最新話の第百九十七話『月と酒』で鈴仙視点のIf。
春は脳内桜色。いつも妄想彼女とデートします。
現実は野郎と二人で食事。とりあえず、春のリア充爆発しろ!!











これは夢だろう。私は夢が好きだ。
起きているときは過去がセピア色でしか思い出せない。
夢の中でなら過去は絵本を読んでいるみたいに鮮やかに思い出せる。
それはなにをするでもなく縁側で、てゐと一緒に満月を見上げいた時の話。
その時は私は『月が綺麗』と呟いた。てゐはそれを聞いて爆笑しだした。
しばらく涙が出るくらい笑って、目の縁に溜まった涙をぬぐい、いつもの嘘を言い出した。

「ねぇ、鈴仙。最近、人里で小耳に挟んだけどさ。」
「うるさい!なにがそんなにおかしいのよ!!あと、うさぎに小耳はないでしょう?」
「はいはい。人里の人間はある異国の言葉を『月が綺麗』と言うそうだ。」
「へぇ、あんたのいつもの嘘にしては面白そうじゃない。最後まで聞いてあげるわ。」
「それはね。*******を、*******って意味で使うんだって。」
「ふーん。変わったことをしているのね、人間って」
「いや、嘘なんだけど・・・」
「・・・はぁ、嘘つきなあなたが嘘をつくなら、それは真実でしょう?
それくらいわかるわ。数えるのが面倒くさいくなるくらいあなたの嘘に付き合ったしね。」
「・・・はいはい。」

それで会話は終わり。
月が沈むまで来るまでなんとなく、二人で一緒に満月を見た。
でも、そのとき言った、てゐの言った異国の言葉と意味はなんだったのか。
”それ”がよく思い出せない。

 

 

 


 

懐かしい夢をみた。
誰かの話し声がきこえる。ひどく頭が痛い。完璧に二日酔いだ。呑みすぎて床で寝てしまったらしい。
でも、後頭部のあたりが床ではなくて別の何かだった。暖かくて柔らかいけど、すこしゴツゴツしている。
よくわからないけど、それに身をゆだねると安心できた。もう少し目をとじていよう。

なぜこうなったか、昨日のことを思い出してみる。

師匠のところに、二日酔いの薬をもらいに変態がやってきた。
スキあらば私の耳を触っていかがわしいことをしようと穢れた人間だ。
神社を宿替わりにしていたり、鬼と遊んで喜んだりしているので、たぶん、少女偏愛主義者だろう。
全く不埒なことしか考えていない。それだと、てゐが心配だ。絶対に、近づかせないように気を配ろう。
その人間が月の写真を持ってきていて酒と団子を持ってきた。昔のことを思い出したから御酒が
飲みたくなった。ちょうどお酌する誰かが必要だったから、目の前の人間を誘った。別に他意はない。
頭がはっきりしてきた。てゐの声がする。

「・・・・・・ら、起きなよ鈴仙。客人の邪魔をしちゃいけないな」

客人?そう思って、目を開ける。
目の前にすまなさそうな顔をして、私をのぞき込んでいるアイツがいた。
コイツは情けなさそうな声で、私に挨拶をした。いつも通り挨拶を返そうとして、

「あ、おは……!!!??!?」

自分がコイツの膝枕で寝ていたことがわかった。
昔の癖で飛び起きて対象から安全な距離をとる。能力を行使して、弾幕をはろうとして、
対象を殲滅しようと力を入れた時に、

「待て、誤解だ」

気だるそうなコイツの顔と声で冷静になった。
あんなの膝枕で安心していた自分が恥ずかしくなったのを誤魔化すために、しばらく睨んで
落ち着いてから、いつもどおりに振舞った。

「・・・・・・ニ日酔いの薬、処方してあげるからついて来なさい。私も飲むから」
「え!?」

・・・コイツは不埒なことを考えている。顔に書いてある。

「なによ」
「いや・・・・・・あの、怒らないの?」
「・・・・・・大体、状況はわかるし。昨日、付き合わせたのは私だし」

絶対、コイツは身の毛がよだつことを考えている。やっぱり殲滅しておこうか?
それにしてもさっきから首筋のあたりがチリチリする。なにか嫌な予感がする。
それとも昔のことを思い出したから、気が立っているのだけだろうか?

「あら、おはよう。ウドンゲ」

急に背後に気配が現れた。あ、師匠だ。

「あ、師匠。おはようございます」

今は酔が残っているので断りを入れておこう。
懐かしい夢をみたから『月が綺麗』の意味を知りたい。コイツに二日酔いの薬を渡すときに聞いてみよう。 外来人だから知っているかもしれない。不埒なことを考えているが馬鹿じゃないだろう。
コイツは嘘もつけない。それに、昨日、二人で呑んでいるときに言われし・・・。

「すみません、昨日、呑みすぎまして・・・・・・。御用なら後ほどでもいいですか?」
「そうね、たくさん呑んでいたものね」

しまった。師匠に情けないところを見られた。それに、コイツが師匠に失礼なことをしなかったか心配だ。

「そう、私の目の前で私の愚痴を言うくらいですもの。さぞかし、美味しいお酒だったのね」
「・・・・・・へ?」

・・・・・・へ?どういう事でしょうか、師匠。

「不満があれば、そうと言ってくれればよかったのに・・・・・・。さ、向こうでお話しましょうか」

ずるずると、引きずられていく。抵抗できない。
コイツに聞きたいことがあるので、せめてもう少し待って欲しいです。

「ちょ、ちょっと師匠!?」
「ああ、良也。貴方の薬よ、はい」

紙に包まれた粉薬が渡される。それは困る。それでは『月が綺麗』の意味が聞けない。
あと、師匠。”お話”は勘弁してください。劇薬の有用性は聞きたくありません!
どうやってそれをドープして肉体活性剤をつくるか聞きたくありません!!
そして、なんで私で試すんです!!!そんな過去に絶望していると師匠に声をかける、
アイツの情けない声が聞こえた。

「あ、ありがとうございます。で、そのぉ」
「なに? 貴方も来たい?」

ぶるぶると、怯えるようにコイツは首を振るのが精一杯だった。
・・・この軟弱者め!おまえなんか狂ってしまえ!!
そう思って睨んでおいた。どうせコイツに私の能力は効かない。






いつもの部屋について、師匠の合成して私に試したのは、何故か強力な自白剤だった。
丸一日、意識が酩酊して洗いざらいしゃべった気がした。今、ベットから目が覚めた。
とてもすっきりした気分だ。目の前に、私に背を向けて机に座って師匠が薬を作っている。
そういえばこれを聞いておかないと。

「師匠、『月が綺麗』ってどういう意味ですか?」

私の質問を聞いて、振り向いた師匠はかなり呆れた顔だった。
なんだろうか?そんなに変なことをいったのだろうか?

「まだ、いっているの、ウドンゲ?薬、強すぎたかしら?そろそろ効果がきれるころなんだけど・・・。
でも、雰囲気はしっかりしてるわね。正気か確認するために仕事を頼むわ。
明日、人里に配置薬を売ってきなさい。あと、そんなに気になるなら、今度から良也と一緒に薬を
売った方が効率がいいわ。そろそろあなたの”嫌い”も治さないといけないしね・・・」

昨日の自白剤で頭が混乱しているらしい。師匠に窘められた。
しっかりしないと。それよりも気になることがある。私は感情を表情に出しながら、確認にために聞く。

「・・・アイツとですか?」
「ええ、そうよ。」

そんな私の顔をみて、師匠の表情は、うさん・・・じゃなくて、爽やかな笑顔になった。
でも、首筋がチリチリする。今の師匠は危険だ。なぜだろう、私はひどい表情をしただろうか?
ただ私はアイツをからかうのが楽しみなのに。師匠も地上の人間は嫌いなはずだ。
別に嫌悪感を表情に出しても問題ないはず。それとも異変でも起こすのだろうか?
ギリギリまで真面目に答えてくれないだろうけど、ストレートに尋ねてみる。

「はい。わかりました。あと、なにか邪なことを考えていませんか、師匠」
「それは野暮な質問ね、ウドンゲ。私は馬に蹴られて死んだことはないの。それよりも来週の
準備はいいの?配置薬と違って行商は水物だから大変よ。そうね、服装も変えないといけないわね。
もっと可愛い服装がいいわ。」

うまくはぐらかされた気がする。
そして、何故、さっきよりも爽やかな笑顔なのですか?なんか怒っていません?
そんなの師匠にツッコミたいが、手元にある原色青色液体が入っている試験管。
さっきから嬉しそうに、こぼれないように、手元で試験管を振って混ぜている。口答えしたら、
絶対、実験台だ。アレを、ノんだら、ゼッタイ、シぬ。それに、こうなったら師匠は何も教えてくれない。

「そんな畏れ多いですって。あと行商で売る薬ですが・・・」

それよりも来週のことが大切だ。
しっかり薬を売らないと。アイツは嫌いだが、師匠の言うことならしかたない。きちんと仕事をこなそう。
・・・人里へはどんな服を着ていこうか?今度あったらアイツに『月が綺麗』の意味を聞いてみたい。

 

 

 

 


あとがき
ツンデレイセン。上手くかけたでしょうか?
テーマは「女心は秋の空」です。男が書くとキモイ気がします。
でも、春はみんな脳内ピンクですけどね!!
そして、エロはなし。大丈夫、エロは諏訪子で書きます。ええ、エロエロです。
5割書きました。誰も期待してないだろうけど、書きます。規制法律?なにそれおいしいの?
この話はBBSの久遠様の返信を見てなんとなく書きたくなった。後悔はしていない。
・・・ちなみに永琳製自白剤で吐いたことは秘密です。


ただ、無意識にノロケているヤツは爆発すればいいと思います。
(トモダチという名前の)知人が

「職場で昼休みにアイツと『もし姉弟ならどっちが上』でケンカしたんだよ」

とか、野郎二人で飯を食いに行ったときに言っていました。初めて現実で、

「死ねばいいのに」

と、心の底から言いました。でも、付き合ってないそうです。
さらに、異性として意識してないそうです。ええと、爆薬の合成方法は・・・

 


それでは、また。
ネコのへそ

 


初稿   2010/04/10
誤字改訂 2010/04/22




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