「うあ……、死ぬかと思った……」

あの少女から逃げるために空が飛べたらと思った俺だが、謎の風に吹き飛ばされた先は湖だった。

「地面に落ちてたら死んでたかもしれん……」

とりあえず湖から出る。しかしあの風はなんだったんだ? 雨や光のように俺が起こしたんだろうか。

「んー」

両手を前に風よ起きろー。と考えてみる。

《ビュォッ!》

「うぉっ!?」

マ、マジで起こりやがった。すげぇ、俺ってこんなことまでできたのか。

人一人を吹き飛ばすレベルの突風だからな。とんでもないぞ、これ。

なんか他の事もできるんだろうか? 試してみたいが……、何をしたらいいのかわからないし。なにより。

「誰かが近づいてきてるみたいだし、な」

さっきの少女ではないようだけど、また殺されかけたりしないだろうな。

話がまともにできるようだったら色々聞いてみないと。

それにしても、湖に落ちたはずなのに何故か寒くない。

服は濡れているのに、なんでだろう? あ、言い忘れていたけど、何故か病院で着ていた服ではなく、高校の制服を身に纏っていた。正直意味がわからん。

「ま、とりあえずは話を聞いてみるしかないかな」

俺はさっきの少女同様に空を飛んでいる少女に目を向けた。



◇◇◇◇◇



「あんたあたいの縄張りでなにしてんの?」

青い髪の少女、背中にあるのは氷、か?

「何と言われても困るんだけど、なんかよくわからない奴に食べられそうになって逃げた先がここだっただけかな」

というか縄張りってなんだ。まぁいいや。

「なるほど、妖怪に食べられそうになったからさいきょーのあたいのところに逃げてきたって事ね!」

「は?」

何を言っているんだこの娘は。さいきょー云々はいいが、妖怪?

「なに、違うの? あんた人間でしょ? なんか不思議な感じがするけど」

不思議な感じってなんだよ。よくわからんが。

「あぁ、確かに俺は人間だけど、それよりも妖怪ってなんだ?」

人間じゃない気配は確かにしたけど、妖怪……。

「知らないの? なるほど、変な服着てるしあんた外来人ね!」

外来人? あぁもう。なんか色々わけがわからん。

「すまんがよくわからんからその、がいらいじんとか妖怪とかの事を教えてくれないか?」

こんな小さな娘に聞くのはなんか嫌だが、さっきの少女とは違って襲ってこないし、話が通じるからな。しかたがない。

「ふふん、いいわ。さいきょーのあたしが説明してあげる!」

うわ、すげぇむかつく……。いや、落ち着け落ち着け。つーか、最強は関係ないぞ。

「外来人ってのはこのげんそうきょーの外から来た人間のことを言うのよ!」

……げんそうきょう? またわからない単語が出てきたぞおい。

とりあえずまだ話は続くみたいだから聞いておくか。

「そんでこのげんそうきょーにはあんたとは違って最初からいる人間や、人間を食料にする妖怪。そしてあたいみたいな妖精がいるの。他にもなんかいるけど気にしなくていいわ」

妖怪の次は妖精か。この少女は妖精なわけか。まぁ話を信じるなら、だが。

「正直よくわからんが……君みたいな妖精も妖怪みたいに人間を襲ったりするのか」

だとしたら俺は即刻逃げるべきだろう。まだ死にたくない。せっかく何度も拾っている命だし。

「しないわよ。あたいみたいにそこにいれば弾幕ごっこをしたりする妖精もいるかもしれないけど」

次は弾幕ごっこか。あたいはさいきょーだから! とかなんとか言っているが気にしない。

弾幕……、あの妖怪が使っていた光の玉か? いや、あれはごっこというには凶悪すぎる。まぁどうせあれなんだろうけど。なんとなく。

「なぁ、『あたいみたいに』って俺にはその、弾幕ごっこ? を挑んだりしないのか?」

まぁ俺はあんな光の玉を出すことなんかできないけどさ。

「んー、あたいの縄張りにいたし、攻撃しようと思ったんだけど……」

思ってたのかよ!?

危なすぎるだろ、この少女。思いとどまってくれたのかな? よかった……。

「なんていうか、あんた……」

ん? なんだ?

「あんたは攻撃しちゃいけないような気がしたから攻撃しなかった」

さいきょーのあたいの力を見せたかったけど、とか呟いているが、それはともかく。

攻撃しちゃいけないような気が? またもや意味がわからん。

この、げんそうきょうだかに来てから色々とよくわからないことばかりだ。

そういえば、まだ妖怪と妖精にしか会っていないけど、人間もいるみたいなんだよな。

「なぁ」

「んー、なに?」

「俺以外にも人間はいるんだろ? 他の人間がいる場所を教えてほしいんだが」

とりあえず、人間とも話したい。俺は人間なのだし。

まぁさっきの妖怪とは違い、この妖精の少女とは話しててなんか落ち着くけど。

「人里にならいっぱい人間がいるよ、でもあたいは場所知らない」

「そ、そうか」

だとすると自分で探す他ないか?

妖怪がいるみたいだし、あまり一人で動きたくないんだが……。

「あ、でも紅魔館ってところにも人間いるよ。一人だけだけど」

あと神社には紅白がーなどと言っているが、紅白? いやそれはいい。

「その場所はわかるのか?」

「わかるわよ。ここから結構近いしね」

そうか……。よし。

「それなら案内してもらってもいいか? 一人じゃたどり着ける自信はないし」

少女は少し考えるそぶりをみせ。

「いいわよ! さいきょーのあたいに任せなさい!」

そうして俺は紅魔館とやらに行くことが決まった。

「そういえば名前、聞いてなかったな。俺は音夜っていう。君は?」

「あたいはチルノ。さいきょーの氷の妖精よ!」

チルノだな。

「よし、じゃあ道案内よろしく頼む」

「任せなさい!」

元気な娘だ。



◇◇◇◇◇



いつものように蛙を凍らせたりして遊んでいたら湖に誰かが落ちてきた。

あたいの縄張りに勝手に入ってきたから攻撃しようと思ったけど、何故かこいつは攻撃しちゃいけない気がした。

よくわからないけど、攻撃できなかった。

こいつは人間で、さらに外来人。妖怪に追われて逃げてきたらしい。

人間の癖に妖怪から逃げられるなんて、紅白や白黒の仲間? と思ったがそんなに強そうには見えなかった。

他の人間に会いたいみたいだけど、あたいは人里への道を知らないから紅魔館に人間がいるって言ったら道案内してほしいらしい。

最初は断ろうかと思ったけど、気づいたらなんかいいって言ってた。

この人間と話しているとなんか落ち着く。ほんとうに不思議な人間。外来人だからかしら?

せっかく道案内することになったんだし、もう少し話してみよ。

音夜、道案内はこのさいきょーのチルノ様に任せなさい!





――あとがき――

分量伸びないね(苦笑)

今回の原作キャラはチルノでした。大ちゃんも出そうと思ったけどなんとなく出なかった。

次は紅魔館へごー♪

それではしーゆーあげいん〜。



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