良也の非想天則新技



スキルカード

「草薙の剣レプリカ」  ↓↓射撃
攻撃力はほとんどないが、前方の弾をまとめて薙ぎ払うことができる。近距離でならカウンターにもなる。ただし、タイミングが命。


スペルカード

光符「太陽拳」 コスト1
範囲は狭く近距離でしか効果はないし、当たっても相手がほんの少しの間だけ硬直するというだけのスペル。だが、コストが低くしかも発動が速いため、カウンターやコンボの繋ぎなど、用途は幅広く使いやすい。

龍符「超かめはめ波」 コスト2
魔理沙のマスタースパークを参考に試行錯誤を繰り返し完成した改良型かめはめ波。見た目はそれなりの物になったが、威力はマスタースパークの十分の一にも満たないかなり見掛け倒しな中身スッカスカの技。範囲だけは広いのでそこそこ使える。八雲紫にだけは絶対に見せないように心がけている。

飲茶「狼牙風風拳」 コスト2
おそらく使用すれば負けフラグになる技。ただの連打。相手を端に追い詰めてから当てればそこそこのダメージにはなる。

浪漫「メガドリルブレイク」 コスト3
土符と風符の複合技。衣玖さんのドリルに憧れて代わりになるものはないかと探し始め、天子のように岩をドリルにすることで落ち着いた。土符で岩を操り、風符で回転させそのまま自分ごと突っ込む技。自分でもまだ納得がいってないし、天も貫けないのでとりあえずメガ。









【今と昔】 STAGE1 STAGE:守矢神社 BGM:人形のある風景



それは良也が守矢神社に遊びに行った時のこと。
着いた時にはちょうど東風谷早苗が飛び立とうとしていたところだった。


「あれ? 東風谷? 今から出かけるのか?」

「あ! 先生! 先生は見ませんでしたか!? 巨大な人影を!」


東風谷は焦ってはいるが、どこか嬉しそうな表情をして駆け寄ってきた。


「巨大な人影ぇ? いや、見てないけど。僕はさっき幻想郷に来たばっかりだから…」

「そうですか…」

「巨大な人影って何なんだ?」

「わかりません。でも見たんです、動く大きな人影を。あれは霧の湖の辺りでしたね」

「また異変かな…?」


良也はまた異変なのではないかと心配になったが、東風谷は頻りに興奮しているようだ。良也は東風谷がなぜそんなに嬉しそうなのかが気になり、聞いてみることにした。


「東風谷…。なんか、妙に嬉しそうに見えるのは気のせいか?」

「え!? 私、そんな顔してましたか!?」


東風谷は恥ずかしそうに顔の具合を確かめる。だが、それでは肯定しているも同然だった。東風谷は少し迷っているようだったが、気を取り直して少々恥ずかしそうに理由を話し始めた。


「こほん…。私はですね、あの大きな人影は……」

「うんうん」

「巨大ロボの影ではないかと思っているのですよ」


………………。


「何ですかその目は」


しばし沈黙があったが、その沈黙に居た堪れなくなった東風谷がお祓い棒を構え出した。


「ままま、待て待て! 別に信じてないとかそういうわけじゃないんだ!」

「じゃあ、何なんですか」


東風谷はいったんお祓い棒をおさめ、良也の言葉を待つ。


「いや、東風谷はもう立派な幻想郷の住人なんだなって……」


………………。


「何か含みがあるように聞こえるのですが…」


しばしの沈黙の後、東風谷は再びお祓い棒を構え出した。


「い、いや、そんなことはないぞ! ただ、昔の東風谷はもうちょっと大人しかったかなぁ〜って……」

「へえ…、そんな事を思ってたんですか…」


正直者は馬鹿を見る、とはよく言ったものだ。だが、彼は生来の性格ゆえか中々治すことはできないようだ。所謂、地雷を踏んでしまう性質というやつなのだろう。


「ま、待てって! 確かに今のは僕が悪かったけど、別に弾幕ごっこをするほどじゃないだろう!?」


そう言う良也に、東風谷はしれっと、


「それが幻想郷じゃないですか」


と言った。


「ああ、その説明ですごく納得できる自分が嫌だ……。でも、だからって……!」

「先生」

「え?」

「幻想郷では常識に捉われてはいけないのですよ」



「…………、昔の素直で思いやりのあった東風谷はどこに……」





BGM:信仰は儚き人間の為に





決闘準備


開始





青年弾幕中...(戦闘シーンは……ごめんなさい、ありません)





決着





「はあ…はあ…、お、落ち着いたか…」

「はい…。まだ少し納得がいってませんが、これ以上先生にかまけてたら巨大ロボがまたどこかに行ってしまうかもしれませんしね」

「そ、そっか…」


一応、良也の勝利という形で終わったのだが、ダメージが大きいのは明らかに良也のほうだった。


「では、私は急がなければいけないので、これで…」

「あ、うん」


そう言って飛び立つ東風谷。


「巨大ロボね…。まあ、今更幻想郷に巨大ロボがいたって言われても驚かないけど…。もし本当にいるんなら見てみたいな」


少し考え、


「行ってみるか」


と思い立ち、彼は霧の湖を目指した。









【馬鹿な子ほどなんとやら】STAGE2 STAGE:霧の湖の辺 BGM:人形のある風景



「くっそー、あの青巫女めー。今度会ったらギッタンギッタンにしてやるんだから」


少々ボロボロになっている少女の名はチルノ。氷の妖精である。ボロボロになっているのは、おそらくその青巫女とやらと一戦やり合ったからだろう。


「だいだらぼっちはあたいが手懐けるんだから、急がないと…」

「なるほど、だいだらぼっちね。そういう可能性もあるか」

「うわあ! って…良也?」


実は先ほどから後ろにいたのだが、彼女は気づいていなかったようだ。


「よっ、久しぶりだなチルノ。それで、そのだいだらぼっちとやらはどこに行ったのか知ってるか?」

「え!? あ、あたいだいだらぼっちなんて言ってないよ!」

「いや、もう聞いてるから……。あ〜、じゃあ、アレだ。この辺りで巨大な人影を見たりしてないか?」


良也はそう言い直すが、チルノはそんな良也からぷいっと顔を背け、


「あたい知らないよ。あっちのほうで見たなんて絶対言わないから」


ご丁寧に指まで差したのに、これでばれないと思っているのがまるきゅーと呼ばれる所以だろう。


「そうか、あっちか。協力感謝する」

「あ! し、しまった! 卑怯だぞ良也!」

「いや、お前が勝手にやったんだろうに……」


良也はさすがにもう構ってられないと思い、飛び立とうとするが、


「待て! だいだらぼっちはあたいが手懐けるんだ! 良也には渡さないよ!」

「いや、別に要らないから……。はあ……」





BGM:おてんば恋娘





決闘準備


開始





青年弾幕中…





決着





「くっそー、二回目じゃなければあたいが勝ってたのに」

「あ〜、疲れた〜…。連戦は勘弁してくれ……」


どちらも東風谷と弾幕ごっこをした後だったが、なんとか良也が勝利したようだった。


「あ、そうだ! あたいが先に見つけて手懐けてやればいいんだ。あたいってば天才ね!」

「あ、ああ。そうだな」

「あたいは先に行くからね。泣いて悔しがればいいわ!」


もはや良也には、そう言い飛び立つチルノに反論する気力も残ってなかった。


「はあ、まったく…。えっと、紅魔館の方角だったな。ちょっと休憩したら行くか……って、あれ……?」


休憩しようと座り込んだ良也がふと目を向けた方向に…、


「あ、あれって、巨大な人影……」


東風谷やチルノが探しているはずの影が見えた。


「(でも、あの方角って…、確か前に神奈子さんに連れてってもらった間欠泉地下センターのほうじゃ……)」


しかし、先ほどチルノが指さした方向は紅魔館の方である。


「チルノの奴…、間違えやがったな……」


だがそんなことはどうでもいいこと。良也は間欠泉地下センターに向かうのだった。









【一足先に】STAGE3 STAGE:核融合炉心部 BGM:なし



「あっつい場所だな…。当たり前だけど。こういうとき気温調節できるのはありがたいね」


ここは核融合炉心部。すぐ真下では、マグマがグツグツと沸いている大変危険な場所だ。気温も尋常ではない。だが、能力で気温を調節できる良也なら、ある程度軽減できるのだ。


「ここの真上で人影が消えたんだから、ここしかないと思うんだけど……」


と、その時…、


「異物混入!」

「へ? ってうわわ!」


何者かの声とともに巨大な火弾が降ってきた。なんとか、ギリギリで避けることができた良也は声の主を確認する。


「げっ、お空…!」


彼女は霊烏路空。八咫烏の力を摂り込み核融合を操ることができるようになった地獄烏の少女である。良也には一度彼女に消し飛ばされた嫌な思い出がある。


「核融合炉の異物混入は一旦反応を停止し、即座に異物を排除せよ!」





BGM:霊地の太陽信仰 〜Nuclear Fusion





決闘準備


開始





青年弾幕中...





撃破





なんとか第一波を凌いだ良也は彼女を説得しようと叫び掛けた。


「ま、待てお空! 僕だ、良也だって!!」

「ん〜? 良也……って誰だっけ?」

「この鳥頭め……」


彼女は烏ゆえに鳥頭である。


「ほら、地霊殿にもよく遊びに来てただろ。さとりさんやこいしやお燐とも友達だし」

「さとり様たちと……? ん〜…………」


お空は何とか頭から捻り出そうと考え込んでいる。良也は思い出してくれることを祈るばかりだった。


「ん〜〜〜〜〜、…ん? あー! 思い出した!」

「よ、よかった。思い出してくれたか」

「私が地上に進攻しようとしてたときに邪魔してきたやつだ!!」

「なんでそういうことだけ覚えてるかなあ!!」


なんとも間の悪い鳥頭である。


「あの時のお返しだ! 喰らえ!」



核熱「核反応制御不能ダイブ」





青年弾幕中...





決着





「い、今だ! 逃げろ!」


良也はスペルブレイクした際にできた隙を見つけて、その場から逃げだした。


「よ〜し、次はこいつで……ってあれ? もしかしてさっきので蒸発させちゃったのかな?」


スペルブレイクされたことも忘れてしまったようだ。


「まあいっか。お仕事に戻らなきゃ」









【人影の正体は】STAGE4 STAGE:間欠泉地下センター入口 BGM:人形のある風景



「ふう〜…、危なかった…」


お空の猛攻から何とか逃げ出した良也は入口に着いたところで座り込んでしまった。


「なんで今日はこうも弾幕ごっこと縁があるのかねぇ……。もしかして厄日か?


「あれ〜? 良也じゃん。こんなところでどうしたの?」

「ん?」


自分の不運を嘆いている良也に話しかけてきたのは……、


「諏訪子か…。そっちこそ、なんでこんな所に?」


守矢の二柱の内の一柱、洩矢諏訪子だった。


「私はちょっと用事があってね…。で、そっちは?」

「ああ、巨大な人影を追ってきたんだ」

「巨大な人影?」

「そう、その巨大な人影がこの辺まで来てスーッと消えたから確かめに来たのさ」

「この辺でスーッと……?」


その言葉に諏訪子は少し俯き考え込むと、顔を上げてニヤッと笑った。


「はっは〜ん、そういうことか」

「ん? 何か知ってるのか?」

「ん、まあね。…教えてほしい?」

「そりゃあ、まあ…。そのためにここまで来たんだし」


諏訪子はそれを聞くと、意地悪く笑った。


「実は、今私暇なんだよね〜」

「は? さっき用事があるって…」

「暇だったからその用事に来てたのさ。他に暇つぶしの種が出来たらそっちを優先するよ」


そこまで言われて良也も諏訪子がどうしてほしいのか想像がついた。


「教えてほしけりゃ遊べってか…。はあ…、まあいいけど。何をするんだ?」

「ん〜、そういえば私って良也と弾幕ごっこしたことなかったな〜」

「……は?」


呆然とする良也に諏訪子はさらに意地悪く笑うと、


「よし! じゃあ、弾幕ごっこをしよう!」

「はあ!? 待て! 待てって! なんでそうなる!」

「さっき言ったじゃん。良也とは弾幕ごっこしたことなかったからね」

「別に今じゃなくてもいいじゃん! なんで今日に限って!?」

「だって今日したくなったから


「見てわからんか!? 僕ってばさっきまで弾幕ごっこの連続で疲れてるんだよ! だからせめて今日は他のことにしてくれよ、頼むから!」


そう言ってボロボロの服を見せつける良也に、諏訪子は益々笑みを深める。


「まあまあ、手加減するから」

「……お前絶対わかっていってるだろ」



「ほらほら! 楽しい弾幕ごっこの始まりだよ!」

「…もう勘弁してよ」





BGM:明日ハレの日、ケの昨日





決闘準備


開始





青年弾幕中...





決着





「ぜい……はあ……ぜい……はあ……、げほっ、げほっ…」

「あ〜、…大丈夫?」


もはやorz状態の良也には言葉を返すほどの元気は残っていなかった。


しばし休憩して、呼吸を整えた良也は諏訪子を恨めしそうに見る。


「お、お前、本当に、手加減、し、したのかよ……げほっ」

「そりゃあ勿論。神様が弱い者いじめするわけにはいかないからね」

「じゅ、十分弱い者いじめしてるだろ……」

「失敬な。私はちゃんと良也のレベルにあわせたよ。そんなに疲れてるのは連戦だったからでしょ?」

「だったら、弾幕ごっこさせるなよ……」

「まあ、それは神からの試練ということで…」


そう言う諏訪子は少し申し訳なさそうにしている。どうやら、悪いとは思っているようだ。


「それじゃ、約束だったしね。あの人影のことを教えるよ」

「ああ」


楽な姿勢で座り、聞く体勢に入った良也に、諏訪子は説明を始めた。


「あれの正体は非想天則だよ」

「非想天則?」

「そう。ちなみに意味は天則、つまり天の法則を考えられない、馬鹿って意味」

「ふーん。で、その非想天則っていうのは結局何なんだ?」

「ただのアドバルーンだよ」

「は? アドバルーン」


良也は巨大な人影とアドバルーンがどう繋がるのか全く分からないといった様子だ。


「今度河童たちがバザーを開くのさ。その目印だよ」

「……そのアドバルーンはあんなにでかいのか?」

「でかいよ。どこからでもわかるようにね」

「……そのアドバルーンは動くのか?」

「動くよ。間欠泉の蒸気の力を利用してね。蒸気の勢いが増せば腕が上がり、収まればうなだれる。まあ、気球みたいなもんかな」

「……じゃあ、霧の中の巨大な人影の正体は…」

「蒸気を纏った河童たちのアドバルーン、非想天則さ」


………………。


「……しょーもな…」

「あはは、そんなに気を落とさないで。動きだけはやたらとリアルだからね。普通誰もアドバルーンなんて思わないよ」

「まあ、いいか。最初はまた何か異変が起こるんじゃないかって思ってたんだし。何でもないんなら別にいいよ」

「そうだね、平和が一番だ。じゃあ、私はもう行くよ」

「ああ、じゃあな」





諏訪子が飛び去った後、良也は何かが引っかかるのを感じた。


「ん〜? 何かあったか?」


良也がその違和感を探してみると、ふと気がつく。


『……そのアドバルーンは動くのか?』

『動くよ。間欠泉の蒸気の力を利用してね。蒸気の勢いが増せば腕が上がり、収まればうなだれる。まあ、気球みたいなもんかな』


「……足は動くのか?」


蒸気の力を利用するなら、そこに蒸気の吹き出るものがなければいけない。この幻想郷なら間欠泉以外の場所では無理であるはずだ。つまり、移動すればもう動かないはず。足なんか動かしてはいけないのだ。


「なら、東風谷が霧の湖で見たっていうのは……? それにチルノも……」


もし、チルノが紅魔館の方を指さしたのが間違っていなかったのだとしたら…。


「もし、チルノが本当に紅魔館の方に影を見たのだとしたら……



影は…、もう一つある?

じゃあ、東風谷やチルノが見たのは……?

とその時、


「!? あの影……!!」


良也は霧の湖の辺りに、あの巨大な人影を見た。


「(諏訪子の言うことが本当なら、あの影の正体は非想天則…………、であるはずがない……!!)」


良也は霧の湖に向かった。










【伝説の巨神】STAGE FINAL STAGE:霧の湖の辺 BGM:伝説の巨神



「確か、この辺りだったはず……」


巨大な人影は良也が霧の湖に着く前に消えてしまった。今は影も形も全く見当たらない。仕方なく、良也は霧の湖に降り立ち辺りを探すことにした。


「駄目だ…。どこにも見当たらない」


もう移動してしまったのだろうか。そう思い自分も移動しようと飛んだその時…、


「む? なんじゃお前は」


水色の綺麗な髪を一部だけ角のように逆立てた妙な髪形の少女が現れた。


「えっと、君は?」

「ふむ、妖怪でもない人間が空を飛ぶか…。さすがは幻想郷…、と言ったところじゃの」

「えっと…、だから、君は?」

「わらわの幻想郷での初陣にしては粗末な相手じゃが、まあいい。先に腹ごしらえをするのもよかろう」

「あの〜、もしも〜し。無視しないで頂けませんか〜」


そこまで言ったところで、やっと少女は返事をしてくれた。


「なんじゃ、五月蠅いぞ下郎。そなたは黙ってわらわに喰われておればよいのじゃ」


返事は散々なものだったが…。


「く、喰うって…、久々に聞いたぞその単語…」


逃げようかどうしようか迷ったが、聞いておきたいことがあるのと、もしかしたら話せば分かる子かもしれないという希望で踏みとどまった。死なない体というのも後押ししたのかもしれない。


「もしかしてだけど、あの大きな人影って君の仕業だったりする…?」

「そうじゃが」

「……その、どうやって?」

「わらわの能力で作った」

「そっか……」


とりあえず、影の正体は分かった。あとは……、


「えっと、どうしてそんなことを?」

「人間を驚かせるのが妖怪の本分じゃろう?」

「…なるほど」


他に聞きたいことは……、


「僕以外に君の所に来た人っていたかな?」

「おらん。幻想郷に来てから初めて会ったのがお主じゃ」

「……ということは、幻想郷に来てからまだ日が浅いのかな?」

「うむ。今日初めてこの地を踏んだ」


なるほどなるほど……。意外と普通に答えてくれたな。もしかしたら、根は素直な子なのかも。とりあえずはこんな所でいいか。


「あ、じゃあ、僕はこれで」

「うむ。…………って待てい!」

「チッ」


意外とすんなり行きそうだった良也の極自然にフェードアウトしよう作戦はギリギリで失敗に終わった。


「うぬぬ、人間のくせにふざけおって……」

「(まずいな…。怒らせちゃったか)」


どうあっても戦闘だけは避けたい良也は次の作戦に移ることにした。


「え〜っと、君は幻想郷に来たばかりなんだろう? 何だったら、僕が案内しようか?」


良也はこれで勘弁してくれ、と心の中で祈ったが、その願いは少女のまるで予想のしていなかった言葉によって打ち破られる。



「ふん、いらん。どうせこの幻想郷はわらわのものになるのだからな」



「は?」

「この幻想郷はいずれわらわが支配する。じゃから案内など不要じゃ」


りょうやは こんらん した!


「あ〜、えっと、君……、そういえば名前は何だっけ?」

「下郎に名乗る名などない」

「ぐ…、まあいいや…。えーっと、幻想郷を支配するって?」

「ふふん、そうじゃ。わらわのような大妖が人間どものせいでこのような辺境に来るはめになったが…、それはまあよい。ならば其の辺境をわらわが支配してやればよいと思い立ったのじゃ。わらわが治める地としては少々不満じゃが…、そこは大目にみるとしようではないか



そう言い、得意げな顔をする少女に、良也はつい…、


「無理だと思うなぁ……」


と呟いてしまった。


「なんじゃと!?」

「あ、いや、でも、ここにもスキマとか強い妖怪が結構いるし、それにその強い妖怪より強い人間もいるし…」

「言いおったな! ならば、まずはお主をわらわの幻想郷支配の第一歩にしてくれようぞ! 光栄に思うがよい! 喰らえ!!」


そう言い、何かをしようとした彼女に、良也は身構えるが……、


「………………」

「………………」


何も起こらない。


「な、なぜじゃ…! なぜわらわの能力がきかぬ!」

「(ああ。咲夜さんみたいな空間系の能力じゃなさそうだから、鈴仙やレミリアみたいな目に見えない物を操るタイプの能力なのかな?)」


良也の能力はそういうタイプの能力を無効化することができるのだが、そんなことを知らない彼女には何が起こっているのか全く分からなかった。


「お主はもしや、中々の強者なのか……?」

「え? いや、僕は幻想郷じゃ大分弱い方だけど…」

「なんと!? お主のようなわらわの能力を防ぐ者が!? ぬう……! わらわは幻想郷を甘く見ておったか……!」

「(……もしかしたら、諦めてくれるかな)」


そう思い黙っていたが、良也は今日の自分は何と縁があるのかを覚えていなかった。


「……ならば、純粋な力で圧し切るのみよ!! ゆくぞ! 我が第一歩!!」

「だあああああ!! もう! なんでこうなるんだあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」





BGM:アンノウンX 〜Unfound Adventure





決闘準備


開始





青年弾幕中...





決着





「ぬう……。おのれ……」

「(この子は力は強いけど弾幕戦には慣れてないみたいだ…。これならなんとかなるかも)」


勝負の行方は意外にも良也が優勢で進められた。慣れの差が勝負を決めたらしい。


「……お主、名はなんという」

「え? 土樹良也だけど…」

「そうか……。わらわは前言を撤回しよう」

「…………ッ!!(霊力が膨れ上がって!!)」



「名乗ろう!! 我が名は左城宮則紗(さしろみやサーシャ)!!! 国造りの神、大太郎法師(だいだらぼっち)ぞ!!!」





BGM:空に浮かぶ物体X





ラストスペル「伝説の巨神 〜大太郎法師〜」  制限時間120秒
画面の右側の三分の一くらいを則紗の能力“影を操る程度の能力”により巨大化させた影の巨人(非想天則のタイトル画面で歩いてるような奴)の胸から上辺りが占領している。良也が移動できるのは残りの左側三分の二くらい。空中戦の為良也は上下左右自由に移動できる。スペルカードは空中で使用できるもののみ使用可能。
則紗の攻撃方法は、影の巨人が腕を振り回す(射撃扱いの為グレイズは可能)、巨人の中心部にいる則紗自身からの射撃のみ。
則紗の周囲に浮いている黒い球をすべて破壊すればスペルブレイクの状態となり、則紗が無防備になり一切の攻撃がやむので大ダメージを与えるチャンスになる。(霊夢の「夢想封印 円」みたいな感じ)





決着





影の巨人は静かに崩れ落ちた…。









〜エピローグ〜   BGM:暮色蒼然



守矢神社に四人の少女が集まっている。


「ふ〜ん、非想天則ねぇ…」

「そ! 今度開かれる河童たちのバザーの目玉さ」

「まったく、諏訪子様はまた勝手なことをして…」

「まあ、そう怒るなよ。ところで、その非想天則ってのはどんなものなんだ」


その少女は霊夢、魔理沙、東風谷、諏訪子の四人だ。魔理沙が今回の人影のことを諏訪子が知っているという噂をどこかから聞きつけ、霊夢とともに事情を聴きに来たところだった。


とそこへ、


「お〜い」

「? あら、良也さん」


何故かボロボロになっている良也がやってきた。


「ここにいたのか。博霊神社にいなかったから探したぞ」

「それはごめんなさい。何か用なの?」

「ああ、一応会わせておいた方がいいと思って…」


そう言う彼が振り向いた先には、


「? 良也さん。その子は」

「なんだ? また女連れか良也」

「先生…、節操がないですね…」

「まあまあ早苗、男なんて皆そんなもんだよ」

「違うわ!!」


そんないつものやり取りをしていると、その少女は一歩前に出て名乗り上げた。


「わらわは左城宮則紗という。よろしく頼むぞ」

「どうやら妖怪みたいだけど…、良也さん?」


霊夢は目で説明を求めた。


「ああ、則紗は今日幻想郷に来たばかりの妖怪なんだ。幻想郷に一番詳しいのはスキマか霊夢だと思ったからこの子に幻想郷について教えてあげてほしいと思って。……スキマはあんまり会いたくないし」

「面倒ねぇ…。まあいいけど。教えてあげるからこっちに来なさい」

「うむ。頼むぞ」


そうして霊夢による則紗のための幻想郷講座が始まった。その間に魔理沙は良也に気になってたことを質問する。


「なあ、どうして良也はそんなにボロボロになってるんだ?」

「ん? ああ、則紗と初めて会った時、弾幕ごっこになってな…」

「へぇ〜。それで、結果は?」

「まあ、一応僕の勝ちかな」

「え? 先生がですか?」

「…東風谷、何だその顔は」


東風谷は本当に不思議そうな表情をしていた。


「な〜んだ、良也が勝てるくらいだったら、私なら楽勝だぜ」

「そうですね。私でも勝てそうですね」

「うぅ…、反論したいけどできない…」

「ぬう、やはりそうなのか…。幻想郷とはそれほどの強者が集まる場所だったのじゃな。わらわは井の中の蛙じゃったのか」

「こら、ちゃんと聞きなさい」


そう話していると、今まで黙って則紗を見つめていた諏訪子が戸惑うような表情で良也に話しかけてきた。


「ねえ、良也…。良也はホントにあの子に勝ったの?」

「ん? まあな」

「でも、あの子の力はすごいよ。………………それに、あの子…、妖怪とも神ともいえる…かなり高位な存在だ」


諏訪子はいつになく真剣な表情だったが、それには気づかず最後の言葉も聞き逃してしまった。


「ん? 何だって?」

「ん〜ん、何でもない。それで、どうやって勝ったの?」

「どうやって…って、則紗は幻想郷に来たばかりだったみたいだから弾幕勝負に慣れてなくて、それに僕の能力は則紗の能力と相性がいいみたいだったから」

「ふ〜ん…(ま、そういうこともあるのかもね。というよりあの子が勝手に勘違いしただけかもしれないけど)」




諏訪子の予想は当たっていた。




左城宮則紗の能力“影を操る程度の能力”の本懐は、概念的な影を操ること。例えば心の影。




心の影を肥大化させたり、心の影を実体化させ己の心の闇を垣間見させたりできるのだ。




もしかしたら、彼女は本当に幻想郷を蹂躙できるほどの実力を持っていたのかもしれない。




もしそうだとしたら、良也は幻想郷の危機を救った救世主となる。




だが、そんなことは人知れず。妖怪知れず。




当の本人たちも知ることはないのだった……。





BGM:悠久の蒸気機関





Fin.





















あとがき


一日で約一万文字書いたのは生まれて初めてです。rioです

こ、腰が……腰がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

朝から書き始めて約10時間。ここまで書きあげました。絶賛スランプ中だったのが嘘のようです。

ただ、当分は書きたくないです。

…………腰が痛いです。

戦闘シーンがないのは、描写を描くことが苦手なうえ、良也が勝つイメージが浮かばなかったからです。





左城宮則紗を知らない人の為の紹介


東方非想天則の新キャラ。という名目の釣りキャラ。

一時期ニコ動で流行りました。

何故かpixivでやたらと人気が出て、今では百枚を超える絵が投稿されています。

ちなみに、彼女のテーマ曲は「黒と影の偽歴史 〜The Fake」です。ニコ動かようつべで聴けますよ。

あと、作中に出てくるラスぺはrioが勝手に考えたものなので実際にはあんなものはありません。

影を操る程度の能力の解釈も作中オリジナルです。





それではこのへんで、また……






戻る?