//上白沢慧音

「ん、――朝か」
 目を開ける。障子ごしの光がまぶしい。
 さて、と考える。今日は寺小屋は休みだし、なにをしようか。
 妹紅と茶で飲もうかな。
 それにしても、輝夜は、――苦笑。いい家族に恵まれたものだな、と思う。
 竹林を抜けて永遠亭へ、そこで見かけた、永琳の焦った顔。
 鈴仙なんて心配で涙目になってたし、てゐも困った表情。
 事情を説明した時の、安堵の表情も、――そして、
「それはよかった、か。
 心配かけさせておきながら、心底そう言ってもらえるのだから、幸せな奴だ」
 そして、戸を開ける。さて、妹紅でも茶に誘おう。そう考えて、……「なんだ、これ?」

//ナズーリン

 さて、と。
 起きる、一つ伸びをする。そして着替えて、最後に籠をとってしっぽに引っ掛ける。
 ちぅ? と、声。
「ごめん、起しちゃったかい?」
 手を差し伸べる。籠の中の鼠は甘えるように鼻先を押し付ける。
 うん、とその仕草を見て、小さな頭を撫で、歩き出す。
「さて、今日は何しようかな。
 ちょっと、探索の幅を広げてみるのも、一興かね」
 ちょっと前に来た、変な客を思い出し、そんな事を思う。
 あるいは、それで何か面白いものを見つけられるかもしれない。
 ダウンジングできればね、と思うけど、
「それも無粋か」
 偶然、そう、偶さかの縁に頼るのも、いいだろう。
 そのためにも、と、私は戸をあける。
 そして、一枚の手紙を見つけた。

//魂魄妖夢

「手紙?」
「はい」
 早朝の走り込みを終えた私は、軽く汗を拭きながら庭先に置いてあった手紙を広げる。
 覗き込むのは、起きたばかりの幽々子様。――は、いいのだけど、
「幽々子様、とりあえず着替えてください」
 そう? と、問う幽々子様は寝起き、やや乱れた服装。まったく、誰が見ているわけでもないからいいですが、はしたないです。
「はいはい、解ったわ」
 ぱたぱたと奥へ。――って、
「どうしました? 幽々子様」
「妖夢、その封筒、開けちゃだめよ」
「なにかあるのですか?」
 手の中の封筒は軽い。そして、薄い。
 たぶん、手紙が一枚、ですね。
 呪符、と思い当ったあたりで、幽々子が笑う。
「どうせなら、一緒に見ましょう」
「はい」
 そういうことなら、と私は封筒をもって歩き出す、――そして、見えた。封筒の裏、その差出人。

//洩矢諏訪子

「早苗ーっ、神奈子ーっ」
 朝露降りる境内。そこで見つけた一枚の手紙。
 その差出人を見ていてもらってもいられなくなった私は、早速母屋へ叫びながら戻る。早く、早く教えてあげたいから、
「ふあ、なんだい。諏訪子、朝っぱらから」
「神奈子ーーっ!」
「うわ、――っと、危ないな」
「諏訪子様? どうしたのですか、朝っぱらからやけに元気ですけど」
「輝夜から手紙が届いたのよっ」
「輝夜さんから?」「ほう、彼女から」
 やっぱり、二人も興味津々、と覗き込む。
「で、なにが書いてあるんだい?」
 問いの答えはまだ分からない。だって、せっかくの手紙、どうせなら皆で一緒に読みたいから、
 だから、私は封筒に手をかけて、
「さぁ、それじゃあ早速開けてみよう」

//伊吹萃香

「手紙?」
「そうよ、あの輝夜とかいう変な女からっ」
「ふぅん」また何なんだか、と面白そうな事になりそうだ、と私は酒を飲み横目で「で、衣玖までどうしたんだい?」
「いえ、何となく居たほうがよさそうな空気だったので」
 それは面白そうだからか、あるいは、面倒事になりそうだから、か。
 どっちでもいっか、どっちにせよ、酒呑んで首突っ込んでやる。
「で、なにが書いてあるんだい。その手紙?」
「それをこれから見てみるのよ。
 衣玖、いざとなったら永遠亭だっけ、そこに乗り込むわよ。萃香、場所知ってるでしょ?」
「もちろん知ってるよー」
「なにやる気なんですか、天子様」
「それをこれから決めるのよっ!」
 そして、天子は手紙を見て、――――あ、固まった。
「ふ、ふふふふ、――――その挑戦、受けて立つわっ!」
 いうなり、緋想の剣を持って雲間へ飛び降りる。さて、
「なにが書いてあったんだい?」
「さあ、私にもなにがなんだか」
 で、私と衣玖はそろって放り捨てられた手紙を見た。

//小野塚小町

 あーあー、映姫様震えてる。
 それにしても、タイミング悪いなあ。この場に居合わせている事を含めて、あたいは空を仰ぐ。
 偶の休日、あたいは寝転がり休み、映姫様は人里などに行って説法などにいそしむ日。――なんだけど、
 幻想郷で映姫様が紫並みに歓迎しない相手。――永遠の大罪人、蓬莱山輝夜からの手紙。
 その内容、――ふふふふ、と映姫様は穏やかに微笑む。
「小町、行きますよ。
 どうも、彼女は説教が必要なようです。――ええ、ちょうどいい。
 あそこにいる罪深き賢者や、兎たちも、まとめて弾幕裁判と行きましょう」

//犬走椛

「……で、どーします? 文さん」
 見つけた手紙を見て、一応問いかける。――まあ、
 悪辣と無邪気を足して二で割ったような。どうしょもなく楽しそうな表情の文さん。
「どうしますか? 椛、貴女はどうすればいいと思う?」
「行く、んでしょうけど、」
「ええ、もちろん。とはいえ、一応準備はしましょう」
「準備?」
 問いに、文さんは笑顔で、
「椛の好きな準備をすればいいんですよ?
 いや、ふさわしい、でしょうか?」
 ふさわしいか、……ともかく、私は頷いた。
「それじゃあ、待ち合わせ場所でも決めましょうか」

//古明地さとり

「おつまみと、――お酒は、ワインでいいかしら?」
 一通りの準備、それをバックに詰めて、私はいざ、と歩き出そうとする。――したところで、
「お姉ちゃん」
 ペットを抱えたこいしがいた。
「こいし? どうしたのかしら?」
 ちょうどいい、と思いながら問いかける。
「お姉ちゃん、どこか出かけるの」
「ええ、ちょっとお外にね」
「あ、さとり様、――と、こいし様?」
 ひょい、とさらに顔を出したのは燐。
「どうしたの?」
「外に鬼のお姉さんがお待ちですよ」
「鬼、勇儀さん、かしら?」
「うん。どうしたんです?」
 多分、と私は笑顔で、
「誘われたのでしょう。
 ちょうどいいわ、燐。来なさい。それと、――今日は、空は暇だったかしら?」
「そうですよ。確か、
 今日はあたいと一緒に暇です」
 なら、と私は笑って、
「燐、空を呼んできなさい。
 こいし、輝夜さんからお誘いが来たわ。行きましょう」
「う、――う、うん」
 むぎゅっと、ペットを抱きしめる。そして、頷いた。
 頷いてくれた。嬉しい。こいしも、少しずつ周りに触れようとしている。
 それが、おっかなびっくりでも、
 それはきっといいこと、少なくとも、これから行くところは、そうなる、そうする。
 なにせ、私はその答えをもっていくのだから、

//十六夜咲夜

「さて、行くぞ。咲夜」
「はい、ワインにナイフ、お菓子とカード、用意は万端ですわ」
「お姉様、どうしたの?」
 威風堂々、お嬢様はその言葉を体現しそこにいる。その様子を見て妹様は首をかしげる。
「あの変な姫から難題吹っ掛けられたんだよ。
 その解答がわかったから、これから答えを打ち込みに行く」
 妹様は、よくわからなかったみたいだけど、
「輝夜の所に行くの?」
「ああ、そうだよ」
 ばっ、と手を振る。いざ、とお嬢様は笑みを浮かべて、
「お前はどうする?」
「んー、――面白い?」
 問いに、お嬢様は私に頷く。私は輝夜からの難題を見せる。
 それを見て、――ぱあっ、と妹様の表情が輝いた。
 お嬢様はそれを見て優しく笑みを浮かべる。そして、――迷いの竹林がある方向、そちらを見て笑う。
「行くか」
 出撃、と。

//難題

 永遠の退屈を超える一瞬とは何か?



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