「では試験を始めて下さい」
試験監督の合図と共に、ブワッ、と受験生達が問題用紙をめくる音が聞こえる。

僕も紙をめくって、解答用紙を手繰り寄せて鉛筆を握りしめる。
今日の最初の時間は社会、僕は日本史選択なので日本史のページをめくる。

カリカリ……、と他の受験生の問題を解く音が聞こえてくる。



……えーっと、江戸の文化は元禄と化政があって、京都を中心に栄えたのは……元禄文化だ。
そうそう、昨日やったとこだよ。記憶に新しい。

その番号のマークを解答用紙に塗り潰していく。

ああ、まだ先は長いなぁ……


チラ、とカンニングにならない程度に隣の受験生の様子を伺う。



「……ルーミア?」
そこに居たのは明らかにルーミアにしか見えない女の子だった。
金色の髪で、真っ赤な大きいリボンもしてるし、

すると向こうも僕に気付いたのか、目線をこっちに向けてニコッと笑ってくれた。

「ねぇ、あんたは取って食べれる人類?」
その言葉を聞いて、背中に何か冷たいものを感じた。
「り、良薬は口に苦しって言うだろ」
じりじりと後ずさりをする、が。

「じゃあいただきまーす」
大口を開けて迫ってきた。

左半身に鈍い痛みが襲ってくる。
く、喰われる!?














…………。

急に意識がハッキリしてきた。
布団の温かい感触を感じる。

静かな朝だ。
左半身の痛みが僕にまだ生きていることを教えてくれている。

夢だ。最近、夢見が悪いな。
嫌な夢だった。夢の中でまでも襲われるなんて。

それに……、忘れていた。

僕は受験生だ。
それ以前にまだ高校生だ。

センター試験は、次の土日にある。
試験会場は、僕の元いた世界。

親にだってまだ連絡の一つもしていない。
友達にだって。

ズキズキと昨日受けた傷が痛む。





妙にセンチな気分になってしまった。
しっかりしろ僕、今お前は幻想郷の住人になっているんだぞ。

でも……、

まだ少し慣れない布団の感触が、心地良く感じられなくなってきた。

僕はそのまま痛む体を起こして、布団から抜け出した。



























「もうじき着くよひなたくん」
良也の先導する声が聞こえる。

鬱蒼とした竹林の中をふよふよと飛んで行く。
永遠亭を目指して。

脚が折れていても宙を飛んで行けるから楽ではある。

空が見えない。
足元には、殆ど誰も足を踏み入れていないような新雪が深く積もっている。
それに周りどこを見ても、どこまでも竹林が続いているように見える。
これは確かに、歩きで行ったら迷子になるだろう。

飛んでいて楽とは言え、自力で飛んでいるのだから霊力も体力も使う。
神社からここまで、直線距離でもだいぶ離れてる。

つまり、疲れた。
服は破れっぱなしで、外気が刺すように冷たいし。

「も、もう少し?」
「ああ、ほら見えてきた、あれだよ」

良也が指さす方に顔を向けると、雪を被った大きな門が。
立派な門だなぁ。ちょっとした豪邸クラスはあるんじゃないだろうか。
僕がそんな感想を思った間に、門の前まで着いた。

「おーい! 怪我を診てもらいたいんだけどー!」
そう良也が声を上げると、しばらくして門が開いた。少しだけ。

「……何かしら。貴方の事ならほっとけば治るでしょう」
妙に辛辣な声。
僕のいる角度からじゃあ見えないけど、声の感じと迎えに出る立場から予想して……多分鈴仙だろう。

「いや僕のことじゃなくてな……。怪我したのはこの子なんだけど」
良也の方はやれやれ、といった感じだ。この塩対応も慣れっこなのかもしれない。

その言葉を聞いて僕が少し身を乗り出すと、ぴょこんとウサ耳を付けた可愛い女の子が見えた。やっぱり鈴仙だ。赤い目が少し怖い。

「入って」
鈴仙が僕と僕の怪我を見て、門を開けてくれた。
門をくぐると、大きな和風の屋敷があった。
想像はしてたけど、現物を生で見ると圧倒されそうになる。

ていうかそれよりも、鈴仙が可愛い。
そりゃ妖怪は可愛い女の子ばっかだっていうのはなんとなく分かるけどさ。
どこのギャルゲの主人公かと。

「なぁ鈴仙、もうちょっと対応良くてもいいんじゃないか?」
良也が鈴仙に声をかける。まあ確かに傍から見ても冷たい応対だったけど。

「貴方がいつも助兵衛な事ばかりするからです」
と言いつつ玄関の戸を開ける鈴仙。

助兵衛?
ハッと良也の方を見る。
「良也、それは流石に駄目だよ人として」
なんてうらやま…もといけしからん。僕も塩対応にならざるをえない。

「ご、誤解なんだって、決して僕は助平な男ではないっ」
「どうだか」
即座に鈴仙が鋭い突っ込みを入れる。いいカップルだ。
嫉妬と羨望の気持ちを込めてジト目を良也に向ける。じとー……、

診察室らしき所まで案内されると、椅子に座って待つように言われた。
師匠を呼んでくるらしい。永琳さんの事だろう。

少し待つとその永琳さんが鈴仙と一緒にやってきた。

「あんまり見ない顔ね、外の世界の人間かしら」
診察の席に着いた永琳さんに質問される。

「あ、はい。琴川ひなたっていいます」
僕が答えながらも、永琳さんは僕の怪我の様子を診て、
「左上腕部に裂傷、それと左下腿骨骨折。全治一ヶ月ってとこね」
すぐに診断結果を出してくれた。仕事が早いね。

「って、早くないですか?」
診断もそうだけど、治るまでの時間が。
普通、骨折って三、四ヶ月くらいかかるもんじゃないの?

「入院して安静にしてればもっと早いわよ。外の薬とはわけが違うわ」
す、凄い……。流石は月の薬師。
なんとなくハリー○ッターを思い出した。あっちは一晩で骨を治してたけど。

「それじゃ、治療をするからそこのベットへ。ウドンゲ、手伝ってあげなさい」
「分かりました師匠」
と鈴仙が僕の肩を持ってくれた。う、嬉しい!
ていうか近い近い! なんかすごいいい匂いするしっ!
緊張で心臓の音がドギマギうるさい。

嬉しさをなるべく顔に出さないように、椅子を離れる。
でも、流石に片足でベットまで移動するのは骨が折れる。いやもう折れてる。……何でもない。
浮かぼう。

足を痛めないよう、浮かんでからベットまで移動する。
それを見て永琳さんが、
「あら、飛べるのね」
とあんまり驚いてもいない様子で言った。

「はい、こっちへ来てから飛び方を覚えました」
「と言う事はそれは妖怪に襲われた怪我ね」
正解。なんだって?

「え? どうして分かったんですか?」
「そうね、女のカンよ」
さ、さいでっか……。
多分、月の頭脳とまで言われる永琳さんの事だから、怪我の様子とかから見抜いたんだろうけど、
取り敢えず事情を話そう。

「里から神社へ帰る途中、ル……妖怪に襲われまして、反撃はしたんですけど……、良也が助けに来てくれなければ、多分食べられてました」
思い返すとまた暗い気持ちになってくる。あんまり思い出したくない。

永琳さんは、そう……と呟いて、
「慣れてきたからといって、慢心は良くないわよ。特に貴方は人間なんだから」
忠告してくれた。ありがたい。

「それにしても良也が妖怪から人間を救うなんて、ねぇ」
顎に手を付けて、我が子の成長を喜ぶ親のような感じで良也を見る永琳さん。
いや、我が子というより、……なんだろ、ペットとか?

「いやぁ、目の前で困ってる人を助けるのは当たり前だろ? それに言ってないだけで、結構里の人達とかも助けてるし……」
若干気恥ずかしがる良也。いやでも、本当にありがとう。

「でも貴方、ヘタレのイメージが強かったから」
「ヘタレですよね。あと変態ですし」

「こらまて鈴仙、変態とはなんだ変態とは」
「だって事実でしょう」
「人聞きが悪いだろ。言っておくが僕はちゃんと節度を守ってだな」


…………本当に良いカップルだよ。なんだか妬けてくる。
はぁ、と自然に溜息が出てくる。

「元気が無いわね、大丈夫かしら?」
丁寧に包帯を巻きながら永琳さんが声をかけてくれた。

「あ、いえ大丈夫です」
「そう。ならいいのだけど」
咄嗟に適当な返事をしてしまう。折角心配してくれてたのに、僕の馬鹿。




その後、治療を終えて、痛み止めとか治癒力を上げる薬とか色々処方してもらった。

僕の治療費は良也が代わりに出してくれた。
何から何まで本当に頭が上がらない。

治療の間とか、終わって神社に帰る間とか、
何というか。
みんなのやり取りを見ていて、
今朝考えた事も相まって、
この幻想郷に僕の居場所なんて無いんじゃないかなんて、ふと考えてしまった。


……考え過ぎだよ、人間関係なんてこれから幾らでも作ればいいんだよ。
うん。気にするの止めよう。ポジティブ、ポジティブ。






















永琳さんの薬は、本当によく効いてる。
昨日はあんなに痛かったのに、今日になってからは気にするほどの痛みもない。
勿論、無理をすれば痛くなるけど。

今日は一月九日。幻想郷の夜空には大きく満月が光り輝いている。

でも正直なところ、昨日の月も満月と同じ形に見えた。
僕が今まであんまり月に興味を持って生きてこなかったからかな。
妖怪とかの人たちなら簡単に見分けられるんだろうけど。

でも今日は満月だ。昼間霊夢に聞いた。
今日は満月で妖怪の活動が活発になるから気をつけなさいって。

そしてもう一つ聞いた。
森の方で新年初の満月を祝って妖怪の宴会が開かれるって。


宴会。
行くしかないでしょう。
別に僕が呑みたがりだから、というわけじゃない。

喰われる危険がなく話をしたい人物がいるからだ。



そんなこんなで、一応護衛の良也と一緒に、僕はその宴会に交じっているのだけれど。

……なかなか見つけられない。
見覚えのある妖怪はいっぱいいるんだけど、目当ての妖怪だけ見当たらない。

中心から離れて端っこの方探すか……、



お、探す場所変えたらすぐ見つけられた。

「おーい、ルーミアー!」
東方はやりこみまくった僕だ、その登場人物を間違えるなんて事はない。
宴会の輪の中心から離れたところに、小さなグループで固まってるのを見つけた。

「あら、こないだの食べ損ねた人間じゃない」
僕に気付くといつもの笑顔で返事をしてくれた。

「へへーんだ、ちょっとやそっとじゃ喰われてやらないよ」
「ふん、邪魔さえなければ今頃美味しく頂いてたところだったのに」
「確かに良也が来なければ危ない所だったけど……よっと」
適当に会話をしながらルーミアの隣に、足が痛まないように浮かんだ体を着陸させる。

「痛かったんだからなーこの脚。今も痛いけどさ」
「じゃあ今襲えば簡単に食べられてくれるのかしら」
「宴会中は駄目なんじゃなかったっけ? で、お酒もらえる?」
その辺にあった使ってなさそうな空のコップを手に取る。

ルーミアが慣れた手つきでお酌をしてくれる。
……ふぅ、上々の出来だな。もしかしたら喰われる、とかちょっと警戒してて気が気でなかった。
で、ルーミアの他にいるのは、リグルとミスティアか。
よく二次創作とかでバカルテット扱いされるメンツ……チルノがいないか。
物珍しそうな顔でこっちを見てくる。この感じももう慣れたもんだ。

「それでこの馴れ馴れしい人間は誰なのよ」
僕がお酒に口を付けたところで、リグルに声をかけられた。

「僕は琴川ひなた。こいつに痛い目に遭わされたからね、お礼参りに来たんだよ」
ぽん、とルーミアの頭に手を置く。……大丈夫、嫌がる素振りは無いみたいだ。

「物好きな人間ね。普通人間っていうのは妖怪を怖がるものなのよ? 特にそういう目に遭った後なんかは」
リグルが僕の左足のギプスを見ながら言う。

「ああ怖い怖い。だからこそ仲良くなっておきたいんだよ、襲われないようにね」
「物好きというより、変人だね」
と呆れるリグルと
「なるほど、一理あるわねー」
とケラケラ笑うミスティア。

この二人も可愛いなー、是非とも仲良くなりたいもんだ。
「……それより早く頭から手をどけてくれる?」
嫌そうなルーミアの声。流石に乗せっぱなしは不味かったかな。
「ああ、ごめんごめん。つい、ね」
名残惜しいけどルーミアの頭から手をおろす。

「それで? お礼参りとか言ってたけど、具体的にはどうするつもりなのかしら?」
なんかルーミアの態度が、この前良也に会ったときみたいになってる気がするけど気にしない。
「どうもしないよ。でもそうだな……、強いて言うなら……もっと呑め」
空だったルーミアのコップにその辺にあった日本酒を注ぐ。

「一昨日の仕返しに酔い潰してあげるよ」
「……まさか、酔わせてその隙に何かしようってつもり?」

…………え?
「いやいやいやいやそんな事はしないさそういう事はお互い合意の上でしなくちゃいけないものであって酔わせてどうのとかヘタレにも程があるというか」
「何を勘違いしてるのか知らないけど、私は仕返しの事を言ったのよ?」

「あ……、」
何という勘違い。これは恥ずかしすぎる。
いや、でも仕返しという意味でならそういう仕返しもアリっちゃあアリ……なわけないじゃんか大馬鹿野郎。変態。ド変態。ロリコン。

流石人間、下品だねぇなんて声も聞こえてくるし。
「あ、あはははー、いやだなー僕がそんな事するわけないじゃないかー、ああそうだ、今度ミスティアの屋台行くよ、楽しみにしてるから」
誤魔化すしかない。悲しいけど。

「お、屋台の事知ってるのかい? 私も楽しみにしておくよ」
誤魔化しで言ったけど、結構本気でミスティアの屋台は行きたい。八つ目鰻を食べてみたい。
「話ずらしたわね」
とリグル。若干冷ややかな目線が刺さってくる。

「と、取り敢えず呑もうか、ほら」
ぐいっ、とコップの残りを一気に煽る。
ぼおっと喉の辺りが熱くなるのが心地いい。

「良い呑みっぷりね、私からもどうぞ」
向かいに座ってるミスティアがお酌をしてくれた。
「おお、ありがとう。じゃ僕からも」
お酌返し。

「リグルも残り少ないじゃんか、注いであげるよ」
「ありがと」
リグルにもお酌をする。案外素直に受けてくれたな。いや気にし過ぎか。

「ルーミアは?」
「え? 私はまだ残ってるわよ」
「いいじゃんいいじゃん、僕はルーミアにお酌したいんだよ」
不埒な事をするわけじゃないけど、仕返しとして酔い潰したいのは本当だ。
そのためにも、もっと呑ませなきゃなぁ、ふっふっふ……(悪役笑い)

「もう、仕方ないわね」
ルーミアも、くっと一杯を呑み空けてコップを差し出してくれた。
「もっと呑みなよ、今日はホントにルーミアを潰す勢いで行くからね」

「あんたも呑みなさいよ」
僕のお酌が終わると僕の手から徳利を取ってお酌スタンバイ。
そうきたら僕も一杯空けるしかないな。
ぐいぐいっと一杯飲み干してコップを差し出す。また喉が焼けてくる。
並々とお酒が注がれていく。

「ありがとう」
「どういたしましてー」
にぱっ、というような感じの笑顔をするルーミア。
なんか機嫌が良いのか悪いのかよく分からない。

……まぁ、いいか。
「それじゃ、もっと呑んでもっと楽しもうぜ?」
「楽しむわよー」
「賛成」
「おー」
皆揃って、お酒に口をつけた。













この日の宴会はこのまま特に進展が無いまま終わった。
まあ勿論楽しかったけど。出来る限りルーミアに呑ませたし僕自身も結構呑んだ。
リグルやミスティアとも仲良くなれた。ああ、これは大きな進展か。

ミスティアの屋台の事とか結構訊いたし、リグルに毎朝の虫の知らせサービスはどうかなんて聞かれたけど、全力で断った。
ルーミアとは世間話で終わったな。そんなに内容は無いけど、仲良くなる事が大事だからOK
あとは……あんまり思い出せない。そのくらい呑んだ。

最後の方はルーミアと僕、二人して顔を真っ赤にしてふらふら状態だったらしい。

僕を引き取りに来た良也に後で 聞いた話だ。思いっきり呑ませることが出来て満足満足。

これからも機会があれば、ルーミアともっと仲良くなれるようやっていくつもりだ。
喰われたくはないからね。

正直、どれだけ効果があるのかは分からないけど。
今の僕に出来ることはこれくらいだからね。


うん、頑張ろう。



















おまけ。
 五話の時、宴会でひなたくんがべろべろに酔ってからの幽々子と良也の会話。
 地の文無しで進行します。



「そういえば、貴方と呑むのも久しぶりよね」
「それはさっきも言った。……まぁいいけどさ。ひなたくんはもういいの?」
「まぁ、伝えることは全て伝えたし、一人で呑んで楽しそうなんだもの、手酌までしちゃって、ほっといてあげましょ」
「確かになぁ……、見るからにグロッキーになってるし。さっきまでのしっかりした感じは何処へやら」
「表裏の無い貴方とは大違いね」
「どういう意味だ」
「言葉通りよ」

「……やっぱり僕、向こうで呑んでこようかな」
「あら、釣れないわねぇ、こんなに器量の良い娘が誘ってるのに」
「自分で言うな。…………あながち間違っちゃいないのがなんとも」
「何か言ったかしら? 褒めるならもっとはっきり喋らないと」
「聞こえてるんじゃないか……っと、酒どうぞ」
「ありがとう、じゃあ私からも」
「ああ、ありがとう」



「この子を見てるとね、幻想郷に来たばかりの頃の良也を思い出すのよ」
「……? まぁ同じ外来人だしなぁ」
「いいえ、良也が外来人だからよ」
「……意味が分からない」

「そのままの意味よ。貴方もこの子も、それぞれこことは全く違う世界の存在なの」
「余計分からない。僕もひなたくんも外の世界の人間だろ?」
「貴方が蓬莱人に成りたての頃、話したでしょう? 違う世界の存在は、居るだけで世界を歪めてしまうの」

「ああ覚えてるよ。でもそんな実感、今まで一度も感じた事無いぞ」
「そうでしょうね。それもこの子の、違う世界から見ればその歪みも分かるはずよ」
「ひなたくんが? ていうか、その言い方だとひなたくんも世界を歪めてることにならないか? この子はただの人間だろ、蓬莱人じゃない」
「この子は人間よ。貴方と似たような性質を持っただけの、ただの、違う世界の人間。……だから貴方も、この子を見てれば世界の歪みが分かるかもしれないわね」

「何が言いたいんだか、さっぱり分からない」
「……本当に、仕方がないわねぇ」
「悪かったな、酔ってるせいか頭が働かないんだ」
「いずれ分かるわよ。良也がちゃんと考えていればだけど」
「考えとくよ、そのうち」
「……もう」



「あの頃の良也は……、そうねぇ……懐かしいわね、ほんの数年前の事なのに」
「……まぁ、改めて思い返してみると、なんだか感慨深いものがあるなぁ」

「ほんと、変わってないわよね。良也って」
「それはあれか?久しぶりに会った友人に言うような感じの……」
「勿論、言葉通りの意味よ」
「……やっぱそうなるのか」
「当たり前よ。折角それなりの地力を持ってるのに、全く生かそうともしてないじゃない……これも何度も言ったわよね」
「あぁ、何度も言った。だから、僕は争い事が苦手なんだって」
「生きることは即ち、争いよ。蓬莱人の貴方が苦手なままじゃいけないのじゃないかしら?」
「……少なくとも今はいいや。別にそこまで困ってる訳じゃないし」

「貴方の時間は無限なのだから、解決は早い方がいいのじゃない?」
「そんなに僕に争わせたいのか」
「せめて生き残れるようにはなりなさい」
「そりゃ……なりたいけどさ、何だかんだ今までこうやって無事に……、無事に……あー……全然無事じゃないけどやってこれたんだからさあ」

「やっぱりヘタレね、良也は」
「う、うるさいやい!」






この後、宴会終了間際に幽々子がひなたに『死を操る程度の能力』を使い、ひなたが生死の境を一晩中さまよう事になった。









 あとがき

だいぶ書くのが遅くなりました。すみません。

書きたい事はもう纏めてあるので、あとは実際に書くだけです。

シリアスは苦手なので、出来るだけ明るく

最終回まで書きたいです。



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