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書く書く言って、かなり完成を引き伸ばしてしまいました。
待っていた人はいないかもしれませんが、お待たせしました。諏訪子様の三次です。
たぶん、描写は14禁くらいです。*が目印です。そういうのが苦手な人は指の間からこっそり見てください。この話は本編の第百九十二話『寺社戦争』の後のIFです。あと、独特な設定もでてくるので気をつけてください。


長いのでページ内リンク貼っておきます
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寺杜戦争は終わった。それは誰も勝者がいなかった。だが、一人の男の犠牲が人里を救ったのだ。

・・・なんてカッコつけてみた。
実際は怒った慧音さんが巫女と坊さんを説教しただけのようだ。寺子屋の先生の熱心な説教は弾幕より強いみたいだ。傍観していた人里の人も含めて、全員、正座で先生の話を聴いたそうだ。感動のあまり泣いている人もいたらしい。語尾がすべて曖昧なのは、僕が気絶している間のことは、なぜか人里の人々は多くをかたらなかったからだ。事の顛末は全て、てゐから聞いた。・・・どこまで本当か怪しい。

さて、回想はここまでにしておこう。大事なのは今だ。

現在、僕は人里でお菓子売をしている。ついでに、信仰集めと参拝客集めを手伝わされることになった。
あの戦争の跡、目が覚めて東風谷から解放介抱されている途中、どっちにつくか聞かれた。僕は曖昧に誤魔化そうかなと考えていたら、東風谷がとてもいい笑顔で『・・・駿河問い』とか、つぶやいたのなんて聞こえていない。そのため僕は純粋な善意から、人里でお菓子売ったの後に、守矢神社参拝ツアーガイドをすることになった。霊夢がこれを知ったらボコるだろう。だが、人里に用がある時は僕をパシルのでバレない。結局、どっちの神社からも丁稚扱いだった。・・・僕は僕がかわいそうになった。





いつも通り外の世界のお菓子を売りながら、ついでにノルマの守矢神社の御守も売った。
守矢神社の御守は効果が高く人里でも人気があり、すぐに完売になった。お菓子もすぐに売り切れた。はぁ、そろそろ参拝客集めをしようか。

「みなさん、一緒に守矢神社まで行きませんか?」

一人、二人はついてきそうだが、他の人はそれぞれ用事をいう。

「えー、つまんないよ。今日はこれからみんなで鬼ごっこして遊ぶんだ」
「わしゃ、腰が痛くて、ちょっと・・・」
「今月は節約しないといけなくて」
「この前、毛玉の妖怪に追っかけまわされたし」

まずいな、このままだと東風谷に駿河問いをされてしまう。頑張れ、僕。

「けーた、道中で外の世界の変わった鬼ごっこを教えてやるからケイドロっていうんだ。面白いぞ?あと、変わった飴玉もやる。ヨシさん、いい湿布を持っています。竹林の診療所の特別製です。かなり効きますよ。それと、けーた、男を見せてしっかりエスコートしろよ?与吉のお母さん、お菓子のサービス券をつけますよ?お菓子を三つ買ったら一つおまけがもらえるサービス券を差し上げます。・・・はい。これがサービス券です。初めて配るので3枚あげます。でも、有効期限は1ヶ月ですよ。早めに使ってくださいね。あと、これ、おまけです。源さん、毛玉くらいなら余裕でけちらせます。僕は神奈子さんの加護を受けた剣も持っていますし。・・・どうでしょうか?」

深夜のテレビ通販みたいな物言いになってしまった。だが、僕の必死さが伝わったのか、

「けいどろ、なにそれ、おもしろそう!!えすこーと?おいしいの?」
「しかたないのぉ。おい、けい坊、しっかり頼むぞ」
「・・・?うん。よくわからないけど、わかったよ、ばっちゃん」
「そのおまけは、よーくんが好きないお菓子なのよ、とても喜ぶわ」
「・・・まぁ、おまえさんがそういうなら大丈夫だろう」

ふぅ、なんとかついてきてくれそうだ。最近、東風谷の容赦がなさすぎるから説得も命がけだ。

「では、皆さん、準備を整えてから半刻後に、この広場に集合してください」

 

 

 

広場に集まった人たちを先導して守矢神社へ向かう。道中はそんなに危険な妖怪はいないが、毛玉とかいたずら好きな妖精がけっこういる。でも、これくらいの人数なら守りながら進むくらいなら僕でもなんとかなる。守矢神社への道中で啓太にケイドロを説明した。

「地域によってかなり違うけどさ、僕のところでは鬼が他の人を触って、その人を指定のところ、まぁ、木下とか、捕まえておくんだ。鬼が全部他の人が捕まえたら終わり。仲間が途中で・・・」

僕がそこまで言ったところで、啓太は説明を遮って、

「それ、”ちるのとかえる”でしょ?しってるし。ばーか、ばーか」

その名前は言い得て妙だった。どうやら同じようなゲームが幻想郷にもあるみたいだ。

「・・・わかったよ、今度はもっと面白いのを探してくるさ。けーた、はいこれ、変わった飴玉。・・・包装紙は僕が捨てておくよ。はい、けーた、あーん」

僕はドクターペッパーの味飴玉をあげた。・・・これは意趣返しではない。

「・・・むぐ。ありがとう、にーちゃん。これが”えすこーと味”なんだね」

エスコートの間違いを訂正することもないだろう。・・・だからこれは意趣返しではない。
でも、啓太はその飴玉を喜んで食べていた。・・・ちょっと変わったいい子だった。

「・・・まぁ、気に入ったんならよかったよ」

そんな啓太のうれしそうな顔を見ていると、さっきのことはどうでもよくなった。
子供のいうことだし、たいして気にすることもない。そう思って、少し強めに頭をなでる。
啓太は飴玉をなめながら、うれしそうにしている。うん、癒される。

「土樹は子供の扱いになれてるな。それに、里の子供からもかなり懐かれているし」
「そうなんですか?僕は子供は嫌いじゃないですし、妹もいるから慣れているんでしょう」
「あら、そうなの?土樹さんは、妹さんがいるの?」
「ええ、そうなんですよ。昔はお兄ちゃん、お兄ちゃんと、なついてくれたんですが・・・」

そんな感じで和気あいあいと話しながら守矢神社の道中をすすんだ。




しばらく進むと毛玉と妖精が集団で絡んできた。
数も多くないし、異変でもないから力の強い妖怪もいない。でも、霊力がない人は危なかっただろう。
接近されると対処しずらくなるから、時間を二倍に加速させてこっちから近づく。軽く弾幕をはられたが避けると流れ弾が他の人にあたってまずいから剣で消し飛ばした。スペルカードも出し惜しみ無しだ。

「風符『シルフィウインド』」

異変の度にこんなことばっかりしてるから、これくらいの数なら余裕で蹴散らせる。
念のため、周囲の安全を確認してみた。・・・・・・・よし、問題ない。そう思って元居た場所を見てみると、啓太が地面にうずくまっていた。周りの大人も心配そうに肩に手をかけたり、まわりを見渡しているいる。
しまった!二手に分かれて襲っていたのか?時間を三倍に加速させて急いで飛んで戻る。
僕はうずくまっている啓太に慌てて声を掛けた

「啓太!大丈夫か?」

僕は慌てて声をかけた。治療系の魔法は得意じゃない。どうする?
啓太はうずくまっていた顔を上げて、残念そうな顔をした。

「だいじょうぶだよ、にーちゃん。にーちゃんが、だんまく消したからおどろいて、飴玉、おとしちゃったんだ。あれ、おいしかったのに」

・・・は?どういうこと?僕が戸惑っていると、ヨシさんが啓太の言葉に付け加えた。

「そうなんじゃ、みんなで一緒に探していたんじゃよ」
「・・・あー、一応、よかった?」
「よくない。飴玉!!」
「・・・はぁ、わかった。今度くるとき、一袋やるよ」
「うん、ともだちでわけて食べるよ。ありがとう」
「よかったな、けい坊」
「あと、にーちゃん、つよいな。けん、かっこいい」

・・・うん。啓太は良い子だ。今度、カントリーマームを一箱あげよう。
でも、これならほっといても、あの程度の妖怪なら自分たちで人里に上手く避けながら帰るだろう。
幻想郷の住人はタフだと再認識した。それ以外はつつがなく道中をすすむ。おっ、鳥居が見えてきた。

 

僕は打ち合わせ通りに人里の人を講演会場に案内した。
会場といっても、藁の御座に座布団が置いてある、和風の青空講演会だ。今日がいい天気でよかった。
しばらくすると、神奈子さんが東風谷を引き連れてやってきた。そして、東風谷がどこぞの狂信的な新興宗教みない代表みたいな雰囲気で 、

「よく来てくれました皆様。いまから神奈子様の・・・・」

そこから後は聞きたくなかった。もう、僕の癒しだった東風谷はどこにもいない。
絶望した!幻想郷に絶望した!!湖に行って、諏訪子と水切りでもしてこよう。
きっと癒される。里の人の帰りは東風谷が送ってくれるだろう。




湖についてほとりをみても諏訪子はいない。いつもなら湖のほとりで蛙と遊んでいる。
でも、別の誰か湖の中にいるみたいだ。大きさが諏訪子ではない。気になったので近くに行ってみる。
ルーミアみたいな妖怪だったら怖いのでバレないように、気配を消して木の影から様子を見る。
少し遠くでわからなかったが、多分、僕より大きい。飛び上がって葉が茂っている太い枝にとまる。
僕はよく見てみようと、霊力で視力を水増した。なんだかんだいって、けっこうノリノリな僕がいた。
・・・・・・おっ、見えた見えた。


その人物は髪は腰までにかかるくらいの長髪だ。

それは、秋の田園に実った豊かな稲穂を彷彿させるような優しい金色。
自然にまかせて風でなびいている様子がとても似合った。
そして濡れている髪から細かい水しぶきが飛んでいる。
もう少し風が強ければ、きっと虹が見えただろう。
日の光を浴びて輝く髪。それは刈り取ることが絶対できない力強さがある。

身体は大地を感じさせるような豊満だった。

大樹を感じさせる芯の通った背筋。その先には果実が実っている。
小さい子供が届かないとわかっていても、飛び跳ねてまでほしがるだろう。
また、うなじの近くにホクロがある。その黒があることによって、
周りの肌理の細かい健康的な肌が一層健康的に見える。

その存在は生まれたままの姿で水と楽しそうに戯れている。

無邪気に遊んでいる幼子を見ているみたいだ。
その行動は大人になったら、できないし似合わない。
だがその存在にはそれが許される。
だって、周り風景がその存在によって創られているから。
幻想郷の自然の風景を集めて人の形にした容姿、それは人でないと断言できる。
自然を体現しているのだから人であってはならない。

 


純粋で残酷で優しいこの世界を投影することが認められている、本当に綺麗な存在だった。

 


なんて景色を表現するように言ってみたが、僕が今やっていることはただの出歯亀である。
僕の知識だと原稿用紙1枚をやっと超えれるくらいの表現しかできない。でも、咲夜さんお墨付きの穏行能力があってよかった。

・・・・・・・・・正直、たまりません。情熱を持て余す。つい、手をあわせて拝んでしまった。

僕がのぞいているのがばれたら、幻想郷の住人なら必ず蒸発させられる。とっとと、退散しよう。いろんな意味でドキドキしながら神社の母屋へ行った。

 

 

ちょうど、東風谷たちの里の人への講演が終わったようだ。
人里のみんなは帰り支度をしいて、少し離れたところで源さんが東風谷に何か頼んでいる。気になったので近くによって聞いてみた。

「・・・りました、源蔵さん。畑を荒らしている妖怪がいるのですね。では、神奈子様、一緒に退治に参りましょう。」
「ああ、そうしよう」

どうやら東風谷と神奈子さんは、人里の畑を荒らした妖怪を懲らしめに行くらしい。
神奈子さんも神々しい雰囲気をだして、源蔵さんと向き合っている。そしてかなり気合いが入っている東風谷。・・・たぶん、東風谷だけで過剰戦力だ。畑ごと妖怪がなくなるだろう。
そんな一柱と一人を見て、源さんは安心した顔をして、

「それは助かります。これからもよろしくお願いします」

と、畏まってお辞儀してお願いしている。
幻想郷は神様が目の前いると信仰している人はそんな感じだ。
会話が終わったようなので、僕はいつも通りに話しかける。

「よっ、東風谷、一週間ぶり。神奈子さんも忙しそうですね。二人ともお疲れ様」
「あぁ、先生、調度良いところに。里の皆様をよろしくお願いします。しっかり送ってくださいね」
「ああ、私からもお願いするよ、良也」

また丁稚扱いされた。僕は僕がかわいそうになった。なので、ちょっと頑張ってみた。

「はぁ・・・わかりました。今度来たとき、いい酒を呑ませて下さいよ?」
「はいはい。さぁ、早苗、行こうか?」
「はい!神奈子様」

駄目だった。適当に流された。
依頼された畑に向かって飛んで行った二人を見送っていたら、肩を強く叩かれた。
振り向くと源さんがやや興奮気味に、僕に話しかけてくる。

「お前さんは、あの巫女様の先生なのか?それに神奈子様とあれだけ親密とは思わなかった。お前さんを見直したよ!!」
「いやいや、違いますって!東風谷とは外の世界で、学習塾だとわからないか・・・。えーと、外の世界の寺子屋で臨時教師で勉強を教えていただけですって、その縁で神奈子さんと仲がいいだけです」
「ほう、それはすごいな!本当に先生じゃないか!!今度、慧音さんと一緒に寺子屋で里の子供を見てくれ。・・・ああ、なるほど。だからこそ、神奈子様の加護もきちんと受けれるのか!!弾幕を消せる人間なんて見たことがない。きっと、剣の腕も相当なのだろう。剣道の指南も頼みたい!!今度、人里の長とかけあってみるよ」

かなり勘違いされている。間違いを激しく訂正したい。
外の世界の生活のこともあるし、面倒くさそうだから断ろうと思ったけど、

「私は人里の酒蔵で杜氏として働いているんだ。もし、引き受けてくれるならいくらでも酒を持っていってくれ。暇があるときだけでいい。是非に!!」
「わかりました!任せてください!!」

シークタイム・ゼロセコンド、オサケノミタイ
・・・・・・・・・・はっ!?こんな面倒に自分から巻き込まれることはないだろ。だが、良く考えてみろ、僕。
外の世界で塾で授業をしていたから幻想郷の寺子屋で先生をしてもなんとかできるだろう。
剣道も中学生までやっていたし段位も持っている。時々、妖夢にリンチ・・・じゃなくて、稽古をつけられているから腕も上がった。それに、今は大学も暇だ。僕は教職希望だから、寺子屋や道場での仕事はいい経験になるだろう。決して、お酒が呑み放題、貰い放題に惹かれたわけじゃない。断じてない。
って、僕は誰に言い訳してるんだろうな?

帰りの道中は守矢神社の関係について、人里の人から根掘り葉掘り聞かれた。
本当になにもないから、外の世界で東風谷の真面目っぷりをアピールしておいた。
そういえば、諏訪子を見なかったな。地霊殿の核融合炉でなにかしているのだろう。

 

 

 

 

 

 






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源さんの紹介で人里での仕事の話もあったから、昨夜は人里の長の所で世話になった。案内された来客用の部屋は手入れがいきとどいて綺麗で、食事も質素だが丁寧に料理してある和風。いつもと違って待遇が良くて、そっちの方が落ち着かなかい。・・・僕はけっこう貧乏性なのだろうか?

門をでたところで、源さんが僕を待っていて前払いで日本酒を一升瓶で二本くれた。
このまま酒を持って博麗神社に帰ったら、確実に霊夢は理由を聞かずにボコる。あいつ勘が良すぎるし。
お酒も強制的に回収されるだろう。なので守矢神社に行くことにした。今度からこっちに来る機会が多くなるから置いておけばいい。


守矢神社へ行く前に人里で乾き物のつまみを買った。大通りの露店で瀬戸物屋をやっていたから、ぱっと見て、気に入ったお猪口もいくつか買うことにする。無駄遣いだけど、たまにはいいだろう。昨日頑張った自分へのご褒美だ。天気もよく、気分も良く、鼻歌をうたいながら、ちょっと重めの布製の買い物袋を片手にのんびり飛んで守矢神社へいく。母屋に行っても誰もいなかった。そういえば東風谷達は畑の妖怪退治にいったんだった。てっきり、もう帰ってきてるかと思ったけど。・・・湖の方に行ってみるか、諏訪子がいるかもしれないし。


湖の方へ行ってみると、案の定、ほとりでカエルを侍らせている諏訪子がいた。僕は近くまで行って声をかける。

「よう、久しぶり諏訪子」
「あぁ、良也じゃん。昨日も来てたみたいだけど、今日も用事?」
「いや、今日は遊びに来た。母屋に行っても誰もいなかったから、こっちに来てみた。ほれ、酒とつまみ」
「へぇ、気が利くじゃん。それにこれいい御酒だね、どったの?」
「昨日、人里の人たち送り迎えしたら、いろいろあって御礼にお酒をくれたんだ。で、今日は晴れてるし、東風谷達はいないし、ここで呑んしまおう、と、思ってさ、諏訪子はどうする?」

お酒もらい放題は言わないほうがいいな。それに、人里でアルバイトすることの説明がめんどくさいのもあるけど。それよりもお酒だ。そう思って買い物袋を見てみるとお酒がなかった。・・・そしていつのまにか諏訪子の手にお酒がある。僕があきれていると、諏訪子は自慢げに、

「もちろん、もらうよ。お供物は粗末にしないのが神様のつとめだ。早苗達には二本のうち一本を私から渡しておくよ」

と、そんなことを、えっへんと胸をはって言う。その見た目通りの幼い仕草はとても癒される。
僕がロリコンだったらぐっとくるだろうが、そうじゃない僕は癒されるだけだ。あと、お酒は二本やるとは言ってないが、癒しの対価としてお酒二本は惜しくない。どうせタダだし。さて、さっさと、用意するか。

僕は土系の魔法で簡単なテーブルと椅子を作るために、魔法を使うことに意識を移す。集中して某錬金術師みたく手を合わせて地面に手をつく。・・・魔法の術式に関係ないがノリだ。

「そういえば、さ、良也にちょっとだけ信仰が集まっているのを感じるんだけど?」
「・・・そうかい」

テーブルとイスを作ることに、意識を集中しているから適当に相づちを打つ。
・・・・・・よし、終わった。あとは、人里で買った乾物の数人分ツマミと、お猪口をテーブルの上に用意すだけだ。それよりも日の高いうちから、うまい酒を呑むのはかなり幸せだ。こんなことで幸せになれる自分は、けっこう気にっていたりする。幸せな気分で鼻歌をしながら用意をしていると、そんな僕を見て諏訪子がしみじみとした声で、

「無駄に器用だねぇ」

と言った。
なんか馬鹿にされた気がしたので少し悪乗りする。魔法で、諏訪子側のテーブルを少し崩してみた。

「なんだ、いらないのか?」

それを見て諏訪子は慌ててカエルのように、ぴょんと飛び跳ねてイスに座った。
そしてテーブルの上のお猪口を凄い勢いでひったくる。

「いるってば!良也を褒めたの!!ほら、さっさとお酌する。」

余った手で置いてあるツマミを嬉しそうにほおばる小さい神様。
・・・なにこの可愛い生物?最近、東風谷が幻想郷に完全に染まってしまって癒しが足りない。
紅魔館の某・フランドールだと癇癪起こされて殺されるが、諏訪子にそれはない。今度から、なるべくこっちに顔を出すようにしよう。諏訪子は頬張っている一気に食べ物を飲み込んで、腕を突き出す。

「・・んぐぅ?どったの良也?ほら、ぼけっとしないで御酒、御酒」
「へいへい」

いちいち仕草がかわいい。早く早くと、おもちゃをねだる子供みたいだ。今度からは毎週こっちに来ようと決意した。・・・決して、僕はロリコンじゃない。

 


お酒をのみながら二人で人里の人の話をする。僕もお菓子売りをしているから、人里の人の事はけっこう知っているし、諏訪子もけっこう知っていた。諏訪子は信仰集めのついでによく世話になっているらしい。しばらく話していて、話題がとぎれた。少し会話に間があいて、お酒をちびちび呑んでいて、ふと、昨日の湖でのことを思い出した。せっかくだし、聞いてみよう。

「そういえば、この辺に、身長が僕より大きくてショートヘアの金髪の人か妖怪っているか?昨日、湖の方で見かけたから、諏訪子がなにか知ってるかなっと思ってさ」

僕がそう言うと、諏訪子は答えずらそうな顔をして、

「知っているけどさ・・・あってどうすんのさ?ナンパでもすんの?」
「いや、気になっただけ。どうこうしようとは考えてない。むしろどうこうされるほうだろ、僕は。もし、危険人物だったらさっさと逃げる。まぁ、でも、本当に綺麗な存在だったから、もう一度、会ってはみたいな」

それに、命蓮寺対策として、綺麗どころが増えればいいかな、と思っただけだ。
あっちは美人が六人だし。こっちは三人だが、ウチ一人はいろいろな部分が全く足りてない幼女では厳しいと思っただけだ。いや、ね。遠くだったけど、かなりでるとこでて、引き締まってた感じだったし。そんなことを考えていると、諏訪子は、少し顔を赤らめながら拗ねているような声で、

「・・・良也ってさ、考えてること顔に良く出るよね?今、無性に神遊びをしたくなってきたんだけど、付き合ってくれる?」

と、霊力を高めて言った。僕が考えていることが筒抜けなのはもういまさらだ。
あと、表情にめちゃくちゃ癒された。つい拝みそうになる。だけど、このままからかい続けたら一回死ぬことになりそうだ。・・・よし、食べ物で釣ろう。

「悪かったって。今度、呑みたいって言ってた発泡酒でも持ってくるから。外の世界のつまみもつける」
「ったく、食べ物で釣るつもり?私は神様だよ?・・・でも、お供え物をわざわざ粗末にするのは信仰のためによくない。良也がどうしてもくれるっていうならもらってやる」

なんだかんだいって、食べ物に釣られてる。あとは話題を変えてしまえばいいだろう。子供扱いしすぎだけど、見た目幼女だし問題ない。

「はいはい。そういや、水切りはうまくなったか?」
「ふふん、聞いて驚け。とうとう、どんな石でも10回はいけるようになったね。良也を超える日も近いな」

実は、最近、魔法を併用すれば、水切りは三桁いくことがわかった。
それは日常的な魔法の訓練の賜だ。いつもの通り魔法で皿洗をしているときに思いついた。
風呂に入っている間、試してみたらかなりうまくいった。調子にのりすぎて、湯船でのぼせたけど。
そんなことを知らず、自信たっぷりの諏訪子をみていて、ついニヒルに笑ってしまった。

「まぁ、がんばれ」
「なに、その顔。むかつくんだけど」

そんなありふれた日常をはなしながら宴会を続けた。




僕は、外の世界にかえらないといけないから、最初はセーブして飲んでいたけど、お酒がかなり旨かったので諏訪子と二人で、一升瓶を一本開けてしまった。まぁ、いっか。明日の大学は午後から授業だし。そうこうしているうちに夕暮れまで二人の小さな宴会は続いた。さて、そろそろ帰るか。

「大分、日も傾いてきたし、僕は帰るよ。あー、片付けがめんどい」

僕がそういうと、諏訪子は母屋の方を見ながら、

「そう?じゃあ、お礼に後片付けは、私がやっておくよ。まだ、早苗達は帰ってきてないから暇だし。またねー、良也」
「そうしてくれると助かる。じゃあ、また来週な〜、諏訪子」

東風谷達の帰りが遅いのが少し気になったが、まぁ、向こうも妖怪退治のお礼として、人里で宴会でもしてるのかもしれない。そんなことを、考えつつ外の世界に帰るために守矢神社を出た。





帰りは妖怪に絡まれることなく無事に博麗神社まで着いた。途中、ミスティアの屋台をやっていたので、僕の分とついでに霊夢用にに焼き鳥の土産も包んでもらった。いつもだったら妖怪に襲われたりするから、かなり今日はツいてるのかもしれない。

「ただいまー、霊夢」
「おかえりなさい、良也さん。・・・って、酒臭いわね。そんなになるまで、どこで呑んできたの?」
「んー、神様のところでちょっと呑んできた。はい、これお土産」
「・・・まったく、だらしないわねぇ。あと、お土産ありがとう。ちょうど、夕食の準備が面倒臭かったから助かったわ」

そう言って、僕から土産を取り上げていく霊夢。とゆーか、人に夕食の準備をさせようとするのやつに『だらしない』と言われたくない。あと、それ、僕の分もあるんだけど・・・。

「それにしても良也さん。酒臭いのとは別に、ちょっと変わった”匂い”をしてるわね」
「・・・?そうなのか?帰りに屋台へ寄っていったから、その時に着いたのかもしれないな」

少し気になったので、袖や襟の匂いをかいでみる。うーん、酔っているのもあるけど、自分の匂いはよくわからない。僕が自分の服に気を取られているうちに、気づいたら近くに霊夢が寄ってきていた。そして、僕を腕とか背中をぺたぺたさわりながら、

「そういう意味じゃないんだけど・・・。あの神様、うちの丁稚にちょっかいだして、こっちの神社でものっとるつもりかしら?・・・ん?でも、加護を受けているというよりも、どちらかというと、良也さんが信仰の対象になってる感じねぇ」

よくわからないことを言った。しばらく体を触って、満足したのか僕から離れる霊夢。

「・・・???」

なんだったんだ?今の?僕がよくわからない顔をしていると、霊夢は呆れた顔で、

「昨日、今日とむこうの神社の手伝いをしてきたのね。まぁ、良也さんはお酒に目がないし。お礼のお酒に釣られたってところかしら?」

と言って、ジト目で僕を見ながら、懐から御札と退魔針をとりだした。
・・・!?むこうの神社の手伝いをしたことがバレた!!チートすぎるるだろ、霊夢の勘。一気に酔が醒めた。このままだと、霊夢にボコられそうなので神速土下座をする僕。

「すみませんでした!!今度からは気をつけます!!!!」

霊夢はそんな僕を見て、疲れたため息を吐きながら、

「はぁ〜〜。別にそこまで怒ってはないわよ。ほら、顔をあげて。むこうの神社の手伝いをして泊まったり、帰りがおそくなるようなら、先に言っておいて。良也さんがいないと、晩ご飯作るの面倒くさいし。あと、お賽銭箱はそこにあるわ」

そう言われて顔が上げて見てみると、いつも通りの霊夢がいた。どうやら許されたっぽい。昨日は泊まると言ってなかったし、帰ってこないのに晩ご飯の用意をさせたのは、ちょっと罪悪感がでてきた。・・・お賽銭は奮発しておこう。

「悪かった。今度から気をつけるよ。明日大学もあるし、今日は遅いから外の世界に帰るよ」
「そう?お茶でも飲んでいけば。焼き鳥もあるし」

そうしていきたいが酔いが醒めた頭で考えると電車時間がぎりぎりになりそうだ。僕は帰り支度を手早くすます。

「いや、急がないと終電に間に合わなくなるから、じゃな、霊夢。また来週」
「・・・それならしかたないわね、じゃあね、良也さん」

別れの挨拶をした霊夢は、僕の気のせいかもしれないが少し不満そうだった。お賽銭が少なかったんだろうか?今度、人里で霊夢用にお酒でも貰っておくか。




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それから僕は幻想郷に来る週末のうち、どちらか一日は守矢神社に通っている。
ツアーガイドをしたり、青空講演会の準備を手伝ったり、足りない味噌や醤油を買いに行かされたりしている。それ以外は、人里でお菓子売りをしたり、寺子屋で勉強を教えたり、道場で剣道の先生をしたりしている。さて、僕はいったい何回「たり」を使っただろう。暇な人がいたら数えてほしい。
そんな寒いギャグを思いつくくらい、以前と比べてかなり忙しい週末になった。でも、大学も暇な時期になったし、ちょうどやることがあって良かった。



そして、今日は日々の生活に必要な食材もかってこされらてている。僕はそろそろ怒っていいと思う。でも、東風谷も神奈子さんも忙しそうだし、しかたないか。・・・駿河問いはされたくない。

荷物をいったん地面において、玄関の戸をあけようとすると鍵がかかっている。だけど僕は淀みなく、玄関に側にある植木鉢を持ち上げて鍵を拾って、それを使って玄関の戸を開けた。そして迷うことなく台所へ行き、食材をてきぱきとしまっていく。けっこうな頻度で通うようになったからこういったことには、戸惑うことはなくなった。はぁ〜、女性だけが住む家へいつでも好きに出入りできるのに、ちっとも嬉しくないのはなぜだろう?




食材をしまい終わったので、湖へ向かう準備をする。お菓子はアルファベットチョコと飴玉。あと、発泡酒と、外の世界のつまみも持っていくか。守矢神社に来るようになって、けっこうな頻度とゆーかほぼ毎回、諏訪子と湖のほとりでダベったり、軽く酒を飲んだりしている。これが僕の目的といってもいい気がする。・・・決してロリコンじゃない。

「よう、諏訪子、一週間ぶりだな」
「やっほー、良也、一週間ぶり」

いつも通り、湖のほとりにいる諏訪子。でも、いつもと違う気がする。
さて、何が違うんだろうか。・・・あぁ、帽子が無いのか

「そういや、諏訪子。今日は帽子かぶってないけど、どうしてなんだ?」
「あー、『ごんぶと、ごんぶと』言い出したから陰干ししている」
「・・・しゃべるんだ、アレ」
「・・・・・・まぁ、一応」

少しバツが悪そうな顔をする。話題を変えよう。

「そういや、東風谷たちは?」
「天狗のところへご機嫌取りにいった。命蓮寺のボスがご高説をしにいってるからそれに対抗して。妖怪の山の信仰は減らされるとかなり困るからね。帰りは遅くなるってさ。向こうで宴会してかえってくるから、明日の昼ごろになるんじゃないの?」

それは帰りが遅くなるとは言わない。

「そうか、いろいろ忙しいな。諏訪子はここにいていいのか?」
「まぁ、ね・・・」

そう答えて諏訪子は少し沈んだ顔になる。

「・・・そうかい。晩飯はどうするんだ?」
「人里で厚く信仰してるばっちゃんに世話になってるよ。行くの面倒くさいから行かない時もあるけど」

その様子だと今日は行かない感じだ。仕方ないから僕が作るか。妹がいるせいか、そういった顔をされると放っておけない。

「そうか・・・今日、僕は東風谷から人里でお使いを頼まれたから、ここで夕食を済ませようかな?諏訪子と一緒なら、東風谷も文句いわないだろ?今から博麗神社に帰っても霊夢に作らされるだろうし。どこでも一緒だからな。それに買ってきた酒も呑んじまおう」

あと、すまん霊夢。たしか戸棚の奥に乾物が余ってたはずだ。それで我慢してくれ。

「・・・いいけど、さ。良也が面倒じゃなければ頼むよ・・・ありがとう」
「ついでだから気にするな。一人分も二人分も大してちがわないし」

しばらく諏訪子とお菓子とつまみを食べながら、ダベりながら過ごす。持ってきた発泡酒は全部あけたし、だいぶ日も傾いてきたから母屋へ帰るかな?そう思っていると、

「そうそう、良也の御蔭で、人里からの大分信仰が集まってきたよ。感謝してる。・・・これらな大丈夫かな?晩飯のお礼にいいもん見せてやる。前、ショートへアの金髪美人に会いたい言ってたじゃん。あわせてあげるよ、その人に」
「信仰と晩飯と諏訪子と一体なんの関係があるんだ?」
「いいから、いいから。ありがたく拝みな」

そういって、諏訪子のまわりから土煙が上がった。ちょっとびっくりしたが、軽い煙幕だ。すぐに晴れた。
そこには、だいぶ前、湖で見た存在がいた。腰まである長い金髪。モデルが裸足で逃げ出すようなプロポーション。・・・裸だったが。速攻で回れ右して視界を逸らした。

「なんだよ、神様がサービスしてやったのに、顔を背けて。良也はそっち系か?」

声は諏訪子を大人びて落ち着かせた感じだった。
たぶん、そうなのだろう。後ろを振り向かないように、声をかけた。

「僕は性の乱れてない健全な20代だ。最近じゃ、珍しくもない奥ゆかしい日本男性だ。断じて、そっち系じゃない。なんだよ、諏訪子なのか。前、聞いたときに、言ってくれればよかったのに」
「いや、前の時は戻れるかどうか、短い時間、試しに戻っただけったから。見られていたのはびっくりしたよ。良也の能力でわからなかったんだな。あと、そのとき、私は湖で身体を清めていたろ?さすがに、それを言うのははちょっと」

ちょっと咎めるような声色で文句を言われた。全面的に僕が悪いの両手を挙げて、降参のポーズをしながら謝る。

「・・・のぞいて悪かった。さっさと服着るか、元のサイズに戻ってくれ。精神衛生上と、射命丸にこの現場を写真で押さえられたら最悪だ」
「天狗は宴会だよ。安心しな。それに、周りには誰もいない。ここは私の庭だからわかるんだよ。なんだよ、せっかくサービスしてやったのに。・・・初心だねぇ」
「いや、まぁ、ありがたかったが、ガン見するのもなんかいろいろ違うだろ?とゆーか、早く服着てください。お願いします」
「なんだよ、のぞいていたくせに。まぁ、私にも信仰が集まってきて、本来の力が大分戻ってきたからなんだけどね・・・」

後ろで人が動く気配があるから、服でも着ているのだろう。
・・・勘弁して欲しい。いや、確かにありがたかったが。もうちょっと、見ておいてよかったのか?もったいないことをした、いや、それはそれでダメなことなきがする。でも、それは男としてどうなんだろう?などと、そんなことをつらつらと考えていたら、後ろから首に手を回された。耳元でからかうよう声が聞こえる。

「ほれほれ、大サービスだ。背中だけでも堪能しな。こんなことは滅多にない」

背中に、二つのやわらかい感触がある。ダイレクトに体温が伝わってくることから考えると、服装は裸の王様だろう。いや、その、なにをしているのですか諏訪子様?頭が混乱して、体はいろいろ固まってしまった。そんな僕を様子を察して、からかうように言葉が続く。

「なんだよ、固まっちまって。本当に初心だな。せっかくの神様の気まぐれだよ。・・・それとも、気まぐれついでに今ここでしてみるかい?」

そんなことを耳元で囁かれて、首に回されている手に少し力が入る。背中にあるのふくらみが、さらに押し付けられる。それから意識をそらすと果実のようないい匂いに気づいた。ヤバイ、なんかこう、やばい。
このままだと、取り返しのつかないことをしてしまいそうだ。なんとか、いつも通り、言葉を返す。

「やめておく。そんなことしたら東風谷に僕が殺される。それに、なんか痴女っぽいぞ、その発言。諏訪子は神様なんだろ?真面目な東風谷がそのセリフを聞いたら泣くぞ。もう、僕をからかうのは十分したろ?本当に、いっぱい、いっぱいだ。離れてくれ」
「はいはい。良也は本当に初心だねぇ。わかったさ、母屋にいってるよ。神奈子が外の世界で着ていた服でも適当に着ておく」

気配がなくなって、焚き火を消して散らかっているゴミを片付けてた。そんなことをして、僕は心を落ち着けてから、空を飛んで母屋の方へ飛んで行った。





母屋に着くと、諏訪子は大きいままだった。良かった、ちゃんと服をきていてくれた。服装は白のサマーセーターに、深い紺色のロングスカート。外の世界なら、男がすれ違ったら十人中十人の振り返るであろう美人だった。夕食は、厚揚げと野菜の味噌炒めにした。米はないが、酒があるしいらないだろう。それに炒め物だと手間もかからないし。

二人でいつものように他愛もないはなしをする。違いといえば、諏訪子が大人サイズになっただけだ。いくら美人とはいえ元の姿をしっているから、変な気にはならなかったけど。人里で買ってきた酒は全部あけた。ついでに、台所にあった買い置きの酒もとりだしている。・・・まぁ、いいさ。ここの神様も飲むんだし。

「良也、神様に願うことがあるかい?今ならなんでも叶えてあげるよ?」
「・・・あー、それはありがたい。そうだな、とりあえず、東風谷が過激になったのをどうにかしてほしい」

酔っているから、多分冗談だろう。とりあえず、思いついたことをいってみる。

「早苗は・・・しかたないよ。半分は神様なんだ。信仰を得るというのは、神である部分が強くなる。信仰が集まると大きな力を得る。だけど、代わりに人としての部分が少しづつうすくなる。そうしないと願いを叶えられないからね・・・」

なんかシリアスなことを言っている気がするが、酔った頭ではよくわからない。

「東風谷はもともとの性格だろ?」
「・・・そうでもないさ。このままだと完全に神になるだろうね」

東風谷が神様になるねぇ。昔の真面目な優等生の東風谷と、今の東風谷を比べてみる。・・・うん。神様にはならないほうがいいな。そういえば、最近、嬉々として東風谷が某店で江戸拷問百八式新書を買っているのを、某店主から相談された。森近さん、相談するくらいなら、そんなん店頭においておくなよ・・・

「駄目だな。外の世界の優等生な東風谷のほうがいいな。でも、それならみんなが真面目で優しい人としての東風谷になってほしいとと願えば、信仰すれば、人の部分が強くはずだ」

屁理屈っぽいのは、酔っているからだろう。
今度、お菓子売りの時、東風谷の普通っぷりをアピールしておこう。

「そんなもんかねぇ」
「そんなもんだよ」
「他に願い事はあるかい?」

僕にもう一度、諏訪子は真剣な顔で願いはないか、聞いてくる。神様だし本当に叶えてくれそうだ。あると言えばあるんだが、面と向かっていうのは恥ずかしい。

「特になにもないさ。また今度で」
「・・・・・・・良也は神様に神様自身の幸せを願うの?」

・・・僕の心を読んで、そんなにストレートに言われると恥ずかしい。くっ、僕はそんなに顔に出やすいのか?

「・・・あー、まぁ、そんなところ。酒呑んで、飯食って、宴会するのは楽しいだろ?知らない誰かの願いを叶えるよりは、まぁ、楽しいと思う」

そんな僕の照れ隠しを見て、諏訪子は懐かしそうに穏やかに笑っている。
その笑顔をみて、僕はかなえて欲しい願いを、もう一度、強く思う。





                どうかこの神様が幸せになれますように




だって、なんとなく思いついた、叶えて欲しい願いがそれだったんだから。
しばらく、静かに笑っている諏訪子を見ていて、なにか急に恥ずかしくなったから、それを隠すようにコップに残っている酒を煽って、口を尖らせながら文句を言う。

「・・・なんだよ、そんなに笑って。なんかおかしいかのか?」
「いや・・・ただ、昔を思い出しただけだよ。そう願われたのは本当に久しぶりでね」
「ふーん。でも、けっこういるだろ?そういうこと願う人」
「いや、あんまりいないよ、そんな馬鹿は。んー、千年以上はいなかったな。人間・妖怪を問わず誰だって、自身の願いを叶えて欲しいと思うさ、神様にはさ。善悪を問わず純粋に、自身の想いと望みを願うのがあたりまえだよだよ」
「僕のことを、馬鹿、といいたいのか?」
「ああ、めったにいない”ばか”だよ。」

なにがツボだったのか、諏訪子は爆笑しだした。
まぁ、いいや。両方、酔っぱらいだし、酒が呑めればいいだろう。
で、二つのコップに日本酒を注ぐ。そんな僕を見て、諏訪子は笑うのをやめて嬉しそうに話しだす。

「良也に昔話でもするかな。早苗には内緒だよ?昔、本当に昔に、自分の願いを叶えるために人間から神になるくらいの馬鹿がいたよ」
「馬鹿というより、逆に凄いと思うんだが・・・」

人がそんなに簡単に神様になれるもんなのか?・・・なぜだろう、幻想郷にそんなのいそうな気がする。
白黒魔法使いとか、紅白巫女とかチルノとか。・・・最後はただのHだった。

「いや、本当に馬鹿だったよ。ソイツは。人間が神様になったら、人間であった時のことは全て忘れる。人間の願いを叶えるだけ存在になってしまう。でも、自分のたった一つの望みを叶えるために、ソイツは神様になったんだよ」

それはまたすごいな、どんな願いなんだ?
やっぱアレか?小学生みたいな夢か?僕は小学生の卒業アルバムの寄せ書きにあった、将来の夢を思い出して適当に言ってみる。

「世界征服か?それとも一攫千金?プロ野球選手か?後は、お菓子屋さんがあったな。
・・・最後、書いたの僕だった。でも、一応、叶っているな。馬鹿なこと書いたな〜、今思えば」

そんな思い出を酔った勢いで垂れ流していたら、諏訪子は少し言いにくそうに、昔の願いを言った。

「あーうー。まぁ、その馬鹿は、それを上回る馬鹿で下世話な願いだよ。・・・惚れたヤツを幸せにしたい、ってだけさ」

彼女いない歴=年齢の僕がいうセリフでもないが、さすがにそいつは馬鹿だと思った。

「は?それ、神様になってまで叶える望みか?」
「まぁ、ね。その馬鹿は願った相手と子を為してから神様になったよ。そいつは、『これで安心した。親の幸せを願わない子はいないから、あなたは幸せになれるだろう。それに、私は人としてあなたを愛せなくても神様として幸せを願えるならそれでいい』と、言い残して神になったさ。・・・本当に馬鹿なんだから」
「そりゃまた、なんていうか、すごいな。それで、相手は幸せになれたのか?」
「それなりに楽しく幸せに過ごしたさ。今もどっかで酒でも呑んでんじゃないのか?」
「えらく長生きな相手だな。まぁ、幻想郷に長生きなのたくさんいるしそんなもんか。案外、こっちに来てるのかもな」
「・・・・・・そうだね。今度、守矢神社で大宴会でもすれば、顔を出すんじゃないのか?」

これで、そんな馬鹿なヤツの昔話は終りだと、諏訪子はコップに残った日本酒を一気に呑んだ。





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変わった昔話を聞いたし、そろそろ、博麗神社に帰るかな?そう思って、立ち上がった。
付き合ってかなり呑んから足元がふらつく。外を見ていると暗くなってから大分たっているようだ。
道中もメンドイし、こっちに泊まるか?諏訪子に空き部屋がないか聞いてみるか。

「博麗神社に帰るのがメンドイ。諏訪子、どっか寝るのに空いてる部屋ないか?そこにある毛布でもかぶっていれば、あとは、能力で気温上げればなんとかなるし」
「・・・んー?なかったと思う。空いてる部屋は物置にしてるよ」

諏訪子は、ぼー、とコップに残った酒をちびちび呑みながら適当に答えた。
かなり呑んでいる。まぁ、神様だし大丈夫だろう。面倒くさいからここでいいや。

「そうか・・・まぁ、この居間でいいや。ちょうど、毛布もあるし」
「それとも、私の部屋で一緒の布団で寝るかい?早苗たちはちょうどいないし・・・」

さっきの湖でのように、僕のことをからかっているのだろう。適当に相ずちをうつ。

「ったく、さっきもそうだけど痴女発言やめろ。なんで脳内ピンクなんだ?」
「いや、久しぶりに元に戻ったから、力をもてあましてるんだよ。信仰が集まると、力も同時に集まるしねぇ。弾幕ごっこでもすればいいんだけど、相手がいないし。酒を呑んでも満たされなかったし。それにさっきの”ばか”の願いもあるし」

最後の方はよく聞き取れなかった。
何かに勢いをつけるように、諏訪子は近くにあった一升瓶に残った日本酒を一気に煽った。
大丈夫か?そんな呑んで。僕も結構飲んだけど、周りを見てみると一升瓶の空瓶が3本以上ある。
案の定、諏訪子は酒を口に含んだまま少し苦しそうに、手招きしている。吐くのか?そう思って近くにあった、外の世界のスーパー袋を持って近くに行く。

「呑みすぎだぞ?諏訪子、ほらエチケット袋だぞ」

ついでに、袋を渡して背中をさすろうと思い手を伸ばした。
手が諏訪子の背中に触れようとしたら、掴まれて床に組み伏せられた。
その拍子に床に僕は頭をぶつけた。不意打ちだったのでちょっと涙目になった。
それと酔っているせいもあって、視界が歪んで諏訪子の顔がよく見えない。

「おい、諏訪子、酔ってるのか?弾幕ごっこなら他を・・・?!??!?」

文句をいっている最中にキスされた。・・・はい?
僕が戸惑っていると、無理矢理、口移しで熱い酒を嚥下させられた。
一気に酔いがまわったように身体が熱い。

「・・・ぷはっ、良也は弾幕ごっこはダメでも、こっちはできるだろ?なに、どっかの”ばか”の願いだ。鴉ほどじゃないけど力を与えたから、朝までたっぷり愉しめるよ」
「なにをいって・・・」

諏訪子が言っていることがいまいち理解できない。
注ぎ込まれた熱い酒がが全身を回って、身体が痺れたように動かない。
僕はそのまま意識を失った。

 


なにも見えない。なにも聞こえない。ただ暗い。僕はまるでたくさんの絵の具を混ぜで真っ黒にした暗闇の中にいた。それはすべての色を内包するがゆえの闇。でも、人としての意識を塗りつぶす黒。その中で自分が人肌で暖められている。それだけが感じられた、こんなに落ち着くとは知らなかった。

・・・いや、忘れていただけだろう。小さいときに父さんの大きな背中でおんぶしてもらったときのことや、暗い夜、意味もなく寂しくて母さんに甘えて隣で寝たことを思い出した。耳元で幼子をあやすような懐かしい子守歌が聞こえる。心と身体が安らいだ。さっきまで体を侵していた熱い血が収まっていく。

懐かしい子守唄が終わった。

意識の焦点があう。歌が聞こえなくなって寂しくなり目をあけると、穏やかな顔の諏訪子が目に写った。

「おちついた?良也?」
「・・・アレ?諏訪子か?悪い、僕は酒に酔って倒れたんだな」
「うん、落ち着きすぎ。良也、さっきのことを覚えてる?」

その発言で重要なことに気がついた。僕は裸だ。そして、諏訪子に抱きしめられていた。裸の!!

「諏訪子、服を着ろ!この痴女!!そして離れろ!!」
「はぁ〜、けっこう傷つくんだけどその反応。それとさっきキスしたの忘れたの?」

・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・思い出した。

「あれは夢だ。うん、そうしよう。じゃ、ねる」

そう言って、目を閉じた。
それと同時に、ふれるように軽くキスをされた。驚いて目を開けると、今度は長い間、キスされた。
その、初めてだったので、つい、息をとめてしまった。僕がかなり息苦しくなったところでやっと離れてくれた。深呼吸しようとして大きく息を吸うために口をあけたら、しっかりと口を塞がれた。今度は舌が絡み取られて少し痛いくらいのディープキスをされた。理性を溶かす甘くていい匂いがする。でも、さっき息がすえなかったので苦しい。抗議のためになんとか声を絞り出す。

「・・・・んぅ!!んー!んー!!」

その声が聞こえたのか、諏訪子は名残惜しそうに顔を離す。
激しいキスをされたので、唾液の橋がかかっている。それを気にせず、諏訪子は僕をじっと見ている。
僕は恥ずかしくなってその橋に視線を移す。でも、その橋は水でできているからすぐに堕ちた。
その先は・・・・僕は慌ててそっぽをむいた。僕の反応をみて楽しみながら諏訪子は勝ち誇った顔で言う。

「これでも夢だと思うかい?」
「・・・あーうー」
「それ私のせりふ。良也は本当に初心だね。ここまで神様が直々に御膳立てしたのに逃げたら、『人里に良也は男色の気がある』といいふらすよ?」
「それは勘弁してください。でも、その、酔った勢いでこういうことをするのはマズイ」
「奥ゆかしいねぇ。でも、これは酔った勢いってわけでもないさ。良也は願っただろ?私の幸せを。けっこう嬉しかったんだよ」
「・・・・・・でも、それは」

僕がなにかを言う前に、もう一度、口を塞がれた。そして、目の前の神様は大切な願いを守るように、体全体で包むように、僕を優しく抱きしめた。

「なんでも、願いを叶えるって言ったのに。神様の幸せを願うなんて。ほんとうに、バカ、なんだから」




 


 

 

 

 







 

目が覚めた。日差しが黄色い。
それにしても、全身が筋肉痛で痛い。頭痛が痛い。痛いが重なるくらい痛い。
右腕が妙に熱い。原因を見てみると、諏訪子が腕を抱きかかえて寝ている。・・・裸で。
それがきっかけで昨日から朝までのことを鮮明に思い出した。周りを見てみると、諏訪子を含めて、部屋が言葉にしたらマズイ状態になっていた。結局、据え膳食わぬは男の恥ということで、本能に流されたけど、どんだけ頑張ったんだよ、僕。

とりあえず、細心の注意を払い魔法使って全てを綺麗にしておく。

となりの諏訪子はまだ腕を抱きかかえて安らかに寝息をたてている。良かった、目が覚めなくて。無垢な幼子のような寝顔をしばらく眺めていると、

「・・・りょーや」

不意に名前を呼ばれた。幸せな表情と声で。


・・・・・・・・・・・大丈夫。全然、いやらしい気持ちになったりしない。
呼ばれた名前が頭の中でぐるぐるまわって、むくりと本能を目覚めさせる。さっき無垢な幼子だと、と言った理性と争いだした。僕の理性と本能が紛争を起こしている時に、判決がくだる音がした。ただ襖が開いた音だけだど。・・・って、襖が開く?

そして、戸惑うような感じで、よく聞き慣れた声がする。

「・・・何をしているんですか?ここで?」

僕が固まっていると、隣の諏訪子が目を覚ました。
僕の腕をだきかかえたまま、東風谷に挨拶をする。

「・・ぅん?あぁ、おはよー。早苗。私は腰が抜けて立てないんだ。手を貸してくれる?」
「・・・・・・もう一度、聞ききます。何をしているですか?ここで?」

そんな諏訪子を見て、東風谷はかなり剣呑な雰囲気になった。

「何ってナニに決まってんじゃん。二人とも裸だし」

頼む諏訪子。そんな状態の東風谷をナチュララルに煽らないで欲しい。

「先生、何か弁解は?」

とりあえず、コミュニケーションをとろう。
挨拶は大切だ。僕は幻想郷の寺子屋で子どもたちに教えている。

「おはよう、東風谷」
「・・・おはようございます、土樹良也さん」

真面目に挨拶を返す東風谷。そして、久しぶりに名前で呼ばれたのが素直に喜べない。
だって今の東風谷は、刑罰の執行を事務的に処理しようとしている裁判長だ。そして裁量を決めた。

「知らない女性を口説いて、母屋を休憩所代わりに使うなんて破廉恥な。あぁ、幻想郷では常識に囚われてはいけなかったのですね」
「・・・いや、これは外の世界でわりとあるぞ、東風谷」
「あなたに発言権はありません。黙っていなさい」

そう断言して、罪状を決めた東風谷裁判長は、僕達をどこからから取り出した荒縄で縛り上げた。
妙に冷たいからしっかり縄を見てみると蛇だった。隣の諏訪子はショックで気絶している。
あー、カエルっぽい感じだからそうかなって思ったけど、苦手だったのね、蛇。

「ふふっ。心の準備はできましたか?」

できてない、と、言いたかったが発言は許可されてない。やっぱりあれか?江戸の拷問百八式なのか?
覚悟を決めて目をつむる。しばらく待ってもいたくない。新手の拷問かと思って薄目をあけると、

「そもそも男女の営みというものは・・・・・・・」

それは、普通の外の世界の真面目な高校生の説教だった。
そっちの方が弾幕より効いた。たぶん、時間にすれば30分くらいだったんだろう。
だけど、それは僕が生きてきた時間より長く感じた。・・・生まれてきてゴメンナサイ。
そろそろ考えるのをやめようかな?と思い出した頃、別の誰かの声が聞こえた。

「あれ、早苗?どうしたん・・・だ?!」

確認するまでもない。東風谷が帰ってきたなら、神奈子さんも帰ってくるよなぁ。

唐突だが、逃避のために今の現実を客観的に考えてみる。

裸で縄に縛られている一人と神様。それに説教している風祝。その現場を別の神様が目撃する。なぜだろう、人間なのは僕だけだ。そして無言のまま神奈子さんは、東風谷を見て、僕を見て、諏訪子を見て、もう一度僕を見た。
顎をしゃくって僕に発言を促した。とりあえず、発言できるらしい。僕は一言で真実を表現した。

「・・・誘ったのはこの方です」

二人ともひどく納得した顔になった。良かった理解してもらえたようだ。
そしてアイコンタクトをとって、

『このケダモノ』

と、ステレオ音声で罵り、スペルカードを取り出した。何故に!?僕は真実をいっただけだ!!
そして、女性の敵を見る目で、各々のスペルカードを宣言した。



『八坂の神風』
『風神様の神徳』

 

その日、僕は星になった。でも、昼間だから誰にも見えなかっただろう。
最後の方は消し飛ばされたし。・・・生きていてゴメンナサイ

 

 

 

 

 

 

 

 

あとがき

『・・・やべぇ、みなぎってきた!!
諏訪子で三次、書くぜ。超書くぜ!!!』

そう掲示板で言ったのが、去年の3月。
今は、1月。本当に時間かかってごめんなさい


あと、ここまで読んでくれてありがとうございました。

一応、テーマは「神様と人間」
初詣では何を願いましたか?

ちなみに元旦は、私は家に引き篭もっていました。
いや、だって、外、寒いし。行くのは無理無理www

それでは、また
ネコのへそ

初稿 2011/1/1






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