私は森を彷徨っていた。 「ここどこーーーーー!?!?!?」 ……発狂しながら。 ことの発端は、ない。 ないというか、思い当たらないのだ。 夏休みのこの日、私はいつものように8時半に自宅を出て学校へ向かった。 「おっはよー」 「はよー」 部活をするためである。 美術部に所属している私は、いつもの席に座り、いつもの友達と話しながらいつものスケッチブックを取り出した。 「何描いてるの?」 「んー、森。森と神社かな」 なんとなく私は鉛筆を動かし、友達はそんな私のスケッチブックをのぞき込む。 「へぇ」 「そういう優は?」 「む。よくぞ聞いてくれたな!これこそが私の愛する__「あ、うん、わかった。わかったから君の趣味を押し付けるなっ!」__はい」 私は呆れて笑うと、会話を聞いていた他の子も笑った。 つられて優も笑った。 「あれ、今日は色も塗るの?めずらしー」 「そう?部活で塗ってないだけで家では必ず塗ってるよ?」 私は水彩絵の具を取り出してバケツを水を汲むと、パレットに色を取り出した。 木々、地面、砂利、雑草、落ち葉、本殿、そして鳥居。 鮮やかに塗り切った私は乾くのを待った。 それからの記憶はない。 おそらくそれからこんなところにやってきたのだろう。 彷徨った末、階段を見つけた。 落ち葉が落ち、泥だらけで、人が登り下りした気配が感じられないソレに、私は気付けば足をかけていた。 「……」 ヒュゥゥ……と小さな音を立てて風が吹く。 見上げると、何か紅いものが見えた。 「鳥居?……ってことは、神社?」 人がいるかもしれない、と私は反射的に感じ、思いがけず気分が上がる。 しかし私は冷静に足元をみて、失望した。 「……いるわけない、かぁ」 階段だけみれば、人の気配は感じられない。 「まあ、いく価値はあるよね」 と、だんだん鳥居が大きく見えてきた。 それに比例しながら、なんだか研ぎ澄まされたような空気が私を包み込んでゆく。 「あら?参拝客かしら」 私が全てを登りきると、そこには人がいた。 巫女。着ているものはまるでコスプレ衣装のようだが、神社にいるということは本物の巫女なのだろう。 「ここに参拝客なんてくるわけないだろ?服を見てみろ、きっと外来人だ」 いかにも魔法使いといったような少女は私をみると、ほらやっぱりと笑った。 そして再び、神社を見る。 「……あれ?」 それはまさに、先ほどまで私の描いていた神社そのものだった。 気のせいだと思うことにし、私は視線を2人に移す。 「あのう……あなたたちは?」 「人に聞く前に、まず自分からいうものじゃないの?」 そうだよね、と私は思って口を開いた。 「東 花南。高校生です」 「私は博麗霊夢。ここの巫女をしてるわ」 「霧雨魔理沙だぜ。見ての通り、魔法使いだ」 巫女が……えっと、霊夢さん。 で、魔法使いが……魔理沙さん。 __え? 「ま、魔法使い!?」 そういえば中学校が同じだった穴川君がそんなこと言ってた気がする。 「……現実に目を向けた方がよろしいかと」 普通にイタイ。 「前にも外来人にこんなこと言われた気がするぞ?そんなに魔法使いってのは珍しいのか?」 「珍しいというか、魔法なんてそもそも存在しません」 私がきっぱりと言い放つと、魔理沙さんはむ、と顔をしかめた。 しかしそれからすぐに元に戻って、苦笑する。 「外来人はこういうの信じないからなぁ……あ」 「?」 不意に2人が空を見上げた。 私もつられて空を見上げると、真夏の青い空と太陽__って…… 「ひっ、ひっ、人がっ!」 浮いてるーーーーー!?とは声にならならず、ひたすら口をぱくぱくしていた。 すると、霊夢さんがクスリと笑ってこう言った。 「ここは幻想郷。忘れられたものたちの行き着く場所よ」 ずさぁっという、砂利を巻き上げる音がし、男性がやってくる__ん? 「つ、つっちー先生?」 「へ?東?」 「な、な、なんで……」 「それはこっちのセリフ」 それは英語の土樹良也先生だった。 ジーパンにTシャツ。おしゃれも何もない、いつものような格好でリュックを背負っている。 「良也さん、知り合いなの?」 「まあね。生徒だよ」 「そ。迷い込んで来たみたいなのよね、この子」 「あ、そーなんだ」 うわぁ、つっちー先生が霊夢さんにさん付けされてるよ。 どういう関係なの、一体。 「まあいいわ、お茶にしましょ。良也さん、頼んでたお茶っ葉買ってきてくれた?」 「ん。……って僕が淹れるのか!?」 「そうよ。あなた……えっと、花南?も飲むでしょ?」 いきなり話題を振られ、驚いたものの二つ返事を返した。 「美味しい……」 少しだけ時は巡り、人数分の湯のみと急須を持ったつっちー先生がやってきたところで小さなお茶会が始まった。 「そう?私的には75点かしら」 「え、これでですか?」 これで75点なら、100点はどんな味なんだろう。おそらくこの世のものとは思えないくらい美味しいんだろうな、と考えた。 そういえば私は紅茶派だった……気がする。それが思い出せないくらい、今は日本茶にどっぷりハマっている 「なあなあ良也。今日は売れ残りないのか?」 「……チッ○スター、薄味が1つ」 「おっ、くれよ」 「はいはい」 ガサゴソとつっちー先生がリュックを漁ると、よく見知ったチッ○スターが現れた。 「私、かれこれ五年くらいチップスター食べてないですねぇ。ずっとポテ○チップスで生きてきました」 私がそういうと、チッ○スターを受け取った魔理沙さんが私に向かって円柱の箱を差し出してくれる。 「ありがとうございます」 ぱりっという軽快な音とともに、口にチッ○スターの味が広がった。 「久しぶりに食べると美味しいですね。あと、チッ○スターとお茶っていうのも合います」 それからも私たちは体感時間にしておよそ30分。 お菓子の話をしながら過ごした。 「……あ」 「どうしたんだ?」 「……私って、ここまでどうやってきたんでしょう」 あー、と魔理沙さんが言って、霊夢さんを見やる。 「ここには普通は来れないのよ。でも時々迷い込んでくる人がいる。それを送り返すのも、巫女の仕事なのよねぇ〜」 「そ、そうなんですか?じゃあつっちー先生は」 「僕は特殊。いくらでも行き来出来るんだ」 「は、はあ」 よくわからないがそういうことなのだろう。 こういうことには首を突っ込まずにいた方がいいのだ。 「そう。普通はね。けどあなた、結構面白いしここに住まない?」 聞きなれない声がして振り返る。 するとそこには、金髪で扇子を持った女性が立っていた。 「スキマ、東を誘うのはやめろ」 「ふふっ、冗談よ」 先生のいう、スキマさんが扇子を振った途端、私から足場が消えた。 「きゃぁっ」 そんな小さな声とともに、私は得体の知れない中に落ちてゆく。 気づくとそこは美術室だった。 「……え?」 慌ててあたりを見渡すが、そこには部員しかいない。 「どしたの?」 「うっ、ううん」 そのとき、私はスケッチブックに気づいてそれを手に取った。 「……っ!」 そこには霊夢さんと魔理沙さんがいた。 「これって__」 よく見ると、左下に文字が見える。 【幻想郷は全てを受け入れます】 字体がとても胡散臭かったが、私はこれをみてなんだか胸がドキドキと高鳴った。 「ん?なになに……ってさっきまで描いてた神社と森しかないじゃん」 優に言われ、私は再びスケッチブックを見る。 けどそこには、きちんと霊夢さんと魔理沙さんがいて。 2人でお茶をすすっていた。 「見えないの?」 「何が?」 「……やっぱなんでもない」 変なの、と優は笑う。 私も笑い返してまたまたスケッチブックに目を通すと、今度は誰もいなかった。 「まあいいか」 それでも、あの胡散臭い字はそのまま。 私は考えるのをやめにして、スケッチブックを閉じた。 もうじき部活も終わりの時間だ。 「やっぱりこの子はいい子ね」 と、紫は微笑んだ。 「たまには記憶を消さないというのも、いいのかもしれないわ」 「つっちー先生!」 「ん?東、質問か?」 「違いますよー。これです、これっ!」 「スケッチブック……?それにこれ、博麗神社……」 「博麗神社っていうんですか!?私もまた、あそこに行けますかね?」 「どうだろう、スキマは結構東を気に入ったみたいだし……またチャンスがあればな」 (……なんだこれ、霊力を感じる。それにこの、胡散臭い文字は一体なんの真似なんだよ) ・あとがき・ ってここに書けばいいのでしょうか。 まずは、初めましてです。 こんな素人中の素人ですが、また書けたらまた投稿してみたいと思います。 ちなみにオリキャラの名前の読みですが……東 花南 (あずま かな)となっています。 一応地主の娘とかそういう設定を考えてなくも…… |
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