「……うん、これで一件落着だ」

 さざなみ寮の玲於奈の部屋で、綺堂さんと玲於奈からの報告を受けて、僕は満足して頷いた。
 ……二人とも、苦笑している。

「ねえ、お兄ちゃん」
「ん? なんだ」
「あのさー、わたしも混乱していたから、ついつい言われるままやっちゃったけど」

 と、余ったらしきプリント紙を取り出して僕に見せつける玲於奈。
 印刷されているのは、とある人物のコラージュ写真。僕の友達、田中はこの手の技術を持っているので頼んだのだ。

 写っているのは、この前ちょいと洒落にならんことをしてくれた氷村遊。で、その美形顔が、マッチョなおにーさんの上にくっついている。不自然この上ない。

「……ぶふぉ!」

 駄目だ! おかしいー!
 他にも、思いのままに顔に落書きしたのだとか、アス比を変えた、みたいなコラがある。『これを面白くしてくれ』と行くつかの写真を渡しただけなのに……田中、グッジョブ! 流石はイケメンに対する正しき怒りを持った男!

「氷村先輩が、変なことをしていたのはわかったけど……こんな陰湿な仕返しって、ないと思う」
「ククク……いやいや、玲於奈。これは立派な戦略だ」
「……これが?」

 マジマジと写真を見て、ひくひくと頬を歪ませる玲於奈。笑いたいのを必死でこらえている様子。
 とりあえず、そんな玲於奈に解説してやる。

「いいか、そもそも精神干渉系の術ってのは、相手より精神的に優位に立てば効果は倍増するんだ。玲於奈、お前初めて氷村を見たとき、格好良いって思ったろ?」
「……少し」

 玲於奈は不覚を取った、という顔でぼそっと言った。
 まあ、気持ちはわからんでもない。僕だって、美人がいたら、そいつがどんなに性悪な悪女でも『お、いいな』と少しは思う。これは、まあ、男も女も関係ない、本能みたいなもんだ。

「まあ、その時点でお前は氷村より精神的に下位になったわけだ。だけど、こうやって野郎の格好悪いところをばらまいてやればだ。そんなこと思う女子もいなくなるだろう?」
「……確かに、人気は急降下しているけど」

 バレないよう、うまくバラまいてくれたらしい。よしよし。

「それで終わりだ。あんなヘタクソな暗示じゃ、そんな状態でうまくかけられるわけがない。暗示が使えない状態で、おおっぴらに血なんか吸えないだろ」

 なあ、と、少しは事情を分かっているであろう綺堂さんに同意を求める。綺堂さんは苦笑いを貼付けながらも頷いた。

「はい。まあ、理屈はわからなくはないですけど」
「……そういうことだ。私怨は入っていない。少ししか」

 少しは入っているんだ、とツッコミを入れる玲於奈に、入れてなにが悪い、と開き直る。
 まあ怖いのは氷村が暴走して玲於奈辺りにちょっかいをかけることだが……綺堂さんが実家経由で圧力をかけたらしく、これ以上好き勝手すると一族全体から粛清を受けるらしいからそれも無理。

「くっ、ざまあみやがれ!」

 フゥーハハハ! と完封勝利に、僕は心の中で喝采を上げた。
 いかん、この前から少し性格が悪くなりつつある。妹とその友達の評価を下げるわけにはいかない。クールダウンクールダウン。

 ……あ、二人とも微妙な顔になってる。

「こほん」

 咳払いして、なんとか『今のはなかったことに』とアピールしてみる。苦笑しながらも、綺堂さんは察してくれた模様。玲於奈の方は……『恥をかかせおって』フェイス。

「でも、良也さんはどこでこの技術や知識を? 西洋の魔術は、既に多くが廃れたと聞きますが」

 ちなみに、綺堂さんは僕のことを良也さんと呼ぶようになっていた。もちろん、玲於奈と紛らわしいからである。

「え? 幻想郷」
「はい?」

 あ、やっぱ知らないのか。
 ん〜、スキマ的にはあんまり広めて欲しくないらしいしなあ。あいつの不利益になることをしたらあとが怖いし……

「いや、今のは忘れて。ん〜、まあ細かいことはいいんだよ、ってことで誤魔化されて欲しい」
「お兄ちゃん?」
「いや、妹。前、兄は身の上を話したが、あんまり広める話でもないんだ。うん」

 僕的にはどーでもいいけど。
 はあ……大体、博麗大結界は、こっちの常識を持った人間には抜けられないらしいから問題ないのではないかい? 難しいもんである。

「はあ……」
「後でこっそり調べてみようとか思ってる?」
「いえ、そんなことは」

 い〜や、惑わされんぞ。今一瞬、好奇の色が走った。
 ……ま、調べてわかるもんでもないけどさ。幻想郷が結界で覆われる前から隠れ里的扱いだったそうだし、文献その他の資料はスキマが全部潰した。

「ああ、そうそう。これ」
「ん? なにそれ」

 綺堂さんが持参してきた紙袋を差し出してきた。
 なんだろう、と気にはなっていたんだけど……って、これ中に入ってるの、ワインの瓶か?

「土樹さんから、良也さんはお酒が好きだと聞いて。遊の件では助けていただきましたし、せめてのお礼に」
「気にしなくていいのに」

 あんときのアレは、完全に僕の個人的な仕返しだったし。……まあ、結果的に綺堂さんが助かったって言うなら、そりゃ喜ばしいことだが。

「ワインは大丈夫でしたか? これ、甘くて飲み易いですけど」
「あー、前まではあんま呑まなかったけど、とある館ではいっつもワインだからな……今じゃ結構美味しく呑めるようになった」
「それなら、良かったです」
「お酒ってそんなに美味しいのかなあ……」

 一人、話についてこれない玲於奈が、つまらなそうに呟く。

「美味しいですよ。土樹さんも、良ければ一緒に呑んで下さい」
「い、いやいや、わたしはいいよ」

 まあ、こいつは極端に酒に弱いタチだしな。以前、僕とお父さんが面白がって一口だけ飲ませたところ、直ぐ顔が赤くなった。もうちょっと成長してからだな、こいつは。

「ていうか、綺堂さんも本当は呑んじゃいけない年齢じゃ……」
「うちの一族、伝統的にみんなお酒に強いんです」
「いやいや、だから法律的にさ……」

 悪戯っぽく笑って誤魔化そうとしてる。
 もちろん、僕が人の事を言えた義理ではないのだが、しかし綺堂さんはもっと真面目キャラだと思っていた。

「ま、ありがたく頂くよ。なんなら、今開けようか。氷村のヤツを完封した祝杯ってことで」
「いいですね」
「……もしかして、かなり酒好き?」
「けっこう」

 いやいや、その冷静っぽく見えてその実ムチャクチャ嬉しそうな顔は、けっこうってレベルじゃないだろ。まー、僕も似たような顔になってるだろうけど。

「ちょっと、やめてよお兄ちゃん。こんな日の出てるうちから。祝い事でも無いのに」
「お天道さんの下で呑む酒は格別だぞ」
「ですね」
「綺堂さんまでっ」

 チッ、固い奴め。綺堂さんと視線を合わせ、ほぼ同時に肩を竦める。
 仕方ない、諦めるしか無いだろう。

 まーいいや、これは帰ってからのお楽しみにしよう。

「さて、と。じゃ、僕はそろそろ帰るよ。後は二人でお喋りなりお茶なりしてくれ」

 先程もらった紙袋を持って立ち上がる。
 本当は、今日は二人が遊ぶ日なのだ。しかし、以前の事の報告にと、ちょっと僕が呼び出されただけ。

 後は友人同士の時間を楽しんでもらうことにしよう。

「あ、はい。改めて、ありがとうございました」
「だからいいって。まあ、玲於奈のことをこれからもよろしく。……玲於奈、もうこんなオカルトなんかに巻き込まれるんじゃないぞ」

 それは、ちょっとした忠告のつもりだった。
 大抵のことは綺堂さんとか神咲さんが近くにいるんだから問題はないだろうけど、玲於奈本人はその手のことに対処する力は持たない。今回のことで懲りただろうから、玲於奈もわかっているだろう、と思っていたから、念押しの言葉だったのだが、

「え?」
「……『え?』ってなんだ、オイ」

 帰ろうと思ったが、思いとどまって再び腰をおろす。
 ……さて、この妹は、またなんぞに巻き込まれているのか?





























 と、言うわけでやって来ました旧校舎。
 どうも、話に聞くところによると、この旧校舎には『出る』らしい。

 いや、別に逢い引きしてるバカップルとかいうオチではなく、幽霊が。しかも、数十年モノの幽霊だっていうから、筋金入りだ。

「……で、なんでお前はそんなのに関わっているんだよ」

 最近、自縛霊と知り合った、などと言った玲於奈を小突く。
 とりあえず、氷村のこともあるし、気になったので件の幽霊とやらを見に来たのだ。綺堂さんが『あの人は大丈夫ですよ』と言っていたので心配はないのだろうが……まあ、念には念をだ。

「その、ここ最近、綺堂さんと一緒だったから、紹介してもらって」
「春原先輩とは、以前ちょっとやり合いまして」

 苦笑する綺堂さん。元々の知り合いは彼女だそうだ。
 ……っていうか、今『殺り合い』って言わなかったか?

 しかし、この旧校舎まで、実にあっさり侵入出来た。氷村の時も、体育館に突入して、結局誰にもバレなかったし……この学校のセキュリティは大丈夫か。

「春原先輩、ねえ。現世に留まっている幽霊って、すぐ消えちゃうもんらしいけど」

 イマイチ幽霊には詳しくないが、余程強い意思を持っているか、生前霊能力者だったりしないと中々幽霊のままこの世を歩くことは難しい。んで、前者の場合、所謂悪霊になることが多いそうなんだが……

「……良也さん、もしかして、春原先輩を退治しようとしていますか?」
「ん? いや、別に。悪霊じゃないんだろ?」
「はい。それは間違いなく」
「なら別にいいや」

 うちの妹や綺堂さんに危害を加えるってならともかくとして、それ以外なら別段僕がどうこう言うこともない。

 なんて、話しながら旧校舎を進むと、微かに人の話し声が聞こえてきた。

「……なかなかにホラーなシチュエーションだな」
「ですね」
「う……わかってても怖い」

 人の気配のない、寂れた校舎。そして、微かに漏れ聞こえる女の声……うむ、玲於奈の言うとおり、幽霊がいるとわかっていても背筋にゾクっとくる。
 やっぱ、モノノケに慣れたって言っても、こーゆー怖さまで払拭出来るわけじゃないらしい。

 しかし、一応年長者として兄として、なにより男の子として後ろの女子二人の前でビビったところを見せるのは憚れれる。

 一念発起し、話し声の聞こえる教室の扉を開け、

「たのもう!」

 そんな、変な挨拶をした。
 ……言ってから、どこの道場破りだ、と思った。

「……誰?」

 机に腰掛けている、少し古いデザインの制服を来た長い髪の女の子が、極めつけに不審そうな目で僕を見てくる。
 ……そりゃそうか。

「あー、っと」
「……誰だ? 風芽丘の生徒……じゃないよね」

 そして、教室にいたもう一人。短い髪をした、ボーイッシュな女の……子?

「こんばんは、春原先輩、相川先輩」
「こんばんはー」

 と、僕の後ろから、綺堂さんと玲於奈が前に出て二人に挨拶する。
 警戒していた幽霊さんともう一人は、二人の登場に警戒を少し解いた。

「こんばんは、さくら、玲於奈。なに、遊びに来たの?」
「はい。それと……うちの兄が、春原先輩に挨拶をしたいって」
「お兄ちゃん? 玲於奈の?」

 少し厳しめの視線を向けてくる『春原先輩』とやら。
 うう……別になんもするつもりはないんだから、そう警戒しないで欲しい。

「初めまして。土樹良也です」
「……初めまして。で、何の用?」
「用ってほどのことでも。ただ、玲於奈が幽霊さんと知り合ったっていうから、挨拶をば」
「貴方、いちいち妹の友達に挨拶するの?」

 う……なんか歓迎されていない雰囲気。

「ちょっと、七瀬。失礼だよ」

 おお、ありがとう。そっちの女の……いや、男の子……か? 服装からして……。単に男物を好む人なのかも知れないが、どっちかっつーと、男っぽい。

「真一郎くんは黙ってて」
「あ、男なんだ、やっぱり」
「あ、はい。……ええと、玲於奈ちゃんのお兄さんって」
「うん、そう。よろしく」

 男の知り合いがいたんだ、玲於奈に。しかも名前で呼んでいるとか。……まあ、悪い人には見えないし、いいか。

「ああもう! ちょっと貴方」
「はい?」

 というか、どうしてこの人はこんなにも不機嫌なのか。

「貴方、祓い師でしょう?」
「へ?」
「人間でその霊力なら、そうなんでしょ? なに、私を祓いに来たの?」

 ……なんか誤解をされている気がする。

「いや、その、春原さん?」
「なに?」
「……僕はその、霊能力は持ってはいるけど、別に幽霊退治の人間ってわけじゃないんだけど」

 へ? と、春原さんはぽかんとなって……ひとまず、腰を落ち着けて話をしよう、ということになった。






















「なんだ、ただの心配性なお兄ちゃんなのか」
「……心配性ってところには反論したい」
「だってそうじゃない。あーあ、構えて損しちゃった」

 宙に浮いて、伸びをする春原さん。
 僕はちょっと憮然として、他のみんなは苦笑している。

「すみません、七瀬はちょっと、霊能力者とかが苦手みたいで」
「ああ、いや。別にいいけど。ええと……相川くん、だっけ?」
「はい」

 一緒に紹介されたこの人、相川真一郎くん。
 なんでも、玲於奈や綺堂さんの一個上の先輩で……玲於奈の護身道部の先輩の幼馴染、更には以前さざなみ寮で出会った千堂さんの弟分だとか。

 綺堂さんとは、以前ちょっとしたことで知り合い、玲於奈とは護身道部に顔を見せに来た時知り合ったそうな。
 さらに、一番最初に春原さんに接触したのも彼らしく、それから二人とは少し仲良くなったとかなんとか……

 しかしまー、背は低いものの女の子に見紛うような美形で、しかも聞いての通り交友関係に女子が多すぎる。

「……リア充か」
「リ……はい? なんですか?」
「なんでもない」

 思わず口に出た悪態を誤魔化す。……いかんいかん、妹の先輩に、なんつーことを。
 ああ、しかし妬ましい、妬ましい。今ならパルスィの気持ちがわかる気がする。耕介といい、相川くんといい……こっちで知り合う男はこんなのばっかりだっ。

 ま、それはそれとして、

「しかし、すげーね、春原さん。よく何十年も正気で幽霊やっていられるもんだ。しかも、普通幽霊は人魂だってのに、そんな人の姿で」
「まあ、これでも結構強いから、あたし。ちょっとさくらから生気をもらっているけどね」

 吸気(エナジードレイン)の能力まであんのか、春原さんって。どう考えても並の幽霊じゃないな……

「……吸いますか? 春原先輩」
「んー、今はいいや。さくらだって、今そんなに余裕ないでしょ?」
「そうですけど」

 苦笑する綺堂さん。それを見て、相川くんが口を開いた。

「なんだ。それなら、献血しようか? さくら」
「ええと、その、この間も頂きましたし。そう度々は……」

 ……相川くんが綺堂さんに血液を提供。そして、元気いっぱいになった綺堂さんの霊力を春原さんが吸気……

「食物連鎖かい」
「あ、良也も思った? そうだよね、前々から思ってたんだ」
「ってことは、俺が一番下か……」

 春原さんの言葉にがっくりと項垂れる相川くん。なんとも和やかな笑いが起きる。

「ははは……でも、大丈夫ですか、春原先輩。確かこの前、こうやってお話するのとか、けっこう疲れるって言ってませんでしたっけ」
「ああ、大丈夫大丈夫。玲於奈は心配性ね」

 ……ふむ。

「なら、今日は僕が提供しようか? 無駄に霊力は余ってるし」

 いやもう、ホント無駄に余ってる。今まで何度か異変とかに関わって、派手に弾幕を撃ったこともあるんだけど、どういうわけか今まで体力はともかく霊力が切れたことって記憶にない。
 我が師匠のパチュリーに言わせると、キャパに対して出力が残念すぎるせいらしいけど……放っておけという話である。

「……いいの?」
「いいよ」

 春原さんは、玲於奈にも視線を向ける。

「いいですいいです。どうせお兄ちゃんですし」
「ぅぉい、玲於奈」

 酷い言い草だ……。いや、冗談だと言うのは分かっているが。

「……前、真一郎くんは、かなり衰弱して死にかけたんだけど」
「七瀬、それは言いっこなしって言ったろ」

 うわぁい、悪霊一歩手前ですね。ま、まあ今は大丈夫なんだろう、エネルギー源として綺堂さんいるし。う、うん、気にしない。

「あー、っと。まあ、僕なら別に死んでも構わないけど」
「ちょっと。幽霊として、冗談でもそーゆーのはあんまり言わない方がいいと思うよ?」

 春原さんが怒ったように言った。
 真剣に忠告してくれているのはわかる。しかし……いや、その、僕って、ギャグみたいな体質なので。心配されても心苦しいだけと言うか……

「はは……まあ、万一死んだところで、冥界にも知り合いは多いしね」
『冥界?』

 全員が異口同音に聞く。玲於奈にも触りは話したが……この反応からして、イマイチ理解していなかったと見た。
 説明するのも面倒なので、笑って誤魔化す。

「いやまあ、気にしないでいいってことだけ。さ、どうぞ」
「うーん、なんか釈然としないけど……まあ、もらうわよ?」

 と、唐突に手を握られた。

「!?」
「なぁに赤くなってるの?」

 い、いや! 別に! これは心の準備が出来て! 出来ていなかっただけで!

 繋がった手から、なんか力が流れて行く。
 せ、接触によるエナジードレインか……最初に言って欲しかった。

 な〜んか、幽霊とは思えないやわっこい感触が手の平から伝わってくる。やはり体温は低いんだけど、人魂みたいな下手したら冷房に使えそうな冷たさじゃなくて……普通に、女の子の手だ。

 ヤバイヤバイ……気にするな。ここには妹もいるんだ。

 なんて我慢して数十秒。

「……ねえ、大丈夫?」
「な、なにが?」
「もう、かなり吸ったけど?」

 ……? そうかな?

「いや、全然余裕だけど……」
「もしかして、あたしと手を繋いでたくて無理してる?」
「お兄ちゃん!?」
「誤解だっ!」

 玲於奈の厳しい目に、春原さんから手を離してブンブンと首を振る。
 じとー、と疑惑の視線を向けてくる玲於奈に、こっちも強い視線で答える。

 『スケベ』『阿呆か』そんな視線だけの兄妹の会話。

「あらー、本当に平気っぽいねー」

 凄い凄い、という春原さんの声も聞こえず……




 何故か、その後も僕は玲於奈にチクチクと苛められるのだった。



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