「東方紅執人3」



皆の衆、こんにちは。

わたしはレミリア・スカーレット。言わずと知れた紅魔館の主よ。

趣味は吸血。だっておいしいのだもの、特に人間の咲夜や悠の血は格別で、深みとこくを合わせた///……。

す、少し自分の世界に入ってしまったわ……ごめんなさいね。

血の話は今度するとして、本題に入るわ。

話というのは、悠とフランのことなの。



あれは、偶然フランの部屋の前を通りかかった時の話。

「あっ……そこは、だめっ!」

ドア越しに聞こえてきたフランの甘い声。

(えっ!?)

突然のことにびっくりして、ドアの前で足が止まった。

「わ、悪い!痛かったか!?」

悠の声も聞こえてくる。フランを心配する声のようだが、どうもおかしい……。

(だめ、痛い……何をやっているのかしら)

いっそドアを開けて中を覗こうと思ったが、別にやましいことをしているという確信もまだ無いので、ドアに張り付いて耳を澄ませる。

こんな格好を誰かに見られたらまずいけど、今はそんなことを気にしている場合じゃない。

自分の妹と従者が、大変なことをしているかもしれないのだから。

だけど、わたしは二人を信じる。

それが姉として、主としての役目だから……。

「んっ、そこ気持ち良い……」

「ここ、すっごい柔らかいな」

……前言撤回。

信じるとか役目とか、どうでもよくなった。

わたしは、姉と従者に裏切られた。



……というわけなんだけど。

あの後、耐えられなくなってその場から逃げた。

だって実の妹と絶対服従の従者があんなこと……頭がおかしくなりそうだわ!

でも悠も立派な男なんだし、女に興味が無いはずはないと思うけど……よりによってフランはないでしょう!

自分が働く館の主人の妹よ、普通手を出さないでしょう!?禁断の恋じゃない!

もしかして……悠はロリコンなの?

……

そ、それは関係無いわね。うん、関係無い。

(あの時、止めさせておくべきだったかしら……)

ドアを勢いよく開けて、「何やってるの!」と叫べばよかったか。

しかし、一応プライベートであって、わたしが介入してはいけないのでは?

そうよ!お互いに愛しあっているならば許してあげてもいいじゃない!

二人が幸せになってくれれば……。

駄目だ。

二人の幸せを素直に喜べない。

姉としてフランにはまだ嫁入りなんてしてほしくはない。

主として悠にはまだ婿入りなんてしてほしくはない。

要するに、わたしの元から離れないでほしい。

我ながら自分勝手ね。



「……様、お嬢様」

「はっ!」

「どうしたんですか、ぼーっとして」

あなたのことを考えてたのよ。

どうやら少し、気が抜けていたようね。

「今日は少し変ですよ」

あなたのせいよ。

「調子が悪いんですか?」

調子は悪いわよ、精神的な部分がね。

「休んだほうがよろしいかと」

「うるさい、うるさい、うるさい!!!」

悠が驚き目を丸くする。

おせっかいなのよあなた。

「す、すいません……」

悠はわたしにだけは気が弱いのよ。

そこが、少しかわいくて気に入ってるところなんだけど。

(でも、そんな悠がフランと……)

「お、お嬢様?」

やっぱりちゃんと訊いたほうがいいのかもしれない。

フランと悠のこと。

わたしは姉だから、主だから。

内容はどうであれ、知っておかなければいけない義務がある。

「ゆ、悠!」

「はいっ!」

緊張するな、レミリアスカーレット。

「あ、あなた、この前フランとなにやってたの!?」

言えた。言えたわ。

「は?」

「惚けたって無駄よ!この前、フランの部屋を通りかかったときに聞いたのよ!」

悠は何のことかわからず、ただ首を傾げるばかりである。

悠、あなたは主人に対してまだシラをきるつもり!?

「この前……あっ!」

「悠〜」

悠が何かを思い出したのと同時に、フランが部屋に入ってくる。

「またこの前のしてー」

「なっ!?悠、あなたまた!」

「何でそんなに怒ってるんですか!?」

「フランと何するつもり!?」

事と次第によっちゃあ殺害も考えるわよ。

「マッサージですよ、マッサージ!」

「へ?」

マッサージ。この言葉が脳内で繰り返し響く。

まさかあの時の声……それがマッサージによるものだとしたら納得がいく。

ということはただの勘違いってこと?

自分の間違いに気付くと顔が熱くなるのがわかる。

「それがどうしたんですか?」

「なんでもないわよ!」

まったく、取り越し苦労だったわけだ。

今回の件で悠やフランに対しての信頼が、少し上がったような気がする。




「お嬢様もどうですか?」

「さ、されてあげてもいいわよ!」




戻る?