それで今は“お嬢様”のところへ案内されているんだけど……。

ちらほらと妖精の姿が見えるな。みんなメイド服を着ているけど。

本当にどんな館なんだ、ここ。妖怪が門番をやっているし、人間と妖精がメイド。種族多くないか?

そんでもってひとつ気になるんだけど、この館やけに暗いな。窓ないし。

まぁ気にしても仕方がないか? きっと館の誰かが日の光を嫌っているとかだろうし。……どんな種族だよそれ。

……嫌な予感がする。

おそらくお嬢様は妖怪。気配が近づいてきていることからほぼ確定。

そしてあの妖怪が門番をやっているんだからそれよりも強力な妖怪。これもほぼ確定。

だけど、妖精がたくさんいるくらいだからおそらく襲ってきたりすることは、ない、よな?

「あの、」

「着きましたよ。ここがお嬢様のお部屋です」

疑問を聞こうとしたらついてしまった。

禍々しい気配が部屋の中にある。これ、相当強力な妖怪だぞ……!?

「お嬢様、失礼します。お客様をお連れしました」

メイドさんがノックし、扉をあける。

そこにいたのは……。

「ご苦労様、咲夜。そう、彼が外から来た人間ね」

「えぇ、美鈴との会話を聞いた限り間違いではないかと」

羽を生やした、小さな少女だった。

だけどその雰囲気はまさしくお嬢様というべきもの。

そして、とても力の強い妖怪なのだろう。対面しただけで、身体が動かせない。

「ようこそ、私は紅魔館当主、レミリア・スカーレットよ。そして私の従者」

「十六夜 咲夜ですわ」
 
俺がぼおっとしている間に二人は俺に対して名乗っていた。俺も、名乗らないと。

「あ、えと、柊 音夜、です」

「そう、では音夜。二、三質問があるのだけどいいかしら?」

質問? あぁ、俺をここを呼んだ理由は何か聞きたいことがあったということなのか。

俺も聞きたいことがあるけど後でいいか……。というよりも逆らっても怖い。

「は、はい。なんでしょうか?」

質問の内容も気になるしな。

「貴方、どうやってこの幻想郷へ来たのかしら? 人間の力では幻想郷と外界を隔てる大結界を越えることは到底できないわ。教えてもらえる?」

どうやって幻想郷へ? そんなの……。

「それは、俺もよくわかっていません。ただ、外で死にそうになっている時、夢を見たんです」

「夢? どんな夢だったの?」

「えっと、日傘を差した女性がいて……」

俺は夢の内容を説明した。

といっても、女性がこの世界では生きていけない、助かりたいならこの世界を捨てなさい、こう言って、俺はそれを受け入れただけなのだけど。

「そう。……やはり八雲紫が関わっていたか。目的は何なのかしら……」

あの女性は八雲紫というのだろうか? まぁその辺はわからないからいいや。

会うことができたらお礼はしたいが。

「それではもうひとつ質問するわ」

「なんでしょうか?」

「貴方、自分の能力に関して、自覚あるかしら?」

能力に関しての自覚?

「一応、自分が普通じゃない力を持っているのはわかってますが……」

これでいいのか? チルノみたいに俺の能力が気になっているんだろうか?

ってまて、俺はこの二人に能力を見せていないんだが。

「その能力では何ができるかわかる?」

できること? たいしたことはできないぞ。

「えっと、天候を変えたり、風を起こしたりする程度ですが……」

何なんだろう、俺の能力を知ったってたいして意味はないと思うけど……。

「そう、ありがとう。じゃあ最後の質問ね、質問じゃないかもしれないけど」

っ! な、んだ? 雰囲気が変わった? 何かこう、最初にあった妖怪に近いような……。

「な、んですか?」

そう、今から貴様を殺す、こういった……。

「外来人の血は美味しいのかしらね?」

途端、俺は部屋の外に逃げ出した。

だが。

「逃げられるとでも?」

メイド、咲夜さんに止められた。速過ぎるだろう!?

「咲夜、抑えておいて。八雲紫の目的はわからないけど、ここで消しておくのもありかもしれない」

「かしこまりましたお嬢様」

んな、馬鹿な!? 消すって、何なんだよ!? 逃げられない、ここで死ぬ……?

そんなの嫌だ! 風よ――。

「変に動けば、その首が飛びますよ?」

あ、う……。力で逃げることもできない……。

「ふふ――」

どんどん近づいてくる。少女が、死が。嫌だ、誰か助けて――。

だが、この時なぜか咲夜さんの拘束が外れ、俺は無我夢中で逃げ出した。

誰も、追ってはこなかった。



◇◇◇◇◇



私はこの人間を押さえていた。だが、逃がすこととなってしまった。何故か。

「貴方達、どういうつもり?」

この館の妖精メイド達が、私達に攻撃してきたのだ。

当主であるお嬢様に。メイド長である私に。

「え、あの私達は」

「身体が勝手に、えと」

「彼を助けなきゃって、思いが頭に」

どういうことだろう? 妖精メイド達は皆、困惑している。

だけど、どんな理由があるせよお嬢様を攻撃した罪は消えない。

「ひっ!」

私はナイフを構え、投げようとするが――。

「やめなさい咲夜」

お嬢様に止められた。

「お嬢様?」

「彼女達はあの人間に操られていたのよ、おそらくね」

操られて? まさか、それがあの人間の能力!?

「確証はないけど、あの人間の能力は――」

“自然を操る程度の能力”

これで、妖精たちを操ったということか。

私はあの人間を捕まえてこようとも思ったが。

「いいわ、放っておきなさい。また妖精メイド達を操られても面倒だし」

と、お嬢様に止められてしまった。

もし、本当にあの人間の能力が自然を操るのならば、かなり危険だ。

今後も、警戒しておこう。お嬢様の安全のためにも。




――あとがき――

はい、やっぱり短いですね。もうこのくらいの長さがデフォでいいかな?

主人公、吸血鬼から逃げるの巻。ただし、主人公はまだレミリアが吸血鬼だとは知らない。

ちなみに逃げるとき、空を飛んでいるので門番は無視しました。

この後は誰に出会う?



主人公の能力

自然を操る程度の能力?



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