くなる、どこかの誰かさんにでも依頼されたんだろ」 「依頼って……」 「あいつにも色々あるんだよ。まあ、聞くな。 ……しかし、今まで引き止めてやらなかった俺が言えたことじゃないかもしれないが」 治療が終わり、肩の具合を確かめて、高町さんは立ち上がった。 「ティオレさんの夢を邪魔する奴は、見過ごせない。……例え妹だろうが、俺が斬って捨てる。久々に、現役復帰だ」 そうして覇気を撒く高町さんは、もう喫茶翠屋のマスターではなく、一人の剣士だった。 「悪い、恭也。鍛錬に付き合ってくれ。現役を引いてから長い俺と、今までずっと実戦の中で生きてきた美沙斗じゃ、ちと分が悪い。コンサート開催までに感覚を取り戻さないと。美由希は、二人の護衛を頼む」 そう言う高町さんに、妹と殺し合いをする、そのことに対する迷いはないように見えた。 ……年は離れているが、僕は高町さんの友人だ。何かを言うべきか、と言葉を探していると、その前に恭也が口を開いた。 「……とーさん。おれは、出来れば美沙斗さんと一度話してみたい。止まってくれないかもしれないけど、それでもこのまま戦うのは、違う気がする」 「恭也……でもな」 「美由希のこともある。……もしかしたら」 高町さんは数秒悩んでから、ふう、と溜息をついた。 「好きにしろ、と言いたいが、お前美沙斗のねぐらはわかってるのか?」 「……ええと」 言い淀む恭也。 「い、今から追いかけて――」 「俺がいるのに、後をつけられるような間抜けはしないと思うぞ」 ええと、なんかないかな……あ、髪の毛落ちてる。色と長さからして、あの人のだ。 「あ、場所なら問題無いぞ、恭也。髪の毛落ちてたし、市内ならダウジングで探れるから」 「……ありがとうございます」 ほ、とした様子の恭也。 しばらく時間を置いた後、ダウジングで探ってみたところ、彼女は近所の廃ビルを拠点にしていることが判明した。 ……広い屋外で空中から弾幕で追い詰めるならともかくとして、室内で御神の剣士相手に僕が役立てることはなさそうなので、その先は任せることにした。つーか、僕が突入した場合、相手を見つける前に後ろからざっくりやられそうだし。 さて……どうなることやら。 当日。 残念ながら、恭也は説得に失敗したらしく、剣士組三人は護衛として動いているらしい。 ティオレさんたちが気を利かせてくれたのか、僕のチケットは高町家の隣の席だったので、開演までの時間を暇しているなのはちゃんが話しかけてきていた。 「もー、おとーさんもお兄ちゃんもお姉ちゃんも。急な用事だからって、一緒に来てくれないんですよ」 多分、会場内のどっかにはいるんだろうけど、家族で出かけるのを楽しみにしていたなのはちゃんは結構不満を抱えているようだった。 「ま、まあまあ。それは残念だけど。多分、高町さんたちも会場のどこかで聞いてると思うから」 「ボディガードってやつですよね」 「そうそう」 実際に襲撃があることは教えてはいないが、なのはちゃんにもこのくらいのことは教えている。下手に誤魔化したりせず、一人前として扱う高町さんの教育方針であった。 ……そのため、直接父親に不満を訴えたりはしない大人ななのはちゃんだが、『親戚のお兄さん』的ポジ(おじさんじゃないよ、ほんとだよ)の僕には、割とこういう愚痴を漏らす。 「高町さんみたいな人がいるから、僕達は安心して楽しめるんだから。ええと、そういうことで」 「それは、わかってますけど」 わかってるのは凄いなあ。この年でそこまで察せられる子は絶対に少数派だぞ。 まあ、口を尖らせているのはご愛嬌か。 「なのはちゃん、偉いぞー。コンサートが終わったら、アイスおごっちゃる」 「え! いいんですか」 「うん。……あ、桃子さん?」 夜遅くにおやつとなると、親としては止めるかもしれない。お伺いを立ててみると、桃子さんは苦笑して、 「もう、今日は特別よ?」 「やった!」 「よーし、コンサートが終わったら表のサーティ○ンで二段でも三段でも……お腹壊すから二段までにしとこうか」 「はいっ」 「よし、んじゃ約束」 小指を絡ませ、なのはちゃんと指きりげんまんをする。 そこで、ビー、と音がなり、照明が落ちる。……いよいよ始まるらしい。 とりあえず、コンサートは開始した。さて高町さんたちは大丈夫だろうか。 万が一、観客席が巻き込まれた場合、少なくとも桃子さんとなのはちゃんは守らないと。……一応、スペルカード持ってるし、最近身に付けた小技で草薙レプリカもこっそり空間の裏に隠してる。 ついでに、結界二十四層、魔力炉三基、猟犬代わりの悪霊、魍魎数十体、無数のトラップ、廊下の一部は異界化させている空間もある――なんてことは流石にないんだが、 でもなあ。 「…………」 えー、ゆうひが参加するので当然のようにさざなみ寮のメンツは来てるし、いつかの雪の降った五月に集った武闘派の面々の何人かがいるし、月村の夜の一族姉妹と自動人形二体、その叔母もこの広い会場のどこにいるかは分からないが来ているという話だ。 ……戦力過剰じゃね? ま、まあ念のため、『一重結界』のスペカはすぐ発動できるようにしとこう。 なお、こんだけ前振りがあったにも関わらず、コンサートはつつがなく終了した。 まあ、杞憂に終わってよかったってところか。 後で聞いてみたところ、コンサートの裏ではそんなのんびりしたものではなかったらしい。 なんでも、美沙斗さんとやらとの戦いの中で美由希ちゃんが覚醒して奥義に開眼するというイベントがあったとか。んで、美沙斗さんとはその後和解。 裏稼業として生きてきた美沙斗さんも、少しはマシな手段で目的を果たすことにしたので、高町さんは肩の荷も降りたようで、事件後一杯付き合わされた時、 『俺もそろそろ本当に引退するかな』と、高町さんが零していたのが印象的だった。 |
戻る? |