「江戸城ってこんな感じだったのかなぁ」 空を飛んでいる時目にした、これぞ日本の城、という感じの城の前にいる僕。 確か、江戸城って今皇居になってて、その姿を見ることはできない。 色々違うかもしれないけど、その偉容さには圧倒された。 ………ちなみに霊夢はまた見失った。 それで目についた大きな物の方へ行ってみることにしたんだけど。 まず最初に行った、金属製の塔。 萃香があの辺りで霊夢らしき紅白を見たと言うから行ってみたけれど、特に情報は得られなかった。 ちなみにあの塔は、宇宙へのターミナルらしい。 で、次にここに来てみた。 あの世界樹的な樹は怪しすぎるから後回しだ。 なんかあれガスなのか瘴気なのか何なのか、煙みたいの出してるし。 「でもなぁ」 ここ、偉い人が住んでいそうなんだよね。 道行く人に聞いてみたら、将軍様が住んでいるって言うし。 警備の人いるし。 空を飛べば覗けるんだろうけど、下手したら騒動起きそうだし。 あの樹に行ってみようか、そう思った時だった。 「おーい。良也じゃないか」 聞き慣れた声がした。 空から白黒が降りてくる。 「あれ、魔理沙?」 「霊夢だけじゃなくて、良也も来てたのか」 どっちかって言うと、僕の方が少しだけこの世界に来るのがはやかったけど。 「って、霊夢を見たのか?」 「ああ。この世界に入って、とりあえず空を飛んで見回していたら、霊夢が空を飛んでいたんだ。で、地面に向かって弾幕撃っていたな」 僕とマダオ、続いて萃香と神楽って子がやられたときだな。 「それで、まっすぐこの城に向かって行ってたんだ」 やな予感がしてならない……。 「私としてはお宝探しの絶好のチャンスだから霊夢の後を追った訳だが……」 “いたぞ! 出会え出会えぇぇぇ!!” 「霊夢は異変の時の妖精並みにたくさんいた人をぶっ飛ばしていっていたから、その隙にお宝探ししようとしたら、『なんか違うわ』って言ってどこかに行ったんだ」 “大人しくしろ! 抵抗するなぁぁぁ!! お縄ちょうだいしろぉぉぉ!!!” 「そうしたら私が追われる身になってしまったんだな」 気がついたら、時代劇でみる犯人捕まえに来た奉行所のような服装の人たちに囲まれていた。 「全く、筋違いにも程があるぜ」 いや、お前さっき何自分で言っているわかっているのか? 「じゃ箒をしっかりと握っているんだぜ」 「え?」 「いくぜ! 『彗星 ブレイジングスター』」 「うわああああああああ!」 一気に加速し、奉行所風の人たちを蹴散らしていく! なんとか振り落とされないようにしがみつく僕。 いや、これ僕巻き込まれてない? これじゃ共犯だよ! 僕無実なのに!! 「あ、そうそう。良也」 と、建物をかき分け、猛スピードで人々を轢いていく魔理沙。 「な、なんだぁぁぁああ?!」 どうしてこの状況とスピードで普通に話せるんだよ! 「黒い服の奴らと白い服の奴ら見かけたら気をつけろよ! かなりやっかいな連中だ!」 「く、黒い服ってぇぇぇ、上からなんか降って……」 え? 刀突き立てる感じで降って来てるんだけど! しかも何人も! 「噂をすれば! 仕方ない、飛ばすぜ!」 箒からさらなるロケット噴射が! 前よりなんか速度増してないか?! お陰で次々に降ってくる黒い服の人たちをくぐり抜ける。 って、目の前……。 「ん、あれは……弾幕か!!」 むしろバズーカ! 「当たると思ったら、外れちまったねぃ」 とバズーカ撃った、黒い服の見た目若い男。 いや、あのバズーカ後ろの人たちに当たってないか? 「ちょっとおおぉぉぉぉぉおお!! 死ぬかと思ったんですけど! 沖田さんんんん!」 と焼け焦げた黒い服の人たち。 ……良く生きてるな……。 思いっきり爆炎上がってたぞ。 魔理沙は急ブレーキをかけて軌道を変えて、かろうじて避けた。 「おいおい、この世界でも弾幕ごっこってあるのか?」 と魔理沙。スペルカードを手に、警戒している。 「ダンマク? 何の事かわからねーけどねぃ。城に真っ向から侵入したのはテメーらだ。 覚悟しな」 「私なりにやらせて貰うぞ。『魔符 スターダストレヴァリエ』」 そしてこう言った。 「良也、離れろ。コイツはヤバい!」 その男は初めて見るであろうスペルカードによる弾幕を的確に避けつつ、こっちに切り込んで来た! 速い!! 魔理沙はスペルカードを投げ捨てた。 その瞬間、男の抜刀によりそれは切断された。 宙には箒のロケットによる軌跡が残り、その先に八卦炉を手にした魔理沙がいる。 「出し惜しみはしないぜ!『恋符 マスタースパーク』」 驚く、若い男の顔が見えた。 すると、もう一つの人影がマスタースパークの前に飛び出てきた。 マスタースパークが縦に割れた。 獄太レーザーを切断した刀を縦に振り切り、現れたのは同じような黒い服を着た、タバコをふかす、また別の男だった。 ……ちょっと待て。 バズーカをぶっ放したのはいいとして(よくないけど)、数々の異変を切り抜けてきた魔理沙のスペルを初見で見切り、接近してスペルカードを刀で切断。 初めて見る連続でのスペルカード発動、しかも威力をより重視した魔理沙のマスタースパークを一刀両断。 なんだ、この人たちは……。 実戦と言える剣術はそこまで詳しくはないけど、妖夢や椛の刀とは違う、より危ない荒々しさを感じさせる。 何より、あの魔理沙を追い詰めた感すらある。 一体、どうしたらこのような戦闘力を得てしまえるのだろうか……? 「邪魔しないで欲しいんですけどねぃ。土方さん」 「いいから下がれ。総悟」 新たに現れた男はそう言った。 「頭から血を流しているような奴に護られる筋合いはないんでさぁ」 やっぱり無理あったんだな。 「そーじゃねーよ。自分で撃ったバズーカの後始末しろっつーの! 真選組巻き込むとは思わなかったぞ!! 何考えてやがんだテメーは!!」 「そこにいた奴が悪い気がしますけどねぃ」 「とっとと後始末しやがれぇぇええええ!!!」 「へーい」 「……アンタなんか無茶苦茶な奴の仲間やってんだな」 魔理沙が引き気味に言った。 僕は霊夢と大差が無い気がしてならなかった。 今日だけで二回も巻き込まれたし。 「ったく。待たせてすまねぇな。行くぜ」 「おう。来な…………いや待てよ」 土方と呼ばれた男は懐から黄色いチューブに入った何かを取り出した。 それを傷口に塗り付けた。 「……良也」 「……うん」 ……あれ、マヨネーズだよな………。 「あ? どうしたってんだ」 「あの、この世界じゃマヨネーズ傷薬にするんですか?」 と僕。 「たりめーだろが。傷口だけじゃねーよ。 飯に麺にオカズにデザートに一日合計10本以上のマヨネーズを消費するもんだろーが! 風邪に骨折もマヨネーズで俺は治すぞ」 それもう、あんただけの適合食材! 「それはマヨラー星人のテメーだけなんでさぁ」 とさっきの見た目若い、沖田、または総悟と呼ばれた男の声だった。 周囲の建物の上に、同じような黒い服の人たちを従え、みんなバズーカを手にしていた。 「お、沖田さん。本気ですか? 局中法度破るなんてもんじゃ……」 そんな振るえる声が聞こえた。 「あんにゃろうが近藤さんが休みなのをいいことに、その局中法度に今朝何加えたか忘れたっつーのか?」 「いえ……。真選組たるもの一日4本以上のマヨネーズを消費することを義務とする、ですよね……。 やれるかぁぁああああああ!!!!」 「胸焼けするわぁぁああああああ!!!」 「そんなもんただの黄色い物体だぁぁあああ!!!」 「撃てぃ」 その一言から、大量のバズーカから弾が発射された。 「何しやがんだテメーらは!!」 「だからそんなにマヨネーズかけたモン、犬すら食わねーよ!」 「近藤さんだって止めるよ! そんな不摂生!!」 「マヨネーズをバカにすんな! テメーら全員首を出せぇぇええ!!」 「さすが脳味噌マヨネーズ。局中法度より自分の好み優先なんだねぃ」 そんな醜い争いが聞こえて来た。 どうやら、土方と言う人が他の仲間にケンカというか制裁をしようとして、抵抗を受けているようだった。 「おーい。良也」 と焦げた魔理沙が顔を覗かせる。 「大丈夫……じゃないな。 分かっていると思うが、お前さん明らかに死んでるんだ。私じゃ触る気すらしないレベルでグチャグチャだ。お燐くらいだぜ。触るとしたら」 死んでるのはわかっているけど。 そんなに酷いの? なんで、同じような目に遭った二人は割と普通で、僕だけこんなんなるんだよ! 「まあ、良也だからな。そこは」 結論それ? 「すまんが自分でなんとかしてくれ。幸い不死身だからなんとでもなるだろうし」 蓬莱の薬、飲んでよかったのか悪かったのか。 「じゃ、すまんな。私は行く」 ちょっと待て、と言いたかったけど、声が上手く出なかった。 しょうがない。 争いの怒号を聞きながら、ゆっくり再生するかな。 |
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