第二話「白黒マリサの宅急便」



〜side 外来人〜

 目を覚ますと、そこは空の上だった。

「……ゑ?」

 あまりにも非現実的すぎる一行十七文字(句読点含む)に、我ながら間抜けな声が口から出てきた。
 なにこれ?
 どういうことなの?

 とりあえず、訳が分からない状況に陥った時の鉄則として、僕は回想に入ることにした。



 〜回想〜

 今部屋の中で漫画を読んでいる僕は今年で十八歳のごく一般的な男の子。
 強いて違う所を挙げるとするならば白髪赤目の引き篭もりってところかナ――――名前は各務原雪夜。
 そんなわけで本棚にあるJOJOの単行本に手を伸ばしたのだ。
 ふと見ると、本棚の近くにリボン付きの裂け目があった。
 ウホッ! 嫌な予感……
 そう思っていると、突然その裂け目は、僕の見ている目の前でさらに広がり始めたのだ…!
「はいらないか」
 すごく…嫌です…

 アッ―!!

 〜回想終了〜



 なるほど分からん。というか僕よ、結構余裕あるな。

「おっ、目が覚めたみたいだな」

 自分が意外に冷静な事を確認していると、突然上から声がかかった。

「……何者?」
「私は霧雨魔理沙。普通の魔法使いだぜ」
「いや、そういう事じゃなくて」

 箒に乗って空を飛んで、その箒から簀巻きにされているという状況で、さらに突っ込み所を増やさないで欲しい。
 目が覚めて十秒で、既に感覚がマヒしてきた。

「ええと、魔理沙さん?」
「さんはいらないぜ」
「じゃあ、魔理沙ちゃん」
「落とすぞ?」
「魔理沙は何で僕を空輸してるの?」

 落とされれば余裕で死ねるので、呼び捨てで呼ぶ事にした。

「良也に頼まれたんだよ」
「良也って誰……」
「いや、良也も紫に頼まれたのか」
「紫って誰……」

 二度同じパターンで突っ込みをする事になった僕を、一体誰が責められよう。
 どうやら、魔理沙には会話をする気がないようだ。

 僕が全く理解できていないのを察したのか、魔理沙はもう少し詳しく話してくれた。

「あー、簡単に言うとだな、お前は紫が間違ったところにスキマを開いたせいで魔法の森で気絶してて、失敗に気付いた紫が良也に迎えを頼んで、さらに良也が私に迎えを頼んだんだよ。どぅーゆーあんだーすたん?」
「待ってちょっと待って色々と理解不能な単語が多すぎる」

1、紫さん(多分元凶)がスキマ?とかいう物で僕を連れて来るも、間違えて魔法の森とかいう場所に落とす
2、それに気づいた紫さんが、良也さん(多分紫さんの友人。共犯者の可能性が微レ存)に僕の回収を依頼
3、さらに良也さんが魔理沙に依頼
4、魔理沙が僕を発見して空輸←今ココ

「って事でOK?」
「そうそう。理解が早くて助かるぜ」
「それほどでも……いや、ちょっと待って」
「何だ?」
「僕を簀巻きにする必要性を感じないんだけど?」
「おいおい、私みたいなか弱い女の子が男一人担いで行ける訳ないだろ?」

 何か幻聴が聞こえた気がするぞ。
 ああ、「図太い」と聞き間違えたのか。

「…………」

 魔理沙が箒に結んでいるロープを解き始めた。

「待ったストップジャストモーメンッ! 何故ロープを解く!?」
「お前が失礼な事を考えるからだ」
「何故ばれたし!? あと僕は落ちたら死ぬから!」
「飛べ!」
「無理!」

 こんな所で鳥人間コンテスト(命懸け)なんて絶対に御免だ。

 さすがに魔理沙も殺す気は無かったのか、落とすのは止めてくれた。
 もっとも、解いたロープを手に持っている状態なので、不安は倍増したのだが。

 っていうか、僕の体重、余裕で支えてるじゃないか。

「最初から飛べないと思うから飛べないんだよ。本来、外来人だって飛べるはずなんだ。良也を見てみろよ」
「だから僕は良也さんなんて知らない……って魔理沙! 前! 前!」
「うん?」

 この時魔理沙は下にいる僕の方を見ていたので、前方から飛んでくる黒い塊に気付かなかったのだ。

 この時点での僕では知る由もなかったが、この黒い塊は、ルーミアという妖怪が、能力で闇を纏った状態である。
 普段はこんな高所を飛んでいる事は無いそうなので、僕はとても運が悪かったのだろうが、今重要なのはそこではない。

 この状態のルーミアは、自分の闇で回りが見えないのだ。

「危なっ!?」

 しかし、そこは流石と言うべきか、ギリギリで回避する魔理沙。

「いやー、危なかった。もう少しでぶつかる所だったぜ。ありが……」

 が、どうやら、魔理沙は右手にロープをもっていたのを忘れていたらしい。
 となると、後は僕がどうなるのかは察して頂けると思う。

「ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 哀れ、僕は万有引力の法則だか何だかに従って、自由落下運動をトライする事となった。

「……どうしよ?」

 珍しく、年相応の少女のような声を出す魔理沙だった。






 あとがき

 突然のPCクラッシュから復活した辛味です。
 色々説明不足かつノリとネタで話を進めた感じが強いですが、平にご容赦を。
 ちなみに、ジョジョネタはこれから何度も出てきます。


 次回、「空も飛べるはず」 デュエルスタンバイ!




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