―――神田君。

『ん?どうした?』

―――一緒に帰ろう?

『いいけどよ…お前も俺も、もう中三だぜ?いい加減ガキでもねぇんだし…』

―――別にいいじゃん。さ、行こう?

『へいへい』

―――そういえば神田君、神様って信じてる?

『ん?お前のお家事情か?』

―――違うの。ただ単純に、私が気になっただけ。

『ん〜…お前んとことか、西洋とか、所謂偶像は信じちゃいないな』

―――偶像?それってどういう事?

『俺は姿形を想像出来る様な神を信仰しちゃいないって事だ』

―――じゃあ、何を信じてるの…?

『可能性』

―――…へ?

『人間だけが神を持つ。今を超える力、可能性という名の内なる神を。受け売りだけど、気に入ってんだ』

―――可能性…




     『サモンアラヒトガミ』




「早苗ー!さーなーえー!」
「ぅ…ん…あ、諏訪子様。すいません、寝てました」
お昼時と言うのが最もしっくりくる時間。掃除も一段落着いて縁側に座っていたらそのままうとうとしていたらしく、此処守矢神社の神の一柱、諏訪子様のお手を煩わせてしまった。
「珍しいね、早苗が居眠り…それも縁側でだなんて。いっそ羽を伸ばしに人里に遊びに行って来たら?」
いつもの蛙座りで本体かもしれない帽子をちょいと上げる。この子供染みた行動がこのお方が神である事を感じさせない要因の一つになっているのだけど…本人はそれに気付いているのだろうか…?
「遊びに行くだなんてそんな…私が仕事を放りだしたら誰が神社の世話をするんですか?」
「うんうん。早苗ももう齢十九、そろそろいい殿方でも連れてきてくれた方が私としても安心できるんだけどなぁ…」
いや聞けよ土着神。と思っている隙に話はどんどん諏訪子様の良い様に変えられていた。
「よし!早苗、一度向こう側に里帰りしておいでよ!」
「里帰り?って、私の話を聞いてください!」
「心配しなくても大丈夫!この洩矢諏訪子に掛かれば一回ぐらいは博麗大結界を跨げるって!」
全然聞いてない…しかも一回ぐらいって…それ下手したら戻って来れないですよね!?
「という訳で、通り抜けh」
諏訪子様、そのネタは駄目です。
「あ、そう…じゃ…安直にワープフープでいい?」
そうしてください。
「という訳で、このワープフープで現代に行ってらっしゃい!」
「え!?きゃっ!」
言うが早いか、どこからともなくいつもの鉄の輪を取り出した諏訪子様は酒盛りした後の深夜のハイテンションの様なノリで私の頭から鉄の輪を降ろし―――

―――気付いた時には公園に立っていた。

「本当に来ちゃった…」
しかも服装が押入れの奥に入れておいた筈の私服に変わり、履いていた覚えの無い靴まで履いている。いつもの服装じゃ絶対に目立つとか、そういうご都合主義ほんとこわいこわい………とりあえず今の所持品を確かめ、そしてありとあらゆる意味で何もない事に大きく肩を落とす事になった。
「二千円札に、帰り用の御神籤…一日過ごせてどうかっていう程度じゃん…」
ご都合主義ならもっとどうにかして欲しかった………とは言っても昔持ってた携帯も幻想郷に入ってからは使い物にならないという事でバッテリーが寿命になっても交換する事無く、特に修理する事もなく放置していたから使い物にならないし、財布ももう中身が完全に幻想郷通貨で埋まってる事を思い出して無理な物は無理かと諦めた。
とにかく、今の時間は正確には分からないけど昼ごろの筈。近くにお食事処があるなら埋まる前に何処かで食べないとと思い立ち、公園周りを散策する事になった。


   ―――――


「いらっしゃいませー!一名様でよろしかったですか?」
「はい。あの…二千円札ってまだ使えます…?」
散策する事数分。運良くラーメン屋さんを見つける事が出来た。
「え…ま、まぁ…大丈夫だと思いますよ。一応日本銀行券ですし…」
「ありがとうございます」
顔から火が出る程に恥ずかしさが頭まで登りながらもカウンター席に座る。そしてとりあえず醤油ラーメンを注文した直後、新たなお客さんが店に入る音が聞こえた。
「うぃーっす。瞳ちゃん、いつものラーメンと炒飯で」
「はーい!」
いつものって…常連さんってやつなんだ…と思いながら亭主と思しきおじいさんが注文していた醤油ラーメンを出してくれた。箸を手に取って口を付ける。すると隣にさっきの常連さんが座ったのか、勝手知ったる様子を的確に表すドッスンという音が聞こえ、自由奔放な人なのかなと思って流し目に隣を見た。と、同時に目が合った。


そこには、中学までずっと一緒だった神田修平君の姿があった。


「…神田君?」
「…東風谷?」
互いに互いの顔を見て呆然とする。しかし先に沈黙を破ったのは神田君だった。
「お前、本当に東風谷か!?久しぶりだなぁ」
「ぁ…うん!神田君も、久しぶり…?」
そこまで来て修平君の様子が少しだけおかしい事に気付き、何が違うのかをよく観察してみた。

左目と、左手薬指が…無い…

「…どうしたの神田君!その手!?」
神田君の手を取ってよく見る。そして普通の人にはある筈の薬指が無い事を何度も確認してる私を見かねてか、神田君が口を開いた。
「ああ…ちょっと学校で事故っちまってな。失くしたよ」
「そう…なんだ…」
閉じたままの左目共々、痛々しくて見ていられなくなり神田君の手を放す。少しだけ惜しい気がしたのは、多分…私が、まだ………
「それより、東風谷がここに来るなんてな。こっちに戻ってきてたのか?ちなみに俺は待ち人を待つってところだ」
うっ…それを説明するのは…ちょっと…と思っているとまた誰か入ってくるのが聞こえ、その人物を待ち人と確認したのか、神田君が身体を捩じらせて声をかけた。
「お?来たな。こっちだ!」
あの神田君がわざわざお店で待ち合わせするだけの人なんて、どんな人なんだろうと思って私も身体を捩じらせた。そして私はその人物を見て、二人共々硬直する事となった。
「あ、修平さん!…え?」
「え?…修平さん…?」

入ってきた人物は、冥界の庭師、魂魄妖夢さんでした。

………どういうことなの………



   ―――――


「えぇっと…話を要約すると…偶然落ちてきた妖夢さんを神田君が助けて、一度幻想入りした後、今度は妖夢さんが現代に通い詰てるという事…?」
「通い詰てるじゃない。通い妻だ」
「そこはどうでもいいの!」
思いっきり机を叩いて叫ぶ。あの後とりあえずお昼を済ませた後、事態の説明を求める私に神田君と妖夢さんが神田君の自宅まで案内して、説明を受けて今に至っている。
「なんなのよ通い妻って!妖夢さんも!一体何がどうなったらこんな状況に陥るんですか!?」
「そんな事言われても…」
明らかに困惑している様子の妖夢さん。しかも話を聞く限りじゃ二人は俗に言うカップルってやつだし、更にはあの八雲紫まで一枚咬んでるし…あああもう!
「っはぁ………なんか疲れた…頭が追いつかない…」
盛大に溜息を吐いてセルフSEでぐでーとでも言った方がよさそうなぐらいに机に突っ伏す。
「とりあえず…落ち着け。な?東風谷」
「うん…少し、待ってくれる…?」
なんだか、色々とバカらしくなって来ちゃった………こうして神田君と再会出来たのはいいけど…神田君は運命的な出会いをしてて、その相手が妖夢さんで…そして―――

誰が見ても、お似合いとしか言い様が無いぐらいに二人の仲がいい事が、気に入らなかった。

「はぁ…」
「…これは…面倒な事に…なった…」
某面倒が嫌いな人の台詞を吐かれなくたって分かってるわよ…本当なら、私が妖夢さんのポジに居たかったのに…私、この先生きのこれるかな…?
「そ、そういえば修平さん。今日私を呼び出した理由ってなんですか?」
「ああ、今日の夕方から祭があるんだけどよ、一緒に行かねぇか?」
しかも勝手に二人で話を進めてるし…ぱるぱるしたい…

「勿論、飛び入り参加の東風谷も一緒にな」

え…?
「どうせなら三人の方がいいだろ?それに母さんが勝手に付いてきそうで、二人っきりにはなれそうにないし」
唐突にお祭り参加を決定された事に顔を上げて呆然とする。確かに私としては神田君と一緒に居られるのは嬉しいけど…ていうか、母さん?
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃ〜ん」
「うわっ!?」
突然後ろから声を掛けられて思わず跳びはねる。そこにはいつもの様に上半身だけをスキマからぬりりと出してもたれかかっている紫さんの姿があった。
ホントマジ勘弁してください。
「あ、出たな母さん」
「当然よ。幻想郷の住人がお祭り騒ぎを見逃すと思う?」
「それは…あり得ないですね…」
若干顔が引きつり気味の神田君と苦笑気味の妖夢さんが紫さんと会話を続ける。ていうか、母さん?誰が?誰の?
「あ、そういえばあの子が玄関前に来てたから、公園に遊びに行ってあげたら?私はこの風祝により細かい説明をしておくから」



   ***



「つまり…紫さんが神田君の所謂義母で、色々暗躍してるって事ですか?」
「暗躍って…それ以外に言い方は無いの…?」
最初に辿り着いた公園で、私の言葉に苦笑する紫さん。ふと視線を正面へと向けると神田君と妖夢さんが互いに刀を持って戦いを繰り広げ、更に右側に視線を向けるとハスキー系の犬が尻尾を振って座っていた。何このカオス。
「最初はただの気紛れでしか無かったんだけれどね。でも、段々と自分に子供が居るという感覚がとても喜ばしい物に変わって行って…今じゃすっかりあの子の母親よ」
と言って小さな溜息を吐く。その表情と優しそうな目は確かに母親特有のもので、もう随分と見てない顔だなと思っちゃったりした。そして更に今座っているベンチを手で少しだけさすった後、紫さんが小さく呟いた。
「―――それに、あの子は人の温もりを知らなさ過ぎるしね―――」
「………え?それって、どういう―――」
その瞬間に隣に座っていた犬が一度だけ吠えた。と思ったら今度は飛び出し、その時宙に浮いていた何かを口に咥えて神田君の元へと歩いて行った。よく見れば咥えているのは刀で、どうやら神田君の刀らしい。あのまま飛んで来てたら危なかったかも。
「………どういう事か、聞きたい?」
「え?あ―――」
どういう事なのかと言いかけた事を思い出す。そして紫さんは神田君の―――中学卒業後の、私が知らない―――過去を話してくれた。


神田君が親友を裏切り、親友達に裏切られたという話を―――


「―――以来あの子はこっち側の人間を誰一人信用してないわ。それこそ、自分の本当の母親に至るまでね…私達が来なければ、あの子は生涯孤独で生きるところだったのよ」
「そんな…そんなの、哀しすぎます…」
自分の事に置き換えて考える。もし、神奈子様や諏訪子様、その他の友達からちょっとした知り合いに至るまで自分を排斥しようと動いたら、私は生きていられるのだろうか…?
無理だ。そんな辛い世界には、生きたくない。
そして、そんな辛い世界で生きてる神田君と、その友達を仲直りさせてあげたい。
「―――私が、奇跡を生み出せる私でなきゃ、神田君を喜ばせれない」
風祝故に、現人神故に持ち得たこの力。どこまで行けるか分からないけど…奇跡でも起こらない限り仲直りさせる事なんて出来ない。そして奇跡を能動的に起こせるのは私しか居ない。
「それは自信過剰よ。こっちの世界じゃ、貴女の力も必然的に弱くなる」
「自信過剰なのは分かってます。それでも、一番確率が高いのは私だけなんです」
紫さんの顔を見返す。いつもの幻想郷の管理者としての顔とも、何処か空とぼけた顔でも無い、一人の息子を想う母親の顔。それでも私は―――


―――好きな人には、笑っていて欲しいから―――


「…はぁ、あの子も罪な子ね。こんないい子の想いに気付いてあげられないなんて…いいわ。貴女の奇跡、あの子に見せてあげなさいな」
そう言って紫さんはスキマの中へと姿を消してしまった。まぁその内また姿を現すだろうと思って私は視線を正面へと戻し、その際に犬が私の前で尻尾を振って座っているのに気付いた。
「ふふ…遊んで欲しいの…?」



   ***



「ハッハーーー!!!祭りだぜメルツェェェェェェル!!!」
これ、単純バカがって突っ込んだ方がいいんだろうか…?
散々犬―――名前はさくやだったっけ―――と戯れた後、夕方になったという事で私達は神田君の言っていたお祭りに繰り出していた。
「随分と刃物が多いですね…」
「ああ。この祭りは地元の特産品である刃物を特に集中的に販売して町おこしをしようって事で始まった祭りなんだ。今じゃ包丁や調理バサミを求める主婦、剣道や弓道の関係者、後は俺みたいな武器マニアがこうして溢れかえってるって訳だ」
「武器マニアって………」
そこだけ聞いたらなんで私この人好きになったんだろうって思うだろうなぁ………
「ちなみに祭りって事で俗に言う屋台も充実してるぜ。という訳で、祭りっつったら買い漁り!まずは買い食いだぜ!」
「ってぅわ!?ちょっと修平さん!?」
「ああ神田君待ってよ!」
急に走り出した神田君の黒いロングコートを追いかける様に走る。まるで子供の様な光景だけど、それが何処かおかしくて、私は思わず笑みを零していた。
でも買い食いかぁ…太らない様に気を付けないと…


   ―――――


「ふぅ…買った買った食った食った…」
そう言って神田君が手に収まっている杖にしか見えない刀を見る。確か、仕込み杖って言ったっけ?本当に武器マニアなんだから…いや、そんな事よりも―――
「もうすぐ八時だから、何処かで一休みしよ。流石に歩き疲れたから…」
本当は言う程歩き疲れては無いけどそう提案する。私の予定が正しければそろそろ来る筈だから、それまで時間稼ぎしないと………
「そうですか?まぁ確かに数時間歩き続けてましたしね」
妖夢さんが私に同意する。よし、これなら神田君も言い包めれる!
「ん?そうか。なら何処かで………」
そこで神田君の言葉が途切れ、ある一点を凝視する。私と妖夢さんもその視線を追い、その先に一人の男の子が立っているのが見えた。

来た。あれが、神田君の親友………

祭りに行く前に見つからない様に祈祷していた効果はあったらしい。そして私の力が間違っていなければあの人もこっちに気付いて近づいて来る筈。その時こそ、二人の仲直りのチャンス…!
「速人…」
予定通りに神田君が速人と呼んだ人が近づいて来る。何か、凄い緊張して来ちゃった………
「………数ヶ月振りだな。向こうじゃ上手くやってるか?」
神田君の問いにただ無言で、どこか気まずそうな顔を続ける速人君。
「そのままでいい。聞いてくれ」
そう言って手に持っていた仕込み杖を妖夢さんに手渡し、神田君から速人君に近付く。
「お前には酷い事をした。絶対に赦されないとも思ってる。でも、俺は…お前とずっと友達で居たい!お前を傷付ける事しか出来ない俺だが、それでも俺は、お前の事が大切なんだ!だから―――」
神田君が手を差し出す。少しだけ震えてるのは多分、不安や恐怖からだと思う。
「―――もう一度、友達で居させてくれ」
神田君の本心。傍で聞いてる私でさえ素直にそう思える言葉。全く飾らず、はっきりと伝える、神田君らしい言葉。紫さんは神田君はもうこちら側の人間は全く信じないと言っていたけど、それは少し違うと思った。
神田君は信じてるんだ。今目の前にいる速人君と―――

―――自分の中に存在する、『可能性』という名の神を………

そして、私と妖夢さんが固唾を飲んで見守る中…速人君は、神田君の手を―――


―――思いっきり弾いた。


「………え…?」
分からなかった。今誰が声を出したのか。何故、神田君の手が弾かれたのか。そしてその直後に声を出したのは私だと気付き、弾いた理由を速人君がたった一言で説明した。

「…お前は、裏切り者だ」

「な………ぁ………」
絞り出す様な声を神田君が上げ、糸の切れたマリオネットの様に膝を突く。その光景を見た瞬間に妖夢さんが神田君の元に駆け寄って抱き留め、私は背を向けて歩き出した速人君を追いかけようとして足を踏み出した瞬間に誰かに肩を掴まれた。
「…紫さん…」
首を捻って肩を掴んでいる人物を確認する。何時の間に後ろに居たのか、何故止めるのか、色々聞きたい事はある筈なのに声が出なかった。そして今言われるであろう言葉も、なんとなく察しが付いた。
「これで分かったでしょう?もう、何もかも手遅れなのよ」
その言葉に身体が固まる。傍で必死に神田君に語りかけている妖夢さんの声も何処か遠くのものに聞こえ、私の背中に嫌な物が伝う感覚だけが鮮明に伝わった。
「もう、手遅れなの…あの子の世界も…貴女の想いも…全て…そしてあの子にはもう、私達“二人”しか居ない。貴女が、あの子が唯一縋りついていた『可能性』と言う名の神を、殺したのよ」

殺した…?

私が、殺した…?

私が、好きな人の拠り所を…殺した…?

「そんな…そん…な…」
神田君の様に私もへたり込む。でも駆け寄って言い聞かせてくれる人は無く、ただ冷たい視線で紫さんが私を見下ろすだけだった。



   ***



寝る前に、妖夢さんから聞いた話である。
『修平さんは、本来ならもう自殺していました。それでも今日まで生きてこられたのは、一重にあの速人という人のお蔭なんです。あの人が居たから辛い現実の中で生きる事を選び続ける事が出来た、と。そして今日まで、心のどこかで、拠り所にしていたのでしょう』
胸が締め付けられる思いだった。好きな人を喜ばせたいと思って行った事が、好きな人を傷付ける事にしかならなかった事が。そして、私の想いも、もう手遅れだったという事も………

「もう、帰るんですか?」
「はい。元々一日しか居る気はありませんでしたから」
最初に辿り着き、神田君と妖夢さんが戦いを繰り広げていた公園。たった一日しか居なかったのに、私の中の何かが、大きく変わった気がする。少なくとも、この公園の景色は向こう数年以上に渡って忘れそうに無い。
「じゃあな。俺はそっちに行く気は無いが、また妖夢と母さんの相手をしてやってくれ」
「…うん。色々ごめんね…神田君」
昨日の一件がまだ引き摺ってるのか、顔色の悪い神田君が別れの挨拶として手を挙げる。私はそれに応えて一度背を向けた後、再度振り返って手遅れの想いを伝える事にした。
「神田修平君」
「んぁ?」


「ずっと………貴方の事が…好きでした………」


「なっ………」
「…さようなら…」
帰りの御神籤を開いて起動させる。そしてそれと同時にいつもの守矢神社の境内の景色が目の前に広がり、御神籤が音を立てて二つに割れた。


そしてその音が…堪らなく、哀しく聞こえた。
















「…修平さん」
「どうした?」
「もしかして、早苗さんの想いに、気付いてましたか?」
「…まあ、なんとなく察しはついてたって程度には…」
「そうでしたか…」
「―――あいつにも、悪い事しちまったな―――」







                                      Bad End.



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