第五話「目が逢う瞬間」


〜side 各務原雪夜〜


「……あれは何?」

 博麗神社に向かって魔理沙と飛んでいた所、妙な建造物を発見した。
 紅い。とにかく紅い。
 目が痛くなりそうな建物だった。

「あれは紅魔館だ。吸血鬼が住んでる館だぜ」
「吸血鬼?」
「ああ。血を吸う鬼、略して吸血鬼だ」

 吸血鬼までいるとは、さすが幻想郷と言うべきだろうか。
 ちなみに、ここに来るまでに、魔理沙から幻想郷についての最低限の情報は聞いている。

「いや、そんな事よりあの色だよ。あの目に悪そうなカラーリングは一体?」
「知らん。あそこの館の主が『スカーレットデビル』とか呼ばれてるからじゃないか?」

 なにそれカッコイイ。

「何か強そうだね」
「実際強いぜ?」
「魔理沙とどっちが強いの?」
「私に決まってるだろ」

 箒に乗ったまま無い胸を張る魔理沙。
 ドヤ顏だった。
 微妙にムカついた。

「私もあそこにはよく本を借りに行くぜ」
「本? グリモワール的なアレ?」
「大体そんな感じだぜ」

 まさかとは思ったが当たってた。
 流石幻想郷、ファンタジーの温床のような場所だ。

「……よし、久しぶりだし、ちょっと本を借りに行くか」
「え?」
「だから、本を借りに行くんだよ」

 言うや否や、魔理沙は紅魔館に向かって飛んで行った。
 魔理沙がいなくなると僕も困るので、当然ついて行く。

「何だ、雪夜も来るのか?」
「いや、魔理沙がいなくなると僕が困る」
「じゃあ、ここで待ってろよ。本を借りたら、私はすぐに戻ってくるから」

 そう言って、魔理沙はカードを取り出した。

「魔理沙、それは……」
「彗星『ブレイジングスター』!」

 魔理沙が叫ぶと、彼女ののっていた箒が光に包まれ、物凄いスピードで館に突撃していった。

「…………」

 魔理沙よ、それじゃあまるで殴り込みじゃないか。
 というか、そこに立っている門番は一体何をしているのだ。

 門番さんに近づいてみる。

「zzzzzzzzz……」
「…………」

 寝ていた。
 立ったまま寝ていた。
 目を開けて寝ていた。

「……一応、起こした方がいいかな」

 うん、そうしよう。
 起こして、魔理沙を回収してきてもらおう。
 
「おーい、すみませーん」

 声を掛けるが、反応は無い。
 もう少し大声じゃないと駄目なのだろうか。
 なので、耳元で叫んでみた。

「ふるえるぞハート! 燃えつきるほどヒート! 刻むぞ血液のビート!」

 思い切り叫んでみた。
 反応は無かった。

「……うん、もうやめておこう」

 これ以上、自分にダメージを与えても仕方ない。
 門番さんには失礼して、無断で上がりこませてもらうとしよう。

 そう決めて、瓶を飛び越えようとした時だった。

「zzzzzz……はっ」

 門番さんが目を覚ました。
 そして、起き抜けにこっちを見た。

「…………」

 状況説明。
 門番さんの目の前には、今まさに紅魔館に侵入しようとしている僕。
 
 Q、門番の仕事って何でしょう?
 A、侵入者の撃退です。

「…………」
「…………」

 僕達の間に、言葉はいらなかった。
 そんなものが無くても、お互いの心は伝じ合っていた。

(見逃してくれませんか?)
(あなたを、撃退です)

 紅魔館の前で、一人の憐れな外来人の悲鳴が響き渡った……








 あとがき

 どうも、最近ポケモンの廃人プレイを始めた辛味です。
 今回、本文の文章量は3KB。少ねえ。
 しかし、キリの良い所で終わらせるとなると、ここで切るしかなかったのです。
 今回は雪夜がボコられるだけの回です。次回からやっとバトル要素を入れられる。
 ちなみに、雪夜の性格は『頭が良いだけの子供』みたいなものだと思って下さい。
 それでは次回。



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