「か〜め〜は〜め〜波ァァァァ!!!」
何してんだよ、この人…………。

 かぶき町という名のこの街の外れにある神社で、銀髪の男がかめはめ波を出そうとがんばっていた。
しかも何回も何回もやっている。
……いや、僕もね大学時代の幻想郷に来た時は、こんなだったけどさ。
さすがに恥ずかしくてもうできない。

「か〜め〜は〜め〜波アアァァァァァァァァァ!!!!!!」
「あの、ちょっといいですか?」
「うるせーな。あんな風に連続エネルギー弾バカスカ撃ってくるんなら、俺だってかめはめ波出せるかもしれねーだろーが。
大体、ゲームじゃたまに出せるんだよ」
ゲームって何?

「全く、訳分からんサイヤ人のみてーな天人がくるなんてな。
それともあの機械のせーじゃねーよな」
「機械ですか? どんなのです」
「何か、落ちてたからいじくってたらよ、四角い空間開いたんだよ。そっから来たって事ねーよなぁ」
……アンタが開けたんかい!




 それにしても幻想郷の、よりによって博霊神社に穴を開けるってどんな確率だ?
「つーか、あのガキ。遊び足んねーんだってな」
「霊夢の事ですか?」
「ごっこ遊びで本気出したら、勝てる奴いねーって話だ。
刃物持ち出す奴までいるよーな、遊びでな。
だから、こっちで探してんだろ。かぶき町の中で、相手をよ」

スキマはこの人にそう依頼したのか。
まあ、間違っちゃいないよな。
普段の弾幕ごっこなら、魔理沙とかに負ける事はあるけど、異変になったら勝てる奴はまずいない。
鬼のような、というか鬼を上回る強さだ。
特に、今は…………。
対抗できる存在があるのだろうか?

「それで、闘うんですか?」
「俺をご指名みてーだ。何度も何度もいきなり襲いかかりやがって。素直に言えっつーの。そして昇らせてやるよ大人の階段って奴をよ」
「何ですそれ」
大人の階段って、そんな歌詞あったけどさ。
「自分が黄金騎士でも青銅騎士でもなく、親父の作ったダンボール騎士でしかねー事に気付くことだ」
……うん。思い当たるよそれ……。

「空飛べて、何でもぶっ壊せて、誰も止められないんじゃ、しょーがねーよ。でも、大人になれって話だ。
せめて大切なモン一つでも守ろうと思った、でも結局何も守れなかった。
それでもやれることをよ、やるんだよ。
お日様に向かって背筋伸ばしてよ」

 男が木刀を握った。
その目の先には、紅白が凄い勢いでやってきた。
「霊夢ちゃーん!」
男は駆け出す。
「弾幕ごっこ…………」
次に高く跳躍した。
「遊びま…………」
そして木刀を一気に振り下ろす!
「しょーーーーーー!!!!」
払い棒と木刀が衝撃音を響かせる。霊夢は地面近くに後退し威力を逃すも、そこを男は狙う。
霊弾を発射し、牽制するが無視して突っ込んでくる!!

「おおおりゃああああ!!」
「『神業 八方龍殺陣』」
スペルカードを発動。
ようやく男の動きを止めた。
男にダメージは、ない。




「ちょっと、弾幕ごっこってあなた。できないじゃない。それだったらもうとっくに私にむかって撃ってくるはずよ。空も飛べない、霊力も感じさせないし」
「タマだろ。あるぜ、とっておきのが。
命という名の、魂という名のタマがな!!!」
再び男は駆け出す。

「やっぱり……コイツだ。私を一番こんな気分にさせるのは!
くたばりなさい!!」
二つのスペルカードを取り出した。
「あわせて『夢符 極・封魔陣』」

 スペルで作られた壁、男はギリでよけ回り込む。
突きつけられた木刀を、霊夢は明らかに勘で避け距離を取り、弾幕を展開。
それはなぎ払いつつ、男は立ち向かっていく。
“巫女にはない人間特有の強さ”そんな言葉が頭をよぎる。
それって「レーザーじゃねーかぁぁぁ!! 十七条ってそーゆー意味ィィィィイイイ?」。
……ツッコミが飛んできた。

見ると大乱闘がこっちに来てた。
「憲法の重みを食らうのです!」
うん、あれ神子さんだよ……。
「ホストたるもの、女性を切るのは言葉だけです…… あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「捕らえた! では体勢を立て直すためにバーへと退くぞ…… あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ!!」
「ちと場違いじゃな、お主らは」
で、マミゾウさんがホストと岡っ引きに弾幕食らわせてる。

「火消しが来てるからって、ちょっとは爆破を遠慮しろぉぉぉおお!!」
その他、リーゼントのお姉さんが辺りに放水。炎と幻想郷の面々にぶっかけている。
かと思うと、シンセングミの制服で顔の下半分をマスクで覆った男が、弾幕を切り裂き続けた。
「Z――――」
んで、「寝るなぁぁああああああ!!」てるよ……。

 パキ、と音がした。
足下には何故か遺影が。
「え、なんで……ってうわあ!」
バカデカイ金棒が振り落とされた!!
「引っかからなかったでやんすね」
と小柄で黒い着物の角が生えた女の子。

「遺影をそんな風に使うってどんな外道だい! あたいも初めて見たよ!!」
「あ、小町」
「ああ良也。全く何がどうなって。取りあえずそいつから離れな!」
「あっしは外道丸。外道は褒め言葉でやんす。見たことの無い奴に一撃加えるのがただしいことでやんしょう」
と、小町に向かって行った。

妹紅と輝夜もいる。やっぱり二人で決闘してた。
シンセングミの二人もゴリラと女の子も相変わらず。
「どんだけあんたら仲悪いんだァァァァアアア!!」
またツッコミが飛んできた。
 ここまで乱闘が来たのか……。
「って、あの二人」
銀時という名の男と霊夢は。
 見ると、乱闘の真ん中へと降り立った所だった。




 退魔針を投げつけ、男の足に貫通させるも、何の障害も無く距離を詰める。
展開される弾幕は、木刀ではじき返されていく。
「銀さん?」「霊夢?」
そんな声が上がった。
突き出した木刀。その先には何も無い。
霊夢は数メートル上空にいた。

「『夢想封印』
「銀ちゃん!」「霊夢!」
「銀時! よけなんし!」
「あや……霊夢! 気をつけて! 何か、企んでいる!」
降り注ぐ弾幕、だが木刀で地面をえぐり土煙を上げる
無論、霊夢には通じない。弾幕で落とされる……。
あれ、銀髪の男がいない?

「銀の字! 右のレバーのトコのスイッチ!!」
「オイィィィイイイイ!! スピード出過ぎだろコレェェエエエエ!!」
いや、空を爆走するジェット噴射のスクーターにのってやってきた……。
「まだ押すなよ! 絶対にまだ押すなよ!!」
そして……霊夢を巻き込んで爆発した。
「自爆スイッチかよぉぉぉぉぉぉおおお!!」
メガネの少年のツッコミがこだました。




「旦那ぁ。そいつぁウチらが追っていた奴でさぁ。なんだったら逮捕してやってもいいですぜ。旦那がそのままだったらですがねぃ」
「おい万事屋ァ! まだ生きてんだろーが。譲ってやる。オメーがやれ」
「坂田銀時だって……。嫌な名前だ。霊夢! そいつをぶっ飛ばせ!!」
思い出した。酒呑童子倒したの坂上田村麻呂、坂田金時とも言われてたんだ。
だからか? 鬼を超えた巫女に立ち向かうのは。、
すぐに男も霊夢も立ち上がる。

「だとよ」
「私の勘が、あなたを生かすなって言うのよ。何よりも先にね。覚悟してもらえる?」
「覚悟? 糖尿王になってやる覚悟ならあるっつーの」
「取りあえず、くたばりなさい!」
そう言い終わるよりも早く、木刀でつぶてを巻き上げ、目を潰してくる。
霊夢は真後ろにノールックで弾幕を放った。
見物人の足下へ転がる男。

「何無様な姿さらしているんですか? エリートが譲ってやっているんです。
その様じゃ、エリートらしくからぬ空気を読まない行動を取りますよ?」
「起きな。三つ数える前に。1」
バアン! って、だから2と3は?
「あれ? 霊夢さん、足下の……」
「う、ムラムラ……って、ジャスタウェイ? まさか、アレ……」
爆発した。




「高性能爆薬? あんなのを懐に入れて闘っていたって、どんな安定性を持っているんだ? うう、惜しい。研究したかった!」
“お見事”
「銀時! まだ終わっておらんぞ!」
上空より弾幕が襲う。

霊夢は焼け焦げ煤がついているものの、まだ攻撃を止めない。
空を飛べる霊夢の方が、基本的に有利なのは確かだ。
それに男には、これと言った飛び道具がない。
「銀さん! きっと行けるわ! それを足場にして!!」
「俺たち忍者ならな! オメーもやれっだろ!!」
側にいた、キョンシーのポーズのサングラスを足蹴に、飛び上がった。
「俺、こんな目に合ってばっかなんですけど!」
「だってマダキだし」
と言っても、距離が全然足りない。

その間にも弾幕は大きく展開され、男へ襲いかかってくる。
「調子乗ってんじゃねーぞォォォォオオオ!!」
…………ウソだろ?







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