「全く……散々だな……」 体の再生を終えて、ふとつぶやく。 幸いスペルカードは無事だ。 服は少し焦げたり破けたりしてるが、思ったよりマシだった。 僕の体が一番ダメージを食らっている気がするが、考えないでおこう。 それにしてもいきなりバズーカ撃ったり、初見でスペル見切って突撃してきたり、マスタースパーク切断するし、あんなバズーカの集中砲撃の爆炎上がって明らかに何ともないような動きしていたし。 どうなっているんだ。 妖怪より化け物じみてないか? まあ、さらにとんでもないのがうろついてるのが幻想郷なんだけど。 吸血鬼とか亡霊とか酒呑童子とか仙人とか聖徳太子とか神様とか付喪神とか河童とか天狗とか。 あ、でもここ宇宙人いるんだっけ。 いや、月人も宇宙人か。 「あやや。来られてましたか、この世界に」 聞き慣れた声がした。 「って、射命丸も来てたのか」 噂をすればなんとやら。 「それはもちろん! 新聞記者として取材のためならどこにでも突撃しますので! この世界はもう、見る物聞く物全てがスクープものですしね!」 そりゃな。 外の世界を知る僕だって驚きだ。 「意外だったのは妖怪と思しき方がこの世界にもおられたことですね。霊夢さんに攻撃された後のようでしたが」 「……あいつ、無差別に攻撃してないか……? あと、この世界の妖怪っぽいのって多分……」 宇宙人とかだよな。 「ええ、取材を試みたのですが」 すると、射命丸と僕の間に何か飛んできた。 “誰が妖怪じゃあああぁぁぁぁ!!” と書かれたプラカードが地面に突き刺さっている。 「お怒りを買われてしまわれたようでして」 飛んできた方向を見ると、…………なんかいた。 「……何アレ……」 “バカにするなぁぁあああ!!” “宇宙生物だぁぁあああああああ!!!” と両手にプラカードを持った、包帯を巻いた、怒りを露わにしている白い存在が。 劣化した某国パクリ遊園地製のオバQのような物体が、多くの人を引き連れていた。 プラカードを変えた。 “そして、攘夷志士だぁぁああああ!!!!” “我らを不意打ちした幕府の手先め! 覚悟しろ!!” ヤバイ……。 ヤバイヤバイヤバイ! 多くの刀を持った人が一斉に襲いかかり、白い何かはプラカードで殴りかかる! 「あやや。ちょっと質問よろしいですか? 『風符「風神一扇」』」 そんな中、射命丸はスペルで人を吹き飛ばしつつ、取材してる。 “我が名はエリザベス! 貴様を成敗する者だ! 覚えとくがいい!!” と、大量のプラカードを投げつけてきた! 「おお! これはシャッターチャンスですよ!」 と、首に掛けてたカメラをパシャリ。 切り取られたように大量のプラカードがなくなった。 “なんだと”と、驚く白いの。 そういやそんな機能あったっけ。 「これはなんていうスペルですかね?」 “小癪なぁぁあああ!” 「小癪なプラカード、でよろしいですか?」 “スペルスペルって、文字くらいちゃんと書いてるぞ! ゴラァァアア!!“ つづりをスペルとも言うけどさ。 一方、僕。 「『風符 シルフィウインド』……効いてない……? うわあああああああ!!!」 ひるむこと無く襲ってくる人たち。 何でだよぉぉおおおおおおお!! 人に使うの気が引けるけど、正当防衛、やむなしとせっかく使ったスペルなのに! 威力抑えたとは言え、かすり傷もついてない! 妖精なら撃退でるのに!! 「あやや」 射命丸が仕方ないと、半分邪魔そうな顔でスペルを使ってくれた。 とても申し訳なかった。 “おのれ幕府の手先め!” 「いえいえ、ただの新聞記者ですよー」 “天人に服従した輩には成敗あるのみ!” てか、あんた宇宙生物じゃなかった? 天人って宇宙人の事なわけだし。おかしくね? 「外見、雰囲気、共に妖怪なんですが。種族ありましたら教えていただけませんか?」 “■■■■■■ だから違うっつーの!!” その明らかに修正したの、何? あとお互い話、半分くらいしか聞いてなくない? 視界に球体の物体が入った。 それはデジタルの数字がどんどん減っていって、……当然のように爆発した。 「誰だよ、いきなりこんな事するの!」 僕、直撃! 射命丸、素早く回避してるってのに。 「誰だ、じゃない」 男の声がした。 黒い長髪に、腕を組んだ着流し姿の男だった。 「桂だ」 いや、だから誰だよ。 “桂さん!” と白いの。 「エリザベス。こいつらが幕府の手先だな」 「いえいえ、取材のお願いなんですが」 「おのれ不意打ちとは卑怯千万な!」 「是非とも私の新聞に、別世界の妖怪と仲間たちという形で掲載させて貰いたく」 「我らの攘夷の信念は揺らぐことはないぞ!」 「その様子を取らせていただけませんかね?」 「覚悟するがいい!」 「なんでしたら、実力行使で♪」 全然話かみ合ってねぇぇぇえええええ!! 射命丸、お前こんなに強引な奴だったっけ!? 「このようなスクープには力ずくで強行突破! 小さいことは気にしない! 基本ですよ、良也さん」 問題しかねぇよ! その態度! ほら、爆弾が大量に!! 白いのも、口から大砲出して砲撃して来たし!! 「攘夷とは一体どのようなものなのですか?」 “貴様のような輩を追い出すことだぁぁあああ!!” と、爆弾と砲撃による爆発が起こる。 主に射命丸を狙っているから、まだマシか? いや、んなことないな……ぐああ! 「あやや。それは物騒な。ではこのような段幕ごっこ、もとい攻撃をもって事を為す、ということですか?」 「我らは穏健派! 高杉の所とは違う! 下手に傷付けるのを良しとはせん!! 護るべき物が多々出来てしまったからな!」 どの口が言っているんだよ!! やっている事は、無差別テロ! 被害者僕! ……考えてみれば、巻き込まれただけだよな、僕。 霊夢といい萃香といい魔理沙といい射命丸といい、なんでこうなるんだ。 元から異変と言えば巻き込まれるけど。 四次元ポケットでもあるかのようにあの長髪はポンポン爆弾投げるし、白いのは砲撃続けるし……。 ちょっとはいい加減にしろ! 爆弾持っているのを後悔するんだな! 「『火符 サラマンデルフレア』」 火がほとばしり、攘夷を名乗る奴らに向かっていく! 「あの、良也さん?」 僕の足下には多くの爆弾が転がっていた。 …………お後がよろしいようで。 「良也さん。蓬莱の薬飲まれてて正解でしたね」 全くだよ。 当然のごとく、周囲の爆弾に引火、僕を中心としたとてつもないキノコ雲が上がった。 ああ、またしても死んだな……。 「私がちゃんと爆弾が足下にありますよって言った直後に火のスペル使うとは……、意外でした」 ごめん、聞いてなかった。 パシャリ、と射命丸は僕の醜態を撮影。 くそう、新聞に載せる気だな……。 射命丸は全力で現場を離脱したのか、少し煤がついただけなようだった。 “おのれ仲間を犠牲にするとは!” というプラカードが目の前に落ちてきた。 「あやや。みなさんお元気なようで」 あの爆弾投げてた男と白い変なのは少し焦げただけだった。 「仲間を犠牲にするとは卑怯千万! 天誅を下す!!」 「お陰さまでいい取材ができました! ありがとうございます!」 爆弾で人を巻き込む事については、何も無いんですか? 「エリザベス! 新開発のクラスター砲を撃てぇぇぇええ!」 さらなる爆発音が轟いた。 あの、マダオっぽい「え、何? うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」って声が聞こえてきたんですけど。 「それでは、またなにかありましたらおねがいしますねー」 と射命丸は飛んでいった。上手く避け切ったようだ。 何でこう、ダメージが不公平なんだ。 人の話を一回聞いてないだけでこの有様だし。 みんな話し自体全く聞いてないのに。 帰ろうかな………。 |
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