※これは、閑話十二話のエピソードのIF話となります。

ぶっちゃけ、紫登場まで面倒くさ――もといコピペレベルで似たようなな内容になるので省いています。

何を言いたいのかと言いますと、まず本家の閑話十二話(09年1月現在のweb拍手短編)をお読みになってからでないと、楽しめないということです。

あくまでもネタなので、その辺を加味して、色々とご容赦下さい。


















えっと、この外の世界では決して聞きたくない類の声色は……


「スキ――」

「紫……か」



 あれ? 何で爺ちゃんが知ってるんだ?



「ええ、八雲紫ですわ。お久しぶり灯也。五十年ぶりかしら」

「ああ、久しぶりじゃな。わしとお前の関係は、とっくに切れたと思っていたが」

「それがまた、良也を通じて繋がったというわけよ」



 五十年……っつーと、爺ちゃんがまだ幻想郷にいた頃になるのか? というか、この二人顔見知りだったんだ。

 いや、幻想郷にいたんだから、おかしくはないけどさ。



「知り合い?」

「知り合いも何も、私と彼は夫婦よ」



 ……は?



「と、とととと、ということは!?」

「ええ、私が貴方の祖母よ。でも、お婆ちゃんとか言ったら殺すから」

「嘘だ!!」



 あまりと言えばあんまりな発言にL5的な否定をする。

 嘘だよね? 嘘だよね爺ちゃん!! 何でうむうむとか懐かしそうに頷いてんの!? やめてよ!!



「ねえ、良也。教えてあげる。彼ねぇ、昔、私に恋文を送ってきたのよ」

「ええ!?」



何だソレ! 馴れ初めか! 馴れ初めなのか!?



「一目惚れじゃった。里で見かけてすぐに博麗の巫女に人となりを聞きに言っての。その日の内に知り合いの白狼天狗に頼んで文を届けてもらったんじゃ」

「嫌だ! 聞きたくないぃ!!」

「『突然の手紙、失礼します。しかし、私は貴女の全てに惚れ抜いてしまった! 貴女が欲しいッ!』。だもの。この頃の灯也は情熱的だったわねぇ」

「うー、うー」



 やめて。もうやめてー。



「まあ、でも。私も妖怪だし? 容姿に自信があるのは当然。何度か似たようなこともあったしね。だから、恋文を貰ったぐらいじゃ、心動かされたりしないわ。その時はせいぜい面白い人間だ、ぐらいだったわね」



 そ、そうだよな! それぐらいでくっついたりしないよな!!
 
 ってその時? 続くのか!?



「灯也が他の人間と違ったのはそこから。彼、その日の晩に乗り込んできて『恋文は読んでくれたか? わしの思いは伝わったと思うだから――夜這いに来た』って枕元で囁いたのよ」

「何してんだジジイィィィィィィィィィ!!!!」

「はっはっは、わしもあの頃は若かった。妖怪とは知っていたが辛抱堪らんでな。性欲を持て余す、そう言ったら射命丸殿が快く送ってくれたんじゃ」

「あんまり、男らしかったから許しちゃったわ。テヘ☆」



 さ、寒気があああああ!!! あと、駄目天狗! 何てことしてくれやがる!!



「因みにその時デキたのが――」

「父さんのことかーーーーーー!!!」



 衝撃の新事実! ああ、何だか新たな能力に目覚めそうだ!!

 鏡を貸せ! 僕、金髪になってない!? ……ないな。

 でもだな、僕はだ、騙されないぞ。そうだ、思い出した!
 
 ふふふ……、貴様らは1つ忘れていることがある。



「スキマ敗れたり! 森近さんから聞いているんだ。半妖は肉体の絶頂期で成長が止まる。でも、父さんは明らかに普通に歳を取っている。だから――」

「ああ、裕也は私が人間と妖怪の境界を弄って普通の人間にしたのよ」

「インチキにも程があるだろ!!」



 やっぱ、存在自体がインチキだコイツ!!



「とは言っても、人間離れした丈夫さぐらいは残ってる筈なんだけど」

「…………」



 ……心当たりが多すぎて困るんですけど。

 もう駄目だ。何だか、世界の何もかもが信じられなくなってきた。
 
 マジで鬱入って来た……。



「でも、おかしいよな。それなら何で幻想郷から出てきたんだよ。そもそも、父さんをわざわざ人間にする意味が分かんないし……」

「ああ、その疑問は最もじゃ。わしもな、本当は幻想郷を離れたくはなかった。しかし……な」



 爺ちゃんが言いよどむ。そこで、スキマがその横に座り、少し落ちた肩に優しく手を置いた。

 それはまるで……。いや、爺ちゃんたちの言葉を信じるなら、やはり夫婦の姿なのだろう。
 
 僕は覚悟を決め、黙って話を聞くことにした。



「当時、吸血鬼異変と呼ばれる異変があったの。霊夢の二代前の巫女の時代。およそ、五十年前のことよ」

「大変な異変じゃった。ワシは姿こそ見ておらんが、強大な吸血鬼という妖怪が現れての、多くの妖怪たちをその力で捻じ伏せ、配下を増やし、幻想郷を乗っ取ろうと戦争を仕掛けたのじゃ」

「人間たちには危害を加えさせないように頑張るつもりだったのだけどね。灯也は私の伴侶、そして生まれたばかりの小さな裕也。……彼らにしてみれば、私なんかよりもよっぽど狙い易い標的だったのでしょう」

「じゃから、わしは幼い裕也を連れて、幻想郷を離れたんじゃ。一度、幻想郷から出れば二度と戻ってはこれぬ、外界で生きる為とは言え、裕也も人間と妖怪の境界を絶ったならば、紫との縁も切れる。……全て分かった上でな」

「婆さんと出会ったのはそれから10年経たんぐらいかの。道場の繋がりで見合いをしたんじゃ。激しい恋愛ではなかったかもしれんが、わしはあいつを愛したし、母を知らぬ裕也も良く懐いた。誰がなんと言おうと、わしらは家族じゃったと思う」



そう言って、爺ちゃんは長かったようで、意外に短い話を終えた。

いや、爺ちゃん“たち”か。これは、2人の物語なのだから。



「良也」



爺ちゃんが、僕の両肩に手を置き、老いて尚、老いぬ眼光を持って僕を見据える。

そう、これは大切なことなのだ。僕は、今の話を全て受け止めなくてはならない。

八雲紫と、土樹灯也と言う人間が描いた幻想郷の恋愛譚を。

僕が、既に絶たれてしまったとは言え、この隙間妖怪と血の繋がった祖母であるという事実を。

僕にも、この誇り高き妖怪の血が流れていることを。

分かったよ爺ちゃん。

僕はその意思を瞳に据え、しっかりと見つめ返す。

その意思が伝わったのか、爺ちゃんは満足げに頷き。言った。



















「嘘じゃ☆」





それからの事は良く覚えていない。

ただ、とりあえず言えることは、僕はこの腐れ爺ィを超えたという事であり、コレの話は今後どんな話でもホラであると理解したという事だ。

そして、スキマは変わらず僕の大天敵である。ふぁっく。















あとがき


どうも、明けましておめでとうございます。名前に負けじと炬燵を背負っているマイマイです。

そして、読んでくださった方々ごめんなさい。あまりに酷い話でした。ごめんなさい。

感動された方、感銘を受けた方、スキマや爺ちゃんを見直しそうになった方。全ての人にごめんなさい。

婚姻異変の進みが悪くて、思いついたことをやってみたら一息で書けてしまったんです。

本当にごめんなさい。自分で見てもこれは酷い。このオチは酷すぎる。反省はしていません。


ちなみに、爺ちゃんはスキマの話に悪乗りしただけです。

事前に打ち合わせをしていたとかそういうことではありません。

爺ちゃんが紫の悪ふざけに乗って、面白がった紫がさらに話を転がしてという形であそこまで行ってしまいました。

記憶が無くなるぐらいブチ切れてる良也の横で、紫は腹を抱えて大笑いしていました。ろくでもない奴です。

良也は本当に災難でした。


裏設定ですが、彼は確かに夜這いはしましたが、そこでは酒を交わすに留まっています。

たまたま、藍さんが家を空けていたから出来たようなものですが、その“縁”を持って、紫は彼を許し、ある程度認めました。

本家も確か、夜這いには行ったという設定があった気がしますが、それなら彼女を妖怪と知った上で行ったことと、枕元で囁いた台詞が分岐点ですな。適当です。

まぁ、この爺ちゃんは男らしかったんです。ここまで言える漢にヘタレ要素など皆無。完全無欠の武神であります。そういうIF話。

ちなみに、吸血鬼異変で爺ちゃんが幻想郷を離れたのは本当。何故、その時なのかは当時の人のみぞ知るということで。


あと、突込みが来るかもしれないので原作設定について明言しておきます。

吸血鬼異変は東方求聞史紀では霊夢の項に書かれていますが、どうも阿求の書き方が、関わってないというか、吸血鬼をレミリアと明言してないことから、今代ではない気がするなと思いました。

そもそも、吸血鬼が有名になったのが紅霧異変と書かれている以上、吸血鬼異変はかなり前の出来事になると思うんです。

この異変の後に博麗の巫女が若干の戦闘は不可欠と同意し、そして考え出されたのがスペルカードルールと書かれていますが、それまでに先代が色んなルールを考えて、その最終形として霊夢がそれを考え出したと解釈しています。

事実、他のルールも考えられていたと※4で書かれていますし。

ですので、吸血鬼異変は50年前としました。いや、紫が適当に言ったとかで言い逃れは出来るんですけど、折角考えたので。

つーか、当初の予定では最後のオチは嘘オチではなかったのですよ。

地味に爺婆の吐く嘘が妙に凝っているのはその名残です。

でも、シリアスより、こっちの方が楽しいだろ。と思ってその他設定全部破棄しました。

まあ、何はともあれ楽しんでいただけたなら幸いです。

婚姻異変のほうは、まぁ今月内には投稿できると思うので、楽しみにしてくれているであろう一部のコアな方はご安心下さい。

それでは、長々と申し訳ありませんでした。またの機会にお会いしましょう。



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