―Warning!―
 この物語はフィクションであり実在する土樹良也とは多分関係ありません。
 以上をご理解の上、了承を頂ける場合のみこの下の本文をお楽しみください。


 僕は奴が誰なのか分からなかった。
 ただ解るのは、霊夢と魔理沙が二人がかりで戦って勝てなかったと言うこと。

「くくく、守ってくれる奴はもう居ないぞ、土樹良也」
「何故だ、何故僕を狙う!」
「決まっている、貴様の能力は危険だからだ」
「僕の……能力?」

 何を言ってるんだ、僕の能力なんて力としてはそんなに強いものじゃない。

「解らないと言ったところだな。ならば解らないまま死ね」

 奴が放った弾幕が僕を襲う。
 弾幕が届く前に僕の前に誰かが飛び出してくる。
 ―誰かなんて言う必要は無い、ここには奴も含めて四人しか居ないのだから。

「霊夢!魔理沙!危ないぞ!動けるなら逃げないと!!」
「おいおい、冗談は無しだぜ。ここで私たちが逃げたら誰が良也を守るんだ?」
「そうね、最後まで世話の焼ける人だわ」

 魔理沙、僕は守られなくても蓬莱の薬のおかげで死なない。
 霊夢、最後って何だよ。
 そう言いたいが口が動かない。

「さらばだ、博麗の巫女、人間の魔法使い、そして『世界の主』よ」

 そうしている間にも弾幕は迫ってきていて僕らを飲み込もうとしている。

「楽しかったぜ、良也」
「えぇ、貴方と居ると退屈しなかったわ」

 二人ともやめろよ、何でそんなもう二度と会えないみたいに言うんだよ。
 何でそんなに満足そうな安らかな笑顔なんだよ。
 僕が……僕なんかのために……

「……だ」
「何だ良也、言いたいことがあるなら早く言わないと時間がなくなるぜ」
「駄目だ」
「駄目って言われても、もう逃げ場は無いわよ」

 満身創痍の二人の前に僕は立つ。

「お、おい!?」
「良也さん!?」

 二人が慌てるがそんなことは気にしない、気にしてられない。
 僕の能力の効果範囲はいつぞやからそこまで大きくはなっていない。
 でも霊夢と魔理沙の位置は間違いなく効果範囲だ。

「ほう、自ら死を選び後ろの二人を助けようと言うことか?」

 奴は僕が前に立った理由をそのように解釈したらしい。
 だが、そんな訳は無い。僕は往生際が悪いんだ。

『僕の世界内においてあらゆる攻撃を許可しない!!』

 宣告と同時に効果が発動した。範囲内にあった弾幕は全て消滅、範囲外のものも効果圏内の境界に触れた瞬間消えていった。

「な、なんだと!まさか、目覚めたのか!!」

 奴の顔が驚愕に染まった。

「以前パチュリーが言ってた僕の能力は僕の認識次第だと。だったら僕は強くなって見せる!僕の弱さのせいで二人を死なせられるかっ!!」 

 僕の言葉に奴はたじろぐもののそれも一瞬。
 直ぐに立ち直り空から僕を見下してきた。

「なるほど、能力の使い方に気づいたようだがそれでどうする?見たところ精々ニ間と言ったところか」

 どこか余裕な感じだが、自分が範囲外に居ると思って安心しているのだろうか。
 だが、甘いぞ!

「この場所を選んだことが運の尽きだ!」

 そう、この「博麗神社」を戦闘の場所に選んだことが奴の誤算。
 奴が浮いている場所、

「そこは、僕の能力の効果圏内だっ!!」
「なんだとっ!?」

 僕は範囲を一気に広げる、するとすぐに僅かな異物感。奴が範囲内に入ったってことだ。

「僕はお前だけは許さない!『お前が僕の世界に存在することを認めない』っ!!」
「ば、ばかなっ!この私がやられるだと!馬鹿な馬鹿な馬鹿なそんな馬鹿な話がーーーーーーーーっ!!」

 僕の能力の効果で奴が見る見るうちに崩れていく。
 やがて断末魔の悲鳴をあげ奴はこの世界から消滅した。

「お前の敗因はただ一つ、お前は僕を怒らせた」

 決め台詞を決め僕は二人の方へと向き直った。

 




「と言う夢を見たんだ」
「何それ?」
「なんだそりゃ?」

 話し終わった僕はお茶を啜って一息つく。
 あー、長話のせいかのどが渇いていたからお茶が美味い。
 霊夢と魔理沙の方を見るとどこか呆れた表情でこっちを見ていた。

「何って今朝方見た初夢の話だけど」
「いきなり何かと思えば、初夢?」
「ボロボロになってたって、なんか面白くないぜ」

 しかしよく出来た夢だったなー。

「もしかして本当に僕にも出来るんじゃがりこっ!!」

 言葉の最中に後頭部を鈍い衝撃が襲う。
 あー、世界が暗く……


「紫!突然現れたと思ったら何をしてるのよ!」
「あけましておめでとう霊夢、魔理沙。何ちょっと記憶を弄りにね」
「記憶って良也のか?」
「えぇ、あんな夢を覚えててもらったら困るのよ、今はね」
「困るったって夢の話だろ、そこまで気にしなくても……」
「だって、きちんと認識すれば今の夢の話は全部現実になるもの」
「マジか?」
「大マジよ」
「つまり、私の命が良也さんに握られるも同然って訳ね、いいわやっちゃって紫」
「言われなくても、そのために来た訳だし」

 暗く沈む意識の淵でこんな会話を聞いた気がする。
 だけど、目が覚めた僕は何も思い出せなかったのでそんなことを気にする必要も無かったぜ。


 ―おしまい―


 語句保管
 ・二 間(に けん)  
  長さの単位の一つ、一間=六尺。一尺が約30,3cmなので一間は約1,818m。
  今回のお話の場合約3,6mとなり奇縁譚本編七十五話時よりも少し長いくらいです。



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