前書き

R−Nかもしれません!気をつけてみてね!!・・・・・・多分!!




















「そういえば、良也さん。」

「ん?」

何気なく返事をする。

僕の隣で、包丁を扱いながら、彼女、博霊 霊夢は何気ない一言を言い放つ。

「今日おでかけするんじゃなかったの?」

「えっ?」

その何気ない一言を聞きながら、僕は釜の蓋を開け、何があったか思い出そうと思考にふけようとするが、「蓋を落として」と言われ、慌てて蓋をする。

言われてみれば、何かがあったような気がする。
しまった、気を抜きすぎて記憶まで抜け落ちていったのかもしれない。

チラッと横目で彼女の姿を見て、顔が熱くなる。

その原因が分かっているだけに、自分が気持ち悪い。
慣れてしまった、とは言わないが、ここ3ヶ月を過ぎて、前のように意識をしなくなっていたと思っていたつもりだったが。
彼女をまじまじと見ようとするといまだ顔が熱くなってしまう。

(ああ・・・いけないいけない)

頭を振って、気恥ずかしさを払いのけ、彼女の言う用事を思い出そうと記憶を穿り返す。

(用事用事用事用事用事用事・・・・・・)

特に思い当たる節が無く、頭を捻る。
外のお菓子などは今日売り払ったばかりだし、確か今日は祝日だったはずだ。塾も休みに入っている。ならば家に用事・・・・・・?無い、いやあるっ。
ありまくる、でも確か、これじゃない。

ならば幻想郷で?

・・・・・・んん〜〜〜〜〜〜〜?

すごく捻る、なんだろう、何かが引っかかる。

そうだ、僕は用事があったんだ。

でもなんだったか、思い出せない。

寺小屋?永遠亭?もこう部屋?白玉楼?マヨヒガ?

「んんんんん?!」

妖怪山?守矢神社?アリスの家?魔理沙の家?

「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんん?!?!?!?!?!」

ああっそうだそうだそうだそうだ、頭の中に上げていた例は全て一瞬にして消え去っていく。残る一つだけが記憶と心につっかかってくる。

紅魔館だ。

まるで霧が一瞬に晴れ渡るように、記憶が鮮明に思い出されると共に、全身の血の気がサッとなくなっていく。

「まずうううううううううううううううううううううううい?!」

「ちょっと、どうしたの。いきなり唸ったり、大声だしたり、うるさいわよ。」

料理をする手を止めて、霊夢は怪訝そうな顔をして、此方を見ていた。

「ちょちょちょっ!ごめん霊夢、紅魔館に行かないと行けなかった!」

僕は慌てて、戸を開けて外へと走り出す

「えっちょっと良也さん!」

「ごめん霊夢!ご飯は一人で食べておいて!」

突然の行動に霊夢が呼び止めるようとしているが、返答を聞かずに、夕日が沈みかけた空に飛び立ち、遠くのところでキラキラと光る湖畔へと向かう。





「・・・・・・。」

彼が飛び去って行く、様を見ながら、私ははぁっとため息を吐いてしまった。

まったく。

くるりと踵を返して、竈の中を見てみると、さっきまで燃えていた火が跡形も無く消えてしまっていた。

(やっぱりか、良也さん・・・・・・)

恐らく、魔法を使っていたのだろう、呼び出した主がいなくなったせいで、消えてなくなってしまっている。

火種はまだ、残っているし、適当に新聞なり枯れ木なり集めれば、すぐに火を炊くことはできるのだが。
お米も、味噌汁も、魚も野菜も、全て2人分作ってしまっているのだ。

まさか一日置いておくわけにもいかない。

(どうしようかしら)

魚はこのまま干物に、野菜は水につけていれば大丈夫だろう、味噌汁と残りのご飯で、明日の朝ごはんは「おじや」にでもすればいいか。

めんどくさい。

もう一度、ため息を吐き、火を焚き始める。

(一人で食べておいて・・・・・・か)

何だかその言葉を思い出した瞬間に、本当に少しだけ苛立ってしまった。












「遅かったですね〜良也さん・・・・・・大丈夫ですか?」

腰まである、長く赤い髪を揺らして、苦笑する彼女、紅 美鈴の目の前に、まるで獣のように四つんばいに降り立ち、僕はぜぇぜぇと息を吐きながら、挨拶を交わす。

「や”ぁめ”い”げほぉっりんんっがふぁっ」

「うわぁっ軽く息出来てないですから、深呼吸してください深呼吸」

ぶっちゃけ喉がからからでそれどころじゃないです・・・・・・。

それでも溜まる唾を飲み下し、なんとか深く息を吸う。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」

息を吸うのが辛い。

いくら空を飛ぶからと言って楽なんて嘘だね。

歩くよか早いだけで疲労感がやばかった、僕の「自分だけの世界に引き篭もる程度の能力」でも、強風、いや暴風といっても差し支えないほどの向かい風を抑えることがまだできなかった。

「ぶはぁ〜〜〜〜」

「今日はどうしたんですか?良也さん。」

遅刻なんて珍しいですね、と首を捻りながら聞いてくる美鈴。
その仕草が少しかわいいと思いながら、ふぅ〜っと軽く息を整えて

「その、忘れちゃってさ」

と申し訳なく答える。ぶっちゃけ申し訳ない気持ちでいっぱいいっぱいだった。

「そうだったんですか・・・・・・。それなら早く行かないと行けませんね、なによりフランドール様が寂しがってましたよ?」

そういって、己の5倍以上はありそうな重厚な門を、まるで暖簾を押すかのように片手で軽く開けて、中へ入るように促してくれた。

「へ〜い」

軽く返事をして、紅魔館の中庭へと入り、小走りで通り抜けていく。

そういえば、ここにくるのは3週間ぶりだった。

どこもかわっていない、凄く懐かしくなり、ここに入るだけで少しだけ楽しくなった。

僕はこの3週間、幻想郷から逃げていた。

というより霊夢から逃げていた。

ある日を境に彼女と僕の関係は同居人から恋人?へと遂げる小さな事件、僕自身の中で若気の至り200%、酔った勢いで博霊 霊夢と接吻を交わす。
勿論、100%若気の至りというわけじゃない、僕は博霊 霊夢ののことが好きだ。だが接吻に至るまでのいろんな段階をすっとばしすぎたから若気の至り200%なのだ。
そしてその接吻事件から一ヵ月後になんと彼女から「閨」を用意しろと要求を受けたが、僕は外へと一旦避難をした。

別にすぐに決めなくてもいいじゃないか。僕は冷静にそう考えていた。

「ボーダー商事でーす。商品の納入に参りましたー」

「やめろおおおおおおおお!!はなせええええええ、すきまあああああああぁっ!!」

僕の考えなど、誰も知ったこっちゃ無かった。世界は僕の分からないところで乱回転で回っていたようだ。

気づけば目の前には、枕が2つと布団が一つ、そして落とされた僕の上に被さってきたのは、なんだかいつもよりも艶やかに見えてしまった彼女が・・・・・・。

「ちょっ霊夢むぐぅ!!!」

「ふふふっ、では博霊神社に納品完了ということで、さっさと退散させてもらうわ」

じゃあねぇ〜とどこか楽しげに聞こえるスキマババアの声が聞こえたが、すぐに記憶の片隅に消えていくのを覚えている。

その日を境に、僕は、自分探しの旅へと出て、いろんなことに悟りを開き帰ってきた時に、咲夜からの手紙でこの日に確実に来るように、と指定されていたのだ。
すっかり失念していた。

そして、長い年月を感じさせる風格のある扉の前に立つと、はたとある事に気づく。

・・・・・・こんなに遅れてしまって、刺されないだろうか。

主に咲夜に。

別に咲夜は暴力的な女性ではないが、自分の都合、いやその主に関わる都合が悪くなれば、酷く攻撃的になる節がある・・・・・・。

十分に気をつける必要がある。

ごくりっと喉を鳴らして、扉の取っ手に手を掛け、そっと扉を開く。

きぃっと小さな音が、ホール全体に広がり、消えていく。

それほどに広く、そして静かだった。

だがホールのどこにも十六夜 咲夜の姿は見えなかった。

ほっと胸を撫で下ろして、静かに扉を閉める。

「いらっしゃい、良也さん」

「出たあああああああああぁあああぁああぁっ!?!?」

流石、完璧で瀟洒なメイド、その反応速度も格が違った。

どこで聞きつけたのか、誰も居なかったはずの僕の目の前に現れていた。

「まるで、幽霊が出たような物言いね。それに少しうるさいわよ」

非難するような顔をして、彼女はそっと水がはいったコップを差し出してくれた。

「ってっうおっなんで僕が喉かわいてるって分かったんだ?」

素直にありがとうと言って、水を飲み干す。

「貴方が遅れて来るなんて、滅多にないし、遅れたら急いでくると思っただけよ」

流石、完全で瀟洒な従者の気遣いは格が違った。

喉を潤して、彼女にコップを手渡すと、早速本題に入る、というか時間が過ぎてる時点でわりと、焦っていたりするのだ。

「遅れてごめん咲夜さん、レミリアはどこにいるんだ?」

「私に謝られてもしょうがないわ、それに今はレミリア様はお休み中よ」

なぬ?

「嘘?呼んだのに寝てんの?」

「いえ、貴方に用事があるのは、フランドール様よ」

「あっまじで?」

「ええ、軽く癇癪を起こすくらい、貴方に用事があるらしいわ」

あっ、なんだか遺書を書きたくなってきた。
まるで自然と息を吸うのと同じように、僕の死ぬ未来は確定した。








どうやらウヴル図書館「中央居住スペース」でフランドールは待っているらしい。

中央居住スペースとは、まさにあのとてつもなく広い図書館の中央に、中央居住スペースを図書館の主パチュリー・ノーレッジが構えていることから名づけられた、というより僕が勝手に呼んでいる場所だ。

このごろはフランドールも良く利用するために、ほんの少しだけフランドールスペースなんていうものも設けられていたりするのだ。

ついでに僕はいま、そこへと向かい、一歩一歩、死刑の階段を上っている気持ちで歩いている。

「さっ着きましたよ、良也さん」

「うぃ・・・・・・。」

ああやばい、ものすごく会いたくない。

普段は、突発的な死亡するから、慌てる気持ちが恐怖に勝っていてたりして、十分怖いのだが、「あっ死んだ」という感じで、慣れてしまうというより慣れてしまったりする。

それでも改めて「あんた死ぬわよ」と宣言されてしまうと、自分の行く末を想像してしまい、ぶるりと震え上がる。

ああまずい、非常にまずい。

誠心誠意に謝れば、許してくれるだろうか・・・・・・。

というかそれしかないだろう。

殺られるならば、その前の最善の行動を尽くすしかないだろう。

「フランドール様、良也様をお連れしました」

気づけば、居住区エリアに入りかけようとしていた僕達。

フランドールの不意の一撃に注意しながら、居住区全体に眼をくばるのだが。

「・・・・・?」

フランドールがまったく見当たらない。

静かにカンテラの光で灯された空間にパチュリー以外の姿は確認できなかった。

おかしいな、と頭を捻り、パチュリーに声を掛けようとする

「パ・・・!?!?!」

彼女に声を掛けようとするが、猛烈な違和感が上半身、主に腋の部分を襲う。

「りょぉおおおおやああああああああ!!」

自分の胸に物体Fが僕の名前を呼んでいる。

この声は、フランドール!?

まさか捕まれて始めて気づくほどのスピードで僕を捕らえたというのか!?

「おそいよおおおおおおおおおおおお!!」

何を思って僕の胸に飛び込んだのかは知らんが、そんなスピードで僕を着地点に選ぶな!!

どんっ軽く鈍い音が僕の身体を貫く。

水月ッッッッッ!!?

フランドールの頭の部分が僕の胸板の中心に叩き込まれた。

「おぼぉおおぉぉぉおおおおおおおおおおぉぉッッッッ!!!!!!!!!」

自分でも驚くほどに、肺から空気が抜けていく。

だが其れだけで、吸血鬼である彼女の飛び込みは止まるはずがない。

朦朧とした意識の中で、背中に棚がぶち当たるのを感じ、僕は絶命した。





「あー・・・・・・」

私の目の前には彼、良也がグデッとなって倒れこんでいた。

ついつい、力を入れすぎてしまった。

とりあえず、頬を撫でたり、息を確認したり、心臓の音を確かめてみたものの、どれもこれも反応が無かった。

「死んでる・・・・・・」

「フランドール、私の図書館で、しかも弟子を殺さないでくれないかしら・・・。」

「あっパチュリー」

すると、ふわりっと彼の身体は浮かびあがり、パチュリーのベットに寝かせられた。

「えへへ、力加減できなくて・・・・・・」

「このごろ、少しは力の加減を覚えたと思ったのに・・・、感情の加減も覚えないといけないみたいね」

「ごめんなさい・・・・・・」

それは、彼に言うことね。そう言って、彼女は自分の椅子に腰掛けて、さっきまで読んでいた本を開いて、自分の世界に入り込んでしまった。

でも本当に、参ってしまった。

毎度のことだが、殺してしまって気がついてしまう。

たとえ、死なない身体を持つ彼であっても耐久度的にはただの人間。

もう少し力と感情をしっかり動かさないと、予想以上に彼を気づけてしまう。
・・・・・・良也といる時間が少なくなってしまう。

「・・・・・・・っあ」

全身が熱くなる。何を考えているんだろう自分は。

何かを隠すかのように、髪を撫で付けたり、落ち着かない様子で動き回る、落ち着こうにも、行く当てが無くなった時間と感情が、そわそわと自分を駆り立てる。

チラリと倒れた彼を見てみる

「・・・・・・」

そっと彼の寝ているベッドへと近づき、チラッと彼の傷口を確認する。
外部の傷はほとんど治っているようだ。

彼に触れると、うっとうめき声で反応が返ってきた。

いつもおもうけれども、反則的な回復速度である。

内心ほっとしながら、彼の顔にかかる、髪を払いながら、フランドールは凝視する。

「・・・・・・ふふっ」

なんだか世界の空気が優しくなったような気がする。
流れる時間が、穏やかになった気持ちになる。

このごろ良也が顔をみていると、こんな気持ちになることが多くなっていた。

そして、自分はこの瞬間がとても好きだった。
寝ている彼にちょっかいを出すことも・・・・・・。

フランドールはゆっくりと彼の首もとに顔を近づけていく。

怪我をさせてしまった手前だが、抑えきれない。

彼とは3週間ぶりなのだ。

静かに、高ぶる高揚と、吸血行為による欲情を感じながら、首を甘く噛むと、舌が自然と彼の首を撫でる。

そこでフランドールの顔が驚愕が広がった。

何かに戸惑うように、彼から離れる。

「えっあ・・?」

頭が真っ白になる。
心臓が早鐘のように鳴り響き、異常な興奮は未知の感情に変換されて、彼女を戸惑わせた。

彼の匂い・・・・・・、血の匂いが、どんな血よりも、極上の香りになっていたのだ。

飲みたい。

そう思った瞬間に、心臓がもう一度強く鳴り響く。

飲みたい、飲みたい飲みたい飲みたい!!

ギシッとベッドが軋む。

少しだけ・・・・・・ちょこっとだけ。

強烈な吸血衝動に逆らうこともせず、彼女は良也に馬乗りになり、その牙を突き立てた。

プツッと切れた肌から彼の血が流れ出て、口内へと運ばれる。

舌に絡まり、味をじっくりと堪能するかのように首を嘗め回す。

「ぷぁっ・・・・はぁっ」

ただ必死になって堪能する。
ゾクゾクと全身を走る快感と、欲望のままに彼を襲うという行為が、異様な興奮を呼び、フランドールの行動をさらに激化させる。

「あぐっ」

傷口をさらに掘り下げ、口をあてがい、血を飲み下す。

その光景は余りにも淫猥で、普段、純粋な子供のような姿をしている彼女からは想像も出来ない姿だった。

(なんでこんなに)

ごくごくっ

(おいしいの?)

ごくりっ。

大きく喉を鳴らし、彼女は飲み終える。

淫蕩に身を任せた、彼女のその眼には、欲情と、大きな確信に満ちた光が宿っていた。

「あはっ、ねぇ良也」

甘えるように彼の胸に頬を当てながら、甘い声で、聞こえない彼に問いかける。

「相手は・・・・・・誰なのかな?」

一つの事実を捉えた彼女は、楽しげに笑いながら、もう一度、首元に牙を食い込ませた。

まるで自分の物だと、マーキングするかのように。












その日、後に土樹良也を監禁した事件「紅霊異変」が起こった。























あとがき

えー始めまして!あらがみと申します。
個別ルートに感化されてついつい書いてしまった後悔は無い上に前編です。

あまり文章というものを書かないので稚拙なのですが、個人的にはがんばtttt
かんべんしてくだしあ・・・・・・。


もうフランちゃんがヤンデレになっちゃえばいいじゃない!



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