「すまんがあんまり修行は出来そうもないぜ」

俺がよくわからない声を聞いた次の日、魔理沙からいきなり切り出された。

「どうかしたの?」

「いやー……。神社の修復をしないと霊夢がうるさくてな?」

「あぁ…」

そういえば被害は大きくないとはいえ、昨日のマスタースパークで一部吹き飛んだんだっけ。

「さっきもあいさつしてきたんだが、早く直せのオーラがすごくてな。とはいえ素人だし時間がかかりそうなんだ。だから悪いがしばらくは自己練習してくれ。ときどきなら付き合うからさ」

「わかった。あ、出かけてきてもいいか?」

でも一人で出かけるのは危険か?

「ん? いいんじゃないか? 夜でもなければ危険な妖怪も出ないだろうしな。まぁ気をつけてな。霊夢には私から伝えておくぜ」

と、思ったが案外平気だとのこと。

基本的には昼間っから妖怪が襲ってくることはあまりないらしい。

「いざとなったらお前なら逃げられるだろ? 相手が上級妖怪でもない限りさ」

「出来ればそんなことにならないようにしたいけどな…。とりあえず出かけてくる」

「夜になる前には戻れよ」

「うん。了解」

そう言って俺は空を飛ぶ。

目指すはチルノに出会った湖だ。

こうして無事だったわけだし、この前のお礼がいいたい。能力もわかったら教えるって言う話だったし。




☆☆☆☆☆




「っと。到着」

したはいいけど、チルノの姿は見えないな。

どこかに行ってるのかな? だとしたら下手に移動しても会えないよなぁ。

「いや、近くに誰かいる…この感じは妖精かな?」

チルノのとは違うみたいだけど。

縄張りって言っていたけど、違う子もやっぱりいるのか。

「えっと、人間の方ですか?」

気配のするほうへ行ってみると、声をかけられた。

「うん。まぁ空を飛んだりできるから普通の人間ではないけど」

と、少し苦笑しながら答えた。

「チルノはいないかな? 会いに来たんだけどさ」

「あ、チルノちゃんならもうすぐ来ると思います。チルノちゃんのお友達ですか?」

「んー。この前助けてもらったからそのお礼に来たんだ。君はチルノの友達?」

なんだろうな。
なんか結構親しそうな感じだし。

「はい。チルノちゃんとは親友ですよ! あ、そう言えば名乗っていませんでしたね。私は大妖精と言います。チルノちゃんは大ちゃんって呼んでます」

「大ちゃん、だね。俺は柊 音夜。好きに呼んでくれていいよ」

俺も大ちゃんって呼ぶから。
そう後に付け加える。

「では音夜さんって呼ばせてもらいますね」

「了解。っと、チルノも来たかな?」

気配が近づいてくる。

これはチルノの気配でよかったはず。

「大ちゃーん! ってあれ? この前の外来人!」

「音夜な」

「そう音夜! またさいきょーのあたいに会いに来たの?」

またって……この前はたまたまなんだけどね。

「この前のお礼が言いたくってさ。あと能力がわかったからそれを教えに」

わりと簡単にだが、お礼を言い、自分の能力が自然を操る程度の能力だと伝える。

そうすると、チルノと大ちゃんはちょっと困惑した表情になった。

そっか…

「そういえば妖精は自然から生まれてるんだったよな…。やっぱり操られるのは嫌だよな」

そう小さく呟くと二人はその言葉を否定する。

「んー…あたいはあんたに操られてる気はしてないわ。ただあんたといると落ち着くってだけ」

「私も落ち着きます。なんか心があったかくなるというか」

「……じゃあさっきの表情は?」

落ち着く。この言葉に俺はほっとしたが、疑問を口にする。

「あんたの能力。違う気がしたから、ちょっと考えてただけ」

「よくわからないんですけど……音夜さんは自然を操ってるような感じじゃないんですよ」

能力が違う?

二人の言葉に俺も自分自身の能力の事について考えてみたが、よくわからない。

二人に関しても同じようで、考えていても仕方ないということになった。

「別にあんたの能力がわからなくても困らないし、私も大ちゃんもあんたと一緒にいるといい感じだからいいわ」

「いい感じ、ね。俺もなんか穏やかになれる感じだよ」

結局三人とも一緒だとなんか幸せな感じになれるらしい。

本当によくわからないよなぁ。

「あたいたちはこれから遊ぶんだけど、あんたも一緒に遊ぶでしょ?」

「混ざっていいのか? 友達同士のほうがいいんじゃ」

「何言ってんの? あたいたちはとっくに友達じゃん!」

「そうですよ音夜さん。一緒に遊びましょう?」

友達……か。

「よし! じゃあ何して遊ぼうか!」

嬉しかった。

外の世界では友達と呼べる人はいなかった。

でもこっちでは一気に二人も友達ができた。

俺たちは時間も気にせず遊ぶことにした。

が、これがまずかった。

そう、夜になってしまっていた。魔理沙に言われたにも関わらずだ。




☆☆☆☆☆




「すっかり暗くなってしまいましたね……」

「そうだなー…でも楽しかった」

「さいきょーのあたいがいるんだから当たり前ね!」

さいきょーは関係ないって。
でもチルノ達と遊ぶのは本当に楽しかった。

「さて、と。俺はそろそろ戻る事に……っ!」

寒気。妖気。この気配は。

「どうかしましたか?」

「……妖怪がいる」

その俺の言葉に大ちゃんは声を詰まらせる。

当たり前か。妖精は妖怪よりも弱い。
人間も妖怪より弱い。一部を除いてではあるが。

正直俺も震えていた。

だがチルノは違った。

「ふふん! さいきょーのあたいがいるんだから安心してていいわよ!」

と、チルノは俺たち二人の前に立つ。
俺たちを守る気、だろうか。

確かにこの中で一番強いのはチルノだと言うのは、弾幕ごっこでわかった。
だからと言って。

「この前の人間。今度こそ私に食べられなさい!」

低級とは言え、妖怪に勝てるとも思えなかった。

「その言葉はさいきょーのあたいを倒してから言うことね!」

「……白黒の次は妖精が邪魔するの? 妖精ごときが勝てると思わないことね!」

――夜符「ナイトバード」――

「あたいはさいきょーなんだから、妖怪も妖精も関係ないわ!」

――雹符「ヘイルストーム」――

二人の弾幕はほぼ相殺。

魔理沙の弾幕を見ていたから驚かないが、俺には到底無理なことだった。

「…妖精の癖に!」

――月符「ムーンライトレイ」――

「今日のあたいはいつもよりさいきょーよ! 残念だったわね!」

――凍符「パーフェクトフリーズ」――

妖怪の弾幕を完全に避け、さらにスペルカードを展開するチルノ。

「う、嘘!?」

妖怪は驚きを隠せない。俺も驚いている。

「チルノってこんなに強かったのか…」

俺は思わず大ちゃんにそんなことを言っていた。

「た、確かにチルノちゃんは妖精の中では強いですけど…それでも妖怪には勝てないぐらいの強さのはずです……。音夜さんがいるからですよ?」

「え?」

「チルノちゃんや私は音夜さんと一緒にいるとほっとするんです。なんかここが自分の居場所なんだな、って感じで。だから守りたいんだと思います。それに……」

大ちゃんの言葉は嬉しかったが、こんな小さな女の子に守られるのは大の大人としてはかなり情けなかった。

さらに大ちゃんは続ける。

「音夜さんの能力一部だと思いますが、チルノちゃんの力が強くなってます。私も…少し強くなっている気がします」

……本当によくわからない能力だ。

そうこう話しているうちに、チルノの弾幕が妖怪に連続で当り、妖怪は落ちていた。

「妖精にまで負けるなんて……つ、次会った時は絶対にたべてやるんだから!」

そう言って逃げて行った。

「さすがあたい! 最強!」

本当に最強だと思うよ。

「チルノありがとう。また助けられちゃったな」

「いいのよ。あんたといるとなんでも出来ちゃう気がするわ!」

結局俺はチルノと大ちゃんに送られ、博麗神社へと帰った。

結構遅くなってしまったために、魔理沙に怒られた。心配してくれていたらしい。

嬉しかったが、反省した。今後はこんなことにならないように約束した。

……能力に関しては何も伝えなかった。

ついでに言うと霊夢はすでに寝ていた。でも夕飯は作っていてくれたらしい。




☆☆☆☆☆




「ねぇチルノちゃん」

「なーに大ちゃん?」

「音夜さん。優しい人だったね」

「……危うかったけどね。最強のあたいがいなかったらどうなっていたかわからないわね!」

「そうだね」

新しいお友達。
人間のお兄さん。音夜さん。

外来人らしいけど、空を飛べる凄い人。

私たち妖精に近い感じがする変わった人。

とっても優しいし、暖かい人。

自然を操る程度の能力って言っていたけど、多分違う。

「でもよくわからない、かな」

また、遊べるといいなぁ。



――あとがき――

修行ストップ編。

そして能力の新たな力発覚編?

やっと大ちゃんが出せた! というかルーミアごめん!
名前すら出せなかった挙句、チルノに負けるとか! ごめん!
許してくれ! 

ルーミアファンに殺されそうだぜ。

というわけで今回はこんな感じでした〜



戻る?