☆注意☆
・割りと長いです

・エロ・グロ要素はありません(一応)

・人によっては鬱と感じるもしれません

・今回だけで終わりません、これは全三編のうちの一つ目です

・独自設定・独自解釈が多々あります

・本家、東方奇縁譚の「閑話」を読んでいないとわからないネタが多々あります

・本家、東方奇縁譚のイメージが崩れる心配のある方は、読むのをお控え下さい

では、GO!






どこにでもいる平凡な顔立ちをした高校教師、土樹良也は山の中へと向かっていた

ハイキングが趣味なわけでもない。プチ旅行しに来たわけでもない。彼は、結界によって隔離された世界、『幻想郷』へと向かっているのである

右手に人里で売るお菓子を持ち、左手に宴会で飲む予定の酒を抱え外の世界の博麗神社へと足を運ぶ


無事神社に到着し、いつものように意識を集中させる。目を開けるとそこは幻想郷だろう


「…あれ?」

目の前には寂れた神社。意識を集中させる前と同じ景色だった
自分の中に湧きでてくる嫌な予感を何とか振りほどき、もう一度意識を幻想へと集中させる

「…」

しかし、姿は変わらず。そこに見えるのは寂れた神社。人の気配は無い。何度やっても結果は変わらない。良也はますます焦る


―おかしい。何かがおかしい。いつもは普通に幻想郷へ行けてたじゃないか


―『僕は、特殊な力を持っていて、俗世とは隔離された世界、"幻想郷"へと行くことが出来る。当たり前の事じゃないか』


まず、良也は自分の能力が無くなったんじゃないか、と思い試してみる
すると、良也の手にうっすらと火の玉が現れる。良也は安堵した。少なくとも能力がなくなたわけではない

念のため今度は弾幕を撃ってみる。鮮やかな色をしたエネルギー弾が弧を描くようにして、空へ舞い上がるのを良也はちゃんと見えていた


これで良也は確信した。おそらく結界が故障でもしているのだろう、と

しばらくしたらひょっこりスキマのやつが現れてくれる、と
良也は回れ右をして、山を降りていった


――


翌日、良也はもう一度外の博麗神社へと足を運んだ


結局、昨日はスキマは来なかった。結界の修理に忙しいかったんだろうか
今度こそは、と思い意識を集中させる。しかし結果は昨日と変わらず

普段から週末に幻想郷に来るのを当たり前としていたので"今週は幻想郷に行く事ができない"と思うと気分が沈む


「おーい霊夢ー、スキマー、聞こえたら返事してくれー」

一応呼んでみるが当然返事はない

「仕方がない今週は諦めよう。来週また来てみよう。あー慧音さんに謝っとかないとなー」


良也は里で売るはずだった菓子をつまみながら山を降りていった


――


「土樹先生――」

あれからかれこれ一ヶ月。幻想郷のない生活がまさかここまで辛いものとは思わなかった
これまで幻想郷があるのは当たり前だった。なんだかんだでこっちでのストレスを幻想郷の方で発散していたのかもしれない


「あのぉ土樹先生?来週の3年生の修学旅行についての話なんですけどお…」


能力を持っているのに能力を使うことができない。幻想郷に行けるはずなのに行くことができない
それがこんなにストレスの溜まることだとは思いもしなかった


「土樹先生、ちゃんと聞いているんですかぁ?」
「…あ、すいません…」


どうやら安藤先生に話しかけられていたようだ。全く気づかなかった


「全く…。土樹先生最近ずっとそんな調子よ。顔色も悪いし…。なにか悩み事があるのならいつでも相談にのるわよ?」
「そうですよ、土樹先生。困ったときはお互いに助け合いましょうよ。仲間なんですし」


杵島先生は完全な善意で言ってくれているんだろうけど、何故かこの時の僕には嫌味にしか聞こえなかった
自分は容姿が良いからって。育ちが良いくせに。きっと心のどこかでは僕のことを見下しているんだろう


「いいか、自分の体調管理も大事だからな」

広畑先生も気にかけてくれる

「はは、大丈夫ですよ。ありがとうございます…」

まさか幻想郷のことを同僚の先生たちに相談するわけにもいかない



黄昏色の空を感じながら、灰色のコンクリートの道を歩きながら、考える

『もしもこのまま永遠に幻想郷に行くことが叶わなかったら。』、そんな考えが頭に浮かび思わず身震いする
スキマも一向に来る気配がない。一ヶ月も僕が幻想郷に来なかったら不信に思うだろうに…

―もしかして僕は本当は必要とされていなかったんじゃないだろうか?

―考えてみればそうだ。たまたま事故にあって冥界に流れ着いただけ、ただ変な能力を持っているだけの普通の男だ
―その能力も、直接的な攻撃にめっぽう弱く、決して強いものではない

―僕よりもっと面白い、強い男が幻想入りしたらみんな僕の存在なんか忘れるだろう
 僕ではなくて別の男が先に幻想入りしていたら、僕の存在はいらないだろう
 忘れられたものが集う幻想郷で忘れられる…ははは、なんて皮肉な事だろう



あれからさらに一ヶ月。ストレスは溜まるいっぽうだった。霊夢に会いたい。魔理沙に会いたい。早苗に会いたい。このさいスキマでもいい
幻想郷との接点を持つ誰かに会いたい。幻想郷との接点に触れたい。そうでないと幻想郷が本当に幻想になってしまうから

能力もここ一ヶ月使っていない。使うたびに幻想郷のことを思いだしてしまうから


そして英文学部(オカルト部)のほうもめっきり顔を出さなくなった。これも西園寺に能力のことを聞かれるたびに思い出してしまって辛いからだ

同僚の先生達との付き合いも悪くなった。僕の心に余裕がなくなっているからだ。無駄にストレスを溜めたくないからだ


僕はこんな人間だっただろうか。幻想郷を知る前は、あの日交通事故に合う前は、悪友とつるみながらも楽しく日々を送っていたじゃないか


―もしかしたらこれまでの幻想郷でのできごとも全て幻想だったのかもしれない

―そんな風に思ってしまうほどあの夏の日々が遠く感じられる

―そう、僕は知らないうちに幻想に囚われていたのだ。知らず知らずのうちに現実が幻想に飲み込まれつつあったのだ

―ならばいっその事…いっその事…




















『幻想なんて無くなってしまえばいいのに』




―――


僕は週末に博麗神社に通うのをやめた。だんだんと幻想郷がない生活にも慣れてきた。部活にも顔を出すようになった

そして今日はゴールデンウィーク初日。僕はこの日は当番で学校に来ていた

「土樹先生も一時期に比べてだいぶ顔色が良くなりましたね。悩み事は解決したんですか?」

杵島先生が声をかけてくれる。あの時は何で善意にムカついたのかわからない
心の中で謝る僕だった

「はは、心配かけてすいませんでした。お礼にと言っては何ですが、後で飲みに行きませんか?僕がおごりますんで」
「おお、いいですね。そうしましょう」




そして放課後、駅前のチェーン店の居酒屋に行き飲みながら談笑することになった
次第に話が弾み、すっかり幻想郷にいけなくなる前の僕に戻っていた
しかし、僕があの言葉を発するまでの話だが…

話題は二人の共通の知り合いである高宮さんの話になっていた

「そういえば、高宮さんから最近魔術師や呪術師関係の依頼が来ないですね。まあ平和なのはいいことですけど」

何気なく行った僕の言葉に杵島先生の表情が変わった

「ん?土樹先生、魔術師って何ですか?」
「え?」

あれ?確か初めて三人で飲みに行ったとき、金持ちの間では暗黙の了解的なものだったじゃないか

「ほら、初めて3人であったときに見せませんでしたっけ?こうやって」

僕は手に風の塊的なものを作ってみせる

「…?」

それでも杵島先生はきょとんとしている。どうしたんだろうか

「そ、そういえば土樹先生のクラスの○○さんって―」
「あ、はい…」

あからさまに話題を変えられた?あ、そうか。こんな居酒屋でこの話をしてたら誰に聞かれてるかわからないから話題を変えてくれたのか
これはうっかりしていた





「それじゃあ、そろそろお開きにしましょう。土樹先生、今日はありがとうございました。今度は僕がおごりますよ」
「ああ、いえこちらこそ付き合ってもらってありがとうございました」

会計を済まし終え、外に出る

「あ、そうだ土樹先生。土樹先生は英文学部の顧問でしたよね」
「え、そうですけど」

どうして急にそんなことを聞くんだ?

「やっぱりその…オカルトとかが好きなんですか?」

オカルト?…まあ好きか嫌いかで言えば好きだけど…

「え、まあどちらかといえば…」
「そうですか…。では、また。長期休暇明けに」
「あ、はい。さよなら」

どうしてそんなことを聞くんだろうか…。今の僕には全くわからなかった


――


長期休暇。いわゆるゴールデンウィークというやつだ。僕は初日と最終日は学校の当番で、間3日程は休みであり
せっかくなので実家に帰省することにした


「おかえり、良くん」
「おお、良也!おかえり!」

わが父母が出迎えてくれた

「…お兄ちゃんお帰り」
「おお、良也。久しぶりじゃのお」

少し遅れて妹と爺ちゃんが出てきた。爺ちゃんは久しぶりの僕の帰省にあわせて我が家に来たらしい


…ん?爺ちゃん?そうだ、爺ちゃんだ


―思えば爺ちゃんは唯一僕以外で幻想郷とも繋がりがある人物だ
―射命丸の弟子をしてたり、仙台の博麗神社の巫女の話をしてくれたり…


―いや、幻想郷のことはもう忘れたんじゃないのか!

―僕の中野幻想郷での思い出が一気にフラッシュバックする


「お、お兄ちゃん…?」
「りょ、良くん?そんなに家に帰ってきたのが嬉しいの?」


―完全に繋がりが絶たれたら、それはそれで諦めることができた。正直、この中途半端な状況が一番辛い

―思い出したくなかった…忘れたかった…幻想は幻想のままにしておきたかった…


「おい、良也。何で泣いているんだ…?」
「ちがっ…僕は…ううぅ…」

そう、僕は幻想郷でのできごとを瞬間的に思い出してしまい涙が出てしまったのだ

溢れる溢れる。溢れる涙。止めようとしても止まらなかった。こんなに泣いたのはいつ以来だろうか


――

夕食ができた、と僕は食卓に呼ばれた。どうやら何時間も部屋に篭って泣いていたらしい

「だ、大丈夫?良くん。職場で何かあった?」
「違うんだ、母さん。本当に…なんでもない」

母さんが心配してくれる。そうじゃない。むしろ僕が他の人に迷惑をかけてる…

「本当にどうしたんだ良也。ホームシックか?」
「そんなわけないだろ!!……大声出してごめん」

父さんは別にからかうつもりで行ったわけじゃないんだろうけどとっさに僕は大声を出してしまった
その瞬間家族全員が固まる。普段は陽気で、お互いにふざけあうわが家族も、さすがに僕の異常な雰囲気を感じ取ったのか静かだ
玲於奈はさっきから完全に黙っている。食卓には完全に嫌な雰囲気が漂っている

陰鬱な気分のまま、夕食を食べ終わった

「良くん、ほとんど残って…」
「いい、いらない」

そう言って僕は部屋に戻った


――


子供の頃、自分の部屋だったこの部屋。初めは玲於奈も同じ部屋だったが僕が中学生になるときに部屋を分け、以来僕専用の部屋だった
今は物置がわりになっているのもあって、子供の時に感じた数倍は狭く感じる
窓から月が見える。とっさに前に月に行った時のことなどを思い出しまた涙が出る。一度出ると止まらない

「鈴仙…てゐ…」

あまりにも胸が苦しくなりカーテンを閉めた

思わず、部屋においてある本棚が目に入った。子供の時のまま、絵本や漫画や文庫本が埃にまみれながらもそのままの形で残っていた

『竹取物語、古事記物語、吸血鬼の○○○、○○と魔法使い、河童、妖怪全集、西行法師、幽霊○○、遠野物語、唐傘お化け 妖精○○○』


何故か幻想郷に関係する単語だけに目が行く。思わず本棚をおもいっきり足で蹴った。すると、倒れてバラバラになった

そしてめそめそ泣いた





さあ、どうしよう。完全に幻想郷を忘れるのは無理かもしれない。諦めるのは無理かもしれない
こうなれば最後の望みにかけよう。爺ちゃんだ。爺ちゃんなら幻想郷を知っているから話しやすいだろう


部屋を出て爺ちゃんの部屋(爺ちゃんがこの家に来る時にいる部屋で普段は客間)の前に行き少しだけを戸を開き中の様子を確認する
どうやら一人でテレビを見ているみたいだ

「…良也。入って来なさい」
「…はい」

さすが元武闘家。体は老いても感覚は衰えてなかったみたいだ

「心配しないでいい。良也が帰ってきて突然泣いた原因は職場のことでも久しぶりに家に帰ってきたことでもないのはわかっておる
 さあ、話してみなさい」

そう言い、爺ちゃんはテレビを消し、僕の方を向く。普段はヘタレだけどこういう時は頼もしい

僕は全て話すと決心した


「うん、わかった。話すよ、爺ちゃん。実は幻想郷に行けなくなっちゃったんだ」
「…」
「最初は結界の故障だと思ってその内スキマがひょっこり現れると思ってたんだけどさ」
「…」
「でも数ヶ月だった今でも反応がないんだ。こっちからアクションを起こすこともできないし…」
「良也…」
「それで思い出したんだ。爺ちゃんは唯一、外の世界で幻想郷と繋がりがあるということにさ」
「りょ、良也」
「あ、能力はまだ使えるよ。ほら」

手で、水や風の塊を作って爺ちゃんに見せる
しかし、爺ちゃんはなんとも言えない表情をしている

「まあ、その…、良也。良也はきっと疲れているんじゃ。折角の休みなんだからゆっくり風呂入ってぐっすり寝て体を休めなさい
 …すまんのう。あんまり気のきいたこと言えなくて。父さんや母さんたちにはわしから説明しておくから、今日は早く寝なさい」
「いや…ありがとう。話して少し気が楽になったよ。明日僕も謝らないと…。じゃあおやすみ」
「ああ…おやすみ」

爺ちゃんに話して少しすっきりした。たぶん爺ちゃんもわからないんだろう。まあゆっくり考えればいいか


――


「はぁ…」

その後は、近所を一人で散歩したり家族と世間話したりして休みを過ごした

まあ、いいリフレッシュにはなったけど…

「…」


幻想郷を完全に忘れることはできなかった。今も少し精神が不安定だ

こんな調子で明日から学校にいけるだろうか…?


「スキマ…」


いるんだろ?そこに

また前みたいに突然ひょっこりと出てきてくれよ

胡散臭い笑顔を見せてくれよ

僕を幻想郷に連れていってくれよ

神隠ししてくれよ。幻想入りさせてくれよ


困ったときのスキマ頼みは未来永劫しないと誓ったはずだが今だけはさせてくれ…


――


「土樹先生、長期休暇はどうでしたか?」
「ええ、久しぶりに実家に帰省していました。杵島先生の方は?」

「僕は武道の練習をしていましたよ。ほら、最近教職のほうが忙しくて体がなまっているんじゃないかと心配になって」
「それに彼女さんとイチャイチャしていたんでしょう?いいですねー、僕も早く彼女欲しいですよ」

僕がそうからかうと杵島先生は少し照れ笑いした

「ははは、土樹先生ならすぐ見つかりますよ。…あ、思い出しました。今日高宮さんが一緒に飲まないかと誘ってくださっているんですよ
 僕と土樹先生を」


―高宮さん…ああそういえば高宮さんも幻想郷との繋がりはないにせよ魔術や呪術との繋がりはあったなあ…

―僕はもう幻想郷のことを諦め切れない。だから少しでもあって聞いてみよう。もしかしたらなにか知っているかもしれない


「いいですね、行きましょう」



この時に今までうっすらと感じていた違和感に気づいていればあんなことにはならなかったのに


――


「裕次郎くんに良也くん、久しぶりだね」
「高宮会長、こちらこそお久しぶりです」
「高宮さん、ご無沙汰してます」

ここは、前に初めて三人で来た時の高級料亭だ
何回目かなのでこのいかにも高級すぎる雰囲気に慣れてしまった


―さあ、どのタイミングで、どうやって話を聞き出すか

―杵島先生も異能の力は知っているはずだけど、ここは高宮さんと二人で話しておきたい

「―すいません、少し失礼します」

お、杵島先生がトイレに行ったぞ。今がチャンスだ


「た、高宮さん」
「ん?なんだい良也くん」


話しかけたのはいいものの…何から話せばいいんだろう?しまった考えてなかった。幻想郷のことは高宮さんは知らないし…

「さ、最近あまり解呪とかの依頼が来ませんね…」

いや、平和なのはいいことなんだけどさ
すると高宮さんはありえないことを口にした











「『かいじゅ』?何だねそれは」

「えっ」









何とぼけてるんだろう高宮さん。あの時は自分から話してきただろうに

「ほら、呪いを解くとか魔術師退治とかの以来が最近来ないですね、ってことですよ」

すると高宮さんは無表情になった

「良也くん…何のことを言っているんだい?」

「え?そちらこそとぼけてるんですか?それともここでは話さないほうがいいってことですか?」


―だんだんと僕に向ける目線が変わっていく

「良也くん、詳しく教えてくれないかな?」

―それはもはや軽蔑ではなく、哀れみに

「詳しくも何も…僕の爺ちゃんは当然わかりますよね?」
「当たり前じゃないか」









「その時に娘さんの呪いを解除して欲しいと爺ちゃん、土樹灯也に電話したのは高宮さん自身じゃないですか」

「…な、何を言っているんだい良也くん…?」


「ほら、言ってたじゃないですか。昔妖怪や幽霊に悩まされたときに爺ちゃんに退魔の依頼をしたと…」



「本当にさっきから何を言っているんだ良也くん!土樹灯也さんは武術家じゃないか!私が依頼したというのは
 わが社主催の武道大会に出てくれないかという依頼だ!それ以来ひいきにさせてもらっていて、君が教育実習をする学校を探しているという時に
 受け入れてあげたんじゃないか!本当にどうしたんだ君は!」


…は?そっちこそ何言ってるんだ

「そ、そんな!金持ちの間では呪術や魔術が当たり前なんじゃなかったんですか!?」

「…そんなはずないだろう。君は小説やドラマの見過ぎじゃないのか?」



―おかしい。ありえない。魔術が存在しないなんて…。あまりにも非現実的すぎる

「すみません、戻りました…」

杵島先生がトイレから帰ってきたみたいだ。ちょうどいい。杵島先生に聞いてみよう


「杵島先生、金持ちの間では魔術は当たり前ですよね?さっきから高宮さんがとぼけていて…」
「…は、はい?」


杵島先生は困ったような顔をし、僕と高宮さんを交互に見るように目を動かす


「な、ならば良也くん。その魔術というのを見せてくれないか?」
「え?最初あったときに見せたじゃないですか」
「い、いいから!」


「しょうがないですね…」

右手に小さな空気の塊を作った。左手には小さな炎の塊を

「ほら、これで信じていただけましたか?」











「え、えっと…今日はもうお開きにしませんか?」
「そ、そうだな。私はこれから用事が入っているし…」

結局、その日はお開きになった。二人は何がしたかったんだろう






―――――――

あとがキ


芥川龍之介の河童(曲のほうじゃないよ。小説のほうだよ)を読んでいたら思いついた話です
おそらく東方の原作者であるZUN氏も、曲名にするくらいですから『幻想郷』と芥川龍之介の小説の
『河童の世界』を少しは意識しているんだろうなーとか改めてZUN氏スゲーなーとか考えながら書きました

ストーリーを知っている方なら続きも予想できるはず…


東方奇縁譚閑話の『第二十八話 夜空』で紫が『良也は幻想に近づきすぎている』的な発言も関係あるかもしれません
「現実逃避」ならぬ「幻想逃避」(


杵島先生が良也と同じ女子高に就職しているかどうかわかりませんでした(僕が見落としてるだけかもしれません)
が、そこらへんは独自設定ということで勘弁して下さい


あと、高宮さんが良也のことを「良也さん」ではなく「良也くん」と呼んでいるところはわざと(高宮さんが良也をさん付けする理由がないため)です

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[続く]



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