僕は高宮が誘拐されたことを聞き、場所を調べて高宮さんに連絡したが、高宮さんたちは人払いの結界に足止めされていた。仕方ないから僕が一人で突入、高宮の奪還を行うことにした。銃とか持ってないといいなぁ……。 「っっっっしゃああぁ!」 硝子の破片が腕を浅く傷つけるのも厭わず、突っ込んでいった。 すぐさま下を見下ろし、三人の男と、それに囲まれるように座らされている高宮を発見する。 「先、生?」 「逃げるぞっ」 高宮を抱えて飛び立とうとしたその時、霊弾が数発僕の足元の地面を穿った。 「ふっふっふ、待っていたわよ!」 そう言ったのは、高校生くらいと思われる巫女服っぽいものを着た(脇は開いてない)ツインテールの女の子だった。 「私の張った結界を突破し、飛行術まで行使するなんて……、流石は高宮のお抱え術師ってところかしら」 「ま、まあ、そんなところ…、なのかな?」 その女の子は数人の男たちを引き連れてこちらに歩いて来た。なんというか、すごく高慢な感じのする子だな…。 「私が以前その子に掛けた呪いを解いたのって、あんた?」 「って、あの呪いか」 ああ、確かにあれは陰陽系だったな。 ってことは、この女の子が、あの時高宮に呪いをかけていた呪術師ってことね。 「やっぱりね……、これで私の溜飲も下げられる…じゃなくて、信用が回復してお給料も元に戻……でもなくて、……まあ、そういうことよ」 どういうことなんだろう…。 「つまり、勝負よ勝負! 今世紀最高の呪術師であるこの私が、あんたみたいな冴えない男にほんのちょこっっっとだけ不覚を取っちゃったから、あんたをぶっ飛ばして帳消しにするのよ!」 今世紀最高って、自分で言うなよ。…ん? ってことはもしかして……、 「そんなことのために、高宮を誘拐したのか?」 「そんなこととはなによ! 私にとっては死活問題なのよ! お給料が減ったせいで月末は百円マッ○生活なのよ!」 うわあ…、百円○ックって…。高宮もちょっと引いてるぞ……。 っと、そんなことより今は、 「じゃあ、勝負したら高宮は放してくれるんだな?」 「別にいいわよ。もともとそのために連れてきたんだし。……あ、でも、身代金要求すればお金が……「……おい」うっ、じょ、じょーだんに決まってるでしょ! それより、早く勝負するわよ!」 やれやれ、仕方ないか。 「せ、先生…! そんな、私の為に争うなんて……!」 「ん? ああ、大丈夫大丈夫。こういうのには割と慣れてるから(幻想郷でね)。まあ、ただの勝負なら死ぬことはないだろうし(もし死んでも生き返るし)」 心配する高宮にそう言って離れさせた。正直、逃げようと思えば逃げられると思うけどあの子はそこまで悪い子じゃあなさそうだし、……あと、なんかちょっと可哀そうだったし、少しくらい付き合ってあげよう。 「さて、準備はいいかしら?」 「ああ、いいよ」 そう言い、気を引き締める。彼女の霊力は僕より少し高いくらいといったところだ。幻想郷ならあそらく低い方だろう。 でも彼女は本職の呪術師だ。どんな攻撃をしてくるか分からないし、油断はできない。 「それじゃあ…、行きなさい!」 彼女がそう号令した途端、周りにいた男たちが一斉に僕に向かってきた。 「ええ!? ちょっ、僕と君の勝負じゃなかったのか!?」 「何言ってるかしら! こいつらは私の式神よ! 立派な陰陽術の一つだわ! そんなことも分からないなんて駄目な奴ね!」 よく見てみればそうだとわかった。僕にとって式神といえば藍さんと橙みたいな人(?)たちだからな。こいつらは空気すぎて分からなかった……、って、ん? 「てい!」 ドドドッ! ボン! 「んな!? 私の式が!」 やっぱり。藍さんや橙みたいな式神はかなりの存在感があるけど、こいつらにはそれが無い。よくよく見れば、こいつらの霊力は幻想郷にいる雑魚妖精とさほど変わらないくらいだった。霊弾数発で倒せる。 この子の式神って弱すぎじゃね? って思ったけど、あのスキマが規格外なだけか。 とまあ、そんなこんなで全部倒してしまった。……一分もかからなかったな。 「な、なか、中々やるじゃない…。す、少し甘く見てたわ…」 いや、これくらいだったら普通に倒せると思うんだけど…。 「よ、余裕ぶっていられるのも今のうちよ! 喰らいなさい!!」 余裕ぶっていたつもりはなかったんだけどな…。そう思っていたら今度は霊弾を数発撃ってきた。 弾幕ですらないそれらをスィっと避ける。グレイズ楽勝でした。 「こ、この〜っ! ちょこまかと! さっさと当たりなさい!」 今度は能力で作った壁で防御してみる。…全て防げた。この壁そんなに耐久力ないんだけどなあ。幻想郷の方じゃ一・二発で壊れるし。多分、呪術師だから直接攻撃系は苦手なのかも。 「そ、そんな…………!?」 なんか、俺tueeしてるみたいで罪悪感が……。さっさと終わらせよう。 ぴっ、と懐から一枚のスペルカードを取り出す。 「な、なによそれは…」 「水符」 まあ、怪我させるのも気分が悪いし、手加減してあげよう。 「『アクアウンディネ』」 バシャン! 「きゃん!」 可愛い悲鳴と共に彼女は気絶した。 やれやれ、多分この子は他の霊能力者と勝負とかあんまりしたことが無いんだろうな。攻撃方法とかあれだけしか無さそうだったし。霊力は僕よりあっても、錬度がまだまだだった。 とりあえず、気絶させた彼女をどうしようかと思い目を向けると…、 「げ!」 気絶してる彼女は当然びしょ濡れなわけで…、服もぴったり貼り付いているわけで…、しかも、この子もしかしてノーブr「先生……」うっ……! 「もしかして…、この為にこの人を濡らしたとか…」 た、高宮に白い目で見られてる……!? 「ち、違う! 一番威力の低い魔法がこれだったから使っただけだ! そんなつもりは断じてなかったんだ!」 「本当ですか…?」 「本当だ! だから…!」 「ん、んぅ…」 あ、騒がしくしていたから彼女が起きてしまったようだ。こんな短時間で起きるとは…、もしかしたら無意識に防御していたのかもしれない。 「あ、あれ…? 私……」 「え〜っと、大丈夫か?」 なるべく彼女を直視しないように声をかける。…でも、ちょっとくらいなら、って駄目だ。高宮がまだ白い目でこっち見てる。 「あ…、私……、負け、て」 「あ〜、うん。えっと、僕の勝ちでいいかな?」 僕はそう言ったが、彼女はしばらく呆然とした後、突然…… 「う、う〜、うえぇぇぇ…」 泣き出した。 「ちょっ、なんで!?」 い、いきなり泣くとか! ヤ、ヤバい、僕の心が罪悪感でとか、僕の世間帯とか、高宮の白い目とか、とにかくヤバい! どうにかして泣きやんでもらわないと、と思っていたら彼女はいきなりスクっと立ち上がった。 「こっ」 「こ?」 そして…… 「これで勝ったと思うなよ馬鹿ぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!」 と、捨て台詞を残しものすごい勢いで走り去っていった。 これには僕も、さっきまでずっと白い目をしていた高宮も呆然。 しかも、遠くの方で「呪ってやるんだからぁ〜〜〜〜〜…………」という声も…。 人を呪わば穴二つ。 呪いというのは失敗すれば自分に返ってくる。 能力のおかげで呪術の類は一切効かない僕を呪えばどうなるか……。 早めに彼女が気付いてくれることを祈ろう。 あとがき もしかしたら、風邪じゃなくてインフルだったのかも。病院行ってないけど。rioです。 熱は大分下がったからもう大丈夫だろうけどね。 高宮栞に呪いをかけた呪術師はツンデレ。 人気投票の時にそんな噂が流れているときから妄想してました。 まさかホントに書くとは思ってなかったけど。 今回のオリキャラ(?)の設定みたいなもの。ちなみに名前はまだ無い。 高宮栞がいる女子校とはまた違う女子校に通っている。 一応、一人暮らし。料理はできない…。なので、専ら外食。しかも贅沢なので金が掛かる。 とある呪術師の家系の出で、百年に一人の逸材だと言われ自分もそうだと思い込んでいた。 実際、呪術の仕事で一度も失敗したことが無かった。良也が初めての壁。 呪術師ではあるが、人が死ぬのは嫌いなため、殺しは絶対に請け負わなかった。高宮栞のときも死なないように細心の注意を払って呪術を行っていた。 |
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