「うわああああああああ!!!!!」 幽香さんの弾幕により、吹き飛ばされ続ける僕。 介抱してくれた? 化け物の家から脱出の手助けを頼んだら、予想通りこんな目にあってる。 ちなみに後で聞いたところ、「人間の言う事をただで聞くのは何かシャクだから、ちょっと苛めてあげたわ」とのことだった。 そんな事だと思ったよ! しばらく飛ばされた頃だった。 「……なんだ? これ」 下から何か、レーザー光線が僕を捕らえ、その衝撃で墜落した。 「いてて……って、え?!!」 どこかの庭に落ちた僕。 周囲には一見監視カメラの様な、レーザー照射器が僕の方を向いていた。 「う、うわ」 ギリでレーザーを避ける僕。 さらに逃げようと地面を蹴ると、陥没した。 深い穴が開き、底には剣山がびっしりと生えている……。 地獄を脱出出来たと思ったら、また別な地獄に真っ逆さまになってるよ!! 僕は一体、どんな不運を背負ってるんだよ!!! って、ここは一体何が起こってるんだよ!!!! 「君! 早く、こっちだ!!」 と、声がした。見ると、手巻きしている人がいた。 あっちは安全か?! 地表を這うように、体を浮かしつつ高速で移動する。 レーザーが襲い、あちこちに穴が口を開けている庭から、その人がいる建物へ飛び込んだ。 「大丈夫か? ここは相当危険な場所になっているぞ! 気をつけろ!!」 その男はゴリラみたいな顔で、やはり和服姿だった。 「助かりました。 あの、ここって一体何なんですか?」 「ここは恒道館。剣術道場だ。 だが、いつしか要塞同然の防御設備が配備されてしまった。 もはやダンジョンと言って過言じゃ無い」 よりによって、なんつー所に落っこちたんだ、僕は。 「くそう。真撰組に謎の紅白で脇が開いた服を着た女の子が襲撃を仕掛けてきたと言う連絡が来たのに、駆けつけることさえできん。 君も脱出に協力してくれ。そうじゃないと生存すら困難だ」 また霊夢が無差別テロ起こしてるよ。被害はどれだけ広がっているんだろうか……。 その前に、ここからの脱出か……。 「ああもう。警察に通報してなんもかんも解決できたら……」 との僕のつぶやきに、 「俺、警察だけど」 と、その男は返事をした。 ええと。 アイドルが放送禁止用語を連呼するライブを開いたり、バスーカぶっ放す奴がいたり、爆弾大量所持するテロリストがいる、この世界で、警察? 「真撰組ってあるじゃん。そこの局長だけど、俺」 そういえば、あの黒い制服の集団、シンセングミって言ってたっけ。 バズーカで僕を殺したけど。 で、名前が沖田とか土方とか。 まさか……。 「じゃあ、近藤勇って名前……?」 「勲だけど? 近藤勲だけど?」 「……で、こんな要塞みたいな所にいるのは、局長自ら調査しに?」 「いや、今日休みだから。ここに住んでいるお妙さんにプロポーズしようと。 正面からはもう入れないから、壁をよじ登って入り込んだんだけど、数多くのトラップが配備されてて、命からがらここに逃げこんだんだ」 「え、つまり不法侵入……?」 「なんて事を言うんだ! 俺は断じてストーカーなんかじゃない! しつこく陰湿で、つきまとうのをやめないだけです! 言うなればハンターです。愛の」 なんだかもう、謝れ。色々と。 「ねえ、そこまで言えるんなら」 やさしそうな女性の声が聞こえてきた。 見ると、にこやかに長刀を携える、十代後半位の和服姿の女の子が。 「ストーカーだって自覚してんじゃねぇかぁぁぁぁあああああ!!!!!!!」 一気に長刀をぶんまわし、しゃがんでいた僕とストーカーの頭上を切断する!! 「死にけらせ! クソゴリラァァァァァァアアアア!!!!!!!!」 「ちょっと、お妙さんんんんん?!」 「あの、僕無関係……」 「ストーカーはストーカーだろうがぁぁぁぁぁぁ!!!!!! くたばれぇぇええ!!!!!!」 ダメだ、聞く耳なんか持ってない! 「地獄へ落ちろォォォォオオオオオ!!!!!!!」 怒り狂う女の子に追い立てられ、逃げ惑う僕と男。 不動明王のような表情と存在感で後ろ向くのさえ怖い! 「一体アンタはあの子に何やったんだよ!」 「だってお妙さん、キャバクラで俺のことかっこいいとか言ってくれたもん! 護ってあげたくなるじゃん! 枕元に佇んでいたくなるじゃん!! 結婚したくなるじゃん!!!」 「わかった。取りあえず、謝ってこい!!」 「ダメだよ。こないだそれやったら、人間大砲の弾にされて、汚い花火になったから!」 どこのクリリンだよ! 「テメーが汚いもん見せながら、全裸で土下座して来たからだろーがァァァァアアアアアアア!!!!!!!」 もういや。こんな変態。 持ってたスペルカードはすでに焼け焦げ使えない。 僕の「自分の世界に引きこもる程度の能力」じゃ無駄に便利な能力が多いだけで、この場合に対応ができない。 となると。 「正当防衛です。ちょっとは勘弁して下さいよ!」 暴走する女の子に向かって霊弾を撃つ! 心痛むが仕方ない! 結構本気でやったから、一瞬の隙食らい作れるかも。 その時だった。 「なんてことするんだ!」 ゴリラの顔した変態が、割って入って、僕の霊弾受け止めた。 「お妙さんに傷付けるのは、断じて許さん!」 みぞおちや顔面にまともに入ったが、何ともないようだ。 「私の精神逆なでしまっくてるストーカーが、なに正論ほざいてんじゃぁぁぁあああ!!!」 ぐちょ、と変態の股間から変な音がした。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! お妙さん、股間蹴るのは……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!! ムラムラします」 つくづくもういや。こんな近藤局長。 「いい? 男が私を護ろうとするのは当然でしょうが。こんなんでポイント稼ぎにはならねぇーんだよ」 何この女王様。 「あのー、ちょっといいですか」 女王様、もとい女の子がこっちを向いた時だった。 「『光符 ライトスタン』」 想定外の男の行動だったが、空間を折りたたんで作った『倉庫』からスペルカードを取り出す隙ができた。 万が一のため、最近『倉庫』にスペルカードを入れるようにしておいて良かった。 人外連中と付き合っていると、全身ぶっ飛ばされることがままあるのだ。 ……この世界の方が、時間に対するぶっ飛ばされ頻度は明らかに多いけど。 くっ、と呟き女の子はさすがに目がくらんだようだ。 「う、ムラムラ……助かった。礼を言う」 「…………とにかく逃げますよ」 正直、一緒にいたくないけど。 後ろで、逃げられると思うなよ、というドスの聞いた声が耳に入ったけど、聞こえないことにした。 ここからが大変だった。 赤外線トラップやホログラムによる通路の偽装、奇襲を仕掛けてくる女の子の追撃から逃れながら脱出経路を探らないといけなかった。 で、一番の障害は。 “ねえ、近藤さん” という甘い声に過剰反応して罠に突っ込む、バカ……もといゴリラ。 僕に向かってきた攻撃から身を挺して護ってくれたし、その点は感謝だけど、そもそもストーカーしてなかったらこんな目に僕は遭ってないんだよ! 「こ……ここですか。出口は……」 「そうだ、間違いない」 と、頑丈そうな扉の前に着いた。 「開きませんよ……」 「しまった…、俺を仕留めるためにわざと外からじゃないと開かないようにしているんだった…。開けられるのはカギを持っているお妙さんだけだ……」 本末転倒にもほどがあるよ。 そりゃ、これだけ要塞化してれば問題無いんだろうけど。 でも、出られないのか。 塀にはレーザー照射器が待ち構えてるし……。 「あ」 …………忘れてた! 「ちょっと外に出ますね」 「いや、君どうやって……」 まず、僕の「自分の世界に引きこもる程度の能力」の範囲を扉の向こうにまで広げる。 次に瞬間移動。外の扉の前に移動。 「え、ちょ、どこ行ったの? 不安なんですけど! 置き去りにされたんですけど!」 と騒いでいるゴリラの前の扉を開けた。 「え、何したの? 君」 「瞬間移動を少々」 忘れてたよ。十メートル位だったら瞬間移動出来るの。 僕の能力が届く範囲だったらこれができたりする。 もっとも範囲が狭すぎて、弾幕避けるのにも、日常生活にも使えないんだけど。 あの化け物からは逃げれたな……。 てことは、幽香さんにぶっ飛ばされも無かったし、このゴリラの騒動にも巻き込まれなかったな……。 「よくわからんが、ありがとう! 助かった!!」 「ええ。これで、脱出……」 ふと、上空から変な感じがした。 空を見ると、光が落ちてくるようで、 あれ、この感じは。うん、死んでる。 僕、また死んでる。 これはお空にやられたときと同じ感覚だ。 つまり、体の半分は吹き飛ばされた、という事だ。 ……いきなりなにが起きたんだよ! 「くたばったようね」 と、長刀持った女の子。 「新型ストーカーおしおきレーザー、略してSOLレーザー。警戒状態で扉に触れたら作動するようにしておいた甲斐があったわ!」 それって、人工衛星からレーザー撃つやつ?! 「これに懲りてつきまとわない事ね」 と、立ち去った。 なんつーモンを配備してんだよ……。 なんとか体を再生させ、周りを見た。 ゴリラの変態が、全裸で倒れていた。 服は吹き飛んだってのに、なんで体は無事なんだよ。 だから僕とこの世界の人間との耐久力の差、大きすぎるっての。 その辺の野良妖怪より、確実にタフだ。 なんだかもう、笑うしか無い。 |
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