ラキオスの今の季節にはありえない寒気。それに身を震わせて、友希がゆっくりと目を開けると、いつになく濁った空に星の光が瞬いていた。
 いつものファンタズマゴリアの空はこうじゃない。地球とは比べ物にならないほど透き通った空と星々の輝きは非常に美しく、辛い夜警の楽しみなのだ。
 それに、空気が妙に不味い。今まで空気に味があるなどと意識したことはなかったが、あからさまに先程まで吸っていた空気と違う。

 胡乱な意識で、眠る前はどこにいたかな、と思い出そうとして、

「っ!?」

 目の端に写った風景を見て、電撃のように起き上がった。
 地面に敷かれているのは固い石畳。周囲を強く照らす電灯の明かり。なにより、独特の建築様式を持つ神殿――神社。

 ファンタズマゴリアに行く直前に、友希たちがいた神木神社の境内に間違いない。もはや朧気な記憶となってしまっているが、友希は子供の頃、この境内でよく遊んだことがある。間違えはしない。

 なんでこんなところに、と経緯を思い出そうとする。

「……あの男!」

 すぐに記憶は蘇ってきた。ゼフィの敵である黒い剣士が、悠人を殺しにやって来たこと。すぐに襲いかかったが、呆気無く返り討ちにされたこと。最後に、悠人とアセリアが、お互いの神剣を共鳴させ男の攻撃と真正面からぶつかり合い、

「悠人! アセリア!?」

 二人がどうなったのかと、ふと気がついた。
 あれだけの力のぶつかり合いだ。下手をすると消し飛んでいてもおかしくはない。こうして、自分が五体満足であることが不思議なくらいなのだ。

『主、落ち着いてください。主の後ろにいます』
「え?」

 『束ね』の声に反応して振り向くと、確かに悠人とアセリアが並ぶように倒れていた。
 慌てて近付いて二人を観察するが、外傷らしい外傷はなく、ちゃんと規則的に胸が上下していることからしても、命に別状はないらしい。友希はほっと胸をなでおろした。

「よかった……」
『主、早いところ二人を起こして、落ち着ける場所に移動したほうがいいと思いますが』
「そ、そっか。そうだよな。おい、起きろ、悠人、アセリア」

 友希は悠人とアセリアの肩を揺さぶって声をかける。

「……ぐっ。……あれ? 友希?」
「ん……」

 二人がゆっくりと目を開ける。しばらくぼうっとしていたようだが、すぐに目の焦点があった。

「なっ、ち、地球か、ここ!?」

 近くにあった電灯が目に入ったのだろう。がばっ、と起き上がった悠人がせわしなく周囲を見渡し、驚きの声を上げた。

「そう。なんでか知らないけど、戻ってきたみたいだ」
「ここが、ハイペリア?」

 アセリアが不思議そうに尋ねながら、体を起こす。
 戦争以外で他の国に行ったことのないアセリアだが、この場所がラキオスでは――いや、ファンタズマゴリアではありえないものばかりだということはわかるのだろう。すぐ傍にあった電灯をぺたぺた触りながら、アセリアはなにか納得したようにコクコクと頷いていた。

 しかし、それにしても。

「……シュールだな、おい」
「言うなよ、友希」

 甲冑を身につけた異世界の美少女が電灯の下にいる。凄まじい違和感に、友希も悠人もくらりとした。
 もしここにアセリアがいなければ、ファンタズマゴリアのことを夢か何かとでも思っていたかもしれないが、このミスマッチな光景はそんな逃げ道は残してくれなかった。

 ええい、と頬を叩き、友希は次の行動に移ることにする。いつまでもここにいては、神社の人間に見咎められるかもしれない。確か、神主さんが暮らしている母屋が近くにあったはずだった。

「ひとまず……僕んちに行くか。近いし。『束ね』は隠せるけど、『求め』と『存在』は、警察にでも見つかったら面倒なことになるから、僕が先行するよ」
「それもそうだな」

 悠人が頷き、手水舎を覗き込んでいたアセリアも二人の様子に気付き戻ってきた。

「どうするの」
「僕の家に行く。とりあえず、そこでこれからのことを話そう」
「トモキの家?」
「ああ。こっからすぐだ」

 アセリアはもとより、悠人も友希の家を訪れたことなどない。二人を先導して友希は歩き始める。
 神社の石段を降り、通り慣れた道を歩く。

 どうやら、だいぶ遅い時間のようで人通りは殆ど無かった。それでも、曲がり角のたびに先に友希が先行して、誰も居ないことを確認しながら進んでいく。途中、酔っ払ったサラリーマンと鉢合わせになりそうになったが、電柱の影に隠れることでやり過ごした。
 そのため少し予定より時間は遅くなったが、無事自宅に辿り着く。

 『御剣』という表札を見た途端、懐かしさが込み上げてきた。

「ようこそ、二人共。ここが僕の家。……こんな状況だけど、歓迎するよ」
「ああ」
「ん」























 制服のポケットに入れてあった鍵はファンタズマゴリアでとっくに紛失していたため、いつも鍵を掛けていなかった二階の窓から侵入する、というなんとも間抜けな帰宅になってしまった。
 マナが薄いこの世界ではあまり神剣の力を無駄遣いはできず、塀を足場に屋根に飛び移る羽目になる。
 まあ、ファンタズマゴリアの訓練で、素の運動能力も随分上がっていたから、それほど苦労はなかった。

 中から鍵を開けて改めて二人を歓迎し、落ち着くためにお茶を淹れて二人に配膳し、さあこれからどうしようという話になった。

「……とりあえずは、なんとしてでも帰らないとな」
「ああ」

 悠人の言葉に、友希は頷いた。
 佳織、光陰、今日子、瞬。あちらの世界に残っている人間はまだいるし、ラキオスの仲間もこのまま見捨ては行けない。それに、友希はあの黒い剣士に一矢報いないと、平穏な日常には帰れなかった。
 懐かしい町並みの風景に少しも心が揺れなかったわけではないが、このままなにもかもを忘れてこの世界の日常に戻るという選択肢は二人にはない。

 そう男二人が決意しているのをよそに、アセリアはというと、きょろきょろとリビングの中を見渡していた。

「トモキ、これなに?」
「あ、ああ。それはテレビ……」

 リビングに備えられた家電に、アセリアは興味津々のようだった。友希にもわかるほどはしゃいでいるアセリアというのも珍しい。
 何の気なしにアセリアはテレビに触り、偶然にもスイッチに触れテレビが映る。

「ひゃぁ!?」

 スクリーンに突然映しだされた鮮明な映像に、アセリアは心底驚いて飛び退る。
 テレビでは、丁度深夜のニュースをやっており、翌日の天気について放送していた。

「ゆ、ユート。板の中に、人が……」
「ああ、いや。それは中にいるわけじゃないよ。なんて言ったらいいのかな……」

 なんともベタベタな勘違いをするアセリアであった。ブラウン管ではないので、箱ではなく板と言っているのが面白い。
 悠人が苦心しながらも説明をし、アセリアは熱心にその話に耳を傾け、ふんふんと頷く。よくわからないまでもそういうものだと納得はしたようだった。

 ふう、とその様子を見ながら友希はふと気がついた。

「……待った。一年以上留守にしてんのに、電気が止まってないってどういうことだ?」
「あ」

 ポツリと呟くと、悠人もぽんと手を叩く。明かりがついた時点で気付くべきだったのだが、今更に思い至った。
 その時、丁度天気予報を告げるキャスターが明日の日付を口に出す。

 その日付は、友希たちがファンタズマゴリアに行った日付、その翌日だった。

「……おい、友希。これって」
「いや……ど、どういうことだ? ちょっと待ってくれ」

 同じくリビングに備えられている固定電話から、時報を呼び出す。こちらでも、告げられた時間は十二月十八日。友希たちが、演劇の練習と称して神社に繰り出した放課後、あの日付だった。

「時間の流れが違う、ってことか? 世界が違うんだから、そういうこともあるのかもしれないけど」
「まるで竜宮城みたいだけど……そう考えるしかないのかな。と、待った。『束ね』に聞いてみる」

 『束ね』は、友希に出会う前はいくつもの世界を巡っていたと言っていた。世界間に時間の流れが違うかどうか、知っているかもしれない。

『主。確かに私多世界を渡りましたが、次の世界、次の世界と渡っていくばかりだったので、以前訪れた世界でどの程度時間が経っているかなんて知りませんよ』
『そうか……』
『そも、私はこの時間樹ばっかりでしたからね……。他所とここの間がどうなっているかってのはちょっと……』
『時間樹……?』
『ああ、今は関係ないので、お気になさらず』

 そうか、と友希は頷いて、『束ね』との会話を悠人に話す。

「……じゃあ、こっちでもう一時間くらい過ぎてるけど、あっちはどのくらい経ってるかってのはわからないのか」
「ああ。こんな大事な時期に……早く帰らないとな」

 しかし、そうは思いはするものの、できることがない。
 そもそも、ファンタズマゴリアでも世界を渡る手段を探していたのだ。いきなりこっちに帰ってきても、気軽にもう一度帰るというわけにはいかない。

 おそらく、きっかけはあの黒い剣士と悠人の力のぶつかり合いだ。しかし、ここにいる者だけであの時と同じ力を引き出すことは不可能に近い。地球の薄いマナではなおさらだ。

「ん……」

 と、そこで、チクタク動く壁掛け時計を見ていたアセリアがふらつく。
 近くにいた悠人が、慌てて支える。

「お、おいアセリア? どうした、大丈夫か?」
「ん……少し、疲れた」
「あ。そ、そりゃそうか」

 あの黒い剣士との激闘から、まだ一時間くらいしか経っていない。全気力を振り絞るような戦いだったのだ。消耗は当然だった。
 友希とて、今は気が高ぶっているから感じないだけで、体の芯には重い疲労が残っていることに、今更気がついた。

「……今は悩んででも仕方ない。友希、少し休もう。こうなっちゃ、一旦休まないといい考えも出てこなさそうだ」
「わかった。それもそうだな。じゃ、風呂を沸かしてくる。そうそう、確か買い置きの菓子が戸棚にあるから、腹減ってるならそれでも摘んでてくれ」

 朧気な記憶だが、ポテトチップスだかクッキーだかが残っていたはずだった。

「……って、ちょっと待った友希!」
「ど、どうした?」

 悠人が突然血相を変えた。
 もしかしたら、ファンタズマゴリアに帰る方法を思いついたのか、と友希は思うが、悠人の口から出てきた言葉は全く別のことだった。

「俺達はともかく……アセリアの着替えって、どうすりゃいいんだ?」
「あ」

 結局、服はひとまず友希のもので我慢してもらうにしろ、下着類はコンビニででも買わないとどうしようもないということで、男二人はどっちが買いに行くかをじゃんけんで決める羽目になったという。





















 翌朝。
 やはり、軍生活が長いおかげか、友希は目覚まし時計の助けを借りる事もなく起きようと決めた七時にきっちり目が覚めた。
 久し振りの自分のベッドだから、ぐっすり眠ることができた。単純に、ファンタズマゴリアのベッドが固くて寝にくかったというのもある。

「さて、と」

 軽く伸びをして体を覚醒させ、これまた久方ぶりのキッチンへと向かう。
 やはり、朝食は一日の糧だ。時間は惜しいが、腹ごしらえはしておかないと力が出ない。

 スピリットの館で使うような業務サイズでないフライパンと鍋。エーテル技術でなくガスで火が灯るキッチン。使用する調味料で、ラキオスと共通するのは塩くらいだ。
 当たり前だが、勝手はかなり違う。なにより、十数人分もの量を作らなくて済む。楽ではあるが寂しいものを感じた。

「……さて、と」

 気を取り直し、調理を始めることにする。

 自分と悠人は懐かしき和食で作ることにした。白米にインスタントの味噌汁、塩鮭に漬物。これに味のりを付け加えれば、十分だろう。ご飯は残っているので、足りなければ卵かけご飯にする予定だ。
 悩みはしたが、アセリアには洋風のほうが馴染みやすいだろうとパン食にした。パンはバターを塗って、ハムエッグとレタスとプチトマトでサラダを作った。味付けはだいぶ向こうとは違うが、友希達も普通にラキオスの味付けは美味しいと感じたので、おそらく問題はないだろう。

 丁度準備が出来た辺りで、悠人とアセリアが起きてくる。
 悠人の方は友希の予備のパジャマを着ており、背の高さの違いからか多少袖が足りないが、まあ普通。
 一方、アセリアの方は、友希の中学時代のジャージを着ているのだが……こっちは違和感が凄い。青い髪と青い目のどう見ても外国人の超絶美少女が、中学校の名前がプリントされたジャージを着ているのだ。

 せめて、今は海外にいる母親の服でもあればよかったのだが、衣類は持ちだした分以外は処分されていた。

「おはよう、友希。悪いな、準備させちゃって」
「おはよう」
「うん、おはよう、二人共。準備については、ここの家主は僕だから気にしないでくれ。さ、冷める前に食っちまおう。アセリアのはそっちな」

 席を勧める。が、アセリアは難色を示した。

「……わたしのだけ、違う」
「いや、こっちの食事には慣れてないと思って……」
「わたしも、ハイペリアの料理を食べてみたい」
「それも一応こっちの……いや、分かった。じゃあ、僕のをどうぞ」

 珍しい食事に興味津々の様子のアセリアに、友希は嘆息してから自分の分と取り替えた。
 流石に、箸は使えないようだが、アセリアは器用にナイフとフォークで和風朝食を口に運んでいく。

「お味は?」
「ん、変わった味だけど、美味しい」

 どうやら、日本の朝食は異世界の妖精の口にも合ったようだった。
 実は、冷蔵庫には納豆もあるのだが、あれに挑戦させるべきか否か、友希は少し迷う。しかし、地球の――引いては日本のことを知ろうとしてくれているアセリアに、日本の食文化のなんたるかを知ってもらうには、あれ以上のものもなかなかないように思える。

「アセリア、納豆食うか?」
「?」
「この国の、伝統的な発酵食品だ。確かラキオスもチーズくらいあったろ。あれの仲間だ」
「食べてみたい」

 よし、と友希は頷いて、冷蔵庫からパックの納豆を取り出す。日本人でも好き嫌いが分かれるが、友希は実は結構好きで、忙しい朝の朝食に炊きたてのご飯と一緒にかっこんでいたものだった。

「う、納豆か」
「悠人は駄目か、これ」
「うん……食えないことないけど、出来れば勘弁して欲しいな」
「ユート、好き嫌いはよくない」

 エスペリアの真似をするように、アセリアが窘める。まいったなあ、という顔をして、悠人は言い訳を始めた。

「いや、ホント食えなくはないんだよ。今は食えるけど、昔嫌いだったピーマン程じゃない。でも、その、食わないで済むならそうしたいっつーか」
「ユートはリクェムのときも似たようなことを言ってた」
「う゛」

 悠人が完璧に固まった辺りで、友希は目当てのパックを手にしてアセリアの元へと持ってきた。

「はい、これ」
「これが、ナットー? 白い……」
「そうだけど、これは容器だって。ちょっと待てよ……」

 初見のアセリアでは食べ方もわからないだろうと、蓋を開けてタレをかけるところまでは友希がやる。ここから先は自分でやらせるべきだろう。

「後はアセリア、その豆を思いっきり混ぜろ」
「う、うん」

 納豆の見た目に、いつもの仏頂面が崩れかけているアセリアだった。
 フォークで納豆をかき混ぜ、いい具合に糸を引くたび、アセリアの表情は泣き顔に近くなっていく。

「……トモキ、これ、腐ってる」
「大丈夫、納豆とはこういうもんだ。腐ってるんじゃなくて、発酵だよ、発酵」
「よくわからない」

 それでも、アセリアは一度挑戦したことを止めるつもりはないらしい。流石はラキオスの青い牙と謳われたスピリットである。まさか納豆に立ち向かう気概があるとは、そのガッツは友希も見習いたいところだった。

「よし、そろそろいいだろ」
「ん」
「後は、ご飯に乗っけて一気に食うんだ。ちょっと匂いはキツイけど、ご飯と一緒なら味はまろやかになるから」

 友希の指示に従い、一口分の納豆をフォークですくってご飯の上に乗せるアセリア。フォークに絡みついた糸に、僅かに躊躇するも、ご飯とともに口に運んだ。
 もにゅもにゅと咀嚼し、ごくんと飲み込む。

「ん」

 悠人と友希がゴクリと固唾をのみ、アセリアの感想を待ち、

「……けっこう、美味しい」
「マジか、アセリア!?」

 日本人のくせに納豆を食えない悠人は、それに心底仰天するのだった。




























 朝食が終わった後、アセリアが外に出てみたい、と言い出した。

『もしかしたら、ファンタズマゴリアへの"門"も見つかるかもしれません。探しまわるのは悪くないのでは』

 とは、『束ね』の言である。

 家に篭るだけでは到底今の事態を解決はできないのは明白なので、男二人にも否やはない。

「……とりあえず、洗濯はしてあるけど。悠人、アセリア、どうだ?」
「まあちょっとキツいけど、なんとか」
「着心地がいい」

 寝間着と同じく、服をを貸したのだが、二人共文句はないようだった。
 悠人は別に服に拘る人間ではなかったし、アセリアの方は友希のニットとジーパンを着込んでいるが、感触がいいのか生地を撫で付けている。

「ならよかった」
「悪いな、友希。……で、これからどう動くかだけど。やっぱり、二手に別れたほうがいいかな」
「だなぁ。"門"って、ファンタズマゴリアでさんざん探しても見つかんなかったからな。少しでも確率は上げとこう」

 昔、『束ね』と話し合ってから、任務の合間に二人は『門』とやらを探していたのだが、それらしい気配は一度も見つけられなかった。焼け石に水かもしれないが、分けられるなら分けるべきだった。
 本当なら、三人バラバラのほうがいいのだろうが、

「……アセリアは、俺と一緒な」
「ん? わかった」

 流石に、土地勘もないアセリアを一人で探索に行かせる訳にはいかない。ただでさえ目立つ容姿をしているのだ。一人で出歩かせるとどんな厄介事に陥るかわかったものではない。ナンパされる位ならまだいいが、お巡りさんに職質されてパスポートやビザの提示を求められでもしたらどうしようもない。
 こっちに帰ってきてから官憲の目につかないことばかり考えている気がする友希であった。後ろ暗いところはないのだが、犯罪者にでもなった気分だ。

 ……そして、そうすると、よりアセリアをコントロールできる悠人がアセリアと共に行くことになる。それに、まさか地球で戦いが起こるとは友希も悠人も考えていないが、万が一荒事があった場合、『束ね』を持ち歩ける友希の方が対応力が高いので単独となるのだ。

「じゃ、行こう」
「待て待て、アセリア! 『存在』は置いていけ!」
「? なんで」

 と、考えていた二人をよそに、アセリアは当然のように『存在』を持ちだそうとしていた。これは、悠人に貧乏くじを引かせてしまったかと、友希は頭を抱えるのだった。




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