博麗神社に住むようになってから一週間がたった。

掃除や炊事等は特に問題なくできた。
料理ができるかどうかは結構不安だったが、教えてもらったら割と普通にこなす事が出来た。

霊夢は楽ができていいわ。なんて言って喜んでいた。
正直楽しい。
今まではずっと動くこともままならなかったから、なんでも楽しい。
命のやり取りはたのしくなかったけど。

そして魔理沙が弾幕ごっこを教えてくれる、となったわけだが。

「全然上達しないな、お前」

「というか弾幕が出せないのは問題だよな……」

難航していた。

霊夢が使う、針や札はそもそも持っていないから使えない。
魔理沙が使う魔法なんかのように、霊弾なんかを使えたら、と思っていたが全く使えない。

霊夢や魔理沙が言うには、霊力には溢れているから使えるはずとのこと。
だがそれを外に出す事ができていないらしい。

風を起こしたりするのはどちらかというとスペルカードによる攻撃に使うべきだと言われ、通常弾を使えるようにしたかったけど……

「やり方が全然わからない…」

「素質はあるはずなんだがなぁ」

「そうね。霊力だけなら、魔理沙ぐらいあるのに」

らしい。
魔理沙は八卦炉という道具を用いているから、より強い攻撃を放つことができるが、なくても弾幕は使える。

「あぁもう! まどろっこしいのは苦手だぜ!」

そう言って空へ飛びあがる魔理沙。
八卦炉を構えてる…?

「ちょっと魔理沙!」

霊夢が魔理沙に対して叫ぶ。
ってまさか……

「こうなったら荒療治だ! 恋符“マスタースパーク”!」

「ちょっと待て!?」

誰がどう見ても普通の人間が当たったら死ぬであろうレーザー。
それを俺に向かって放ってきた!?

「魔理沙! やりすぎよ!」

「このままじゃ困るのは音夜だぜ! 邪魔するなよ霊夢!」

口論なんてしてないで助けてくれよ!?

そう叫びたかったけど、もう目の前に死が近づいていた。

“……耳を傾けて……”

!? 声が聞こえた。
小さな女の子の声。

それを意識した瞬間、信じられないことが起きた。

「マジかよ…」

「……」

魔理沙の放ったマスタースパークは俺から僅かに逸れ、後ろに飛んでいった。

「お前、何やったんだ?」

魔理沙が降りてきて俺に問いただそうとした。
しかし霊夢が魔理沙の肩に手を置く。

「その前に魔理沙?」

そしてすごい剣幕で魔理沙に声をかける。

「な、なんだ霊夢?」

「今の、神社に当たったんだけど……?」

後ろを見てみると、神社の端のほうが吹っ飛んでいた。

なんて出鱈目な威力だ…。

「い、いやぁまさか後ろに飛んで行くなんて思ってなかったからさ?」

しどろもどろの魔理沙。
いや、どっちにしても避けた時点で同じようなことになってたと思うんだが、本気で俺に当てるつもりだったんだろうか…

「直しなさいよ? 今すぐに」

怒ってる。当たり前だが、怒っている…

「ざ、材料を集めてくるぜ!」

「あ、魔理沙!」

飛んで行ってしまった……

「ったく、魔理沙は…。それにしても音夜さん、平気?」

「あ、平気だよ。よくわからないけど、結局当たらなかったし…」

本当によくわからない。
なんで逸れたんだろう? 魔理沙がそうしたわけでもなさそうだし。

「わからないの?」

「うん。なんか声が聞こえて、それに意識を向けたらあぁなったんだ」

「声? ……今も聞こえる?」

「うーん」

そう言われて意識してみる。

“私たちは……”

「……聞こえた」

「これも能力の一端かしら…?」

今度は俺の周りに霊弾が出現していた。
さっきまではどんなに頑張っても出せなかったのに。

「それ、飛ばせる?」

そう聞かれて、意識してみる。
すると霊弾は全弾霊夢のほうに飛んで行った。

「あ…」

やばい。
そう思ったが、霊夢は全弾はじいていた。

「どういうつもりかしらね?」

「いや、すまん…飛ばす、ということだけ意識したらなぜか…」

本当にわからない。
そもそも出せた理由もわからないし、意識的に操れるような感じじゃなかった気もする。
でも操れるような感じもする。
矛盾しているけど、意識を持っているような感じだった。

「まぁいいわ。大した威力もないみたいだし」

確かに。
男が直接殴ったほうが強そうだ。

「その声はまだ聞こえるの?」

「……いや、もう聞こえない」

本当に何だったんだろうか。
あの声が力の元なのかな。

「そ。じゃあ魔理沙もいなくなっちゃったことだし、壊れた個所を片づけて、夕飯にしましょう?」

「あぁ了解」

よくわからないことは後回しにして、とりあえず片づけか。
気になって仕方ないんだけどな。

片づけに時間がかかったら、霊夢が夕飯を準備していてくれていた。
自分が作るやつよりも圧倒的に美味しかった。





☆☆☆☆☆






「……ねぇ魔理沙?」

「ん?」

音夜さんが眠った後、私と魔理沙はゆっくりとお酒を飲んでいた。
話す内容は今日の音夜さんの力について。

「音夜さんの能力。謎が深まったわね」

「自然を操る程度の能力じゃなかったのか?」

あぁ。
魔理沙は音夜さんが言っていたことを聞いていなかったものね。
声について。

「それは間違いないと思うんだけどね…」

私は音夜さんが聞いたという声について魔理沙に話した。
そしてその後、一回だけ弾幕を張ったことについても。

「マジかよ。でも威力は大したことないんだろ? やっぱり実戦向きの能力じゃないな」

「それはそうね。でも弾幕は私に向かって放たれた。力を操作できていないのは危険だわ」

「確かにな。それにしても悔しいぜ…まさかマスタースパークを逸らすなんてな」

あれは異常ね。
あの時、小さい霊力の動きはあったけれど、明らかに力不足だった。
それにその動きもよくわからなかったし。

「それにしても……音夜さんを殺すつもりだったの? 下手したら死ぬわよ?」

「だから言ったろ? 荒療治だって。死ぬ気になりゃ人間いろんなことができるもんだぜ。実際そうだったろ?」

「まぁいいけどね…神社はちゃんと直しなさいよ?」

「……善処するぜ」

直さなかったら夢想封印よ。

「さって。今日は帰るぜ。にしても寒いのが続くよな」

「そうねぇ…春も近いって言うのに」

音夜さんが無意識に寒くでもしてるのかしらね。
だとしたらとっちめてやらないと。

「それじゃおやすみなさい魔理沙」

「おぅ。また来るぜ」




魔理沙が帰った後、少しばかり一人で飲みながら音夜さんについて考えていた。
魔理沙にも、本人にすら言わなかったが、あの後、音夜さんの雰囲気が違っていたような気がする。

「嫌な予感がするわね」

この寒さといい、音夜さんの能力といい…

「異変の予感がするわ。忙しい春になりそうね」





――あとがき――

おはこんばんちわ。りんちーです。
今回は修行?編です。
音夜の能力についてちょっと触れてみました。
そして異変が近いです。
みんなご存じの異変です。よろしくお願いします。

今回はすらすら書けたなぁ…



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