「お茶をどうぞ」

「どうも」

「マスターもお茶を」 

「ああ」


 どうも。良也です。
 今。 僕の目の前には…… 金髪幼女がいます。









 なぜこんな状況になっているのか。
 ことの起こりは先週。爺ちゃんからの依頼で、知人の孫娘の呪いを解いたことに端とはっしている。
 
 この科学が進歩した世の中で魔法という不思議パワーを扱う人間のたまり場、魔帆良学園。
 爺ちゃんの知り合いでもあるその学園長から、三日前連絡があった。
 なんでも、僕に会いたいといっている人物がいるらしい。

 めんどくさいとは思ったが、爺ちゃんの知り合いの頼みだし、コネを作っていたほうが何かといいと判断し会うことに決めた。

 が 

 早くも後悔してます。













 魔帆良学園駅。
 
 再びやって来た僕を迎えにきたのは、この前学園長室にいた耳飾が特徴的なメイドさんだった。
 
 
「おまちしておりました。私はマスターの従者をしております、絡繰 茶々丸ともうします」

「はいっ…て、マスター?」

 もしかしなくてもあの金髪幼女か?

「土樹様も以前お会いしております」

「えっと、学園長室にいた金髪の女の子ですか?」

「そのとおりでございます」

 そういえばあの時もこの子は、彼女をマスターと言っていた気がする。

「では。ご案内いたしますので、付いてきてください」

 そういって歩いていくメイドさんの後ろをテクテクとついていく僕。


 
「そういえば、絡繰さん」
 
「ハイ。何でしょうか?」

「えっと、なんで僕が呼ばれたのか知ってますか?」

「いえ、特に聞き及んではいませんが。以前お会いしたときマスターが土樹様のことを気にしておりました。」


 気にしてる。 まさか、一目惚れか!!

「いえ、それはないかと」


「心を読まないでくれ」

 まあ。わかってたよ、さすがに

 でもそうするといったい何のようだろうか?


「本人に聞けばいいか」

「ハイ」

























「こちらになります」

「おぉ!」

 到着した場所は、一軒のログハウス。なんかいい感じがするところだな。  

「マスターは中でお待ちです、お入りください」

「じゃ、おじゃまします」



 中に入って最初に目に付いたのが、ところせましと置いてある人形だった。
 概観はいい感じだったが、中はかなりファンシーだな。 

 アリスの家みたい。


「やっときたか」


 その声にきずき目を向ければ、あの時学園長室にいた少女がソファーに座っている。
 着ているゴスロリ系の服装がかなりにやっているせいか、一瞬人形に見えてしまった。 
 
 やばい、惚けている場合じゃない。

「あー。はじめまして? 土樹良也です」

「確かに、名乗りあうのは初めてだな。ヱヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ」


「え、えヴぁんじぇりん?」

「…なんだ?」

 いかん、鈴仙の名前を聞いたときみたいになってしまう。


「…なんでもないです」


「…まあいい、まずは座れ」

 そういって彼女は、対面にあるソファーへとうながす。

 座ってからすぐに、トレイにティーセットを乗せた絡繰さんがやってくる。



「土樹様。緑茶と紅茶、どちらになさいますか。」

「緑茶で」

「私もだ」

「かしこまりました」







 
「さて、本題に入るか」

 お茶を飲んだところでヱヴァンジェリンが話を切り出してくる。

「単刀直入に聞く。お前、私の呪いが解けるか」

 ほんといきなりだなこの幼女。

「のろい?」

「そうだ。私には非常に厄介な呪いが掛けられている。そのせいで力の大部分を封じられ、魔帆良から出ることすらできん」



「なんでまた?」

 疑問を口にするが
 
「おまえには関係ない。」

 ばっさり切られました。


「私が聞きたいのは、解けるか解けないかだ」


 う〜ん。そんなこといわれても。

「あー。やってみないとわからない」

「なら、今すぐやれ」

 睨みながら言ってくる幼女



「……はい」


 いそいそとソファーから立ち上がり、ヱヴァンジェリンへと近づいていく
 これは、あれだ。呪われた彼女を救いたい善意であって、決してこの幼女こぇ〜とか思ったわけではない。


 断じて。 




 自分の能力範囲にヱヴァンジェリンを入れ、改めて見てみるとと確かに何かが彼女にまとわりついている。
 あの時はすれ違っただけだったからきずかなかったなぁ。



「…やはりか」

「どうした?」

「なんでもない、さっさと始めろ」

 
 ?なんだろ

 
 まあいいか。懐からスペルカードを取り出し構える。



「じゃあ。遮符『一重結界』」 


 僕の領域内に結界が張られれた直後!

「が!!」


 信じられないくらいの重さが体全体にかかってくる。


 なんだこりゃ!! きつい、きつすぎるぞこれ、一体どんだけの力を使って掛けられてるんだよ!!


 ギチギチ! 呪いの重さで結界が悲鳴を上げる。


 ぐぐぐぐ!!


「こなくそぉぉぉぉ!!」



 パキン


「あっ!」


 結界が限界を向かえて。


 結果


















「…だめでした。」

 さっきよりはだいぶ薄くはなったが。力が強すぎて、僕には完全解除は無理だ。

 今は元の呪いの半分よりチョイ上って感じの状態で安定してるが、弾かれた呪力が僕の領域の外を渦巻いている。
 彼女がここから出たらまた同じ状態に戻ってしまうな。
 



「ふん。別にいい、あまり期待はしていなかったからな」

 魔力も霊力もすっからかんになるまでがんばったのに、ひどいセリフだよこの幼女は。

「それに、知りたいことは確認できた」

「へ?」

 どゆこと?


「!!」


 突然彼女の体から、信じられないくらいの魔力が放出される。

 この感じどこかで、そんなことを思いながら魔力の放流に耐え切れずに僕は吹きばされる。


 ピタ


 僕が弾き飛ばされた直後、その放流が止まる。

「つぅ〜。いってぇ〜」


 壁に打ち付けた背中をさすりながら、よろよろと立ち上がると。



「ふふふ、ふふふふ、フハハハハハハ!!」


 幼女が高笑いを浮かべている。
 なにこれ、ちょうこわい。















「ふふふ。さて…… お前、なにをした?」


 しばらく笑い続けたヱヴァンジェリンが表情を切り替えて聞いてくる。


「…なにって?」

「とぼけるな。貴様が近づいてきたとたんに私にかかっている能力の封印が解けた。
 そして、貴様が離れた直後もとの状態に戻った。」


「いや。それは呪いが薄らいだからだろ」

 呪われたせいで、封印されているんだろ?


「違う。私が言っているのは、呪いを解く前、貴様が近づいてきた時だ。」

 
 え〜と、近づいた時って


「もしかして、僕の能力に引っかかったのかな?」

「能力?、魔法ではなくか」

「あ〜。僕個人の固有能力です」


  自分の能力についてしばし説明中………



「なるほど。自分だけの世界を作るね…、茶々丸」

 ふいに茶々丸さんが僕を見てくる。

「土樹様の体から感知できるのは、一般的な魔力と気力以外ありません」

「ふむ。茶々丸でも見えんか」

 その報告を聞きうなずくヱヴァンジェリン

「まあいい。能力についてはあとで調べるとして、重要なのはこいつがいれば私の枷が一つ外れるということだ…」

 なんかぶつくさ言っている、なんだろこのいやな予感。

 ……よし。帰ろう、ちょー帰ろう。



「さようなら!!」

 良也は逃げ出した!

「まて」

 しかし回りこまれた。


 どうやったのか目の前には、茶々丸さんが佇んでいる。

「貴様、良也だったな。お前、今なにをしている」

「なにって?」

「学生かそれとも就職しているのか」

「今年で大学卒業するかな」

「資格か何かは持っているか」

「一応…、教員免許を取得してるけど…」

「へぇ」

 すげぇー、いやな感じのへぇだな、おい

「な、なんですか?」


「就職先は決まっているか」

「それは、まだけど…」

「ふふふふ。そうか、まだかぁ」

「えっと、なにか」

「気にするな、ふふふふふ」

 その笑い方、こぇ〜よ

「良也、今日は泊まっていけ。私のディナーに招待してやる」

「いえ。遠慮しま」

 ギロリ

「謹んでお受けいたします」

 だめだ逆らえない。



「さて。満月でもないのに力を消費したからな、まずは魔力の補充か、茶々丸」

「ハイ」

 ガシ

 一瞬で拘束される僕。

 あれぇ〜この感じめちゃくちゃデジャブを感じるぞ。

 ニヤニアと笑みを浮かべながら近づいてくるヱヴァンジェリン、よぉ〜く見れば口元から除く2本のキバ
 そして何よりさっきから感じていた、この見知った雰囲気は、まさか。

「…えっと、もしかしなくても吸血鬼?」

「もしかしなくてもその通りだ」


 やっぱり〜

 
「安心しろ。死ぬまでは吸わんし、貴様を眷属にする気もない」




 そんなこといわれても

「安心できるか〜!!」









 これが僕の、外の世界に生きる吸血鬼とのファーストコンタクト。

  


 











 そして後日、再び学園長から電話があり
 
『君、来年からうちに来てね』

 僕の就職先が決まりました。










あとがき

 良也の能力とエヴァの呪いについての自分なりの解釈
 
 登校地獄については、エヴァ本人に掛けられているので良也の力では完全に解くことはできません、全力を出しても半分程度まで
 緩めるくらいが限界だと思います。

 しかし、エヴァの能力を封じている結界は、学園結界と併用して外側から押さえこめるものなので、良也の自分の世界を作る能力
 に引っかかり弾くことができると解釈しました。
 
 これはエヴァが魔帆良でも別荘内でなら力を出せるのと同じ理屈です。






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