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この作品は、東方プロジェクトにオリ主・独自設定を組み込んだ作品です。
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夢を見る、内容はいつも同じだ。いつも女性が泣いている・・・ただそれだけの夢だ。この夢を俺はずっと見続けている。普通なら気味が悪いと思うはずなんだが・・・何故かこの夢を見ると、泣きたい気持ちになる。そしてこの気持ちになった時は・・・

「・・・夢か」

そう、夢から醒める。悪い気分ではないのだが、この感覚には未だに慣れない。

「って、そろそろヤバいな。起きないと」

ベッドから立ち上がり私服に着替え、カバンに教材と色々な私物を詰め込み担ぐと、部屋から出る。

「あら、おはよう夢次」
「おう、起きたか」

リビングに向かうと、テレビを見ていた俺の両親がこちらに顔を向けた。

「今から大学行ってくる」
「おう、頑張って学んでこい」
「あいよ〜」
「朝ごはんは?」

母さんが空の茶碗を持ってこっちに向けてきた。しかし、今からだとバスに間に合わないと困るからな・・・仕方ない。

「あ〜、今日はいいわ。このままじゃ遅れるし」
「そう、じゃぁせめてこれ食べながらいきなさい」
「・・・おう」

何故か渡されたアイスを齧りながら、家から出てバス停へと向かう。無論途中の道沿いにあるごみ箱にアイス棒を捨てている。そんなこんなでバス亭にたどり着くと、タイミングよくバスが停車していたのでさっさと乗り込む。空いた席を探して周りを見ると、後部座席で俺に向けて手招きをする二人組がいたので、そのまま後部へと向かう。

「おう、元気か。レンレンとメリー

「私はパンダか!」
「まぁまぁ、落ち着いて蓮子」


黒い帽子を被った『宇佐見蓮子』がギャーギャー騒ぎ、それを宥める『マエリベリー・ハーン』を見て笑いながら席につく。こいつらは大学に入った時に知り合ったんだが、いつの間にやらこいつらが作ったオカルトサークル『秘封倶楽部』に半幽霊部員として組み込まれ今に至る。ほんと、なんでこうなったんだろう。

「って、聞いてんの夢次!」
「ん、全然」
「オーケー、殴り合いと申したわね!」
「駄目よ二人とも、騒いだら迷惑」
「う・・・」
「あい」

大体いつもこんな感じで、俺と蓮子が喧嘩をし出すとメリーが治めてくれる。んでこういうやりとりをしている間に、バスは大学へと到着する。ほんと、地味に長いやりとりだよな。

「蓮子、今日の講義はどんだけだ?」
「ん〜、今日は二つだけだったかな」
「私も蓮子と一緒よ」
「俺は三つだから・・・しかも三つ目が遅い時間だからな」
「なら、今日は活動はなしね。その代わり、夢次のオゴリで夕飯にするわよ


蓮子がまた人にオゴリを要求してきやがる。こいつだけなら断りやすいんだが・・・

「あら、いいの夢次?」

そう、メリーのこの視線が加わると厄介なんだよ。蓮子のゴリ押しとメリーの駄目押しのせいで大体突き通されてるからなぁ。とりあえず学内の自販機を見つけると、授業用のドリンクを買っておく。

「ま、しょうがねえし・・・次は奢れよ」
「分かってるわよ、そんなに無理はさせないし」
「たりめーだ」
「んじゃ、後でなメリー」
「ええ、また後で」

講義室に入ると俺は自身の友人の方へ、蓮子とメリーはそれぞれの友人の元へと向かっていく。俺が席に座ると、高校からの友人アルファが話しかけてくる。

「って誰がアルファじゃ!」
「あるぇ、聞こえてた?」
「たりめーだ!」

きっちりツッコミを食らいながらも、だべっている間に講師が来たのでノートを開き授業モードへと切り替える。黒板に書かれた内容をノートに書き込んでいると、アルファもとい在人(あるひと)が小声で話しかけてきた。

「なぁ、夢次」
「んあ、なんだよ」
「聞こうか聞かないでおこうか悩んだんだけどよ・・・お前、あの二人の事どう思ってるんだ?」
「あの二人って・・・蓮子とメリーか?」

俺の回答に無言で頷く在人。ほむ、あの二人の事ねぇ・・・

「・・・まぁ、好きだな」
「マジか」
「多分な」

うん、実際あいつ等が好きじゃなかったらここまで付き合ってないもんなぁ・・・ま、向こうからどう思われているかはイマイチ分からんが。

「んで、どっちが好きなんだ?」
「両方」
「え・・・二人ともか?」
「おう」
「・・・マジで?」

そんな固まる事かね、別に彼女でもないなら問題ないだろ。そりゃ・・・彼女にする時にはどちらか選ばなきゃいけないんだろうけど、うーむ。そんなこんな考えながら講義内容をノートに書き写し続けている間に一限目の講義が終了、別の講義室への移動し再び講義タイム。そしてそのまま時間が流れ・・・。















午後六時を過ぎ、講義を終えた俺に合流した蓮子とメリーを連れてファミレスへと移動、だらだら時間を潰し気が付けば午後七時半を回っていた。

「んじゃ、そろそろ帰るか」
「結構時間経ってたわね」
「二人といると、ほんと時間忘れちゃうから」

二人を先に店の外にだし、俺は三人分の料金の精算を終えると二人と合流。そのままバス亭に向かって歩き始めた。

「ふ〜、三人分で三千円以内なら安くすんだわ」
「ここは割と安めだからね、感謝しなさい」
「だったらパフェ代お前持ちな」
「うぐっ!」
「うふふ」

俺と蓮子のやりとりを見てクスクス笑うメリー、そんなほどよい空気のまま今日も終わりを迎えようとしていた。

「きゃっ!」

そんな時だった、突如メリーの悲鳴じみた声が聞こえたのは。慌てて後ろを向くと、そこにはまるで空間の裂け目というべきか・・・内部から大量の眼が覗いているナニカがあった。そこから伸びる腕らしきものはメリーの手を掴み、少しずつだがメリーをそちら側へと引きずり込もうとしていた。

「メリー!」
「下がれ蓮子!」
「何言ってるのよ夢次!メリーが」
「俺がなんとかする、もしもの時は蓮子に任せた!」

俺はそのままメリーの元へ駆け寄ると、メリーの手を掴んでいた腕らしきモノを掴み引き剥がそうとする。しかし、以上なまでにその腕は力が強く、メリーから外れなかった。人手が足りないと思った俺は周りの人間に力を借りようと周りを見渡して・・・ゾッとした。周りの人間が・・・全く俺達に気づいていない。まるで、ここだけが隔離された世界のように・・・誰もこちらを見ていなかった。半ば思考が凍りかけていた時、声が響く。

「助けて・・・助けて!ユメ!!」

・・・その単語に、凍りかけていた思考が一気に戻った。その単語は、メリーが本気で助けを求めている時に発せられるあだ名・・・つまり

「・・・テメエ」

ああそうか・・・こいつ、メリーを泣かせたのか!蓮子を悲しませ、メリーを泣かせたのか!

「・・ざけんな!」

俺は再びメリーを掴む腕に力を加える。先ほどの必死さだけじゃない、二人を傷つけようとしたこいつへと怒りが加えられた。そのせいか分からないが、メリーを掴んでいた腕が少しずつ外れ、遂に一瞬だが外れた。俺はメリーの腕を掴むと、後ろにいるだろう蓮子に向けて投げ飛ばす。蓮子は慌てながらも倒れ込んできたメリーを抱きとめる。うし、うまくい・・・

「って・・・あれ」

ったと思った時、外れたはずの腕が・・・俺を掴んでいた。そしてそのまま、一気に裂け目へと引きずり込む。俺は咄嗟に裂け目の端にしがみつき、助けにこようとしている二人に向けて叫ぶ。

「くんな!」
「行かない訳にいかないでしょ!アンタも」
「どう見てもこれは詰みだ、どうしようもない」
「でも・・・でも!」

俺を見て悔しそうにする蓮子と泣き出しているメリーを見て泣きたくなったが、二人を悲しませぬように言葉を放つ。

「心配すんな、これでも秘封倶楽部の部員モドキだ・・・すぐに帰ってくる」
「・・・本当に?」
「あぁ・・・あ〜、でもひとつ頼みがある」
「グス・・・何?」
「親父とお袋には、今の状況伝えておいてくれ。二人の言葉なら、きっと信じてくれる」

俺の言葉に、二人は頷いてくれた。よし、とりあえずの不安要素は消えた・・・って訳でもないな。下手したらこのまま死ぬかもしんねえし。でも、諦めてやるもんかよ・・・

「んじゃ・・・またあとでな!」

覚悟を決め俺は手を放し・・・裂け目へと引き込まれていた。















「ん・・・んあ」

クラクラしていた状態が戻り始め、闇から光へと意識が切り替わった。ゆっくりと身体を起こし周囲を見渡す。

「どこだ・・・ここ」

ぼやけた意識が完全に戻り、俺は目の前の異質な光景に戸惑っていた。四方八方を覆いつくす森。それも、光すら届かぬ深い森を思わせる暗さが不気味さを増しているようだった。俺はその場から立ち上がると、軽く周囲を歩き回る。

(どうなってるんだ・・・さっき居た場所とはまったく違うし。まさか、タイムスリップとか・・・いやいやまさか)

そうだ、あんな腕に掴まって連れてこられたんだ。そんな意図的なタイムスリップがあってたまるか。

「とりあえず、この森から出ないと・・・樹海とかじゃねえよな」

ある種の嫌な予感を振り切り、俺は森の中を歩き始めていた。森の中は本当に暗く、明かりがないと転びそうな状態だった。俺はなんとか注意しながら歩いていく。すると、背後から何かの気配を感じ振り返る。しかし、背後には何もいなかった。気のせいかと思い前を向いた次の瞬間

「・・・あがっ!」

背後から、何かが背中にぶつかってきた。俺は痛みを感じると同時に前のめりに倒れ込みつつ、すぐに首を後ろに向けた。そこには

「グルルルル」

まるで、狼を更に一回り大きくしたような獣が存在していた。牙剥き出しの口からは涎がこぼれ、眼からは殺気が溢れていた。そしてその視線は間違いなく俺に向けられている。その事実を理解し、俺は身体中の震えが止まらなくなった。ただコイツが間違いなく俺を喰う、その事実を理解してしまったために。

(死にたくない・・・・死にたくない!)

すぐに身体を動かせばいいと思った。しかし、身体中に行き渡った震えは筋肉を縮こませ、立ち上がりたくてもまともに機能してくれなかった。獣がゆっくりと歩いてくるのを見てなんとか動こうとするも、恐怖からくる焦りにより正しく動けず、獣との距離は縮まっていく。

(死ねるか・・・二人と約束したんだ、絶対帰るって)

裂け目に消える前に見た二人の顔を思い出し、震えていた身体が僅かながらに止まった。立てないながらも視線を背けず、獣へと向ける。ただ、あの二人に会うまで死ねないという意志だけを力に。次の瞬間、獣が飛び掛かってきた。

「・・・死ねるか!」

獣の爪が俺に振り下ろされかけた・・・次の瞬間、獣は横から現れたナニカに吹き飛ばされていた。獣はそのまま地面に叩き付けられると、現れたナニカに恐れたのかどこかへと逃げ去って行った。俺が茫然としていると、獣をぶっ飛ばしたナニカ・・・いや、何者かが振り向いた。

「危なかったわね〜、でもアタイが追い払ったからもう大丈夫って訳よ」

水色の髪に青と白の服、左腕のみ黒い長袖と繋がったようなマントらしき物、そして手には大剣を握った少女・・・俺の眼にはそう映った。俺は思わず。少女へと問いかける。

「お・・・お前は、一体?」
「アタイ?アタイはチルノ」

左手を俺に向けて差し伸べ、チルノと名乗った少女は笑顔で答える。







「正義の味方よ」






東方双夢走〜プロローグ〜






あとがき
やってみたくて書いてみて、台詞がやっぱり多いと自覚し落ち込んでいます。
まぁそれは近いうちに直していくとして、初めまして、空回りです。
この小説は東方ではあるのですが、一部アドベントチルノ(キャラのみ・・・かなぁ)が混じっております。それと秘封組ですが・・・まだキャラ理解が追いつききっていませんすいませんorz
なんとか頑張って修正していきますので、よろしくお願いします。



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