前の鈴仙の話の続編です。たえきれなくなったら、『パルスウィート!!』と叫んでください。
そんな感じの人工甘味料な話です。
今日の幻想郷の天気は曇りだ。
最近は夏に向かって暑くなってきたから、晴れて暑くなるよりもこっちの方が過ごしやすくていい。
今はちょうどおやつ時。さて、今日もお菓子売りをするか。
外の世界のフリーマーケットみたいにブルシートを引いた。そこに、露天客用のお菓子を並べる。
固定客の分は別の場所に置いておく。外の世界で大量のお菓子を頻繁にスーパーに買い物にいくため、レジのおばちゃんと仲良くなった。そのときに商品の並べ方を工夫するとお菓子が売れるコツを教えてもらった。そのコツを思い出して鼻歌を歌いながら開店準備をする。
開店準備を始め出したところで後ろから声をかけられた。
「あんたに聞きたいことがあるんだけど・・・」
どこかで聞いたことのある若い女の子の声だ。たぶんお菓子を買いにきたのだろう。
よくあることなので僕は振向かずに作業しながらこたえる。
「まだ、開店準備中。もう少し待ってて下さい。」
「客じゃないわよ!ここで物を売りたいんだけど場所を取ろうとしたら、近くの屋台や露店の人に『他にあたってくれ』と、場所を変えても何度も言われて困ってるんだけど。」
客じゃなかくて、露天をはじめようと思っている人か。
僕もここで初めの頃そんなことがあった。一応、簡単なアドバイスをしておこう。
「露天や屋台には縄張りがある。僕は外の世界のお菓子をうっているから珍しいし、人里の有力者、寺子屋の先生、慧音さんは知っている?僕はその慧音さんから許可をもらっているから。まずその人の許可をもらった方がいい。・・・よし、準備が終わった。」
「私もそう考えて頼みにいったら、あの半獣。『君はもう少し人間嫌いをなおして、愛想をよくしてからでなおしたほうがいい』と言って相手にされなかったわ。」
売り場の全体の最終的なチェックする。・・・・・あ、値札ずれてる。
あと、慧音さんに対してかなり失礼なことを言っている。注意しないと。
「慧音さんは人里のみんなに慕われているから半獣と呼ぶのはよくない。それに礼儀に厳しいからそれは助言だ。ちゃんと言われたことを反省したことが伝われば出店の許可はくれる。」
そう言い終わってずれていた値札を直してから声のしていた方に振り返る。
そこには息を飲むくらい綺麗な子いた。
上品な赤い振り袖。腰に少し届かない長い髪。前髪で隠れていて目の辺りがよく見えないけど、顔立ちは整っていて綺麗だ。性格はちょっと高慢そうだけど、真面目な雰囲気の中学生くらいの女の子がいた。でも、どこかであった気がする。だけど、『前、どこかで会ったことがある?』と、声を掛けると昔のナンパみたいになるので普通に自己紹介をする。
「はじめまして、土樹良也です。ここで露店がしたいなら慧音さんに口利きできるけど・・・・」
「あんたねぇ。あの耳がないと誰かわからないの?あんたに人前でおそわれたら困るから見えなくしてあるの。・・・本当に私が誰かわからないの?」
妙に慣れ慣れしい。あと人を変態扱いしないでほしい。
でも、その言葉から察するに知り合いなのか?足元から全身をもう一度よく見てみる。黒い漆塗りで赤い紐の草履。白い足袋は卸したてのように手入れされている。身体の線は細い。特徴のあるらしい耳は髪で隠れていて見えなかった。目は前髪で隠れていて良く見えない。肌は白磁器のように白い。唇には薄く紅が塗ってある。それに香水ではないけど、落ち着く香の匂いがする。
本当に綺麗な子だ。一度会ったら忘れないだろう。
裕福な屋敷の子だろうか?そういうところに僕はお菓子を配達しているからそのときに会ったのかもしれない。で、この子は顔をしっている僕に声をかけたんだろうな。逆ナンはないな。・・・・・・考えて虚しくなった。たぶん、親に内緒でおこずかい稼ぎでもしようしているのだろう。適当にお世辞を言ってこの子の屋敷まで送っておこう。お得意先だったら困るし。
「君は綺麗な子だから一回会えば忘れない。今度、屋敷に配達に行く時にお菓子のおまけをあげるよ。今は曇っているけど、雨が降ってきたら綺麗な服が汚れて困るだろ?今日は帰ったほうがいい。」
僕がお世辞を言うと彼女は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。
そこまで照れるのか?でも普通の女の子の反応だ、和む。霊夢・魔理沙に是非見習って欲しい。
ちょっとからかってみるか?霊夢たちみたく弾幕で返答ってことはないだろう。
「顔色が悪いけど、体調、悪いのか?たしか永琳さん、竹林の医者の、特性の解熱剤があるけど・・・」
「うるさい!私はその解熱剤を売りに来たの!!このバカ。私は鈴仙よ!!!」
「は!?」
鈴仙?赤い着物の少女が???
いつもの鈴仙を思い出しながら、目の前の振袖姿の少女と見比べる。
ブレザーとブラウスに赤いネクタイ、スカート。そしてなによりもあのうさみみ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・うさみみが、ない・・だと・・。あれがないとただの幸薄少女になってしまう。
なんてことをしたんだ永琳!!そんなことを考えていたら、目がさらに赤みがまし真紅になった。ああ、この赤い目は確かに鈴仙だ。命の危険を感じる。そして僕に拳銃を突きつけるように人差し指を向けて、ついでにゴミをみるような目をして、
「・・・・・・弾幕を打ち込むわよ。」
やばい。僕の考えていることが筒抜けだ。
それに指先にためだしたエネルギーは、大岩を砕ける全盛期の幻○師範クラスの霊○だ。
僕は危険を脱するために口を動かす。
「わからなかったのは悪かったって。いや綺麗になっていたからさ。化粧もしていたし。本当にどこかのいい所のお屋敷の子がこずかい稼ぎにきたのかと思った。」
「〜〜〜〜っ、ふぅ。まぁ、私もいつもと服装がちがったしね。服は姫様のお古だからわからなくても仕方ないわ」
「すごく似合っている。それに服に負けないくらいの鈴仙も綺麗だし。」
なんか口説き文句みたくなった。魔理沙ならマスパで返答されそうだ。
だけど、鈴仙は肺の空気を全部吐き出すようなため息をして、突きつけていた指を下ろしてくれた。よかった、命の危険がなくなったみたいだ。そして鈴仙はまだ少し赤い顔で疲れきった声で僕に言う。 「はぁ〜〜〜〜。無理に褒めなくていいわよ。それでここで薬を販売していい?」
断る理由がない。後で周りの屋台や露天の人達にチョコレートを配っておけば見逃してくれるだろう。
”これはてゐの罠だ”的なことがあるかもしれないので軽く事情を聞いてみよう。
「いいよ。一回くらいなら周りの店の人達も多めにみてくれる。でも、配置藥だけじゃなかったのか?」
「『勢力拡大の一環』と姫様は言っていたわ。何故か嬉々として私を着飾っていたし。師匠とてゐは私たちの様子をなま暖かい目で見ていたし。・・・姫様の退屈しのぎじゃないの?」
わがままな上司とマッドな上司と嘘つきな部下に振り回されている製薬会社の中間管理職。鈴仙はそんな幸薄オーラをまとった。前、一緒に呑んだ時もずっと愚痴っていたし。この後お酒を呑みたい気分だったし、駄目もとでミスティアの店にも誘ってみるか。
「お疲れ。後で酒をおごるよ。人里から少し離れたところに妖怪が店主のいい屋台を知ってるけど。」
「はぁ〜〜。まぁ、今日は世話になるから付き合ってあげる。」
「それは残ね・・・っ、ていいのか?」
鈴仙は僕を避けているからてっきり断られると思った。さっきからため息ばかりついていたし。
「ええ。師匠に『たまにはのんびり羽をのばしてきなさい。』と、言われたから暇なの。」
「そりゃ良かった。」
ちょいデレたのか?売上は呑み代に変わりそうだ。まぁいいか。博麗神社にお賽銭を入れるよりも御利益があるだろう。
「それじゃお菓子売りを始めるかな。」
「そうね。」 そうして二人でお菓子と薬を売りはじめた。
しばらくして僕は商品を売り終わった。もともと量も多くない。それに鈴仙の持ってきた薬も売り切れたようだ。僕は鈴仙のところにきた客に分かっている薬の説明をしたり、お釣りの両替をしたり、少しだけ鈴仙の手伝いはした。それでも物を売っているときは必要最低限の会話しかしなかった。・・・デレ期はいつになるのやら。後片付けが終わって、僕は携帯で時間を確認する。夕食には少し早い時間だ。
「鈴仙。少し早いけど呑みにいくか?」
「そうね。他にすることもないし。・・・あと、今日はありがとう。けっこう助かったわ。」
デレた。これは普通にデレだ。つい頬が緩んでしまう。
「なにをそんなに喜んでいるの?ほらあんたから誘ったんだから案内しなさい。」
「わかった。」
僕は鈴仙のデレという貴重な体験を喜びながら、店まで案内した。
「いらっしゃい」
「久しぶりミスティア。二人分のお酒と料理を頼む。」
「はいよ」
今日は珍しく客がいなかった。まぁ、夕食には早い時間だし。
ミスティアが出した酒と料理を口に運ぶ。話すことはこの前あまり変わらない内容。幻想郷のなんでもない日のことを話した。それはけっこう楽しかったりする。会話の間に追加の料理や酒を適当に頼む。そうして時間がたち気がついたら空が黒く染まっていた。
明るいうちから呑みだしたからけっこう量を呑んだ。僕はセーブして呑んだけど、鈴仙は結構なハイペースで酒を呑んだ。目は完全に据わっている。そんな鈴仙に三回目くらい同じ内容のてゐの愚痴を聞かされた。四回目だっけ?
「・・・ったく、あの子はどれだけいたずらをするつもりなのかしら。この前の嘘も・・・」
そこまでで愚痴が途中で途切れた。鈴仙は何かを思いすように酒をちびちび飲む。
「昔、てゐから聞いたんだけど、さ。忘れちゃって、さ。あんたに聞きたいことがあるんだけど、さ。」
・・・?歯切れが悪い。酒を飲んでいたので僕は視線で続きをうながす。
「外の世界の人間は、ある異国の言葉を『月が綺麗』と言うらしいの。どういう言葉と意味なの?」
けほっ。なにをいいだすんだ。すこしむせた。そしてこれは絶対にてゐの罠だ。僕がこれを教えたら鈴仙に一回殺される。ついでに、大学の友達(仮)がその言葉をメールで送って告白してたのを聞いて、僕はどん引きしたのも思い出した。せっかく好感度があがった鈴仙がデレからツンに戻ってしまう。
・・・誤魔化すか?
「知ってるけど。でも外の世界じゃその意味で使う人は普通いない。てゐのいつもの嘘だから気にしなくて・・・」
「いいから教えなさい。どういう言葉と意味だったかが思い出せなくて気になるの。」
鈴仙は少しイラつきながら僕のごまかしを遮った。
ちなみに余談だが、そのメールの返信は『私は星が見るのが好きです。』と、返ってきたそうだ。なんていうか、リア充氏ねばいいのに。・・・思い出に逃げても、現実からは逃げれない。くっ、言うしかないのか!?僕は恥ずかしいので頬をかきながらそっぽを向いて鈴仙にいった。
「・・・”I LOVE YOU”の意訳だよ。『愛している』って意味。」
・・・ハズい。ハズ過ぎる。くそっ、てゐ。今度、玉ねぎメインの豚のしょうが焼きとほうれん草の味噌汁の夕食を作ってやる。そしてご飯はなしのおかずのみだ。酔った頭でわけの分からない復讐を考える。そして鈴仙の沈黙が痛い。頼む、早く、なにか言ってください。
「・・・・・・・・・・ぇ」
互いに沈黙すること十数秒。
鈴仙は蚊の鳴くような声をだした。やっぱり引かれたのだろうか?僕は隣をおそるおそる見てみると、そこには自分の目の色よりも顔を真っ赤にした鈴仙がいた。そして頭から湯気をだしそうな勢いでぶつぶつひとりごとを始めた。ついでにうさみみも復活している。あぁ、うさみみに触りたい。うさみみ。ウサみみ・・
「・・・るというか、なんというか。いや、でも、私は『そうね』って答えちゃったし・・・」
ミミ・・・・・・・・・・・・・はっ。うさみみよりも鈴仙の様子だ。
鈴仙は引くどころかショックを受けたようだ。僕は声を掛ける
「・・・おーい、鈴仙」「落ち着くのよ、優曇華。人と妖怪は生きている時間が違うから・・・でもコイツは不老不死だし・・・」
無視された。マジで凹む。
いまさら無駄な努力かもしれないが、僕は、もう一度鈴仙に声をかける。
「コイツは姫様とも仲がいい。師匠の薬の実験台は代わりにしてくれる。「おーい、鈴仙」てゐのいたずら標的にもなる。アレ?よく考えたらなにも問題がない。」
また、無視された。シカトされた。
しかたないから、かろうじて聞こえた単語から考える。”不老不死”、”師匠”、”実験台”、”てゐ”、”そうね”。・・・・僕になにをする気だ、鈴仙!!不安になってなにを考えているか聞くために、目の焦点のあっていない鈴仙の顔をのぞき込むようにして、僕は鈴仙にもう一度声をかける。
「鈴仙?」
「わきゃっ!?」 やっと僕に気づいた鈴仙は、ちょっと変わった驚いた声をだしてそっぽを向いてしまった。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・」
気まずい。非常に気まずい。
ここのさっさとをお金を払って帰ろう。戦略的撤退だ。
「あー、鈴仙?暗くなってからだいぶ時間も経ったし。そろそろ帰ろう。ここの呑み代は僕が払うよ。」
「・・・・・・」
あいかわらずこっちを見てくれないけど、うなずいてはくれたみたいだ。
僕はミスティアにお金を払う。その間、鈴仙は席を立って屋台から少し離れたところで僕に背中を向けて立っている。一応、待ってはくれるみたいだ。なぜか苦虫を潰したような顔をしているミスティアからおつりをもらい、財布にしまった。うー、声がかけづらい。僕は少しため息をついてから鈴仙に声をかける。
「今日はありがとう。また人里に来たら呑みに行こう。それじゃ、おやすみ」
「・・・・・・・」
別れのあいさつをしたけど、沈黙しか返ってこなかった。
はぁ、嫌われてしまったのだろうか。僕は博麗神社に帰ろうととして、飛び上がろうとしたら声をかけられた。
「良也、ちょっと待ちなさい。」
「・・・?どうかしたか鈴仙。」
暗くて鈴仙の表情はわからなかった。だけど声色が少し硬い感じがする。そして僕の目の前までゆっくり歩いてきて何かに耐えるように言う。
「目を閉じなさい。」
さっきの発言の粛清をされるようだ。僕はしどろもどろになりながら言い訳をする。
「えーと、さっきのことは、気にしなくていい。だから、その・・・」
「い・い・か・ら!」
言い訳を遮られた。
このままだと弾幕を打ち込まれそうなので言われたとおりにする。
目を閉じて衝撃に備える。うぅ、死なないとはいえけっこう怖い。肩に手を置かれた。ついでに顔に手を添えられた。何をされるのだろうか?このまま投げ飛ばされるのか?なかなか衝撃がこないので薄目をあけて様子を伺うと・・・目を閉じた鈴仙の顔がアップで写っていた。はい?
「ぇ?」
僕の戸惑う声は塞がれた。唇にやわらかい感触がある。
え???え?????ええ???????
頭の中に疑問符しかうかばなくなった。これは何者かのスタンド攻撃か?それとも超能力的な何か??僕が混乱しているうちに鈴仙は離れてしまった。
「別に今日の行商と屋台でおごってもらったお礼だからね!それじゃ、おやすみ、良也」
そう告げて僕の返事を聞く前に、鈴仙は脱兎の如く夜空を飛んで行って見えなくなった。
その後はどうやって博麗神社に戻ったかは覚えていない。霊夢に何か言われた気がするが生返事をして外の世界に帰った気がする。自分の部屋に戻って布団に入って気がついた。
そういえば、鈴仙に初めて名前で呼ばれた。
あとがき
お久しぶりです。ネコです。
ここまで読んでくれた人に感謝とアルパルテームを捧げます。
諏訪子はまだです。書く書く詐欺にならないようにします。
でも、最近、ヤンデレが書きたい。
それでは、また。
ネコのへそ
初稿 2010/07/04
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