「ふわー……っと、何もないなぁ、今日」 あくびをしつつ、万事屋の前でメガネの少年は言った。 今日も万事屋に仕事はなかった。 回を追うごとに家賃請求のエネルギー弾責めは威力や密度が増していくものの、木刀や傘で何とか防いだり、避けたりでやり過ごす日々だった。 いい加減、命の危機的にヤバイ気がするが、銀時はパチンコ、神楽はどこかに遊びに行っていた。 「銀さんはこの状況をどうにかする気があるのかなぁ。かく言う僕も何も思いつかないけど。掃除でもするかなぁ……ん?」 何か、白黒の何かがもの凄い勢いで突っ込んできた。 「邪魔するぜー!!」 「え、あ、ちょ……あ”あ”あ”あ”あ”!!!」 新八ごと入り口を突き破り入ってきた。 「あれ、誰もいないのか。鍵も掛けないで無人って不用心だな」 と、万事屋に入ってくる。それは白黒の魔法使いの様な服装をした人物だった。 「射命丸の奴が書いていた弾幕の上を走る人間がいるって聞いたんだが、いないんじゃしょうが無いな……。何かお宝でも……」 「つーか、何入って来てんだ!! 僕の存在無視か! あと入り口壊して入って来るなぁあ!! 普通に入って来やがれえぇええ!!!」 「お宝ですって……」 天井から声がする。 「おっと!」 「あ”あ”あ”!」 新八命中。 「これは……確か香霖の店にあったクナイとか言う物だ。 何者だ! 私にこんな物当てようなんて百年早いぜ!」 「そう言うあなたにこのお宝は一万年早いわね」 天井裏より藤色の長い髪に紅い縁取りされたメガネをかけた女が降りてきた。 「何しやがんだ! このメスブタストーカーぁぁぁぁぁ!!」 猿飛あやめである。 「お宝だって……?」 「そうよ。何物にも代えがたいお宝よ」 「死ぬまで貸して欲しいところだな。そう言われたら」 「お子様には早すぎる物よ。これは大人の私にふさわしいの」 「早いかどうか、それは貸して貰わないとわからないぜ」 「おいぃぃぃぃいい!!! テメーらぁぁぁぁ!!! 両耳の間にストローでも入ってんのかぁぁあああ!!! 僕を無視するなぁぁぁああ!!!!」 クナイと弾幕が新八に直撃する。 「あ”あ”あ”あ”あ”!」 「入れるならチクワだぜ」 「入れるならマカロニに決まっているわ」 「さて、貸してもらおうか」 「ついてこられるものならついてきなさい!」 「望む所だ!」 「待てぇぇぇえ! 入り口直しやがれぇぇぇ!!」 屋根の上を走り抜ける忍者を魔法使いが箒で追いすがる! 何故か万事屋の周囲を周回して! 「だから入り口直せっつーのォォ!!」 「スペルも何もなしでこのスピードを維持できるとは只者じゃないな! 人力だけで対抗できるとは驚きだぜ!」 「それなら、これはどう?」 あやめの手からロープが伸びる。それは魔理沙へ向かうが。 「こんなの当たりゃしないぜ! 弾幕にもなりゃしない」 「どうかしら」 あやめがロープを引っ張ると。 「長谷川さんんんんん!!」 まるでダメなオッサンがくっついていた。しかも恥ずかしい格好で縛られて。 「な、なんだよこれ! 人を一瞬で恥ずかしい形に縛る能力? なんて嫌な能力なんだ」 「寒いよパトラッシュ……。ヒモは首にきつく縛っておくれよ………」 「ダークサイドに堕ちたネロかよ! なんてモンくっつけやがったんだぁぁ!」 「食らいなさい!」 マダオをそのままぶつけてくる! 「あいにく私にそんなオッサンの趣味はないぜ!」 かいくぐるも、またオッサンが飛んできた! 「この縛り、なんだかムラムラします」 「ゴリラァァァァアア!!」 近藤である。避け切れない。第二のダメなオッサンが少女に当たってしまう。 「すごい嫌な文章なんですけど」 「避け切れないなら……これでどうだ!」 箒よりジェット噴射が点火される。 近藤をその勢いで弾きにかかる。 「そこは、ちょ……あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!」 「ヤバイ所に先端ブッ刺さった気がするんですけど」 少女はそのまま上空へ飛んでいった。 「本気出させて貰うぜ!『魔符 スターダストレヴァリエ』」 星型の拡散された弾幕があやめへと向かう。それと同時に大量のクナイが魔理沙へ向かう。 いくつかは相殺され、残りは両者へ。 「弾幕ごっこでもそこそこやれそうだな……ってマジか!」 あやめが、上空にいる。 空を飛べないはずのあやめが、空にいる。 「私の弾幕を駆け上がったというのか?! 射命丸の記事通りかよ!」 「食らうがいいわ。銀さんのお宝は絶対に渡さない!!」 あやめはロープを引き、恥ずかしい格好に縛られた者をぶつけてきた。 気品にあふれたちょんまげの、もっさりパンツ一枚の人物だった。 「将軍んんんんんんんんん!!!!!」 しかも、気絶しボコボコになっている。 「くそ!」 魔理沙は弾幕を放ち、撃墜を図るが。 「甘いわ」 と、将軍をサーフボードの様に乗るあやめ。弾幕を将軍で受け、またさらに高く飛ぶ。 「こうやってエネルギー弾の波に乗ってきたのよ」 「将軍を何だと思ってやがんだよォォォォォ!!」 「あなたにはもっさりパンツがお似合いよ。帽子代わりにかぶってなさい」 「いや、あんた一回かぶってなかった?」 新たなスペルカードを手にしていた。 「コレでどうだ!」 発動しようとした時だった。 「いー加減にしろっつーの! コノヤロー!!」 木刀が飛んできて、あやめに刺さる。 「あぁぁん、銀さんん……」 あやめの懐から何かの包みが飛び出し、パンツ一枚のちょんまげと一緒に落下していった。 「おっと」 包みは魔理沙の手に。 「これか? あいつが言っていたお宝ってのは」 「つーか、テメー。一体何しやがってんだよ! それ将軍んんん!!」 「いつものごとくパンツ一枚で気絶しちゃってますけど! 白目むいて気絶しちゃってんですけど!!」 「銀さんとの愛のためならもっさりパンツ一枚や二枚! そう、あのお宝があれば!」 「さっきから、お宝って言ってますけど、何の事です? うちにはそんな物ありませんよ」 魔梨沙は上空でその包みを開ける。 「一体どんなもんかな……何コレ」 イラつく顔つきの、円筒形の何かが出てきた。 あやめは器用に恥ずかしい格好におそらく自分から縛られつつ、言う。 「決まってるじゃない。ジャスタウェイよ そう、意中の人のジャスタウェイを三日三晩煮詰めて飲めば恋愛が成就できるのよ!」 「どこの黒魔術だぁぁぁあ!」 そんな地上とは関係なく、魔梨沙は。 「いや、だから、何だよコレ……」 戸惑っていた。 「つーか、どーすんですか! この将軍!! ダメなメスブタに、ダメなオッサンに、股間がヤバイ事になっているダメなゴリラが絡まっているんですけど!!」 「知らねーよ! 手の施しようがねーよ!!」 ここから始まる騒動は、また別の話。 |
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