東方自然録 プロローグ


俺には普通じゃない“力”があった。

別にたいしたことができる訳でもない。

ただ、雨の日に『憂鬱だなぁ……、晴れないかな』などと思うと晴れるのだ、空が。

逆のこともできた。どう考えても雨なんか降らないだろうという快晴の日に『雨よ降れ』こう思うだけでみるみるうちに空は曇り、雨が降るのだ。

まぁ別にこんなことができるからどうということでもない。

小学校の遠足のときなどに雨が降らないように願いをかけるだけ。雨を願うことは特になかった。

そしてそんな力を使いながら数年、過ごしていた。

……それがいけなかったのだろうか? 俺は年を重ねるごとに病気になることが増えてきた。

風邪はもはやいつものこと。肺炎にかかったこともあった。

原因不明で倒れることも多々あった。

高校には行った。でも卒業はできそうもなかった。

三年生はこれで三回目だが今年も出席日数が足りそうもない。

そう、今現在も俺は入院している。

身体がほとんど動かないのだ。何でなんだろう。俺は何か悪いことをしたのだろうか。

このまま死んでしまうのでは、そう思うと怖くて仕方がなかった。

そんな日常を繰り返していたある日、変な夢をみた。



◇◇◇◇◇



「貴方、生きたいかしら?」

暗闇の中、日傘を差した、金髪の、美しい女性がいた。

どういう意味だ? 俺に生きる術があるとでも言うのだろうか。弱り続けている俺に。

「えぇ、貴方を生かす術がありますわ」

……生きたい。もっといろんな人と話したい。友達がほしい。外で元気に遊びたい。

どうしたらいい。俺はどうしたらこれからも生きていける!

「この世界を捨てなさい。そうすれば生き続けることができるわ」

この世界を捨てる? どういう意味だ?

この世界には家族がいる。それを捨てろということなのだろうか。

そんな馬鹿な……、俺を今まで面倒見てくれた家族を捨てろとでも……。

「その通りよ。この世界では貴方は生きていけない。必然的にこちらのすべてを捨てることになる」

……考える時間はもらえないのか?

すぐに決められる問題じゃない。確かに生きたいが、家族には恩がある。それをみすみす……。

「時間はないわ。もうすぐ貴方は死ぬ。今すぐ決めなさい」

……家族に、伝えてくれないか? 俺は別の場所で生きていると。

「そうね。ま、サービスということで伝えておいてあげるわ」

……ありがとう。

その人はいなくなり、本当の暗闇が訪れた。



◇◇◇◇◇



「やっぱり夢だったんだな……」

起きたところはいつもの病室だった。夜だから外は見えない。真っ暗だ。

「俺の生きたいという希望があんな夢を見せたのかな」

たぶんそうなんだろう。夢ではもうすぐ死ぬと言われたのにまだ生きているし。

しかしあの人は誰だったのだろうか。あんな人は見たことがない。見たことがないのに夢に出るものなんだろうか。

ま、考えても仕方がない、か。

死ぬ前にあんな美しい人を見れたってだけでよかったって、ね。

ん? あぁそんな欲望が夢に見せたのかな。あの人は。

「眠い……」

さっき起きたばっかりなのに、また眠くなってきた。

やべぇ、本当に死ぬんじゃないかって感じだ。

……おやすみ。そして、さようなら。

この時俺は、“この世界”から消えた。

『俺は別の世界で生きていくから、心配しないで。みんなと会えないのは寂しいけどがんばって生きていくから。応援よろしくな。 By柊 音夜    代筆、八雲 紫』



◇◇◇◇◇



「ようこそ幻想郷へ。貴方はこの世界でなら生きていける。生きて、貴方の“力”見せて頂戴」






――あとがき――

どうもこんにちわ。こちらには始めて投稿させていただきます[りんちー]と申します。

プロローグだからって短すぎる(苦笑
正直下手な文章です。小説を書くのはかれこれ数ヶ月ぶり。
最近東方にはまって多くの東方小説を読んでいたら書きたい衝動に駆られたので書きました。

はっきりいって紫のキャラがおかしい気がする。でも気にしない。

主人公の紫に対する印象は美人なお姉さん。ババァではないのです。

さて、次は幻想郷の中から始まります。

あー……まともに続くかなぁ……。



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