「良也、あなた咲夜と結婚しない?」

一番最初に沸いた感想は「珍しい…」だった。
この五百年の悠久を生きる誇り高いロリ吸血鬼が『しない?』などと訪ねてくる事が、だ。
普段なら『しなさい』とくる筈なのに。

「すまん、もう一度だけ、言ってくれ、ないか?」

「だから、咲夜と結婚しないかって…」

よし、今度はバッチリ聞いた。
『しないか?』、うん。疑問系だな。

「だが断る」

こんな裏が有りまくりそうな話に誰がひっかかるものか!

「…意外ね、良也なら咲夜も狙っていると思っていたのに」

「“も”って何だパチュリー。僕は健気に一人だけを想い続けるぞ」

(相手は居ないが…)

「その一人も居ないのに?」

「心を読むんじゃないっ!
 だいたい何で僕と咲夜さんが結婚するんだ!?
 何か裏が有るってのが見え見えなんだよ!」

「あら、察しが良いわね良也」

あっさり白状しやがったよこのロリっ娘。
…しかし、これで裏が無かったなら僕はどうしたのだろう…

(咲夜さんと…結婚か…)

僕だって男だ。咲夜さんみたいな美少女と結婚できるなんて、嬉しい事この上無い。
でも………そこには“愛”は無い。
咲夜さんも好きでもない男と結婚するのは嫌だろうし、僕も咲夜さんは好きだけどライクの方でラブじゃない。
結婚していない僕が言うのも何だけど、結婚というものは永遠の愛を誓う神聖な“儀式”なのだ。
愛し合ってもいない結婚は、これまでの結婚の文化に対する冒涜だとすら思っている。
だから僕は、もし誰かと結婚するならちゃんと愛し合って、過程を踏んで結婚したい。

「レミリア、言っておくけど…僕は“愛”の無い結婚など認めない。
 その“愛”は一方的では駄目だし、独りよがりでも駄目だ。
 似合わない事を言っていると思うけど心情でね。これだけは譲れない」

「………なら、貴方の想い次第ね」

「は?」

僕の想い次第?
よくわからないんだが…

「りょーやと咲夜の結婚は、みんな幸せになれるから進めてるのよー」

………みんな幸せ?

「まず私は良也の血が毎日飲める様になるわ。咲夜と結婚したら深みも増すから言うことないわね」

「おい」

レミリアの意見は予想通りの方向だ。

「私の場合は、良也が紅魔館に住む事になれば、更に濃密な修行が出来て助かるからよ。
 それに美鈴だって、貴方と組み手するのを楽しみにしているのよ」

まあパチュリーの言い分も予想していた通りだ。
となると、フランの言い分は…

「私はりょーやが居たらずっと遊んでもらえるからー」

だろうね。
…しかし、咲夜さんの幸せがわからない。
僕と結婚するという、一番の重荷を背負う筈の咲夜さんの幸せがない。
どういう事だろう?

「咲夜」

「はい、お嬢様」

レミリアが手を叩くと同時に咲夜さんがレミリアの背後に現れる。

「貴女の幸せ、良也に聞かせてあげなさい」

「…ッ!////」

あれ?咲夜さんの顔がみるみる赤くなって…?

「今、ですか?」

「そうよ、みんなの幸せはもう話したもの。
 後は貴女の幸せだけよ」

「…かしこまりました」

完全で瀟洒なメイドらしからぬ端切れの悪さだ。
そこまで言いたくないのだろうか…
レミリアはものっそいニヤニヤしてるし。

「?」

僕がいぶかしげな顔をしていると、不意に辺りが色を失った。

「っ!?」

「驚かないで下さい、私と貴方以外の時を止めただけです」

驚かない訳がない。
一瞬前までレミリアの後ろに居た筈の咲夜さんが、僕の目の前に居るのだ。
それも咲夜さんの豊満な胸が当たってしまうかしまわないかくらいの距離だ。
正直メチャクチャドキドキする。
しかし、そうまでして周りに聞かれたくない事だったのか。
うつむき気味の咲夜さんは、それでも“幸せ”を言えないでいた。

「…あの、咲夜さん。
 無理に言わなくても…」

「待って…下さい…言います…から////」

うつむいていてもわかるくらい真っ赤だ。
恥ずかしい事なのかもしれない。
辺りは灰色のままで、そして目の前の少女だけは真っ赤だった。

「ふう…」

やがて少し落ち着いた感じになってきた(それでもまだ顔は赤い)咲夜さんが、未だドキドキしている僕に爆弾を投下した。

「………わ、私は貴方が…土樹良也が好きだから…だから、結婚出来たら幸せなんですッ/////」

「〜〜〜ッ!?」

それは告白だった。
そりゃ渋りもするだろう。
主人や知人の前で、告白など、僕なら恥ずかしさで死ねるだろう(死ねないけども)。
 
(マ、マジですか…!?)

咲夜さんは手で顔を隠してうつむいていた。耳まで真っ赤だ。
きっと全力で告白の言葉を紡いだのだろう。
でも…

(僕を好きになってくれたのが、こんな美少女だったのは嬉しい誤算だけど…)

…だけど“愛”だけは譲れないんだ!
悪いけど結婚はまだ出来ない。恋人から始めるのならまだしも、過程のない結婚は嫌なんだ。

「ん…貴方は…私の事…お、お嫌いですか?/////」

「…っ!そんなことない!!/////」

告白の返事を待ちきれず、痺れを切らした咲夜さんの台詞に、僕は咄嗟に答えていた。
人間の心情なんていい加減なもんだな、と我知らずに思っていた。

「ッ!!うれしいっ/////」

「うおっ!///」

咲夜さんが僕の胸に飛び込んできた。
距離があまり離れてなかったから衝撃は小さいが、僕はドキドキしっぱなしだ。
ただ、僕の胸板にすりよってくる咲夜さんはとても新鮮で…

「良也さん…私と結婚してください…」

「…僕で良ければ、喜んで」

………とても可愛いかった。


あとがき
結局良也はキングクリムゾン使って心情を蹴散らしましたとさ。

咲夜さん×良也の甘々が書きたかったんだ。
咲夜さんキャラ崩壊しているけど、まあ咲夜さん普通じゃ甘々にならないからってことで便利なご都合主義。
反省はするが、後悔はしていない。

SS書くの初めてで、しかも携帯(笑)なので、色々と分かりにくい部分があるかもしれませんが、これから練習して行きますので、アドバイス等よろしくお願いします。


おまけ:咲夜さんの寝室にて

「…良也さん、おはようございます///」

「お、おはよう咲夜さん、昨日はとってもムンっ!?///」

咲夜さんに、人差し指と中指で口を塞がれた。

「もうっ!恥ずかしいから言わないで下さい!!///」

唇に指を当てられながら話す。

「…ごめん…でも…とっても可愛いかったよ////」

「もうっ!良也さんたらっ////」

「ねぇ、一言うれしいと言っておくれよ///」

すると、咲夜さんは僕の唇に当てていた指を自身の口元へと移動し…

ペロリと

上目遣いで此方を見ながら舐めて見せた…

「これが答えです///」

…完全で瀟洒な従者は今日も健在だった。



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