「しかし、霊夢がこっちにいるってのは、凄い違和感だな……」

「そうかもしれないわね。……それにしても、外の世界の人は変わった格好をしているのね」

「………………」

 多数決をとれば、確実にこっちのほうが正常って結果が出ると思うけど。総人口的な意味で。

 しかし、賢い僕は幻想郷の奴らが変なだけだ、とは言わなかった。それぐらいのことは学んでいるのである。

 しかしミスった。今の霊夢の格好はいつもの巫女姿だ。この世界では少々その姿は目立ちすぎる。しかも、明らかに改造服っぽいし、博麗の巫女。まあ、幻想郷から出てくる時が慌ただしかったから、つい忘れていたんだが。

 そのうえ霊夢は美少女と言っても過言ではない容貌をしているから、嫌でも視線は集まるというものだ。さっきからそういった目で霊夢を見ている男連中もいるし。

 まあ、霊夢相手にどうこうなるわけがないから、特に何も思わないけど。一応僕の嫁なんだから、この場合は嫉妬でもしたほうがいいのだろうか。

「河童が作ったようなものばかり。確か、カガクだったかしら」

「ん、ああ。こっちはほとんどそういった技術に頼ってるからな。できるだけ楽に、できるだけ簡単に、っていうふうに技術が進歩したから」

 僕の実家に向かう道すがら、自販機やらビルやらを見ながら霊夢が言う。

 河童の技術も基本は外の世界の科学なのだから、霊夢の認識も間違いではない。河童の技術を数段発展させたものが集まっているのが、外の世界ともいえる。

 とはいえ、光学迷彩なんて素敵なものはないけど。その点に関しては河童が上だ。こっちでは世界最高の傭兵だってダンボール使ってるぐらいなんだから。

「ふーん……。生きるってことは努力の重なりなんだから、もっと苦労した方がいいに決まってるのにね」

「………………」

 言っていることは大変素晴らしいが、どの口がそれを言うんだろう。

「その割には、お前はいつも家事とか僕任せじゃないか?」

「だって、面倒じゃない」

 つまり人には苦労した方がいいと言いながら、自分は楽をしたいらしい。なんて他人に厳しく自分に甘い奴だ。

「頼りにしているわよ、良也さん」

「……はいはい。わかったよ」

 僕たちはそう在るのが自然なのだと信じて疑わない口調で言われては、反発する気もなくなってしまう。

 結局、僕は霊夢のことをそれなりに大切に思っているし、霊夢も……まあ、それなりに僕のことは考えてくれていると思う。

 まあとどのつまり、これが僕らには自然な関係なのだろう。

 溜め息をつきつつ、そんな自分に苦笑い。

 そして、霊夢と共に僕は再び実家への歩みを再開させるのだった。















 事の始まりは、僕が実家に帰ったときのお父さんの一言からだ。

「そういえばお前、彼女はできたのか?」

 僕が帰省するたびにお父さんはまずこれを聞く。親としては、いかにも女っ気がない僕のことが心配なんだろう。

 これまではいつも適当にはぐらかして来たのだが……。最近になって、そういうわけにもいかない事情が出来てしまった。ゆえに、僕は言葉に詰まった。

「あー……」

「お父さん。お兄ちゃんみたいな人種に彼女が出来るわけないよ」

 何やら自信たっぷりに言うのは我が妹玲於奈。ってか、人種って……。

「ご、ごほんっ! まあ、焦らずに行けばいいからな、良也」

「良くんも女友達は多いみたいだし、大丈夫よね?」

 相変わらず僕の趣味の話になると、お父さんは強引に話を逸らし始める。お母さんもそれに便乗して慰めるようにそう言ってくれる。

 しかし、ごめんなさい。

 実はいます、彼女。というか、既にあれです。結納はしてないけど、婚約状態です。

 しかし、幻想郷のことを考えると黙っていた方がいいのは確かである。スキマに難癖付けられても困るし……。

 けど、こうまで気にかけてくれている家族に知らせないのも親不孝にすぎる気がする。まがりなりにも今の僕があるのは、この人たちがいてくれたからこそだ。だというのに、こういう大事なことを黙っているのは、どうにも気持ちが悪い。

 ………………。

 ……いや、まあいいか。

 うん、よく考えたら別に伝えるぐらいいいんじゃないだろうか。家族に報告するなんて、当たり前のことだ。スキマもそんなことまで禁止したりはしないだろう。家族の問題なのだし。

 そうと決まれば話は早い。早速僕は口を開く。

「お父さん、お母さん、玲於奈」

 三人に呼びかけると、三人の視線が僕に集まる。

 それを受け止めながら、僕はこほんと小さく咳払いをした。


「ごめん、僕もう婚約してる相手がいる」


 …………………………。

 …………………。

 …………。


 ……咲夜さんがいるんじゃないかと疑ってしまうぐらい、家族の時間が止まった。


 しかし、それもすぐに終わる。

 まずは玲於奈の絶叫だった。

「……っぇ、ぇぇえええええええッ!?」

 椅子を倒しながら立ち上がり、あらん限りの声で叫び声を上げる。

 というか痛い、耳が痛い! 近くで大声を出すなよ!

 そんな玲於奈とは対照的な反応を示すのが、お父さんとお母さんだ。お父さんはぐっと口元を引き結んで、目を閉じて泰然とした様子で座っている。お母さんは、驚きつつも何だか嬉しそうな表情をしているように見えた。

「えっと、急な話でごめん。けどまあ、嘘とかじゃないから」

 親にも黙ってそんな話を進めていたことを怒られるかもと思い、ついつい伺いを立てるような物言いになってしまう。

 しかし、相変わらず二人は口を開かない。代わりに、お母さんがぽんとお父さんの肩を叩いた。ほらお父さん、と呼びかければ、お父さんはゆっくりと目を開いた。

 そして、僕は盛大にひいた。

「り゛ょうや゛ぁー。よがった……ようやぐ、お前にも春が……」

 お父さんは何故か泣いていた。それも大泣きだった。

 え、なにこれ。どういうこと?

 僕が困ったような視線をお母さんに向ければ、お母さんはほんわかした笑みで僕を見た。

「それがね〜。お父さん、内心では良くんはもう結婚できないんじゃないかって思ってたのよ。それがこうして婚約なんて言うから、感極まっちゃったのね〜」

 困った困ったと言いつつ、お母さんはお父さんに箱ティッシュを手渡す。それを受け取り、豪快にティッシュを消費し始めた父親を見て、僕は何とも複雑な気分だった。

 僕は家族にまでそんな甲斐性なしだと思われていたのか。まあ、自分の趣味を鑑みればそう思われるのも致し方ない気もしなくもないが。

 自分のこれまでに思いを馳せていると、横からくいくいとシャツを引かれる。そこには、なぜかジト目で見つめてくる玲於奈がいた。

「……お兄ちゃん、ホントなの?」

「ああ。間違いなく」

 そう伝えれば、玲於奈はそうなんだと呟いたきり、押し黙った。なんなんだ。

「そうそう良くん。今度、そのお相手の方をぜひ家に連れてきてね。大歓迎しちゃうから」

 え、マジですか?

 幻想郷を守護する博麗の巫女。知らずとも、その霊夢を連れて来いと言うお母さん。しかし、その顔があんまりにも楽しそうなものだったので、僕は思わずそれに頷いてしまうのだった。










「相変わらず考えなしね、あなたは」

「……うっさいなもう。僕だって、ちょっと不用意だったかなーとは思ってるんだ」

 ある午後の博麗神社。

 その中で、僕はスキマに呆れた目で見られていた。ちなみに横では霊夢がお茶を飲んでいる。もちろん淹れたのは僕だ。

 僕が家族に婚約者の存在を話したり、お母さんにその相手をぜひ連れてきてと頼まれたことなどを話したのは、昨夜の宴会の席でのことだった。

 宴会にはスキマもわりと参加することが多いので、いつもどこにいるのかよくわからないスキマに話をするには、宴会で待つのが一番だ。……僕にわざわざスキマを探し出してまで会いたくないという気持ちがなかったとは言わないけど。

 とにかくそんなことを霊夢とスキマに伝えたら、霊夢はふーんってな感じだったが、スキマはすぐに真面目な表情を見せて、僕を扇子で一閃。頭を叩かれた。

 そして、明日また話しましょう。霊夢もそれでいいわね。と断定口調で言い、すぐさま帰ってしまったのだ。

 もっと何か言われるのかと思っていたが、それもなかった。まあ、一切合財ひっくるめて明日に持ち越すってだけだったのかもしれないけど。

 そして今日。昨日言われたとおり、僕と霊夢はスキマとこうして話し合うことと相成ったのである。

「……それで、霊夢が外に行くのには問題があるのか?」

「あるわ」

 間髪入れずにスキマは断言する。そこには、いつもの人を食ったような態度はひと欠片もなかった。

「博麗大結界そのものは博麗神社自体を重要視しているから、霊夢がいなくなっても最悪神社さえあれば結界は維持できる。……けど、問題は中に住む妖怪たちよ。妖怪を退治する博麗の巫女がいなくなったとなれば、ここぞとばかりに異変を起こす輩も現れるかもしれない。いえ、間違いなく出てくるわ。そうなれば、一時的とはいえ幻想郷の治安は大きく乱れる。それをみすみす見逃すわけにはいかないわね」

 扇子をぱちんと鳴らして閉じながら、スキマは霊夢がいなくなることの危険について語る。

 しかし、今更そんな大それたことを起こす奴がいるだろうか?

「なあスキマ。そんな大きな力を持った妖怪が異変を起こすなんて、あんまり考えられないんだけど……」

 そう、ここ何年かの間にかなりの数の異変が起こり、それらはほぼ解決されている。同時に、異変の首謀者である力を持った妖怪なんかもかなり大人しくなっている。今さら何かするとは思えないんだが……。

 そんなことを伝えると、スキマは溜め息をついた。

「バカね。何も異変を起こすのが力のある妖怪だけとは限らないわ。たとえあまり力のない妖怪でも、騒動ぐらいは起こせる。それが同じ時間に何度も起こってみなさい。それはもう立派な異変だわ」

 ……なるほど。

 つまり霊夢という妖怪を抑えていたタガが外れることによって、大して力のない妖怪まで暴れ出す危険があると。それだけならやはり大したことはないが、同時期に違う場所で何度も起これば、かなり厄介なことになる。

 これまでは霊夢という妖怪を退治するための強大な存在がいたから彼らは自粛していたが、ここぞとばかりに動き出す可能性があるわけだ。

 そう考えると、確かに危険な気がしてきた。

「やっぱり、まずかったか?」

「まあ、そうね。残念だけど、諦めてもらうのが一番安全かつ安心よ。私は幻想郷の平和を何よりも優先する。その観点から、賛成は出来ないわね」

 スキマの幻想郷に対する思いは詳しくは知らないが、それでも本当に大事に思っていることは理解できる。そのスキマがこう言うんだから、その方が確かに幻想郷にとってはいいのだろう。

 ここは、お母さんには悪いが、諦めてもらうしかないかな……。

 心の中では霊夢のことを紹介できないことを残念に思いながら、僕は涙を呑んで自分を納得させる。そのせいで人に迷惑をかけてしまうのは、やっぱり違うと思うからだ。

 スキマは今度は霊夢に顔を向ける。

「霊夢も、それでいいわね?」

「そうね……とりあえず、良也さんのご両親には会わないといけないわね」


 ………………。

 ……あれ?


「ち、ちょっと霊夢?」

「何よ? 婚約をしたんなら、ご両親に挨拶をするのは当たり前でしょう?」

 想定外の返答だったのか、スキマもさすがに動揺を隠せないようだ。

 とはいえ、僕にとっても同じく想定外の返答だった。

 霊夢はあれでかなり幻想郷のことを気にかけている。自分が持っている役割についても、強い責任感がある。その霊夢が、まさか幻想郷の平和に反するような答えを持ってくるだなんて、誰に予想できただろうかいや出来ない。

 意味もなく反語表現で内心を表していると、その間にスキマは霊夢に言い聞かせるように話しかける。

「いい、霊夢。あなたが幻想郷の外へ行くということは、大きな危険が伴うわ。それは今さっき言ったでしょう? あなたが幻想郷の平和を乱すようなことをするとは思いたくないのだけれど。わかるわよね?」

「まあ、確かにそういう危険はあるでしょうね。私だってそれを見逃すつもりなんてさらさらないわ。……でも、さすがに良也さんのご両親に会わないわけにはいかないわよ。良也さんをもらおうっていうんだから」

 ……あれ、もらわれるのは僕だったのか? 確かに霊夢が幻想郷を離れられない以上、僕がこっちに来るしかないわけだけど……。

 なんだろう、男として何かに負けた気がする。

「それはそうだけれど……」

「それに、どうやら協力してくれる人もいるみたいだしね」

 へ?

 霊夢はそう言うと、立ち上がって外へと続く障子を開いた。それと同時に、何かが雪崩れ込んでくる音が聞こえる。

 そう、音だけだ。姿は全く見えないのに。ということは……。

「まったく、やっぱりいたのね」

「あははは。いやぁ、霊夢の勘には敵わなかったか〜」

 言って姿を現すのは、長い二本の角と瓢箪を持った幼女。つまりは萃香がそこにいた。

 悪びれずに笑う萃香に対して、霊夢は呆れ顔だ。

「それに、他にもいるんでしょう?」

「ちぇ、バレてたか。ならしょうがない。みんなー、能力解除するよー」

 萃香がぱちんと指を鳴らすと、雪崩れ込んできたものの正体が現れる。

 そこには、魔理沙に射命丸に東風谷に諏訪子に妖夢に幽々子に天子に橙に鈴仙に……。その後ろには神奈子さんや咲夜さんに衣玖さんに永琳さんに輝夜に、エトセトラが立っている。

 うん、とにかくかなり多くの人(?)たちが境内にまで詰めかけているのはわかった。

「あ、あなたたち……」

「ふふふー。さすがの紫も思いっきり疎くしたし、気づけなかったみたいだね」

 気分よさそうに笑い、瓢箪を口元で傾ける。そんな萃香を見て、スキマは疲れたように大きな溜め息をついた。なんだか凄く珍しいものを見た気分だ。

「それで、なんでお前らはここにいるんだ?」

「ん?」

 ぐびっと一飲みしつつ、萃香が僕に視線を向ける。ぷはっと豪快に息をついた後、萃香は種明かしを始める。

「ほら、昨日の宴会で良也が何か言ってたでしょ? 家族に紹介がどうとかって。私以外にも耳に入ってた奴らがいてさ。それが人づてに伝わって、結局みんなで聞きに来ることにしたんだよ」

 つまりは僕があんなに人がいるところで不用意に話したことが原因らしい。恨みがましくスキマに睨まれるが、もう過ぎてしまったことなんだから、仕方がないじゃないか!

「まったく……暇ね、あんたらも」

「お前には言われたくないぜ」

 霊夢のぼやきに、雪崩れ込んできたその時の寝そべった姿勢のまま返す魔理沙。確かに、霊夢に暇だなんて言われてはおしまいな気がする。

 やれやれなんて言いつつ、魔理沙は立ち上がる。そしてくいっと帽子を指で上げる仕草をして、にっと笑った。

「ま、話は聞かせてもらったぜ。要するに、何かあったらそいつをぶっ飛ばせばいいんだろ?」

 簡単な話だぜ、なんて言いつつ笑う様は、いかにも魔理沙らしかった。細かいことなんてお構いなし。弾幕はパワーだぜ、と常日頃言うだけはある豪胆さだ。

「神奈子様、諏訪子様。私も……」

「ああ、早苗のやりたいようにすればいいさ」

「うんうん。私達も、できるだけサポートはしてあげるよ」

「ありがとうございます」

 東風谷は東風谷で、なんだかやる気になっていた。

 これはひょっとして、本当にさっき霊夢が言った通りなのか? みんな協力してくれると、そう考えればいいのだろうか。

 東風谷に目を向ければ、先生にはお世話になりましたから、と笑って言われた。……いかん、ちょっと不覚にも感動してしまった。

「私は幽々子様をお守りする仕事がありますし、遠くまでは出向けませんが……ある程度の距離までならカバー出来ると思います。……幽々子様、よろしいでしょうか?」

「ええ。良也は今でこそ不死人とはいえ、もとは生霊として私達の領域に住んでいた者。かつての同胞を見捨てるほど落ちぶれてはいないわ」

 いやまあ、そんなに大それたことでもないんだけどね。ただ僕の親に紹介しに行くだけだし。

 でも……うん。なんだかこう温かいものを感じる。白玉楼は僕がこの幻想郷に来て初めて訪れた場所で、最初の家だった。本当の家族ではないけれど、それでも似たような感覚はある。

 だからこそ、こういう気遣いは本当にありがたかった。

「まあ、私達も良也には楽しませてもらっているし、竹林程度なら何とかしてもいいわ」

「うちの姫様もこう言っていますので、そっちは適当にやっておきます。いいわね、うどんげ」

「私なんですか!?」

 永遠亭組まで協力する姿勢を見せてくれるとは、意外すぎる。それでも、嬉しいものは嬉しい。鈴仙には……ごめんなさいと言わざるを得ない。

 更には紅魔館もある程度は協力してくれることを約束してくれた。今はお昼なこともあってここにいるのは咲夜さんだけだけど、咲夜さんがそう言うからにはそうなんだろう。

 まあ、紅魔館組は霊夢がいるからだろうけど。レミリアあたりは霊夢のことを物凄く気に入ってるみたいだから。

 他にも萃香や射命丸といった妖怪連中も、霊夢には世話になっているからと言って快く協力を申し出てくれる。

 天子は……とりあえず上から見ててやるわ、だそうだ。衣玖さんの苦労が目に浮かぶ。とはいえ、天子も何だか乗り気ではあった。相変わらず、霊夢の人望はこういった連中からは厚い。

 ――という感じに、気づけばいつの間にやら一大勢力になりつつあった。しかも人間と妖怪と神様が結託しているのだから、恐ろしい。……というか、なぜこんな大きな話になってしまったんだろう。あ、僕が宴会なんて目につきやすいところで話したからか。

 スキマを見やれば、珍しく頭を抱えていた。こんな事態になるなんて想像もしていなかったのだろう。

「あっはっは。まあ、みんな話を聞けばそう言うと思ったよ。で、どうだい紫。これだけ協力するって言ってるんだ。ダメとは言わないだろ?」

「そうね。いずれは通る道なんだから、結局いつかは同じことが起こるのよ? なら、今の方がいいと思うけど」

 萃香が言えば、霊夢が続く。

 確かに、これだけの戦力が異変が起こった時に対応してくれるなんて、そう何度もないだろう。なら、今の方がいいという考え方には頷けるところがある。

 二人と、それから僕と、さらに沢山の人たちに見つめられるスキマ。

 ……しばらくして、スキマは溜め息と共に降参だと告げた。

「はぁ、わかったわよ。良也みたいに外と行き来できる存在を下手に神隠しに遭わせるわけにもいかないし……。今回は霊夢が外に出ることを認めましょう」

 スキマがそう宣言した瞬間、わーっと騒ぎ出す後ろの連中。主に萃香が中心である。

 そして当然のように宴会だーっと言い出し、魔理沙や幽々子らが何故か持ってきていたらしい酒を取り出して騒ぎ出す。神奈子さんも酒を取り出し、慌て始めた東風谷を諏訪子が抑えつつ盃に入れた酒を呑ませる。咲夜さんはお嬢様たちに伝えてくると姿を消し、他の連中はそのままごく普通に騒ぎ出した。ちなみに暫くしてレミリアたちもやって来た。

 そんなこんなで結局はいつも通りの宴会が始まり、僕と霊夢とスキマは若干取り残されたような形だ。

 そんな騒ぎを見つめていると、ぺしっとスキマに扇子で叩かれる。スキマのほうを向けば、そこには柔和な笑みを浮かべるスキマの姿があった。

「似合わない笑みだな」

「……一度、本当に思い知らせてあげた方がいいのかしらね」

 いかん、口に出していたらしい。

 何かされるのかと恐々とするが、特に何もすることなくスキマは視線を目の前の連中に戻した。

「……神も鬼も妖も人も、誰もが同じように笑いあい、ついには人間の為に手を取り合う。まるで物語のようによく出来た現実ね。いえ、だからこその幻想ともいえる。それはまるで泡沫が弾けるまでの刹那の時間。けれど、夢よりも夢に似た、確かな現実。夢はいつか覚めるものだけれど、失いたくない夢もある。果たしてこの夢は、いったい何時に覚めてしまうのかしらね」

「……さあね。まあ、夢だろうと現実だろうと、私はどうでもいいわ。ただ、今まで通りに過ごすだけよ。これからは良也さんも一緒だけど」

 ね、と顔を向けられるが、それに僕はどう返せばいいんだろう。笑いかけられたわけでもなく、ただ同意を求めるだけのもの。僕はとりあえず、そうだな、とだけ返した。

 甘さもへったくれもない。けど、こういうのが僕らなんだろうとも思えるから不思議だった。

「そう。良也、あなたはどう思う?」

「え?」

 じっと僕を見据えるスキマを見つめ返す。

 そして何を言うべきかと考えるが、立派なことなんて何も思い付かない。仕方がないので、思ったことをそのまま言うことにする。

 下手に飾ったって、どうせ言うのは僕なのだ。……自分で言うのもなんだが、僕程度の小細工がここの連中に通じるわけがないのだった。

「……ま、難しいことはよくわからないけどさ。こういう幻想郷も悪くないなって思う。夢とか現実とかとは別にしてさ、こういう場所ってあってもいいなって。――こういうところで過ごして行けるなら、まあ……退屈はしなさそうかな」

「そう……」

 言って、スキマは笑った。

 どうやら、それなりに僕が言ったことはお気に召したようだ。思ったことをそのまま言っただけだから、僕にはどこがどう評価されたのかはわからないけど。

「あなたたち、似た者夫婦だわ」

 は?

 思わず問い返しそうになるが、既にスキマは隣におらず、見渡せば萃香の横で酒飲みに参加していた。

 いつの間にと思うも、あのスキマなら大抵のことは納得できてしまう。そういうものだと納得するしかないとも言い換えられる。

 ともかく、僕たちも輪の中に加わるとしよう。霊夢と連れだって酒の席に向かい、揃って腰をおろした。

「まあ……とりあえず、お母さんとの約束は守れそうだし、良かったかな」

「そうね。外の世界での案内はよろしくお願いするわ」

 霊夢と並んで座り、回ってきた盃に酒を注ぎ、注がれる。

 それをぐいっと飲み干すと、酒の熱も手伝ってか普段出来ないこともできてしまいそうな感覚になる。要するにテンションが上がった。

 ならば、普段は照れくさくて出来ないことをこの機会にやっておくべきだろう。

 僕は立ち上がると、大声で集まった皆に呼びかけた。全員がこっちを向いたのを見計らって、声を張る。

「ありがとう!!」

 返って来たのは、ノリのいい沢山の笑い声だった。















 さて、そんな大宴会の日から数日経った今日。

 予定が合う日――というか、霊夢は一日暇をしているようなものだから、要するに僕の家族の予定が空いている日――を打ち合わせ、霊夢が外の世界に行く日である。

 朝はそれはもう大変だった。なぜか輝夜が面白がって十二単を持ってきたり、どこにあったのか白無垢なんて着せようとしたり。

 さすがにそれは非常識すぎると抗議しつつ阻止しているうちに、もう行く時間となり、慌ただしく幻想郷から二人で出ていくことになった。もちろん、霊夢がいなくなることによって起こるかもしれない事態に対応してくれる皆には、深々と礼をしつつ。

 しかし、急いでいたせいで霊夢の格好がいつもの巫女服のままになってしまったことが悔やまれる。これ、下手したら僕は変態扱いされるんじゃないだろうか。ただでさえ、一度ロリコン疑惑を家族からかけられているというのに。

 そうこう考えているうちに、ついに家の前に着いてしまった。

 厳つい門にかけられた『土樹』と書かれた表札。まごう事なき、実家である。

「意外と大きな家の生まれだったのね、良也さん」

「いや、田舎だから土地が安いだけだぞ? 決して名家というわけではない」

 門を開け、広い庭を玄関に向かって歩きながら喋る。

 ふーんと言いつつ、霊夢は道場や芝生の庭を物珍しそうに見ていた。

「……よし、着いた」

 ついに玄関の前にまで辿り着く。僕は深呼吸して、気合を入れる。その横で霊夢はいつも通りの飄々とした雰囲気をまったく崩していない。

 ……あれ、なんで僕の方が緊張しているんだろう。理不尽な気持ちを抱きながらも、結局はこれが霊夢だしと納得。溜め息と共に呼び鈴を押した。

 ピンポーン。

 その音に、霊夢が少しだけ驚いた顔を見せる。

「良也さん、なに今の」

「呼び鈴。押すと音が鳴って来客を知らせるんだよ」

「へぇ。鈴には見えないわね」

 まあ、実際鈴じゃないし。

 と、玄関の扉の向こうからぱたぱたとこちらに近づいてくる音が聞こえてくる。そして、ちょうど扉の前で立ち止まると、鍵を開ける音がして、扉が開かれた。

 そこにいたのは、柔らかな笑みを浮かべたお母さんだった。お母さんはまず僕に目をやり、次いでその横の霊夢を見ると、ひときわ笑みを深くした。

「おかえりなさい、ようこそ土樹家へ」










 リビングに入り、僕と霊夢が並んで座る。テーブルを挟んで向かい側には、お父さんとお母さん。その後ろに玲於奈と、話を聞いて来た爺ちゃんがいる。

 妙に緊張気味な家族とは対照的に、霊夢は相変わらずいつもと変わりない。そんな姿に影響されてか、僕も緊張するのが馬鹿らしくなってきた。ごほん、と咳払いをして口を開く。

「えーっと、こちら僕の婚約者の博麗霊夢。博麗神社の巫女をやってる」

「博麗霊夢と申します。至らぬ点も多いと思いますが、良也さんと共に支え合って行きたいと思っております。どうか、よろしくお願いいたします」

 僕が紹介すると、霊夢は正座していた場所から一歩下がり、背筋を伸ばした態度でそう言った後に静かに腰を折った。

「こ、これはご丁寧にどうも。良也の父の裕也です。こちらは私の妻です。しかし、巫女さんとは……。それでその格好ですか」

「はい。少々仕事が立て込んでしまい、このような格好での訪問となってしまいました。誠に申し訳ありません」

「いえいえ、そんな。お気になさらず……」

 ……うん。

 いや、霊夢が意外としっかりした奴で、そつなく何でもやってみせるようなところがあるのも、知ってましたよ? けど、あえて言おう。

 こいつ誰だ。

 僕は一度も霊夢から敬語で話しかけられたことはないぞ。年上だというのに。

「あー……ちょっとすまん。お嬢さんは博麗というのかの?」

「はい。そうですが……」

 爺ちゃんが何やら思い出すような素振りをしながら、霊夢に話しかける。

 あ、そうか。爺ちゃんは幻想郷にいた頃もあるんだから、博麗の存在は当然知ってるんだ。いつかの正月にそんなこと言ってたっけ。

「ちょっと、良也さん。どういうことなの?」

「いや、実はうちの爺ちゃん、昔幻想郷に行ったことがあるんだよね」

「はぁ?」

 こそこそと話していると、唐突に爺ちゃんが手をポンと打った。

「おお、そうかそうか。ということは、お嬢さんは本当にあの博麗の……。いや、わしは若い頃に博麗の巫女にお世話になったことがあってな。なるほど、そういえば面影があるわい」

「はぁ」

 霊夢もそれにどう答えたものかと困った様子だ。

 その霊夢に、こっそりと耳打ちする。

「なんか幽香に殺されそうになったのを助けられたらしい」

「あら、そうなの」

「聞こえとるぞ良也!」

 爺ちゃん、過去の汚点をバラされたのか気に障ったのか、一喝。地獄耳すぎるだろ。

 しかし、今のお話は事情を何も知らないお父さんたちには疑問符しか浮かばない。お父さんは困惑した顔のまま、後ろの爺ちゃんに振り返った。

「お父さん、いったい何のことで?」

「ん、まあ……大したことではない。わしの修業時代の話じゃよ」

「ああ、なるほど」

 爺ちゃんの答えに納得した様子を見せるお父さん。

 いや、そこで納得してしまうのもおかしい気がする。どう考えても修行とかいう単語は現代で出てくるような単語じゃないぞ。殺されかけたと言っても、修行なら納得しちゃうのかよ。

「……それより、霊夢さん、でしたっけ?」

「ええ」

 そして、何やら刺々しい声で霊夢を呼ぶのは玲於奈である。なんだってそんなに好戦的なんだろう、この妹は。やっぱり空手とかをやってるからだろうか。

 じっと霊夢を睨むように見てから、玲於奈は口を開いた。

「……霊夢さんは、お兄ちゃんのどこが好きになったんですか? オタクだし、オタクですよ?」

 妹よ、今なんで二回言った。

 僕がオタクであることはそんなに強調してしまうほどに駄目なんでしょうか。いや、確かにゲーム始めると大学自主休講したりしたこともあったから、強くは否定できませんが。

 内心でセンチな心が傷ついている僕の横で、問われた霊夢は首をひねっている。そういえば、好きだとか愛してるなんて言ったことも言われたこともなかったな。僕もその脇でそんなことを思う。

 しばしそうしていた霊夢だが、ついには諦めたのか、僕の方を向いた。

「良也さんの好きなところねぇ……………………良也さんの隣にいると、凄く快適なところかしら」

 霊夢がそう言うと、玲於奈はそっか、と寂しげに呟いた。何か感じるものがあったのだろうか。

 そして、お父さんとお母さんは本当に嬉しそうに笑い、次々にお祝いの言葉を僕らにかけてくれる。

「おお! 良也、こんなことを言われるなんて幸せ者め!」

「よかったわ〜、良くんにこんなにいい人が出来て」

「あ、ありがとう……」

 でも、今のニュアンスって完全に僕の能力の一つでもある気温調節機能のことだよね?

 夏に涼しく冬に温かい。そりゃ快適だよね、僕の隣にいたら。

 霊夢がそういう類の言葉を言うようなキャラではないとわかってはいたが、少々物悲しくもある微妙な男心だった。

 しかし、霊夢の言葉はまだ終わっていなかったらしく。霊夢はさらに言葉を続けた。

「それに、最期まで一緒にいても違和感がない人っていったら、真っ先に良也さんが浮かびますから。だからですね、良也さんと結婚するのは」

「………………」

 ……今のは、完全に不意打ちだった。

 澄ました顔でそんなことを言うもんだから、僕としては照れくさくて仕方がない。まあ、かく言う僕も霊夢に対して抱いている思いは似たようなものだ。

 だからこそ、照れくさいのだけど。

 ふっと空気が一瞬緊張する。お父さんとお母さんが今まで見たことがないほどに真剣な表情をしているのを見てとり、思わず手が握りこぶしを作った。

「……霊夢さん、良也のことをよろしくお願いします」

「私からも。良くんのこと、見捨てないであげてくださいね」

 お父さんとお母さんが居住まいを正して頭を下げる。爺ちゃんも、そして玲於奈も、頭を下げてくれた。

 それが、僕たちの結婚を認めるというサインだったんだろう。僕は握られていた拳を緩めて、それにありがとうと言って頭を下げた。隣の霊夢もまた頭を下げてくれる。一つの言葉と共に。

「こちらこそ、よろしくお願いします」










 それからは和やかに会話を続けることが出来たと思う。両親とは笑いを交えながら話し、玲於奈とはまだ微妙に距離があったが、それでも話は成立しているようだ。流行関連の話になると、霊夢はいかにも困った様子で眉を寄せていたが。爺ちゃんとは、幻想郷の今について。爺ちゃんも、それなりに楽しそうだった。

 そして、茶を二度ほどお代わりした後。

 いつまでも霊夢がこちらにいるわけにもいかないということで、僕らはお暇することにした。

 お父さんとお母さん、玲於奈に爺ちゃん。家族総出でわざわざ門のところまで出てきて見送りをしてくれた時は、よっぽど霊夢も気に入られたんだなぁと奇妙な気分になったものだ。

 霊夢の立場上また会えるかは微妙なところだが、顔合わせだけでも出来たのは良かったと思う。笑顔でこちらに手を振っていた家族の姿を思い起こして、僕は心からそう思うのだった。

 ――さて、あとはスキマに指定された場所まで歩くだけだ。それで僕たちはスキマの手引きで幻想郷へと戻ることが出来る。僕がそのまま連れて行ってもいいのだが、実家からこっちの博麗神社までは遠い。そのことから、今回はスキマに頼ることになっている。

 横を歩く霊夢のことを気にしながら、薄暗くなってきた道の上を行く。これといって何かをするわけでもなく、まるで祭りの後のような心残りをどこかで感じながらの帰路だった。

「……なあ、霊夢」

 なんとなく沈黙に負けて、僕は霊夢の名前を呼ぶ。隣の霊夢が更に僕の傍に寄った。

「どうだった? うちの家族は」

 しかし特にこれといって言うことはなく、結局は当たり障りのない話題を振ることになった。言ってから気づいたが、実際に気になっていたことではあるから結果オーライだ。

 霊夢は背の違いからか、若干見上げるような形で僕に視線を向けた。

「そうね……優しそうなご両親だったわ。それと、妹さんもいい人みたい。お爺さんは、確かに少し他の人とは違っていたようにも感じたかしら」

 へぇ、さすがは一度は幻想郷に行ったという爺ちゃんだ。射命丸に師事したとも言ってたし、やっぱりこう何かが違うものなのかもしれない。

「うん、そっか。まあ、あんまり悪い印象じゃなくて何よりだ」

 ちょっとホッとした。いくら個人的にも一般的にもあの家族が少々常識外れだとしても、それでも僕の家族だ。婚約者に変な印象を持たれるのはやはり避けたい。

 その点、霊夢にはその心配は必要のないものだったらしい。細かいことは気にしない霊夢の性格ゆえか、それとも普段の日常が既に常識外れだからか。……どちらかというと、後者の比率の方が高そうだった。

「そういえば良也さん」

 僕が小さな不安を解消して人心地ついていると、今度は逆に霊夢から声をかけられた。

「ん、なに?」

「良也さんならあの妹さんの質問にはどう答えるの?」

 妹さんの質問……というと、玲於奈が言っていたあれか。僕に置き換えると、僕はいったい霊夢のどこを好きになったのか。という質問。

 けど、僕の答えはほとんど霊夢と同じようなものだ。言葉にするには、ちょっと難しい。感情よりも、どちらかといえば感覚の話に近いからだ。

 しかし、問われたからには答えないといけない。僕は少しだけ考えをまとめるように空を見上げた後、慎重に口を開いた。

「なんというか、僕も結局のところ最期まで一緒にいる相手って言われて考えると、霊夢が一番違和感がないんだよなぁ。そうあるのが凄く自然っていうか、一生を過ごすって言われた時、霊夢ならいいかってストンと胸に落ちる感じって言うのかね。……まあとにかく、そんな感じ。言葉にするのは難しいかな」

「そう」

 一つ頷いて、霊夢は再び視線を前に向けた。

 好きとか愛とか、僕にとって霊夢に対する気持ちっていうのはそういうことじゃないところにある。

 ただ、霊夢ならいいかって思えるから。それこそ曖昧極まりない話で、常識的に見ればおかしなことなのかもしれない。けど、僕はそれで霊夢を選んだし、きっと霊夢もそんな感覚なんじゃないかと思う。

 愛してるとか言って告白するのって想像したことはあるんだけど、いつも何となく齟齬があるって言うのか、似合わないと思うんだよね僕には。そんなカッコつけたって、所詮は僕なんだから。

 とどのつまり、僕にとって霊夢はそんな格好にこだわるようなことをしないでいい、ありのままでいられる相手というのが判りやすいかもしれない。

 そういえば、似た者夫婦って言われたな。

 スキマに言われた言葉が頭をよぎる。なるほど、こうして考えてみれば、僕と霊夢は似ているのかもしれない。それは根本がという話で、性格は全然違うだろうけど。

 だけどまあ、そういうのも悪くないのかもしれない。似た者同士、そのほうがやっぱり気を張らずに過ごして行けるだろう。

「なあ霊夢」

「なに、良也さん」

「スキマがさ、僕らのことを似た者夫婦って言ってただろ」

「ああ、言ってたわね。そういえば」

「なんか、そういうのもいいかもって思ってさ」

「まあ、確かに悪くないかもしれないわね」

 その物言いがなんとも霊夢らしい。飄々としていて、掴みどころがない。けど、それは自分がないということじゃなくて、自分というものが確固たるものとしてあるからこその自然体だ。

 自分はどうあるのが一番楽かということを知っていて、なおかつ自分の抱える責任も受け入れているからこその、自由さ。飄々とした態度は、その表れなのだ。

「じゃ、早く帰るか。あんまり時間かけすぎると悪いし」

「任せっきりっていうのもね。どっちにせよ、今夜は宴会なんでしょうけど」

 違いない。

 霊夢の言葉に同意を込めて笑いつつ、自然に霊夢の手を取り握る。そして心持ち早歩きで歩きだす。霊夢は何も言わず、僕の手を握り返してくる。特に照れるようなこともなく、そういうものだろうと言わんばかりに。

 そのあり方こそ、本当に僕達らしい。霊夢は霊夢でいつも通りだし、僕は僕でいつも通り。それで、まあ二人でいるのが何となくいいかな、って思える関係。

 それがいかにも僕達らしくて笑う。

 似た者夫婦と評したスキマの言葉は、やっぱり的を射た表現だったみたいだ。そんなことを思いながら、僕らは星の光が目立ち始めた薄闇の中を歩いていった。
















あとがき

やってしまいました。
良也のご両親に霊夢がご挨拶に来るお話です。
最初は本当にそれだけのつもりだったのですが、霊夢が幻想郷の外に出るのって大変じゃね? って意見が自分の中から出てきて、それを補完しているうちに結局は長くなっちゃいました。
けど、最終的になんとか纏まったかなと思います。

ちなみに作中にもあるように、この良也と霊夢は婚約しています。どういう流れでそうなったかは、ご想像にお任せします。
それでは、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。





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