俺たちは神社にやってきた。

俺が怪我をしていたから、思ったより時間がかかったらしい。

でもいつの間にか痛みはほとんどないんだよな……

「ついたぜ。ここが今回の目的地、“博麗神社”」

博麗神社……。

「霊夢ーいるかー? 客だぜー?」

………

反応なし。

「ありゃ、留守か?」

留守って…神社に誰もいないっていいのか?

「おーい霊夢ー?」

って! ガンガン進んでるけどいいのかよ!?

結局境内を進んでいく。

進んで行くと一人の女の子がいた。

「あら魔理沙。……お客さん?」

箒を持って、掃除をしていたっぽい女の子がそう言う。

「さっき言ったぜ。聞こえてなかったのか?」

結構大きな声で言ってたから聞こえてもいいとは思うんだけどな。

「聞こえなかったわね。どっちでもいいけど。それでその人がどうかしたの?」
「 おう。こいつ外来人らしいんだがな。ルーミアに襲われたから助けってやったんだ。そしたら能力持ちっぽいし、一応連れてきたんだぜ」

「へぇ…あ、私は博麗 霊夢。この神社の巫女よ」

「私は霧雨 魔理沙。普通の魔法使いだぜ!」

「あ、あぁ。俺は柊 音夜。外来人らしい」

……魔法使いに普通とかあるのか?

いろんな連中がいるから、普通じゃない魔法使いとかもいるのかな。

「能力持ちね。魔理沙に連れられてここに来たってことは帰れることを期待してるかもしれないけど、外の世界は帰れないわよ?」

外の世界に?

全然そんな話は聞いてないんだけどな。

「いや、帰れるとしても俺は帰れないな。外だと死ぬみたいだし。というかここ来たら帰れるってのは?」

「……魔理沙、説明もせずにここに連れてきたの?」

霊夢さんは魔理沙さんをジト目で睨みつけていた。

「めんどくさい説明は霊夢に任せるぜ!」

「はぁ……」

魔理沙さんの返答にため息をつく霊夢さん。

大雑把な魔法使いだな…

「まぁいいわ。どうせ帰れないし、細かい説明は省くけど」

この博麗神社には外と幻想郷を隔てる博麗大結界というものがある。

幻想郷へ馴染んでいない迷い人ならばここから外へと出る事ができる。

ただ、博麗神社に来る前に妖怪に食われるか殺されるかが普通で、ここまで来れるということは相当運がいいとのこと。

「あなたは襲われてるときに魔理沙に助けられたわけだから、相当運がいいわね。いくら能力持ちだとは言え、外来人が妖怪と戦える力を持っているとは思えないし」

「………やっぱり普通は妖怪に襲われたらアウトか?」

「当たり前じゃない」

…………だよなぁ。

「…あー。一応さっきの妖怪に会ったのは二回目だし、紅魔館で吸血鬼にも会った。逃げてきたけど」

「………」

「………おいおい」

唖然とした表情の二人。

やっぱあれか。普通じゃないのか。

まぁ逃げられたのも運の要素が大きいよな。戦える力なんてないんだから。

「……じゃぁ何か? お前は私と会う前に、ルーミアから逃げ、レミリア達から逃げてきたと?」

「……一応」

「なんか助けなくてもよかったんじゃないかって思えてきたぜ」

「いや、助けてもらわなかったら俺はあそこで死んでいたよ。ありがとう」

これはマジだ。

正直、あそこから逃げる事は出来なかったと思う。

「そう言えば気になったんだが、お前、ダメージはもう平気なのか?」

確か怪我していなかったか?

そう魔理沙さんは続けた。

「ん、あぁ。なんか気づいたらほとんど治ってた」

「……お前本当に人間か?」

「いやいや、じゃなかったらなんだって言うんだよ…」

思わず苦笑してしまう。

「……貴方の能力ってなに? 正直、ルーミアはともかく、レミリアから逃げられうというのは異常よ」

普通の人間ならね、と付け加えられる。

「……レミリアさんにも聞かれたんだけどさ。よくわからないんだ。天候を変えたり、風を起こしたりするくらいしかできない」

「何言ってんだ。私が行った時は植物操ってたじゃないか」

あぁ、そう言えばそうだったな。でも……

「あれは助けてほしいって想ったら、植物たちが助けてくれただけだよ」

「よくわからん能力だな」

俺もそう思うよ……

「……それでどうやってレミリアから逃げたの? 咲夜もいるし、よく逃げらたわね?」

「俺もよくわからないんだけど……。咲夜さんにつかまってるとき、助けてほしいと願ったら、メイドの格好をした妖精が攻撃して、それで逃げられたんだ」

「助けてほしいばっかりなのな、お前」

仕方ないだろ……

無力な人間なんだからさ。

「……“自然を操る程度の能力”」

「え?」

「ん?」

「音夜さんの能力。おそらく無意識に自然を操っているのだと思うわ。それなら妖精の行動も頷ける」

自然を操る……

あんまりそんな感じはしなかったんだけど、そうなのだろうか…

「妖精の行動に頷けるって?」

その中で気になったものを聞いてみる。

「妖精ってのは自然そのもの。妖精はなんらかの自然から発生しているものなんだぜ」

「へぇ……チルノはわかりやすかったな」

まんま氷の妖精。

自分でも言っていたし。
「 チルノにも会ってたのか。いきなり波乱万丈だな」

「……チルノに関してはそうでもないと思うけど。紅魔館まで案内してくれたしいい子じゃないか」

あんまり頭はよくなさそうだったけど、一緒にいるとなんか落ち着くし。

「私はいきなり弾幕ごっこを吹っ掛けられたけどな」

「チルノに関しても、能力が無意識に働いたんでしょうね」

そうなのかな……

「それにしても貴方はこれからどうするの?」

「どうするって…」

どうすればいいんだ? 働き口とか探せばいいんだろうか。

お金がないと、暮らしていけないだろうし。寝る場所なんかも探さないとだし……

やっぱり人里を目指すべきか?

でも不思議と空腹感とかを感じないんだよな…なんでだ?

「働いてくれるなら、しばらくここにいてもいいけど?」

掃除と炊事とかになるけど。と霊夢さんは続けた。

「……俺、外ではずっと寝込んでいたから。掃除はともかく、炊事なんかは出来ないと思う」

「…そう、残念ね。別に掃除だけでもいいけど。楽ができるなら」

「しばらくはここにいたらいいんじゃないか? 私はお前に弾幕ごっこを教えてやるぜ!」

出来ないと幻想郷では暮らしていけないぜ! 力強く魔理沙さんは続けた。

「……いいのか?」

「…私の勘が、貴方を見殺しにしないほうがいいって、ね」

「面白そうだからな!」

……ありがたい話だ。受けない理由は、ないかな。

「……ありがとう。それじゃよろしく、霊夢さん、魔理沙さん」

「霊夢でいいわ」

「私も魔理沙でいいぜ。見たところそっちが年上みたいだしな」

「よし、それじゃあ改めて。よろしく霊夢。魔理沙」

俺はしばらく博麗神社に住むことになった。

……とりあえず炊事出来るようになるべきか?



☆☆☆☆☆



魔理沙が連れてきた外来人。

最初は迷い込んだだけかと思った。

でも外に出たら生きられないと言った。

自然を操る程度の能力。今は無意識に使っているようだけど…、自由に使えるようになればかなり強力な能力ね。

たいして興味もなかったはずなのに、ここに置くことにしてしまったし。なんか勘が訴えてるのよね……、嫌な感じだわ。

紫が関わっているような気がするから、後で問い詰めなくっちゃね。

……明日から、炊事、洗濯、掃除。教えないと。

楽ができそうでいいわね。




――あとがき――

久しぶりにこっちを更新。
久しぶりなだけあって難産でした。
少しずつ書いていこうかなと思います。



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