一体何がいけなかったのか。今更そんなことを言っても何もならないことはわかっているけど、それでも僕は言わずにはいられなかった。 人里で子供達にお菓子を売るのが長引いたのがいけなかったのか。 それとも、その後宴会に誘われるがまま参加してしまったことだろうか。あるいは、そこでしこたま呑んで前後不覚になるまで酔っ払ってしまったことか。 酔っ払った頭で、そういえば霊夢と良夢が家で待ってることを思い出して、慌てて飛びだしたのもいけなかったかもしれない。 やばい、このままじゃ霊夢に夢想封印されると恐慌状態に陥り、まともに制御もできない空間転移――良夢が生まれたときにしか成功していないスキルを発揮しようとしたのは、致命的だっただろう。 そして、そのことを知っていながら、まあ失敗しても魔界に飛んで神綺さん辺りに何とかしてもらえるだろうと妙に楽観的に構えていたのは、我ながら学習能力がないと思う。 ともかく、僕はやってしまった。愛(恐)妻家故の過ちだという誤魔化しは・・・効かないだろうなぁ。 空間歪曲の延長である能力を行使し、世界がグニャリと歪み色が混ざり、やがて正常に戻ったときに現れた風景。 それは僕のよく知る博麗神社の縁側――ではなく、右も左も分からぬ森の中だった。 「・・・やっちまった。」 それを確認した直後、僕の口から反射的に呟きが漏れて、顔から血の気が引いていった。酔いも一瞬にして醒める。 何処だここは。全く見覚えが無いぞ。魔法の森にしては毒々しくないし、竹林では明らかにないし。下手したら幻想郷ですらない。 おまけに、既に夜の帳が降りている時刻だったのに、天頂には太陽がさんさんと輝いている。幻想郷でないどころか、どう考えても日本ですらない。 「ブラジルかな。でも、その割にはあんまり暑くないし、Amazon!!って感じがしないよな・・・。」 安直かもしれないが、僕の中でのブラジルのイメージは蒸し暑くて熱帯雨林が茂ってるって感じだ。実際には行ったことないんだから、しょうがないじゃないか。 ともかく、ここが何処かわからないんじゃ、自分ちに戻りようがない。もう一度空間転移を使ったとしても、正確な場所がわからなければさらに迷うだけだ。 おまけにあれはめちゃくちゃ霊力を食う。二回連続とかは無理だ。どの道しばらくは跳躍できない。 「歩いて情報を得るしかない、か。とほほ、早く帰ろうとしただけなのに・・・。」 どうあがいても、もう霊夢の折檻は避けられない。その事実に僕は肩を落とした。 まあ、不幸中の幸いというか何というか。霊夢は実は僕がいなくても家事とか全然平気だし、良夢も9歳とは思えないぐらいしっかりした娘だ。僕がいないことによる悪影響は小さいというのが助かる。 ・・・そのことを寂しく思わないわけでもないけど。今は助かってるんだから、いいったらいいんだい。 などと年甲斐もないことを考えながら、何やってんだろう僕と自己嫌悪に陥り、ため息を一つついてから森の中を歩き始めたのだった。 最終的には何とかなるだろうと、幻想郷特有の楽観視をしながら。 このとき僕――土樹良也は、可能性として考えてもいなかった。 僕の空間跳躍が、次元の壁を越えて魔界に行くことがあるということを知っていながら、その『可能性』に気付かなかったのだった。 「・・・ん?」 帰ったら夢想封印だろうか、それで済めばいいが夢想天生だったらどうしよう、とか考えてもしょうがないけどやっぱり考えずにはいられないことを考えていると、不意に音が聞こえた。 遠く、だけど感じからして大きな音だ。何ていうか、獣の吼えるような声? けど、こんな大きな吼え声を出す動物なんているだろうか。狼とも違う感じだし。狼と比べると、もっと低い、どっちかというと地面を伝わる振動に近い音だ。 ってことは、工事でもしてるんだろうか。工事の音ってのは結構な騒音だから、可能性はある。 とすると、そっちに人がいるかもしれないってことだ。・・・英語で大丈夫かな。まあ、英語は世界の共通語だし、少しぐらいは通じるはずだ。 伊達に高校で英語の教師をしているわけではない。日常会話は勿論、ちょっとぐらいならビジネス英会話も可能だ。・・・ビジネスの方は、教師生活で学んだわけじゃないんだけどね。 ていうか高宮さん、いい加減諦めてくれたっていいだろうに。僕に妻子がいることは何度も話してるのに、どうして栞ちゃんとくっつけたがるんだ。 確かに彼女ももういい歳だ。そろそろ身を固めなきゃ世間体的にまずいってのはよくわかるけど、何で妻も娘もいる僕なのか。今の僕には理解できない。 愚痴っても仕方が無いことだけど、愚痴らずにもいられないよ、全く。 ともかくそんなわけで、僕はコミュニケーションに関してはあまり心配していない。今の僕なら、いきなり一人でアメリカに放り捨てられても生きていく自信はあるぞ。いや、死なないんだけどね、僕。 特段の不安もなく、むしろやっと人に会えるという安心感で、僕は自然と足が速くなった。 音がだんだんと大きくなる。こっちであっている、間違いない。音が少しずつ移動しているような気がするが、僕は気のせいだと断じて、そのことは気にせず走った。 鬱蒼と茂る草木を掻き分けながら進み、不意に視界が開けた。どうやら広場に出てきたようだ。つまり、森はここで終わりと言うことだ。 僕はそこにいるであろう人に声をかけるため口を開き。 そこで停止した。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は? やっとの思いで口から漏れたのは、全く意味の無い音だった。それが僕の心情をよく表しているだろう。 結論から言おう。人はいた。しかし、僕の予想していたのとは違い、彼らは剣や杖と言ったRPGのような武器を手にし、身に纏っているのはこれまたRPGのような鎧だった。 そして音を出していたのは彼らではなく、彼らが対峙している相手。 何と言ったらいいか。上手く『ソレ』を形容する表現を、言語中枢が紡いでくれない。 ――そうだ、あれはこう言えばいい。『ドラゴン』と。 ・・・・・・・・・・・・って。 「何じゃそりゃあ!!?」 いきなり過ぎる目の前の非常識に、僕は思わず声を張り上げて何かに突っ込みを入れた。 いや、入れてしまった。 そんな状況下で声を張り上げたら、否が応にも気付かれる。彼らにも、見るからに危険な『大トカゲ』にも。 「!? そこの人、逃げて!!」 僕に気付き、彼らの中の一人の青年が叫んだ。・・・あれ、日本語? そう、今彼が発した言葉は、紛れも無い日本語。けれど彼も、彼の仲間と思われる人達も、日本人の風貌とは違って見える。 ・・・いや、確かに知り合いの中には明らかに日本人じゃない顔と名前をしておきながら、日本の文化しか知らないような奴とかはいるけどさ。そう考えたら珍しい話じゃないんだけど。 さて、悠長に色々考えているけど、実はそんな余裕があるわけなかった。 彼が『逃げろ』と言った通り、すぐに逃げておくべきだった。 ソレから見れば突然現れ、いきなり大声を出した僕は、格好の的だったのだろう。 「ゴガァッ!!」 「うわわ!?」 彼らと対峙していたファンタジー丸出しの猛獣が、僕に襲い掛かってきたのだ。 とてつもない迫力だ。これが夢や酔った幻覚ではないことをよく示している。 ビビった僕は、そのおかげで最適な防御行動を取ることができた。 「土符『シールドモノリス』こっちくんな!!」 余計な一言を交えながら、スペルカードを地面に叩きつけて発動。土がせりあがって僕を守る盾となる。 直後、岩壁の向こうから衝突音が響いてきた。どうやら大トカゲがモノリスに激突してくれたらしい。 突破されるんじゃないか、と少々不安だったけど、何とかなったみたいだ。魔法を覚えて早二十年、だいぶ上達したもんだな。師匠に言ったら鼻で笑われそうだけど。 ともかく、時間は稼げた。この隙にこの場から離れよう。 ドラゴンっぽい何かと戦ってた(のかはわからないけど)人達がちょっと心配だけど、多分、恐らく、きっと、そこはかとなく大丈夫だろう。 つーか、僕が残ったところで何が出来るかって話で。うん、この判断は実に正しい。 そんなわけで、僕は全力で滑空してその場を離れた。 追ってくる気配は・・・ない。それを確認して、やっと僕は安堵のため息をつくことができた。 ――そうすると再び浮上してくる疑問。彼らがしゃべっていた言語が日本語であることは、不思議なことなのかどうなのか。 いや、そもそもの話をすればあのドラゴン?だって不思議なことのはずだ。幻想郷でだって、あんなの見たことがない。 RPGみたいな格好をして、日本人でないはずなのに、当たり前のように日本語をしゃべる人達。そして幻想ですらないファンタジーのドラゴン。 考えてみると、まるで若い頃に好んで読んでいた(今も読んでるけど、それについては触れないでほしい)ライトノベルのような印象を受け―― 「わぷっ。」 考え事をしていたら、何かにぶつかってしまった。けど、当たった壁は弾力を持っていたおかげで痛くはなかった。 いけないいけない、飛行中に深く考え込むと危険だ。とりあえず、追っては来ていないみたいだし、そろそろ地面を歩こう。 そう、さっきの出来事は、まるで幻想郷の中の出来事のようだ。けれどここが幻想郷であるはずはない。こんな場所は見たことがないし、幻想郷は夜だったはずだ。 ここが幻想郷内の僕の知らない場所だとか、実は気がついたら一日経っていたとかでない限り、その仮説に間違いはない。そして、両方とも僕には自信がある。 じゃあさっきのアレは何だったのか。あんなものが外の世界にいるだろうか?少なくとも、40年ぐらい生きてきて幻想郷外でそんな話を聞いたことは一度もない。 ただ漫然と生きてきただけなら、「ない」と断言は出来ないだろうけど、曲がりなりにも少しは『裏社会』ってやつにも触れながら生きてきたんだ。 もしあんなのが存在しているなら、間違いなく僕の耳には入っているはずだ。ということは、ここは外の世界でもありえない。 じゃあ、一体・・・―― そこまで考えて、また僕は硬直する羽目になった。上の方から「グルルルル・・・」とかいう不穏なこと極まりない獣の喉鳴らしが聞こえたからだ。 ああ、見るのやだなぁと思いながら、恐る恐る視線を上げる。 「あ、・・・あはははは。こ、こんにちは・・・。」 案の定というか、僕の当たってほしくない予想はものの見事に的中した。普段は全然当たってくれないくせに、こういうときだけ本当によく当たる。 僕を見下ろす二つの巨大な影。もう見るからに「恐竜ッ!!」って感じの奴が一匹と、さっきのとは違うタイプのファンタジー竜が一匹。 明らかに餓えた目つきで、獰猛に僕をにらみつけていた。さっき触れたのは、実は恐竜の体だったようだ。もっと周りに注意しろよ、僕。 まあ、とりあえず、あれだ。 ・・・せーのっ。 「ぎゃああああああああああああああああ!!!!!!!」 『グルアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!』 盛大に悲鳴を上げて回れ右をする。その後を天地を揺るがすという形容がぴったりな咆哮を上げて、二匹の巨大爬虫類がズシンズシン追ってきた。 ってこれ、マジ怖っ!?死なないけど、死なないってわかってるけど怖いよこれは!! 『抗ってやる!!』なんて中二病満載な台詞を吐ける度胸もない僕が、立ち向かうなんていう選択肢を選べるわけもなく、出来る限りの速度で空中を疾走した。 で、元来た道を戻れば当然元の場所に戻るわけで。 「あ、さっきの人・・・って何でドラゴン連れてんの!!?」 さっき僕に逃げろと言った彼が、僕の後ろに引っ付いた大トカゲ×2を見て目を剥き出した。むしろ僕が聞きたい。 そして、こいつらはやはりドラゴンであっているようだ。驚くべきことだった。 が、んなことに構っている余裕なんぞあるわけもなし。状況不利と見て撤退を始めた彼ら――7人組の男女に合流して、全力滑空だ。 「な、な、何とか、ならない!!?」 「何とかって言われても、ドラゴン3体まとめて相手なんて、無理でしょ!!」 「むしろあんたが何とかしなさいよ!詠唱なしであんな強烈な精霊魔法使えるんだから!」 青年に負ぶわれた少女が僕に向かって無茶を吼える。あれはスペルカードに予め込めた魔法を使っているからできるのであって、そうポンポン出来ることでは――って、精霊魔法? 「うわ!?火噴いてきた!!」 「当たり前でしょ、火属性のドラゴンなんだから!!」 後ろから迫った猛火で、僕の思考は中断させられる。くそ、何とかあいつらを撒けないとどうしようもない・・・!! 「うわっち!?このトカゲ野郎!上等だ、相手になってやらぁ!!」 「バカ、自殺行為だぞ!とにかく今は逃げるんだ!!」 炎にあぶられて短気を起こした、先ほどから僕と会話している彼と同じぐらいの歳の青年。しかしあそこに突っ込んでいくのは勇気ではなく蛮勇だ。先導している、彼らよりはもう少し歳を経ていそうな女性にたしなめられた。 年上の言葉には逆らえないか、彼はチッと舌打ちをして逃走に戻った。 「けど、このまま逃げ続けても連中と僕らじゃ体力に差がありすぎる。いずれ捕まりますよ。」 中性的な顔立ちの少年が、場に見合わぬほど冷静に分析する。確かに、ああいう大型獣類は人間とは比較にもならない体力を持っている。 「あの巨体、狭いところに入れば逃げおおせるだろうが・・・そんな都合のいい場所があるわけないしなぁ。」 「だからほら、ベルさんが生贄になって私達を助けてくれればいいじゃないですか!!古来からああいうのは生贄で鎮めるって相場が決まってるし!!」 年長組(この一団はどうやら年齢層が二つに分かれているようだ)の一人――RPGの魔法使い的な格好をした男性がやたら楽観的に言い、もう一人のさっきドラゴンに向かって行こうとした青年に背負われている僧侶的な女性が物騒なことを言った。 だがベルさんと呼ばれた男性はカラカラと笑って「ああいう低脳なドラゴンは腹が減ったら全部食うだけだから意味ないぞ」と呑気に説明した。・・・何処にそんな余裕があるんだ。 しかし、巨体か。僕の中で一つの閃きが生まれた。逃げることに関してだけは、頭の回転が速くなるんだよな、僕。 「なら、これでどうだ!!」 速度は緩めず、僕はポケットからもう一枚スペルカードを取り出し、地面に叩きつけた。さっきの土符『シールドモノリス』と同じく僕のとっておき!! 「土水符『マッドプール』!!」 属性を融合させた術は、発動すると僕らの後方――ちょうどドラゴンがズシンズシン走っている足元をぬかるみに変えた。 扱い易い水の力を加えた符は、かなり深くまでをぬかるみに変える。ズボ!!と凄い音を立てて、ドラゴンは首まで泥沼に浸かった。 「うわ、すご!?」 「ははははは、嫌なことから逃げることに関しては一流の僕をなめるなよ!!」 「あんまり威張れることじゃないわね。」 僕の発言に、青年に負ぶわれている少女が突っ込みを入れてきた。いやまあ、僕もそう思うし、実際あんまり逃げ切れてないという現実はあるわけだけど。気にしたら負けってことで。 「とにかく、今のうちに逃げよう!そう長くはもたないよ!!」 「そ、そうだな!奴らが入って来れないような場所を探そう!」 年長の女性が纏めてくれる。僕らは脱兎のごとく、怒りの咆哮を上げるドラゴン達から逃げ出したのだった。 それから程なくして、岩山を発見した。入り口は狭く、奴らが入ってこれそうにはなかった。 しかし、こんな岩山で大丈夫か?と思ったんだが、年少組のリーダー格の青年が言うにはここは『特別』なので大丈夫なんだとか。 そういうわけで、僕らはそこに落ち着き休息を取ることにした。 「とりあえず、これでしばらくは大丈夫だな・・・。ったく、帰ったらぜってー追加料金徴収しちゃる。」 年長の女性の言。どうやら彼らは、仕事でここに来ているらしい。 「にしても、あんたも運がないな。何の用で来たのかは知らんけど、今はここの瘴気に当てられてドラゴンが来てるみたいなんだよ。」 「は、はぁ・・・。」 彼女の言葉に、僕は曖昧に返事を返した。瘴気とかドラゴンとか、本格的にRPGやラノベみたいだ。外の世界で大真面目に言ったら、まず間違いなく一笑に付されるだろう。 けれど彼女は実際大真面目に言っている。ならここは外の世界ではないはずだ。そうでなければ、僕の知らない間に外が人外魔境と化していたということになる。 「助かりました。あなたの魔法がなかったら、逃げ切る前に力尽きてましたよ。」 「何言ってんのよ。そもそも逃げなきゃいけない状況を作ったのはコイツでしょ。」 「けど、もう二匹いたってことは、いずれはぶつかっていたってことだよ。そう考えたらやっぱり助けられたってことになるんじゃない?」 「何でもいい。腹減った!!」 緊張感が切れたのか、年少組が次々にしゃべり始める。・・・あー、いい加減この表現も疲れてきたな。 「とりあえず、自己紹介しとこうか。僕は土樹良也。善良な英語教師件お菓子売りだ。」 騒然とし始めた場に、名前を告げる。後半部分の説明に?を浮かべていたけど、まあしょうがない。普通は教師とお菓子売りを兼任したりはしないからね。 「ツチキリョウヤ・・・名前の響きからして、ヒノモトの人ですか?」 「ヒノモ・・・?いや、普通に日本人。そういう君らこそ、日本人じゃないのにやたら日本語上手いけ、ど・・・。」 そこに至って、僕はようやくある『可能性』に気がついた。いや、ひょっとしたら初めから頭にはあったけど、あまりにも突飛過ぎて無意識に候補から外していただけなのかもしれない。 考えてみれば、その『可能性』を示唆する出来事は多々あったはずだ。 空間転移の失敗。夜から昼に変わったこと。彼らの格好。ドラゴンという僕の知る限りファンタジーの存在。日本人離れした容貌で普通に日本語をしゃべっている事実。『精霊魔法』という単語。 「つかぬ事を聞くけど、ここ、何処?」 「え?セントルイス近くの森の中ですけど・・・知らないでここに来てたんですか?」 聞いたことのない地名。そして決定的なのが。 「あ、僕はライル=フェザード。ヴァルハラ学園の3年生です。」 彼の、僕の中の世界観というものを無視した名前と肩書きだった。 思わず、僕は天を――洞窟の岩壁しか見えなかったけど――仰いで一言つぶやいた。 「異世界ェ・・・。」 その言葉に、彼らはクエスチョンマークを浮かべたのだった。 僕自身、こんなことが起こり得るなんてことは知らなかったので、あまりにも予想外だった。理解してなお信じられなかった。 それでも何とか、言葉を選びながらだったけど、彼らに僕の素性について説明した。 説明し終わってから「ひょっとしたら黙ってた方がよかったのかも」とか思ったけど、僕に人を騙しとおすだけの演技力があるわけもない。どの道説明は必要だっただろう。 「異世界から来た、ねぇ・・・。本当なのか?」 年長組のリーダー、カイナという名の女性が訝しげに僕を見てくる。その反応は実に妥当だ。きっと僕でもそうする。 「多分だけどね。いや、ほぼ確定かな。」 「どっちなのよ。」 信じられはしてないけど、僕の中では確証が得られてると言っていい。ほぼ確実ではあるんだけど、多分という表現になってしまう。 「とは言われても、何か証拠を見せてもらえないと信じられませんね。」 中性的な少年――クリス=アルヴィニアの言う通りだ。だが、証拠と言われても・・・。 「あ、そだ。」 ふと思い出し、ポケットの中に手を突っ込む。そもそも僕が何のために人里に行ってたかという話だ。 取り出したのは、僕の世界のお菓子。幻想郷ではなく外で作られたもので、凝ったプリントの包装がされた飴玉だ。 「皆の格好からの推察になるけど、こっちにはこんなお菓子ってないんじゃない?」 「飴玉、ですか?いえ、飴ぐらい普通にありますけど・・・。」 「いや、メリッサ。よく見ろ。彼が言ってるのは包み紙の方だろう。こんな素材、俺は見たことないぞ。」 僧侶姿のメリッサさんの言葉に対し、魔法使い姿のベルナルドさんが訂正をする。賢い人は話が早くて助かるね。 「んで確認なんだけど、この世界って多分普通に魔法が普及してるんでしょ?僕の世界はそうじゃないんだ。」 ごくごく普通に出てきた『精霊魔法』という単語。そしてドラゴンという常軌を逸した魔物の存在。その事実から、魔法の普及という事柄は簡単に類推できる。 言ってしまえば、ある意味「幻想郷的」というか。あの非常識が常識になってる世界に慣れ親しんだ僕には、抵抗なく考えることができた。 そして僕の問いに対し、返ってきた答えは肯定。 「・・・じゃあ、本当に異世界の人なんですね、ツチキさん。」 「良也でいいよ、ライル。こっちが名前だから。」 「気がついたらこっちに来てたって言ってた割には随分と落ち着いてるじゃない。」 僕が冷静でいるのの何が不満なのか、さっきから突っ込みを入れてくる少女・ルナ=エルファランが、再度突っ込みを入れてきた。って言われてもなぁ。 「理不尽に巻き込まれることは結構あるからね。いい加減慣れた。」 「ああ、要するに俺らと同じってことか。」 筋骨隆々な青年(これで18歳とか僕が泣ける)アレン=クロウシードの言葉は、何故か年少組の男性陣に不思議なシンパシーを感じさせた。 「・・・そうか、君らもなのか。」 「・・・リョウヤさんも、さぞかし苦労してるんですね。」 ガシっと、僕とライルは互いの手を掴んだ。ああ、彼とはいい友人になれそうだ。 なお、ライル、ルナ、アレン、クリスの四人は『ヴァルハラ学園』というところの生徒で、授業課題である『ミッション』でここまで来たそうだ。 カイナ、ベルナルドさん、メリッサさんは現職の『冒険者』(うちで言うとこの異変解決屋だな)で、この森で発生していた異常について調査をするために来ており、同時に学生組の引率もしているんだそうな。 「で、まあそれはそれとして。」 あっさり切り替える僕に、ライルはガクっと崩れた。ふっ、この程度に動揺しているようじゃ、幻想郷ではやってけないぜ。 僕はライルのちょっと斜め上にいる、ずっと彼に付き従っている小さな人型を指して言った。 「その妖精は、ライルが使役してるのかい?」 すると、ライルが目をむき出してギョッとした表情になった。いや、ライルだけじゃない。当の妖精、それからルナとクリスもだ。 な、何だ何だ?僕何か変なこと言ったか?? 「なあ、リョウヤ。頭大丈夫か?あたしらには、何も見えないんだが・・・。」 カイナが言う。失礼な、健康面に関してだけは、誰にも負けないんだぞ。不死だから。 「そ、そうですよリョウヤさん!きっと、疲れて幻覚が見えてるんですよ!!」 慌てて何かを誤魔化そうとするようにライルが言った。ついでにバチコーンバチコーンとウインクをしてくる。「話を合わせてくれ」ってこと? 理由はわからないけど、どうやらそういうことみたいだ。幻想郷で磨いた地雷感知能力(役に立ったことは一度もないけど)で、それを察する。 「あ・・・ああ。どうやらそうみたいだね。あれ、おかしーなー・・・?」 ごしごしと目をこする。・・・いや、実際僕には超見えてるんだけどね。つーかすっげー睨まれてる。 多分、何がしかの能力を使って姿を隠しているんだろう。そのためにカイナ達には見えていないんだけど、僕にはその手の能力が効かないためバッチリ見えてしまったというわけか。 カイナが物凄く不審なものを見る目で僕を見ていたが、次の瞬間には元の引き締まった表情に戻っていた。プロフェッショナルだな。 「お互いの紹介はこのぐらいにしとこう。今大事なのは、ここからどうやって逃げ出すかってことだ。」 そう。状況は何も変わっていない。この洞窟の外には、今もドラゴンが闊歩している。ズンズンという地響きがそれを伝えてくる。 幸いここは発見されていないようで、破壊しにくる気配はない。けど、それもいつまでもつかって話だ。 けど、逃げようと思ったら外に出なきゃいけないわけで。出たら出たで、連中に見つからないように動かなきゃいけない。 この大人数で、それが可能だろうか?・・・多分無理だろうなー。 となると、方法は。 「まあ、妥当なとこ囮作戦だわな。」 そうなるよなぁ。けど、囮って言ったって誰を囮にする気だ?まさか仲間を見捨てるわけにもいかないだろうし。 「あたしらがドラゴンどもを引きつけてる間に、学生組とリョウヤでセントルイスまでかっ飛ばす。んで、騎士団とギルドに救助要請を出して、数で連中を追っ払う。こんなとこだろ。」 「え、けどそれじゃあカイナ達が逃げられないんじゃ・・・。」 「だぁからお前らが救助呼ぶんだろ。救助が来るまではあたしらだけで頑張るんだから、なるたけ急げよ。」 決定事項であるかのように言うカイナ。それにまず反論を上げたのはルナだった。 「ちょっと、ふざけないでよ!それは何、あたしらが足手まといだっての!?」 負けん気の強そうな子だ。相方のライルは大変だな。 ルナの文句に、しかしカイナは首を横に振る。 「お前らの戦い見て足手まといとか言うのは、戦ったことのない自信家ぐらいのもんだろ。そうじゃないさ。」 カイナの言葉から察するに、ライル達四人は余程獅子奮迅の勢いで戦っていたのだろう。恐ろしい話だ。 「お前ら学生と違って、あたしらは仕事。ちゃんと金をもらってここに来てるんだよ。だから、もらった報酬分はきっちり働く義務があるのさ。」 うわぁ、超正論だ。社会人やって20年にもなる僕にはその理屈が痛いほどによくわかった。 報酬っていうのは、労働の対価であると同時、雇用主が雇用者を縛る鎖でもある。「残業代出してんだから、その分は残って働け」ってことだ。 程度の違いこそあれ、これはその延長。労働で来ている彼らは、ある意味自分の意志で『死地』に出向いたんだ。そうである以上、命を張るのは覚悟はある。 それに対し、あくまで学校の課題で来たライル達にはそんな必要はない。同じく、巻き込まれた僕も。 カイナが言っているのは、つまりそういうことなんだろう。 けれど、その理屈はライルには理解できないらしい。そりゃそうだろう、いくらカイナが認めてるとは言え、彼は学生の身分。世の中の酸い甘いは知らないはずだ。 「んな顔すんなよ。別にあたしらは死ぬ気はねーんだから。」 「お前達が行って帰ってくるまでの間ぐらい、抑えてやるさ。なぁに、この程度今までにも何度かあった。」 「まだライル君とアレン君の血の滴る姿を見てないしねぇ。戻ってきてからちゃんとシましょう?」 最後のメリッサさんのアブナイ発言は置いといて、生き残る算段はあるらしい。 ライルは何か言いたそうな顔をしていたが、彼らの正論には何も言い返せなかった。 「じゃ、ちょっくら行ってくるわ。」 そして、引き止めることも出来ないまま、彼らは洞窟の外へと躍り出て行ったのだった。 年長組がいなくなったことで、妖精から僕に視線が突き刺さる。原因は、さっきのアレだな。 「・・・とりあえず、説明してもらいましょうか。何で私の姿が見えたの?」 ライルの横から前に進み出て、妖精がそう尋ねてくる。多分、消していた姿も現しているんだろう。その表情には、警戒の色が現れていた。 「別にそこまで気にすることじゃないでしょ。精霊との相性がいいと普通に見えるんでしょ?さっき無詠唱で派手な精霊魔法使ってたぐらいなんだから。」 「ちょっと驚いたけど」とルナが口を挟む。それに対し、妖精――精霊らしいな――は首を横に振った。 「違うわよ。こいつ、精霊との相性ってもんがないのよ。さっきのも多分だけど、純粋に魔力で地面に干渉したんだと思う。違う?」 「いや、その通りだけど。普通そういうもんじゃない?」 僕の知る限り、魔法っていうのは基本的にそういうものだ。確かに精霊とかに呼びかけて力を得るって方法はあるけど、相当高度な技術だったはず。 けど、どうやらこっちではそうじゃないらしい。アレンと妖精を除く全員が、驚いた表情を見せた。 「精霊との相性がない以上、姿を消した私が見えるわけがないのよ。臭いや音を見ることはできないでしょ?」 そりゃ、臭いは嗅ぐものだし、音は聞くものだ。感覚器官そのものが違う。例えを変えるなら、「霊視力のない人間に幽霊は見えない」ってことか。 適当に答えるのも気が引けるし、正直に話しておくか。 「僕の能力でね。そういう特殊効果を無効化できるんだ。カイナ達には見られてないっぽかったから、安心してよ。」 自分自身、何処まで無効化できるのかよく分かってないんだよね。彼女はカイナ達に存在を知られるのが嫌だったようだし、ちょっと悪いことをしちゃったかもしれない。 「ごめんね。」 「別にいいわよ。結果的にはバレずに済んだみたいだし。あ、私はシルフィリア=ライトウィンド。シルフィって呼んで。」 精霊――シルフィが自己紹介する。僕は頷いて答えた。 「能力って言ったけど、どんな能力なのよ。姿を隠した精霊を強制的に見えるようにするなんて、聞いたことないわよ。・・・まあ、あなたは異世界の人らしいけど。」 まあね。うーん、何て説明したらいいものやら。 「僕も把握しきれてないんだけどね。取りとめもなく色んなことが出来る能力なんだ。たとえば・・・。」 言葉を区切って、少しずつ周囲の気温を上げる。彼らの顔に反応が現れたのを見て、今度は温度を下げる。ちょっと肌寒くなったところで、元の気温に戻した。 「こんなこととか、壁を作ったり、空間を曲げたり、時間を加減速できたりする。まあ、ある程度までだけどね。」 「・・・何よ、その無節操な能力。あなたは世界そのものを操れるってわけ?」 「僕のパーソナルスペースならね。それに、さっきも言ったけどある程度だ。」 あんまり過大評価されても困る。面倒ごとに巻き込まれたくはないからね。 ・・・既に巻き込まれているっていうのは、言わない方向で。 「異世界の人間ってのは、皆そんなことができるの?」 「そういうわけじゃないけど、固有の能力を持ってる人は何人も知ってる。その人達は僕なんかよりよっぽど強力な能力を持ってるよ。」 ありとあらゆるものを破壊してみせたり、永遠と須臾を操ってみたり、奇跡を起こしてみたり。僕の能力なんて屁みたいに見えてくる。 「とにかく、リョウヤはある程度戦えるってことでいいのね。今大事なのはそれだけだから。」 なおも何か情報を引き出そうとしてきたシルフィを遮り、ルナがそう聞いてきた。・・・うーん、戦えるのかなぁ。 「言っとくけど、僕攻撃は苦手だから。逃げることしか出来ないよ。」 「あんたの身の安全を気にしないでいいなら、それで十分よ。よし、こっちはオッケーと。」 いや、ちょっとは気にしてほしいんですけど。そう言ったけどガン無視された。・・・非常に嫌な予感がする。 「で、ライル。カイナさん達はああ言ってたけど、結局あたしらはどうするの?」 ルナはライルに、詰問と言っていい調子で尋ねた。暗に『助太刀に行くぞ』と言ってるようなもんだ。 ルナの勢いに、ライルは大いにうろたえた。四人のリーダーらしいけど、それでいいのか。僕も人のことは言えないが。 「え、えっと、こういう難しいことはクリスが・・・。」 「僕は参謀。決断に対して最善の作戦を練るのが仕事だ。決めるのはリーダーの仕事なんじゃないの、ライル?」 クリスに助け舟を求めたが、返ってきたのはそっけない答え。言ってることは至極もっともだけど、本音は多分「厄介はごめん」なんだろうな。 「ア、アレン・・・。」 「おう、俺はもういつでも行けるぞ。さっさと行こうぜ、早くしないと追いつくのが大変になる。」 よっ、と屈伸をしているアレン。考えた発言とは思えない。筋肉バカなんだな。僕の周りにはいないタイプだ。 僕としては、巻き込まれたくはないんだけど。三対二か。こりゃ諦めた方がいいな。 「リョウヤさんも、何か・・・。」 「そりゃ僕も嫌だけどね。どう考えても止められないでしょ、コレ。」 最後の望みを絶たれ、ライルは肩を落とした。人生ってそういうもんだよ。 「妙に達観してるわね。マスターと同じヘタレ臭がするのに。」 「誰がヘタレだよ!!」 シルフィの言にライルが反論を上げる。が、皆うんうん頷いており、味方は誰一人いなかった。またしても崩れるライル。 「そら、娘ももうすぐ10歳だからね。そろそろ親としての貫禄が出てこないとまずいし。」 「えっ?何、あんた子供いんの??」 ルナが心底驚いていた。・・・ああ、そうか。不老不死なせいで、20代にしか見えないもんなぁ。今は永琳さん特性の例の薬も使ってないし。 「可愛い娘が一人と、おっかない上さんがいるよ。こう見えて、君らの倍以上は生きてるのさ。」 「異世界の人間ってのは、老化遅いのかしら。」 笑って誤魔化す。不老不死だなんて言ったら、どんな無茶を要求されるかわかったもんじゃないからね。 「まあ、ともかくどうするかってことだよね。結論は?」 話を再びライルの決断に戻す。彼は一度「うっ」と呻いてから、諦めたような深いため息をついた。 「・・・わかったよ、助けに行こう。」 けれど言ったその言葉は、実に凛としたものだった。・・・羨ましいな、チクショウ。 そしてクリスが簡単にではあるけど作戦を立て、僕らもまた岩山から外へと出た。 カイナ達がいる方はすぐにわかった。そちらの方から咆哮やら地響きやらが聞こえてきたからだ。 距離はそこまで遠くはないが、近くというわけでもない。僕らが逃げられるようある程度距離を置いてくれたんだろう。 彼らの気遣いを無にしてしまうのはちょっと気が引けるけど、まあしょうがないよね。僕は決定に従っただけだ。 「じゃあ、リョウヤさん。先行任せました。」 「了解。あー気が重い。」 クリスの指示に余計な一言を混ぜながら返し、空に浮かんだ。 作戦というのはこうだ。まず、空を飛べる僕が先行し(この中で他に空を飛べるのは、風の精霊であるシルフィの加護を受けているライルだけなんだそうだ)、カイナ達をドラゴン連中から引き離す。 三人を安全なところまで連れて行ったら、そこでライルが大規模殲滅魔法を撃つ。上手くやればこの一発で決着がつくかもしれないそうだ。 ダメでも、一体は確実にしとめることができる。二体でもきついとは思うけど、そこからは小細工なしのガチ勝負でどうにかしようということだ。 大丈夫なんだろうかとちょっぴし不安になるが、最悪僕の禁止スペルでどうにかすることも考えれば何とかなるでしょ。非常に気は進まないけど。 「じゃ、先行くよ!!」 ともかく、僕は前に向けて飛翔した。ライルとシルフィの詠唱が聞こえ始めたけど、あっという間に離れたためすぐに聞こえなくなった。 木々を縫いながら飛び、すぐに彼らの姿を発見した。 カイナがわき腹を押さえている。どうやら手痛い一撃を喰らったようだ。 メリッサさんが側により治療をし、ベルナルドさんが牽制の魔法を放っているが、ドラゴンは一向に意に介さない。 「笑い」という、獲物をしとめるために猛獣の凶暴性を体現した表情を見せながら、ドラゴンはその豪腕を振り上げた。 「ちょーっと待ったぁ!!」 そこに、僕が割り込んだ。 「な!? リョウヤ、お前セントルイスに行けって言っただろ!!」 「文句は後でライル達に言ってくれ!とにかく、こいつらから離れるよ!!」 僕という闖入者によって、ドラゴンは一瞬動きを止めた。が、それは本当に一瞬ですぐに動きを再開する。 その一瞬が、僕達を助ける!! 「土符『シールドモノリス』!!」 二枚目のモノリスを地面に叩きつけ、発動する。この手の防御用スペルは重宝するから、何枚も持っているんだ。 頑強な岩の壁は、ドラゴンの一撃を止める。さすがに威力を全部受けきることはできず腕が貫通してこちら側に抜けてきた。しかしそこで止まった。 それだけあれば十分。僕はカイナを担ぎ、ベルナルドさんとメリッサさんに声をかけて撤退させた。 ドラゴン達との間は100mぐらいは空いただろうか。どうやら、ライルが魔法を撃つまでには間に合ったみたいだ。 けど、『大規模殲滅』って言葉が気になるんだよな。この程度の距離で大丈夫なんだろうか。 ちょっと怖かったので、念には念を。 「遮符『二乗結界』!!」 前方に、一枚の結界がダブって出現する。物理結界と論理結界の複合結界だ。 こいつは出力を二乗させてくれるから、上手く運用すれば消費霊力以上の効果を発揮してくれる。反面、減衰速度も二乗されるので、使いどころが難しいのが難点だ。 今はとにかく自分達の身を守るために出力全開。ライルの放つ一撃を耐え切ればいい。 さあ、いつでもいいぞ!僕は心の中で彼に呼びかけた。 それに応じたわけではないだろうが、空に異変が生じる。 今は晴天。太陽の輝きを遮るものは何もない。 その空に、パリパリと嫌な音が響き始める。パリパリは次第にバリバリという激しい音に変わり、見た目にわかるほど激しい火花を散らす。 その圧に気圧されるほどの魔力。それが頂点に達したとき、空から膨大な雷がドラゴンどもに向けて降り注いだ!! 『ギオオオオオオオオオオオオオ!!?』 それが奴らの悲鳴なのか、それとも強烈な電撃のために腹筋と声帯が反応した結果なのかはわからないが、確実に効果はあった。 その余波はここにまで届いた。先ほどから『二乗結界』にスパークが衝突し、恐ろしい勢いで出力を減じさせてきている。 結界が限界に達し、パリンとあっけなく割れる頃には、スパークは収まっていた。何とか凌ぎきったみたいだ。 見れば、奴らのうちの一体は完全に炭化し、確認した直後灰になって崩れ落ちた。・・・こえええ。 残った二体――翼の生えた(とは言っても片方が千切れているが)奴と、恐竜っぽい奴は、直撃は免れたらしい。それでも今のショックで動きが停止しているが。 「おお、とりあえず一体ね。」 「つ、疲れた・・・。」 追いついてきたライル達。ライルは今の魔法を放った直後に全力疾走してきたんだろう。今にも倒れんばかりの疲労感だった。 「さあ、続いて突撃よ!」 だというのに、ルナはそんなライルをさらに馬車馬のごとく働かせようとした。当然ライルは猛抗議する。 「いいよ、休んどけ。こっからは俺の出番だ!!」 彼らの口論を尻目に、アレンが特攻を仕掛ける。って、剣であいつらの相手する気か!?無茶だ!! 危ない、と僕が叫ぶよりも速く、恐竜はアレンに向けて爪を振り下ろしていた。 そしてそれはアレンの体を無残に引き裂く――ことはなく、アレンはそれを剣で完璧に受け止めていた。ビクともしない。 「んなアホな!?」 思わず叫んだ。けれど、アホな光景はまだまだ続く。 「トカゲが、調子、乗ってんじゃ、ねえええええええええ!!!!」 何とアレンは力押しで恐竜をひっくり返してしまった。ぶっちゃけ人間技じゃない。 ・・・なるほど。これがカイナが認めた彼らの強さなのか。確かにこれは、プロからしても強いと言わざるを得ないんじゃないかな。 「っしゃあアレン!下がんなさい!!」 お次はルナ。彼女は肉弾戦は得意そうではない。ということは、きっと魔法使いタイプなんだろう。 それを示すがごとく、彼女の手の中には既に『マスタースパーク』とも比べものにならないぐらいの魔力が圧縮されていた。 あれをぶっ放す気か!?アレン逃げて!超逃げてー!! 僕が心の中で叫ぶよりも速く、アレンはそれを見た瞬間にけつまくって全力逃走していた。・・・きっと、いつもルナの魔法に巻き込まれてるんだろうな。何とはなし、そう直感した。 そして、ルナの魔法が発動する。 「『クリムゾン・・・フレア』ーーーーーーー!!!!」 真紅の太陽。そう表現するのが妥当だった。ルナが呪文を完成させると、その魔力は莫大な炎に転化された。 何度か『地獄の人工太陽』に焼き殺されている僕が、その記憶をフラッシュバックさせるような光景だった。 恐竜の下に顕現された『魔法の人工太陽』は、一瞬にしてその全てを飲み尽した。ジュッ、という嫌な音一つを残して、奴は地上から完全に消滅した。 ・・・うわぁ。 「あれ?倒せた。」 そして最も「うわぁ」だったのは、今の魔法を撃った張本人のルナが放った言葉だった。どうやらそこまでの威力が出るとは思っていなかったらしい。 アレンが逃げ遅れたら、確実に死んでたな・・・。 「ルナ、自分の魔力量ぐらい把握しておこうよ・・・。」 恐らくは僕と同じ感想を持ったのだろう、ライルがルナに力なく突っ込みを入れる。ルナは乾いた笑いを上げるのみだった。 「なんつうか・・・わかっちゃいたけど、こいつら本当に学生か?」 カイナが脱力しきって彼らに胡乱な瞳を向けていた。僕からすれば、本当に人間かと言いたくなるけどね。 「皆、まだ気を抜かないで!!」 クリスからの叱責が飛ぶ。何事かと見ると、片翼のドラゴンが怒り狂った咆哮を上げながら、ルナに向かって飛び掛っていた。 しまった、もう一体いたんだった。一連の流れが強烈過ぎて完璧に忘れていた。 慌てて近くにいたライルが剣を構え、ドラゴンの爪を受ける。が。 「足元が!?」 ぬかるみに足を取られ、転倒してしまう。――ここは、さっきの『マッドプール』か!! 僕の放ったスペルが仇になった。転倒したライルは、完全に無防備になってしまった。 好機と見たか、ドラゴンが雄たけびを上げ、ライルに向かって爪を振り下ろそうとする。ルナの魔法も、アレンの剣も間に合わない。クリスは戦えるかもわからない。 このままではライルはあの爪に引き裂かれてしまうだろう。・・・僕のせいで。 それが嫌で、僕は時間加速を発動させた。僕に出来る最大速度、3倍だ。 途端に世界が重くなる。それだけ時間を濃密にしてるってことだ。 そして、それとともに僕に出来る最大速度での飛翔。それでもギリギリだった。 僕はぬかるみからライルを引き出し、突き飛ばした。 ドラゴンの爪は、僕の左腕を肩口から斬り飛ばした。そのダメージが元で、時間加速が解ける。 ドサリと、斬られた腕が地面に落ちた。 「リョウヤさん!!?」 僕の傷を見て、ライルが悲痛な叫びをあげる。おかげで「いってえええええ!!」と叫ぶタイミングを逃してしまった。 まあ、実際はここまでなると痛みもクソもないんだけどね。痺れしかない。 「あー、ライル怪我はない?ないみたいだね、よかったよかった。」 「何でそんなに軽いんですか!?」 明らかな致命傷を負ったというのに軽い調子の僕に、ライルが突っ込みを入れてくる。まあ、確実に一回は死ぬだろうけど、その程度だ。 それに、これでちょっとは僕も活躍できるしね。 「おかげでこいつを倒す準備が整ったからだよ。僕、攻撃は苦手だけど、自分の体を贄にした魔法は割と得意分野なんだ。」 簡単に攻撃力を上げる方法といえば、リスクを背負うことだ。自分の体の一部、あるいは全部を代償として、強大な破壊を生み出すってのは、ポピュラーの黒魔術だ。 僕の場合全身を代償にするととんでもないことになるらしいから禁止されてるんだけど、腕の一本ぐらいなら問題ない。 ちなみに、普段この手の魔法を使うことはない。何故なら、痛くて怖いから。 「腕一本使うことは初めてだけどね。まあ、実験させてよ。」 軽口を放ち、右手でスペルカードを取り出す。某漫画のパクり、もといインスパイヤを受けた僕の必殺技!! 「火葬『バーニングクリメイション』!!」 発動と同時、地面に落ちた左腕がひとりでに宙に浮き、直後燃え盛り始める。見た目の派手さは、さっきのルナの魔法の方が上かな? 「バカ!こいつは火属性なのよ、効くわけないじゃない!!」 ルナが叱責を飛ばしてくる。あー、そういえばそうだったっけ? まあ、関係ないよ。某漫画では『相手を燃やし尽くすまで決して尽きることの無い地獄の炎』って称されてたんだから。 訳のわからない自信とともに、僕は炎の塊をドラゴンに向けて投げつけた。当然、ドラゴンは回避行動を取った。 だけどこれは、僕の腕一本分の『呪』が詰められている。避けたところで、呪は何処までも追っていく。 炎は軌道を直角に曲げ、あっさりとドラゴンに着弾した。そして、それは着火しないはずのドラゴンの鱗を燃え盛らせる。 ドラゴンはあっという間に火達磨になった。 「グギャアアアアアアアアアア!!!?」 苦悶の悲鳴を上げるドラゴン。ライルやルナの魔法みたいに一瞬でとどめをさせない分、性質が悪いかもしれない。 ドラゴンはバタバタと暴れた。火を消そうとしてだろう。だけど呪の炎はそんなことで消えることはない。 やがてドラゴンは力尽き、パタリと動かなくなった。それでも炎は、ただ燃え続けた。 「・・・えっぐ。」 ルナが青い顔をして、そう呟いた。まあそうかもね。 「けど、こいつは僕を一回殺すんだから、このぐらい当然か、な・・・?」 言葉の途中でクラリと来た。傷口からは現在進行形で血液が噴出している。もうすぐ致死量だ。 足に力が入らなくなり、僕はドサリと倒れた。寒さでガクガクと体が震える。 ああ、死ぬ感覚はいつまで経っても慣れるもんじゃないな・・・。 「ちょっと死ぬけど、少ししたら生き返るから、ご心配なく〜・・・。」 「って、どういう意味よ!?おい、死ぬな!!」 「やめなよルナ!とにかく止血を――」 ルナがガクガクと僕の体を揺さぶり、ライルとクリスが出血をどうにかしようと応急処置を始め。 そこで僕の意識がプツンと途絶えた。・・・異世界に来てまで死ぬとか、何だかなぁ。 「・・・ム。」 目が覚めた。どうやら生き返ったみたいだな。ガバリと体を起こす。 ・・・何処だここ?起きたそこは、僕が死んだ森の中ではなく、何処かの建物の中だった。僕はベッドに寝かされていたようだ。ついでに、肩から包帯が巻かれている。 「あ、リョウヤさん。」 声に振り返ると、そこには先ほど知り合った地味めな青年――ライルがいた。その隣には彼に従う精霊のシルフィ。 彼らはものすごく微妙なものを見る目をしていた。まあ、死んだと思った人間が生き返りゃ、そうもなるな。 「手当てしてくれたみたいだね、ありがとう。」 「あ、いえ。僕達が何もしなくても、勝手に治ってましたから・・・。」 「そうよ!そこんとこどうなってんのよ!!」 シルフィが声を荒げる。それで、何だ何だと彼の仲間――ルナとアレンとクリスもこちらへやってくる。いたのか。 計10の視線が僕に向けられる。・・・居心地悪いな。 「あー、まあ、所謂一つの体質だ。気にしないでいただきたい。」 「死んで生き返るってどういう体質よ!バカにしてんの!?」 誤魔化しきれなかった。まあ、誤魔化せるとも思ってなかったけどさ。さて、どう説明したもんか。 僕がそう考えあぐねていると。 「・・・不老不死、ですか?」 一人考え込んでいたクリスが、解を見つけてくれた。他の皆は「何言ってんだコイツ?」みたいな顔で見てるけど。 「まあ、その通りなんだよね。」 『・・・ハァ!?』 息ピッタリだな。さすがチーム。 「不老不死、って、あんたなめてんの!?全世界の魔法使いなめてんの!!?」 ルナが食って掛かってくる。いや、そんなこと言われましても・・・。 「僕自身なりたくてなったわけじゃないし。まあ、助かってはいるけど。」 「あー、確かにルナの魔法に巻き込まれたときとか、不老不死だと便利そうだな。」 何かずれた、それでいて僕が非常に納得できる感想を述べるアレン。 「不老不死かぁ。不老不死・・・ふふ、この苦しみを永遠に受け続けるぐらいなら、不老不死なんて・・・。」 僕の苦しみの一端を理解したライルに、同情を禁じえなかった。あの歳でどういう経験をしたら、あんな表情が出来るようになるんだ。 「詳しく聞くのはやめておきますよ、聞かれたくないことでしょうし。」 唯一クリスだけが、僕と対話していた。聞かれたくないっていうよりは、聞かれても答えられない、が正解だけど。 「・・・何ていうか、わかってたけど、あんた無茶苦茶変。」 「ひどいな、こんな善良な一般市民を捕まえて。」 シルフィへの反論に放った僕の一言に、皆がそろって首を横に振った。・・・何でさ。 まあ、何やかやあったけど、この四人とは打ち解けられた。物怖じしないいい子達だ。 なお、カイナ達現職冒険者組は、僕のことが気にはなるけど『今回の分を請求する!!』と何処かへ行ってしまったそうだ。逞しいな。 「で、あんたこれからどうすんの?異世界から来たって行ってたけど、帰れるの?」 ライルの作ったミートソースパスタを頬張りながら、ルナが僕に尋ねてくる。 ・・・確かに、そのことを全く考えていなかった。 「うーん、どうなんだろ。こっち来たときと同じようにすれば帰れるかもしれないけど、事故だったしなぁ。」 「ちなみに、何をしようとしてこっちに飛ばされたんですか?」 クリスが好奇心を持って聞いてきた。 「空間転移。まあ、今まで成功したことは一度しかなかったんだけどね。」 「魔法実験の失敗ってことですか?」 「いや、飲み会で帰りが遅くなって、上さんに怒られそうだったから急いで帰ろうとしたら、ね。」 僕の言葉に、皆がおいおいと突っ込みを入れてきた。むぅ、霊夢のことを知ったらそんなこと言ってられないぞ。 「そういや、リョーヤは子供もいるんだっけ?ぶっちゃけあんたいくつなんだよ。」 「えーっと、43ぐらいだったかな?このぐらいの歳になると、自分の歳がいくつだったかも曖昧になっちゃってね。」 「全ッ然そうは見えないな。」 まあ、不老不死だしねぇ。 ていうかそんなことよりも、僕としてはアレンの食事の量が信じがたいんだけど。既に10人前は平らげてると思うけど、何処にそんな入ってる。 「それは学園七不思議の一つとしておいて、何か僕達に出来ることありますか?結果的には助けられちゃったし、何か恩返しがしたいなぁ、なんて。」 先ほどから食事と給仕を交互に繰り返しているライルが、そんなありがたいことを言ってくれる。いい子だなー、ほんと。 「んじゃあ、うちの娘が大きくなったらライルが娶るかい?」 「え゛!?いや、そういうんじゃなくて・・・。」 流石に冗談だ。ライルなら問題ないと思うけど、ライルにはルナがいるわけだし。それに世界の壁もある。 「んー。まあ、特に何もしなくてもいいと思うよ。」 「そ、そうなんですか?でも、それじゃあリョウヤさん帰れないんじゃ・・・。」 「大丈夫だって。多分、そろそろ『見つかる』頃だと思うから。」 僕の一言に、全員が全員頭にクエスチョンマークを浮かべる。ちなみにこんな『噂』をしたのはわざとだ。 だって、昔から言うだろ? 「あなたに行動を先読みされてるってのは、些か不愉快ね。」 『噂をしたら影』って。 突然室内に響いた声に、知らぬ全員――シルフィまでもが驚く。そして僕の背後に、何かが生まれる気配。 「お前ならきっとそうするだろうって思ってたのさ。まあ、一種の信頼だと受け取ってくれよ。」 「私は別に放置しても構わなかったのよ?けど、良夢が泣くからこうして来てあげたの。感謝してほしいわね。」 ああ、してるしてる。 「それにしても、あなたも厄介なことをしてくれたわね。こんな何処とも知れない世界に転移するなんて、探すのに骨が折れたわ。」 「あー、そりゃすまなかったな。けどほら、事故だし。」 「あなたの自業自得でしょうに。貸し一じゃすまないわよ。」 うわぁ、厄介な奴にでっかい借りが出来ちゃったなぁ・・・。 「リ、リョウヤさん・・・。その方は・・・?」 突然現れたこいつのために、すっかり面食らって一言も発せなかったライルが、意を決して尋ねてきた。 んー、何て言ったらいいかね。 「スキマと書いて、天敵かな。」 「本人を前によくもまあ堂々と言えるわね。貸し三にしておくわ。」 ごめんなさい。 とにもかくにも。 「皆さん、初めまして。私は彼の住む幻想郷という場所の管理人、名を八雲紫と申しますわ。あなた方風に言うと、ユカリ=ヤクモかしら。」 僕は、何とか帰ることができるようだ。 僕が色々と説明しておいたおかげで、以降の話はあっさりとついた。 話の間中終始シルフィがスキマを睨んでいたが、それもしょうがない。こいつは油断のならない大妖怪なのだから。 あっという間に、僕の帰還の時がやってきた。 「この中に飛び込めば、幻想郷に帰れるわよ。」 スキマが開いた隙間。いつもはおどろおどろしく見えるそれが、今は妙に安堵を誘う。 「じゃあね、皆。割と楽しかったよ。」 僕は彼らに軽く別れの挨拶を告げた。過ごした時間はそれほど長くないし、これぐらいあっさりとしたものでいいだろう。 彼らもまた、口々に挨拶を告げた。 「さようなら。これからは、こっちに迷い込まないように。」 「ま、あんたの話は参考になったわ。感謝しといてあげる。」 「おう、またな!!」 「アレン、違う世界なんだから『次』はないよ。・・・多分。」 こらクリス。不安になることを言うんじゃない。 一通りの挨拶を終え、僕は迷い無く隙間の中に飛び込んだ。 彼らの声は、すぐに聞こえなくなり――慣れ親しんだ幻想郷の空気が近付いていることを感じた。 とある春の日の、一風変わった体験だった。 なお、その後の話になるが、博麗神社に帰った僕は良夢に超泣きつかれ、顔が腫れ上がるまで往復ビンタを喰らった。 そして霊夢からは「私らほったらかして一日何してたのよ!」と『夢想天生』の刑に処された。頭の中に某世紀末救世主伝に告示した音楽が流れてきたから、多分本気を喰らったんだろう。 それを見て良夢は「おかあさんすごーい!」とはしゃいでいた。・・・まあ、泣き止んでくれたからよしとしよう。 こうして、僕の奇妙な体験は全て丸く収まったのだった。 ・・・かに、見えた。 後日談。 「・・・ねえ、良也さん。これはどういうことか説明してくれる?」 「いや、もう、何ていうか、ごめんなさい・・・。」 「おにいちゃん達、誰?」 「・・・えーっと、気がついたらここは何処でしょうか、リョウヤさん?」 「なるほど、あんたの仕業なわけね。覚悟はできてるんでしょうね、リョウヤ。」 (ほんと勘弁してよ。何で私まで・・・。) ヴァルハラ学園を卒業し、冒険者稼業に精を出しているライル(&シルフィ)とルナのコンビが幻想郷に――『僕の手違いで』召喚されてしまったのは、そう遠くない未来の出来事だった。 〜Fin?〜 +++あとがき+++ 前回投稿したのいつだったっけ?ロベルトです。覚えている方はまだいらっしゃるでしょうか。 さて、先日久櫛さんが中学生時代に書かれていたという『ヴァルハラ学園』が久遠天鈴の方で公開になりましたが、俺に暇が出来たので読んでみたわけです。 結論:面白い というわけで、感銘を受けた俺は、奇縁譚とヴァルハラ学園という久櫛さんの二大作品をついつい超神合体させてしまったわけです。合わせて五次創作ってところでしょうか。 ヴァルハラ学園未読の方には微妙なネタバレ風味でアレなんですが、是非読んでみてください。とても中学生が書いたとは思えないぐらいに面白いですから。 ていうか、これはありなんですかね。オリジナルの二次創作×オリキャラ者二次創作の三次創作って。書き始めたときは「これは流行る!」と思ったんですが、終えてみて自信なくなってきた。 ・・・気にしないことにしましょう。それが一番平和です。 さて、この話はなるべく幻想郷ではなく『土樹良也』と『ヴァルハラ学園勢』のクロスという側面で描かせていただきました。 そのため、東方勢の出番が極端に少なく、出てきてせいぜいが設定ぐらいという内容になっております。ご了承くださいって終わった後に言うことじゃないね。 また、良也が東方奇縁譚連載中の時点よりだいぶ歳を食ってます。そのため、戦闘能力もある程度向上しているという想定です。 オリジナルスペルに関しては作中で描いた通りの効果です。注釈なし。 大体そんなところですかね。 例によって例の如く、続きを書く気はありません。書きたくなったら書けるような仕込みはしましたけど、どうするかは俺のモチベーション次第ということで。 むしろ他の方が書いても・・・いいのよ・・・? それではまた、いつかの投稿で。 ロベルトでしたー。 |
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