魔理沙と鈴音ちゃん。
二人の戦いは途中だったけど、僕は神社へと引き返した。

「あら良也さん。ずいぶん早かったわね」

「……死にそうだったからな」

あんなに小さいのに強いんだな、あの娘。
……そう言えば半妖だって言っていたっけ。その割には霊力はあんまり感じなかったけど。

「逃げて正解だとは思うわよ。良也さんじゃ、何回殺されるかわからないもの」

魔理沙も殺されかけたらしいわよ。
そう霊夢は続けた。

あの魔理沙が、ねぇ。
確かに僕なんかよりも全然強いんだろうけど、そこまで強いのだろうか。

「強いわよ」

「心を読むなよ」

「顔に出てたわ」

そうかい。

「というか霊夢も戦ったことあるのか」

「一回だけね。私が勝ったけど」

辛勝だったわ、そう続けた。

霊夢が辛勝……。
想像できないな。

つか、戦う機会があったのか。

「ええ。異変に噛んでいたことがあったから」

……だから心を読むなというのに。

「異変? 起こすような娘には見えなかったけど」

というよりも、戦うことをめんどくさそうにしてたし。

「鈴音は紫の友人で、幽々子の友人でもあるらしいわ。それで協力してたのよ」

あぁ、春が来なくなった異変だったっけ。
僕が来る前の異変だし、あんまり詳しくはないけど。

「戦い難いったらなかったわ。紫よりやっかいだったもの」

「スキマよりやっかいとか…」

考えたくないぞ、それ……

「ま、それはいいわ。良也さん、お茶入れて」

「はいはい……、立つついでに夕飯作るか?」

よっこいしょ、と立ち上がる。
そうしたら意外な言葉が出た。

「今日は作らなくていいわ。とりあえずお茶ね」

……え?

「今日は宴会かなんかあったか?」

そうじゃなかったら霊夢が夕飯を作らなくていいなんて言うはずがないよなぁ。

「小さい宴会だけどね。良也さんもおそらく参加する事になるわよ」

小さい宴会ね。
僕は飲めるならいいんだけどさ。

とりあえず、お茶でも入れようか。











ゆっくりとお茶を飲んでいると、ボロボロの魔理沙と汚れてすらいない鈴音ちゃんが帰ってきた。

「あら、今日は結構遅かったのね」

「魔理沙が思いのほか粘った」

「よく言うぜ。グレイズすらなく、完全に避けていたくせに」

……マジで?
魔理沙って幻想郷の中でも強いんじゃなかったっけ?

「おいおい良也、なんだその顔は」

魔理沙が不機嫌そうな表情で僕のほうを見やる。

「いや、魔理沙がボロ負けなんて想像できなくてさ」

僕が魔理沙にボロ負けなら普通だけど。
考えるだけで悲しくなるな……

「良也もやってみればわかるぜ」

「……嫌だよ。僕は争いは嫌いだし。死にたくない」

「私も嫌よ。無意味に殺したくないもの」

僕と鈴音ちゃんがそう言うと、魔理沙はやれやれだぜ、と呟いた。

「それよりも魔理沙。準備。久しぶりだからって手を抜かないでよ?」

「わかってるよ! あーもう! 久しぶりに面倒だぜ。良也! 手伝え!」

「何をだよ」

話が唐突すぎるぞ。

「私が持ってるものを見てわからないか? 料理だよ料理」

よくよく見れば、魔理沙はキノコを筆頭に色々と料理の材料を持っていた。

「……手伝うのはいいんだけど、めずらしいな、魔理沙が料理なんて」

「誰も好き好んでやろうとしているわけじゃないぜ」

「……私との約束よ。弾幕ごっこをやる代わりに、魔理沙が負けたら自分の奢りで料理を振る舞う」

「だからってなんで良也の分まで……」

あ、僕の分まで魔理沙の奢りなのか。

「これがさっき言っていた小さい宴会?」

霊夢に問うと、小さくそうよ。と返事が来た。

「魔理沙は私が帰ってきたからその宴会だそうよ」

「これでいつでも弾幕ごっこが挑めるからな! 次は負けないぜ!」

その言葉に鈴音ちゃんはため息をついた。

「……今回は貴方を巻き込んでしまった。だから貴方の分も魔理沙に奢らせるわ」

僕は勝手について行っただけだけどね。
確かに死にかけたけど…

「材料は私持ちなんだから、せめて料理くらい手伝ってくれ」

魔理沙は手に持っている材料を僕のほうへ突き出しながら言う。
いや、手伝うくらいはいいけど、材料全部僕のほうへ突き出されたら、全部やれって言ってるようなもんだぞ。

「どっちでもいいから早く作ってくれない? お腹が空いたわ」

霊夢がしびれを切らしたように言う。
そして何気に魔理沙が持ってきたお酒を手に取る。

「私と鈴音は飲んでいるから、なくなる前に飲みたかったら早く準備してね」

「おいおい勘弁してくれよ!」

魔理沙は慌てて台所に向かう。
僕もそれを追う。

空腹での酒は体に悪いぞー……

「結構量は持ってきているから、慌てなくても平気よ」

「だってお腹空いたもの」

「……相変わらずね、霊夢」

「鈴音も変わってないじゃない?」

「ま、ね。ん、乾杯」

「乾杯」

準備を始めた僕たちの後ろで、グラスの音が小さく響いた。














「ほら、作ってきたぞ。運ぶの手伝ってくれ」

僕と魔理沙は作った料理を運ぶ。
二人は席を立とうとすらしなかった。

手伝ってくれよ……

「やっとできたのね。さ、食べましょ」

持ってきたそばから手をつけ始める霊夢。

そんなに早く食べたかったなら手伝ってくれればいいのになぁ。
まぁ言うだけ無駄だろうけどさ。

運び終わり、僕と魔理沙も席に着く。
魔理沙は何気に料理上手いよな。

「……この味も、久しぶりね」

鈴音ちゃんが小さく呟いた。

「鈴音ちゃんは外にいたんだっけ?」

「えぇ」

「しばらくは戻れないとか聞いたけど、もういいのか?」

僕の質問に返事をし、魔理沙が問う。

「そうね。思いのほか早く済んだわ。紫の協力があったから」

「お前と紫の二人でも数カ月かかることってのが、なんなのかが気になるぜ……」

「正確にはもう一人いたけどね。でももう済んだことよ。話す気はないわ」

言葉を終えると、料理に箸を伸ばす。
あまり触れられたくないことなのかな?

「僕はここと外をわりと自由に行き来できるんだけどさ、鈴音ちゃんはどうやって? やっぱりスキマの…」

疑問に思っていたことを聞こうと思ったら、首筋に何か冷たいものが…

「……ヤッベ、言い忘れてた」

魔理沙が呟いた。
おい、何を言い忘れていた!?

「……ねぇ貴方。スキマって何か聞いてもいいかしら?」

鈴音ちゃんから発される殺気が!?
そして首筋に当てられているのはナイフですね!?

「……ゆ、紫さんのことデスガ?」

なんかカタコトになってる!
だって今にも殺されそうな雰囲気だし!

「紫のことをスキマ…馬鹿にしているのかしら…殺すか?」

ちょ、ま。

今にも首を刎ねられそうな僕に救いの手が!

「外でやってくれない? 境内を汚されたくないんだけど」

現れなかった!

僕は為す術もなく、外へ引っ張り出された。

「えーっと……弁解を聞く気は…」

「ない」

ナイフを構えて小さく言う。
すごく怖いぞ!?

そして間髪いれずにナイフが飛んできた。

「うぉっ!?」

グレイズ、ぎりぎりすぎる……

「火符『サラマンデルフレア』!」

やられる前に反撃…

「半減『マスタースパーク』」

も意味なく僕は鈴音ちゃんのスペルカードに飲まれました……












「……ごめんなさい」

その後、いつの間にか現れていたスキマが鈴音ちゃんに話したらしく(笑いながら)
生き返った後、謝られた。

僕、死に損だよね……



戻る?