「東方紅執人10」


「紅茶をお持ちしました、お嬢様!」

はじけるほどの笑顔で、レミリアに紅茶を差し出す悠。

「あ、ありがとう……」

いつもは、紅茶を入れてもらった程度でお礼を言うレミリアではなかったが、そんなに綺麗で無垢な笑顔を見せられては感謝の言葉を言わざるは得ない、という気になった。

そしてその傍らに佇む咲夜は、悠を凝視する。

(悠が女になった!)

これは衝撃中の衝撃である。

鋭い目付きはくっきりし、口元も妙に揺るんで常に微笑んでいる様にも見える。常に腕組みや、ポケットに手を突っ込んでいるのが目立つ悠だが、今は手を後ろで組んで直立している。それに、言葉の節々にやたらと快活さが滲み出ている。

咲夜と同様にレミリアも、悠の変化に戸惑っていた。

(なんか雰囲気が違いすぎて接しにくい……)

「どうしましたお嬢様?」

「な、何でもないわ!」

顔を目と鼻の先まで近づけて迫る悠に、レミリアは恥ずかしくなって顔を背けた。顔が近いわよ。

(やりにくいわ……)

気持ちを落ち着かせるために、紅茶を啜るレミリア。

すると部屋のドアが開き悠の主人、フランドールが入って来た。

「悠〜、あーそぼっ!」

いつもと変わらない笑顔を振りまいて、一目散に悠の元にかけるフラン。

「フランちゃん!」

「えっ……」

しかし、フランも悠がいつもと違うことに気づいたのか、心配げな眼差しで見つめる。

「どうしたのフランちゃん?」

「なんか悠、いつもとちょっと違うなーって」

「そんなことないですよ、さっ、お遊びしましょう」

「……そうだね、うん、遊ぼ!」

やはりフランはまだまだ子供だったか、少し考えてみたものの、普段と変わらず悠とおにごっっこを始める。

「お嬢様は知っていたんですか?悠が女性化することを」

「えぇ、その事実だけはね」

二人のはしゃぐ姿を見つめながら、咲夜とレミリアは話す。

「悠の能力は、あいつが幻想郷に来た時に偶然身に付けたものだとわたしは推測するわ。ただ、悠はただの人間。そのため、能力を得る代償にあんな特異体質に自然になってしまった」

淡々と悠について話すレミリア。二人の間の空気が若干シビアになりかけていた。

「お嬢様!お嬢様も一緒に遊びましょう!」

「えっ!」

だがそんな空気を断ち切ったのは、悠だった。

「ちょ、ちょっと!」

一緒に遊ぼうとレミリアの腕を引っ張る悠の姿は、陽気な思春期の少女にしか見えない。

「わ、わたしはいいわ!」

「そんなこと言わないで、ねっ」

手を合わせ、にっこりと笑顔を見せる悠に、レミリアは何故か少し気恥ずかしさを覚えた。

「お姉様、もしかして恥ずかしいの?」

二人と遊ぶのを嫌がる姉に、挑発の言葉を投げかけるフラン。

「そ、そんなことないわよ!いいわ、やってあげる」

妹に軽く乗せられるレミリアの姿を見て、咲夜は「お嬢様も女の子なんだな」と感慨にひたった。



「見なさい、これがわたしの最高傑作「不夜城レッド」よ!」

「わぁー、凄い!」

「さすがレミリアお嬢様、積み木がお上手!」

いつの間にか積み木で遊んでいた三人。なんだかんだでレミリアもノリノリである。

そんな微笑ましくもある光景を咲夜が遠目から見つめ呟く。

「案外問題無いわね、女性化悠……」

そんな咲夜の思惑も知らず、レミリアは「スカーレットデビル」という名の作品作りに取りかかっていた。

(どうやって作るんですか、スカーレットデビル……」

























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