人里へお菓子を売りに行った帰り。
日はもう暮れ始めているのにも関わらず、僕は妖怪の山のふもとの樹海に来ていた。
正確には“彼女のねぐら”にだが…

「来たよ。お雛さん」

いつものように“彼女”を呼ぶ。
すると、岩場の影からチラッと怪訝そうな顔が見えた。
その顔は、僕の姿を捉えるとホッと安堵したように綻んだ。

「いらっしゃい…良也」

お雛さんが、岩場の影から出てきてにこやかに迎えてくれる。
その顔を見て、僕も頬が緩む。

「お雛さん…会いたかった…」

「え………あ、うう…////」

え?まあ緩むだけじゃなくて抱き寄せてますけど?

「…り、良也ぁ…////」

この反応がかわいいんだって。
神様に『かわいい』とか言ったら失礼かもしれないけど…

「お雛さん…」

「………ん////」

僕の意図に気付くと、お雛さんは目を閉じてくれた。

「ん」

「…んっ///」

そして、触れるだけのキスをする。
…少しして離れ、見つめあう。

「…お雛さん、顔真っ赤」

「〜〜〜っ////
 し、仕方ないじゃない、いきなりなんだもの////」

「その割には満更でもなさそうだったけど?」

「っ////
 良也の意地悪っ////」

プイッとそっぽを向いてむくれるお雛さん。
ああ…お雛さんかわいいよお雛さん。

「まあそう怒らないでよ、お雛さん。
 今日はいいお酒持ってきたんだから」

そう言って、リュックから一升瓶を取り出す。
外の世界の名酒だ。
中々値が張るものだが、爺ちゃんがくれたのだ。

「もうっ…
 あら?それ珍しいお酒ね…」

「外の世界のお酒だよ。
 お雛さんと一緒に飲みたいと思って…」

「…ありがと、良也…
 じゃ、さっそく飲みましょう。
 今、杯を持ってくるわ」

お雛さんは、パタパタとねぐらの奥に入って行き、数分しない内に杯を二つ持って戻ってきた。
杯を受け取り、適度な高さの岩場に腰を下ろす。
同じように隣に座ったお雛さんの杯に、酒を注ぐ。

「お雛さん、飲ませて…」

「な、なに///
 今度は甘えにくるの?」

「もちろん、口移しで」

「…っ////
 …良也っ…あなたいつからそんな変態に…!」

ああ!お雛さんに引かれてしまった…
挽回。挽回。

「そんなに引かないでよ、お雛さん。
 じゃあ間接キスでもいいから」

「なお変態じゃないっ!!」

ああっ!挽回失敗。
 
「いいじゃーん、さっき直にキスしたんだし」

「う///
 それも…そうかもしれないわね…
 何か間接キスごときでうろたえてるのが、馬鹿らしくなりつつあるわ…」

よし!誘導(洗脳)成功!!

「じゃ、最初に飲んで」

僕に言われ、杯に口を付けるお雛さん。

「半分ぐらい飲んでいいから」

杯を傾け、口に流し込む。

「はい戻して」

「ぶ―――――――っ!!」

吹き出した。

「ああっ!もったいない!」

「…り、良也………
 あ…貴方は私が戻したやつを飲むつもりだったの!?」

「いや、ほんの冗談のつもりだったんだけど…」

流石に、そこまで変態ではない自負がある。

「もう!もう!もう!
 凄く美味しかったのに吹き出しちゃったじゃない!!」

「美味かったの?どれどれ…」

吹き出したお雛さんの唇に付いた水滴を舐めとる。

「う、あ/////」

「うん、確かに美味いね」

「…良也の馬鹿っ/////」

やっぱり、僕の彼女はかわいいや…

…こうして、いつものように飲み続け、僕たち二人の時間は過ぎていった…


あとがき
…なんだこれ。
自分のオチの下手くそさに呆れてきた。

今回のCPは、お雛さんが普通に接する事が出来る男が、良也だけだったという所から来ています。

さて、話は変わりますが、自分の甘々作品の共通テーマは、「ちょいエロ(主観)」です。
特にこだわりなんてものはありませんが、エロ過ぎては駄目。
自分的に、ちょいエロくらいが丁度良いんです。
なので私の甘々作品は必然的にちょいエロになります。ご了承下さい。
(それに従ってキャラ崩壊やご都合主義が発生してしまいますが…)

あと、甘々奇縁譚三次を書かせて頂くにあたってのモットーが「珍CP(主観)」です。
あまり、見たことのないCPを書いていくつもりですので、今後ともよろしくお願い致します。
(それに従って、無理な設定やご都合主義が…)

※一部岡崎が出てきましたが気にしないで下さい。

ネタが切れたぜ…
春厨(笑)は今日も頑張っています。



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