ある日、紅魔館でのお食事会にお呼ばれし、食事後いつもの様に血を吸われて、その後フランに絵本を読んでいた。
今は一冊を読み終わり、フランが次の絵本を探しに行っており、パチュリーは相変わらず本を読んでいる。
そして僕は…

「むぅ…」

悩んでいた。

「何をそんな唸ってるのよ?」
「ん?いや…僕、外の世界で教師を目指してるんだけどさ。何となく自信が無くてね」

たまーにフランに勉強を教える事があったりして、その経験からそう思ってしまった。
生徒1人(その1人が厄介だけど)でもそれなりに大変なのだ。
まぁ、数回しかやってないんだけどね。

「ならフランに本格的に勉強教えてみたら?練習にはなると思うけど」
「本格的に、かぁ」

フランは基本的にはいい子だけど、うっかり殺されたりするから大変そうだなぁ…。
この前も飛びかかられた衝撃で内臓やられて死んだしなぁ。
さすが吸血鬼、力が半端じゃない。
まだ手加減も苦手みたいだし。

「でも、確かに練習にはなるかも」
「それに、貴方が妹様に勉強を教えたら、普段私が教えてた時間を読書に使えるしね」

それが本音か…。

「…うん、よし。後でちょっとレミリアに相談してみるか」

今はとりあえず、戻ってきたフランと一緒に読書かな。

―――――

レミリアに相談した結果、あっさりOKが出た。
あの時の顔は明らかに『何か面白い事になるかもしれない』とか考えてる顔だよ…。

というわけで、フランの勉強を開始したわけだけど。

「終わったから絵本読んでー!」
「はいはーい」

ここ最近、フランは授業が終わったら毎回絵本の朗読をせがんでくる。
授業の為に頻繁に紅魔館に来るようになってから100%でだ。
その際、毎回僕の膝の上に乗って嬉しそうに絵本を読んでいる。

「良也、早くー」
「あぁっと、ゴメンゴメン」

しかし、授業を初めて1ヶ月程になるけど、フランが少しずつ変わってきたように感じる。
絵本が情操教育にいいのか、たまに見え隠れしてた不安定な部分が落ち着いてきたような気がする。
それに、少しずつ手加減も覚えてきたらしく、突撃されてもあまり殺されなくなった。
あくまでも、あまり、だけど。

ただ気になるのが、以前より妙になついてきてる所だろうか。
まぁ、何か被害があるわけでも…いや、たまに咲夜さんとか小悪魔さんから微笑ましそうな目線を向けられる事があるな。
なんとなく気恥ずかしいんだよなぁ、あれ。

―――――

フランに勉強を教え初めてから2ヶ月。
僕はフランの「外の世界の本が読んでみたい!」という発言を受けてたまに持ってきたりしていた。今も僕の膝の上で一緒に本を読んでいる。
最近のフランは成長が著しく、手加減もほぼ完璧になった。
それと共に気遣いを覚えたので、少し前まで妖精メイドに怖がられてたフランは、今や割といい関係を築けている。
しかし1つだけ問題が発生した。

「良也!今日は泊まるの?」
「あー…えーっと…」

そう。
異常にフランがなついてしまい、時々泊まり掛けで本を読む事をお願いされるのだ。
流石にそれはどうだろうとレミリアが反対したのだが、結局なんやかんやで許可が出てしまった。
その時のフランの喜び様はかなりのものだった。

―――――

フランに勉強を教え初めてから3ヶ月。
流石に普通の子供とは違い基本的な勉強は既に終わった。
見た目は子供でも年齢では大人だからなぁ。
しかしあくまでも小学校低学年レベルの基本なので、フランにはまだ勉強を教えている。
そしてここ最近、新たにフランが練習しはじめたものがあった。

「良也ー!クッキー作ってみたから食べてみて!」
「あー、うん…」

なんだか料理に興味を持ったらしく、時々咲夜さんにサポートして貰って練習がてら色々作って食べさせられている。
なんでいきなり料理を始めたのか聞いてみたら、

「本で見てやってみたくなった」

とのことだった。
いや、意外と美味しいからいいんだけどね。

―――――

フランに勉強を教え初めてから4ヶ月。
最近のフランは勉強に料理にと非常に意欲的だ。

「まるでフランの花嫁修行みたいになってきたなぁ…」

などと呟いたら、レミリアから「フランにはそんな相手はいないわよ」と流された。
…しかし、他の人達はなぜそんな生暖かい目線をくれるのか。

―――――

そしてフランに勉強を教え初めてから5ヶ月目。
ちょっとした騒動の始まりとなる発言がディナーの場で放たれた。

「ねぇ、良也」
「んー?何?」
「結婚しよ?」

思わず紅茶を吹き出した。
周りを見れば、レミリアも紅茶を吹き出していた。
咲夜さんや美鈴、小悪魔さんにパチュリーは平常だったけど。

「ぼぼ僕と結婚!?いいいいいきなり何をー!?」
「フラン!?いきなりどうしたの!?」

「あら、やっとなのね」
「いつか言い出すとは思ってたけど」
「そうですねぇ」
「ディナーの場でプロポーズとはなかなか…」

ちょっとまってくれ。
あんたらこうなること知ってたのか!?

「たまに相談されてたのよ」
「見ていればなんとなくわかりました」
「というかあさらさまだったしね」
「ですよねぇ」

こ、これは想定外にも程がある。

「フラン!?何で良也なの!?他にもっといなかったの!?」

レミリアがかなりテンパっている。
運命読めるんならこの展開も読めたんじゃ…とか思う僕は間違ってるのだろうか。
というか言ってることが酷いぞ。少し落ち込む。
…今更か。

―――――

あれから1週間。
僕は大学があったのでとりあえず外の世界に戻ったけど、紅魔館では話し合い等で色々ゴタゴタしていたようだ。
レミリアは「気の迷いじゃ」とか「良也なんかでいいの?」とか色々フランに言っていたが、フランの気持ちは変わらないとのこと。
そして僕は…困っている。
そりゃフランは可愛いし好きだけど、それは妹的だったり生徒的な意味だ。
恋人とか結婚とか言われても困る。
というか、僕はロリコンじゃないんだ。うん。
…ん?フランの方が年上だからこれは違うのかな?

それは置いといて。
実は紅魔館での話し合いの結果、とんでもない事になってしまった。

「一時の気の迷いとか、読んだ本の影響かもしれないわ。それっぽい事をしていればその内飽きるかもしれない」

というレミリアの判断によって、何故か紅魔館の一角でフランと一時的に同棲する羽目になった。
無論、僕の予定等は無視で。
丁度いい具合に大学も休みになってしまっているので、これから長期間紅魔館にいる事になる。
その間にフランの気持ちが変わらなければ結婚を許す、ということらしい。
その提案に僕も抵抗したんだけど…

「良也…嫌…だった…?」

とか涙目で言われて妙な罪悪感うっかり許可してしまった。
くっ…さっきのは確かにこの前持ってきたマンガにあったセリフだったような…。
見事活用されてるよ…。

「これから僕はどうなるんだろう…」
「まぁ、頑張りなさい。光源氏」
「…パチュリー、洒落になってないって…」

不安で仕方ない状態になりながらも、膝の上で催促してくるフランにいつも通り本を読み始める僕だった。

ちなみに、どこからか聞き付けた射命丸が新聞のネタにし、それを見た幻想卿住人が驚愕し、魔理沙の、

「良也とフランの結婚なんて、もはや異変と言ってもいいんじゃないのか?」

という飲み会での発言により、幻想卿住人達が悪ノリ。
後に『結婚異変』と言われる幻想卿史上最大、かつ最高に下らない異変だったと飲み会で笑い話にされ続ける異変が起こったが余談である。




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