槙原耕介28歳。 猫さんプリントのエプロン姿がキラリと光る、さざなみ女子寮管理人。 女子寮の中で唯一の男性という立場でありながら、評判は良好。周り全てがうら若き(一部違うが)女性たちにも関わらず、彼女も作らず、一人身を貫いている。 口の悪い漫画家からは、お前ホモだろうとからかわれていた。 で、その耕介に彼女が出来た。 普通なら、寮生一同お祝いの宴会を開いていただろう。それだけ、彼は慕われていたし、そもそもこの寮の人間はお祭り騒ぎが大好きだ。 ……相手が、十一も年の離れた女子高生でさえなければ。 「か、薫ー? な、何で俺縛られているんだー?」 「自分の胸に聞いてください」 耕介の相手を真雪から聞くやいなや、鹿児島からすっ飛んできた元寮生、神咲薫は虫程度ならそれだけで射殺せそうな視線を耕介に向けた。 「は、ハハハ」 心当たりのありすぎる耕介は、その原因と思われる少女にチラリと視線を向けて、顔を引き攣らせた。 「こ、耕介さん耕介さーん」 そこには、ニヤニヤ笑いながら酒瓶を片手にした漫画家と警察の民間協力者に拘束された、耕介の恋人……那美の姿があった。 「一体なにを考えとるんですかーーー!!!」 「ま、待て薫! とりあえず十六夜を下ろせ!」 激昂した薫が抜いたのは霊剣・十六夜。魑魅魍魎を調伏するべく鍛え上げられた刃であった。これは悪霊も斬れるが、無論人間だってぶった斬れる。 「ウケケ、美人ぞろいの当時のさざなみ寮生には手ぇ出さなかったくせに、こんな小娘にコナかけるからだ」 「ま、真雪さん! 笑ってないで、助けて……」 「そんな猛ってる神咲姉を止められるわけないだろー。まあ、大人しく殺られるんだな」 真雪とて、耕介のことはそれなりに気に入っていたのだ。 ぽっと出のじょしこーこーせーに獲られて、あまり気分はよろしくない。すげなく耕介の懇願を却下した。 大体なんだ。そんな若いのが良いのか。このロリコンジャイアントめ。 「さぁて。こっちの娘には、耕介とどこまでいったのか聞かせてもらおうかな」 などと、私怨も交えつつ、那美に迫る真雪。 「は、はえ!? な、なんのことやらわたしにはさっぱりーーー!?」 「この慌てよう……坊主」 「はいはーい。那美、ちょっと我慢してね」 ニヤニヤと笑っているのは真雪二号との呼び名も高いリスティ・槙原。 HGSという、所謂超能力者。 普段は警察に協力し、有用に使っているその能力をちょっと怪しげな方向に働かせ、那美の心を読みにかかる。 「ちょ、ちょっと待ってくださいっ!? わたしと耕介さんはなんでもありませ……」 「なんだ。もうケツでやってるんじゃないか」 うら若き乙女がてんこ盛りの女子寮で何たることを言うのかこのエスパーは。 「そんなことしていませんっ! わたしたちは普通に……」 と、そこまで口走って、那美はやっと乗せられたことに気がついた。 遠くでは、耕介がムンクの叫びみたくなっている。 「普通に……なんだい?」 「おらおら、ネタは上がってんだ。とっとと吐きやがれ」 恋人が完膚なきまででに自爆って、耕介はこの世との別れを本気で考え始めた。 「普通に、耕介さんはなにをしたんですか?」 「な、なんだろうなー。料理とかじゃないかなー」 なにやら十六夜に霊力の光が灯っていらっしゃる。 「そ、その、ネ?」 「なんでしょう、耕介さん」 耕介は十六夜の冷たい刃を首筋に突きつけられ、半泣きになった。 耕介は思った。ここで男らしい態度を取らないと本気で殺される。 「……責任は取ります」 「そういうことじゃなかとですーーーー!!」 ぎゃー! という悲鳴がさざなみ女子寮に響いた。 @ 話は、この春に遡る。 新学期が始まって間もないとある夜、耕介は那美に弁当の作り方を教えてくれ、と頼まれた。 「そりゃかまわないけど……。なんでまた急に? お弁当が必要なら、俺に言ってくれれば」 と、そこまで言って耕介は気がついた。 那美の顔が赤くなっており、視線が泳いでいる。そういえば、最近、『とある男の子』のことを話していたような気がする。 (ははぁん) 管理人生活五年以上。多くの女の子の成長を見守ってきた彼には、その反応だけで十分予想がついた。 ……要するに、この娘にも好きな人が出来たらしい。 「いいよ。エプロン持っておいで。一緒に作ろう」 「あ、はいっ。ありがとうございます」 ぺこりと頭を下げる那美。礼儀正しい娘だ。 「ちゃんと手は洗ってね」 「はい」 料理人として、清潔第一。この辺は、たまに簡単な下ごしらえくらいは手伝ってくれる(それ以外を任せるのは若干不安がある)那美にとっては慣れたものだ。 「それで、どんなものが作りたいか、リクエストはある?」 「えと、エビフライ、とか」 「ふむ……」 揚げ物系は、彼女の経験値的にうまく行くかどうか五分五分といったところだが、自分が隣で見ていれば問題はないだろう。 そもそも、女の子の手料理だ。多少マズかろうが、男子たるものぺろりと平らげなければいけない。 無論、多少の範囲で収まればである。流石に、この寮のオーナー、槙原愛クラスの『料理(?)』みたいなのを口に含むのは、勇気ではなく蛮勇であろう。 「そうそう。そうやって、衣をつけて」 「わかりました」 多少粉が多いが、特に問題なく工程は進む。 ……やっぱり、普通こうだよなぁ、と愛の料理を矯正しようとした不毛な過去を思い出す。 「いかんいかん」 「? どうしたんですか、耕介さん」 「なんでもないよ」 さざなみ寮に来て、こういう誤魔化し笑いは無闇に上手くなった気がする。 とにかく、今は那美に教えているのだ。センスがいいとは言えないが、決して悪くもない、ちゃんと教えればちゃんと料理を作れる子を。 気もそぞろに教えるのは良くない。 「んじゃあ、揚げようか。油がはねないように気をつけてね」 「は……はい」 やはりと言うか、タネを天ぷら油につけるところで緊張しているようだ。 まあ熱いし。 「むむ……あ」 ぽろ、と那美は菜ばしから海老を滑らせ、油が派手に飛び散り、 「あ、じゃないよ」 半ば予想していたので耕介は慌てず騒がずエプロンをマタドールのように構えて油の飛散から那美を守った。 「す、すみません」 「いいよいいよ。次は気をつけてね」 苦笑しながら、那美を促す。 那美は、こくりと頷いて、今度こそ無事に海老を投入した。 耕介はその真剣な横顔を眺める。 一応、耕介も末端とはいえ神咲流の端くれであるし、小学校の頃、姉を訪ねさざなみ寮に来たこともあるし、那美のことは結構古くから知っている。 だが、根っこのところは出会った当時とあまり変わっていない。 微笑ましい思いになりながら、那美の後ろから海老を引き上げるタイミングを教える。 (……いや、そうでもないか) 心の中で首を振る。 彼女だって、立派に成長している。とうとう恋をするまでになった。 知佳とはまた違った意味で、妹のように思っていた娘も、もう子供ではないのだ。 「あ、ほら。引き上げは手早くやらないとすぐ火が通り過ぎちゃうよ」 「わ、わ。慌てさせないでください」 わたわたと焦って菜ばしを操る那美。 そのせいで左後方に立っている耕介に、那美の襟元の隙間から白い下着が見えてしまった。 (白か) 色だけ確認して、さりげなく視線をそらす。 こんな環境だ。この程度の嬉し恥ずかしハプニングなど、無数に経験している。那美みたいな娘なら気付かないのでいいのだが、某漫画家や某エスパーだと、すぐに気がついてからかわれ、奢らされる。 だから、こういう状況は即時撤退が鉄則となっている耕介だった。 それでも、記憶に焼き付けてしまうのは男の悲しいサガか。相手は一回り以上年齢の違う少女だというのに。やはり、もう子供ではないんだな、とエロオヤジみたいなことを考えていた。 「耕介さん? できましたよ」 「あ、ああ」 動揺は抑えられた、と思う。 「じゃあ、味見してみて」 「耕介さんもどうぞ」 と、那美はエビフライを一匹差し出してくる。 「え? いいのかい」 「はい。耕介さんに教わったからこそ、作ることが出来たんですから」 まあ、そういうことなら、と耕介は一つつまんで口に運ぶ。 「……む」 ……微妙、であった。 決して食べられないことはない。食べられないことはないのだが……微妙、としか表現のしようがない。 「ちょっと失敗だったね……」 どうせ那美も味見をするのだ。おべっかを言っても仕方がない。 案の定、というか、本人も食べてみて、ちょっと泣きそうになっている。マズイからか、自分が情けないからか。多分両方だろう。 「うう〜」 「ま、まあ初めてでこれなら上出来だって。今度は、俺が作って見せるから」 「お願いします……」 半分残しておいた海老を手早く処理し、揚げる。 言うだけなら簡単だが、所要時間は那美の半分以下。動作の正確性では比べるまでもない。 「はぁ〜」 「よ、と」 揚げ油からする音が変わったところで引き上げ、余計な油を切る。 「ほい」 「あ、頂きます」 食べて、那美は目を白黒させる。 その反応に満足して、耕介は言った。 「一応、これとそれ、半分ずつ入れてきな。流石にそれだけだと、彼が可哀想だ」 我ながら酷いことを言っているなぁ、と思わないでもないが、男子高校生にとって昼食は一日の活力だ。無論、那美の作ったものも食べるべきだが、口直しは必要だろう。 「あ、ありがとうございます」 「ないなに」 「……あれ? って、って、ていうか彼って!? そ、そんなんじゃないですよ!」 「わかってるよ」 「それって、それって、どう見てもわかっているっていう目じゃありませーーんっ!」 そんなことがあった。 A それから、何週間か経って。 「おかえりー」 たまたま、寮の誰もが留守だったあの日。 那美が、必死に涙をこらえながら、帰ってきた。 「……那美ちゃん? どうした」 この様子は、ただごとではない。 確かに泣き虫なところはあるが、こんな悲しそうに泣いているのを見たのは、本当に久しぶりだ。 「な、なんでもありません」 「なんでもないって顔じゃないだろう」 「本当になんでもありませんからっ!」 そして、逃げるように耕介の脇を駆けていく。 腕でも掴んで止めることは簡単だったが、下手に刺激はしない方がいいと思った。 「……久遠。心配なのはわかるが、そっとしておこう」 那美についていこうとする狐を耕介は止める。 「……くーん」 「大丈夫だ。きっと、大丈夫だから」 不安そうに鳴く久遠を撫でる。 怪我などはなかったから、暴漢に襲われたとか……そんな想像もしたくない事態ではないはずだ。 悲しいことがあっただろう。内容はわからない。友達と喧嘩でもしたか、大切なものをなくしてしまったか、それとも…… 「やれやれ……」 ここ最近の――つい今朝までの那美は、むしろ浮かれていた。初めて好きになった人が出来たことで、というのは那美本人は隠しているつもりだったらしいが、寮生全員が察していた。 それが、帰ってきた途端、この様子。 十中八九、その彼と何かがあったに違いない。 「こういうとき、男は無力だよなぁ」 同じ年頃の女の子――例えば美緒あたり――ならば、少し時間を置けば、簡単に那美の気分を引き上げてくれそうだ。 耕介は、彼女が元気になるまで、下手に声もかけられない。どういう声をかければいいのかわからない。 結局、耕介に出来ることは、美味しいご飯を作って、せめて体だけでも健康を維持してもらうことだけだ。 「……ああ、そういえば、おやつにプリンを作ってたんだっけ」 流石に、今は駄目だろう。 まあ、さざなみ寮にはたくさん食べる人間もいるし、処分に困ることはまずありえないが…… 「ん? なんだい、久遠」 呟いた耕介のズボンの裾を、久遠がぐいぐい噛んで引っ張る。 まるで、なにかをせがんでいるようだ。 「久遠もおやつが欲しいのか?」 違うわいボケ、とちょっと強めに噛まれた。 「あいたたた……。なんなんだよ」 付いて来い、と言わんばかりに進む久遠の後を追っていくと、着いたのは冷蔵庫。今はプリンがいい感じに冷えているはずだ。 「プリンを食べたい……わけじゃないよな」 きらりと牙と爪を光らせた久遠に慌てて言い訳して、ふむ、と耕介は首をかしげる。 「……那美ちゃんに、持って行けってか?」 そうだ、と大きく久遠は頷いた。 「慰めろって? 俺に?」 もはや語ることはないと、狐は背中を見せて立ち去る。 なんだ、あの格好よさ。 「難題だなぁ」 ぽりぽり頭をかく。 失恋中の女の子を慰める、なんていう高難度スキルは、さしものさざなみ女子寮管理人とて身に着けていない。というか、ここに来てから彼本人は色恋沙汰とはとんと無縁だったため、その手の経験値はまったく更新されていない。 だがしかし、 やっぱり、寮生の体調管理は彼の使命なのだった。 「メンタルケアは専門外なんだけど」 冷蔵庫の中からプリンを取り出し、スプーンを添えて那美の部屋の前まで持っていく。 部屋を前にして、三度深呼吸をして、ノックした。 「…………なんですか」 ややあって、か細い、蚊の鳴くような声が返ってきた。 よかった。返事が出来るなら、まだ大丈夫だ。 「いや、実はね。おやつが作ってあるんだ。残すのももったいないし、食べないかなと思ってね」 努めて明るい声を出す。 相手の調子に合わせてトーンを落とせば、多分出てこない。 「……いりません」 「そう? 久しぶりに作った特製プリンなんだけど」 那美の大好物だ。 一時期、必要もないのにダイエットに励んで節制していたときも、このおやつだけはちゃんと食べていた。 さあどうだ、と期待を込めて耳を済ませると、 「……いりません」 さっきと同じ調子で返事があった。 こらあかん、と耕介は戦術的撤退を試み、 「………………」 廊下の角から、狐がじーっとこちらを見ていた。 (やればいいんだろ、やればっ!) ここで背を向けて、久遠に情けない奴の烙印を押されるのは敵わない。パートナーである久遠の役目なんじゃないか、とも思うが、彼女は言葉を使えない。 それに、耕介個人としても、那美をこのまま放っておきたい、というわけでは断じてない。 「あー、その、なんだ」 だがしかし、早々容易に言葉が出てくるはずもない。 だから、直球で行った。 「学校で、なにかあったの?」 びくり、と部屋の中で跳ねる気配がした。 耕介は少し迷って、今回の件の核心をついた。 「察するに、恭也くんとかいう……」 その名前を出しただけで変化は起きた。 今まで無言だった那美が泣き始めている。 予想はしていたものの、もう少し時間を置くべきだった、と後悔した。 「……入るぞ」 もう放っておけない。自分で泣かせておいてなんだが、一刻も早く傍に付いてあげたかった。 「那美ちゃん……」 ベッドの上ですすり泣いている那美は、いつもより一回り小さく見えた。 刺激しないよう、細心の注意を払って、彼女のベッドの隅に腰掛ける。 ……那美は、拒むことはなかった。 「ほら、プリン。ここに置くぞ」 はい、とかすかに返事をしてくれたと思ったのは気のせいだろうか。 その後、耕介はそのまま何も言わず、泣く那美の傍に、ずっと居た。 B そして、また何週間が過ぎて、とうとう久遠の封印が解ける日が来た。 紆余曲折を経て、恋人同士となっていた耕介と那美は、お互い力強い笑みを浮かべあう。 「耕介さん」 「行くぞ、那美っ!」 那美は雪月を、耕介は今回の封印のため神咲家から借り受けた御架月を構え、久遠から分離した祟りを斬r 「ちょちょちょちょちょちょ、ちょーーーっと待ってください!?」 「……なんだ、薫。お前が、俺と那美の馴れ初めを聞かせろと言ったんだろう」 なんとかかんとか、爆発やら刃傷沙汰一歩手前やらという難関を越え、しぶしぶ薫が矛を収め、宴会が始まっていた。 宴席では『耕介&那美、お付き合いおめでとうコンチクショウ!』の垂れ幕が下がり、一部の耕介に思いを寄せていた女たちはうわばみと化していたりしていなかったり。 そんな一部に属していたりしなかったりする薫も、普段の倍くらいの勢いで日本酒を呑み、程よく回った所で耕介に那美と付き合うことになった経緯を聞いて…… 話の腰を折った。 「肝心なところがぽっかり飛ばされませんでしたか!? 一体、AとBの間になにがあったんです!?」 「なにって……ナニかなぁ?」 耕介のでかい背中にもたれつつ、顔を真っ赤に目をぐるぐるさせている那美がはい〜〜、と力なく同意した。 「ナニ、なんれすう」 「つまりなんなんですかっ!?」 わけがわからないが、この二人の間ではちゃんとまとまっているらしい。これが恋人同士の絆か、と彼氏いない暦二十○(ピーーー)年の薫は戦慄する。 「あー、違う違う。神咲。こいつらの言ってるナニはあれだ。あれ」 周りのほとんどと同じく、顔を真っ赤にした真雪がフォローするが、やはり酔っているのか言っていることは支離滅裂だった。流石に、代名詞だけで悟れというのは無茶だろう。 「どれなんですかっ!?」 「わっかんねぇかなぁ。つまりぃ」 真雪が怪しい動きで薫のバックを取る。 酒のせいで危機感の薄れた薫は、朦朧とする頭でそれを見逃し、 「こういうやつだぁ!」 そして、したたかに胸を揉みしだかれた。もう余裕で嫁にいけなくなるレベルで。 「うひゃぁん!?」 「おっ、色っぽい声。ほれほれー、ここかー? ここがええのん、かはぁ!?」 真雪のわき腹に薫’sエルボーヒット。哀れセクハラ大魔王は崩れ落ちた。 「真雪さーん? ちょっと、こんなところで寝ないでー」 耕介が、ぺちぺちと悶絶している真雪の頬を叩く。 起きないので、すぐ諦めた。吐かなければいい、吐かなければ。 「まったく……駄目駄目だなぁ、真雪さんは」 「それは、こっちの台詞です」 ぐももももも、と薫が胸を抑え半泣きになりながら振り向く。 ヒィッ!? と耕介はチビりかけた。 「な、ナンデスカ、薫サン」 「真雪さんのおかげで、よ〜〜くわかりました。耕介さん、あなたは傷心の那美に付け込んで――!」 薫が、十六夜を構える。 「神咲さン落ち着いて!?」 自然、丁寧語になった耕介が土下座の姿勢に移行しようとするが、背中に那美がもたれているため出来ない。 結果、中途半端な姿勢で言い訳をすることになった。 「か、薫! べ、別に俺は那美が弱っているところに付け込んだわけじゃないぞ?」 「ほう」 「そのあと、ちゃんと三、四個のイベントを経てだな。互いの思いを確認した上で、無事神社でドッキンg……」 口を滑らせた、と彼が気付いたのはあまりに遅かった。しかも神社などと、場所までバラしてしまっている。しかもその時は巫女服だったということまで言わなくて良かったー! などと安堵するのはまだ早過ぎである。 十六夜の刀身に、熾烈な霊力が集まり……さざなみ寮に、再び悲鳴が轟く。 なんだかんだで、似たもの同士のような気もする二人だった。 |
戻る? |