「…何時まで経っても変わらないわね…」

唐突に彼女が言った

「……僕の事かい?」

場所は寝室

「えぇ、勿論よ」

彼女は床に臥せている

「まぁ、蓬莱人だし……年も取らないしね」

僕はそんな彼女の傍に座って手を握っている

「そんな事じゃないわよ、」

彼女は呆れた様に、そして少し可笑しそうに言った







 僕が彼女と結ばれたのは恋をしたからじゃない、明確に好きって感情があった訳でも
無かった



 でも彼女と一緒に居る事は心地良かった

 それだけで十分だった

 

 気が付いたら周囲の奴らから夫婦扱いを受けていた

 僕も彼女も別に否定しなかった

 どんな関係であろうと僕は僕で彼女は彼女だったから、それで良かった
 
 
 
 神社の掃除をして

 縁側でお茶を飲んで

 冬はコタツでのんびり

 朝は僕がご飯を作って、偶に彼女が作る

 異変が起きたらオプションとして連れてかれて

 宴会の時は羽目を外して、急性アルコール中毒でリザレクション



 色んな事があった

 どんな時でも一緒にいた訳じゃない

 でも、思い出すのは彼女と一緒にいた記憶

 彼女と一緒に…過ごした記憶






「良也さんは何時まで経っても良也さんだった、って事よ」

「なんだよそれ、僕は僕以外になる訳ないじゃないか」

「当たり前じゃない、良也さんが紫になったら気持が悪いわよ。」

「……考えただけで死にたくなる様な事を言わないでくれ」

「あら、別にいいじゃない死なないんだから」

「物の例えの話だよ!」

「知ってるわよ」


 可笑しいな、こんな時なのに


「なぁ」

「なによ?」



 悲しい筈なのに


 泣きたい筈なのに


「ありがとう」


 出て来たのは感謝の言葉と笑顔


「……ねぇ」

「なんだい?」


 帰って来た言葉も


「ありがとう」


 感謝の言葉と笑顔


「良也さんと一緒に過ごせて、とっても楽だったわ」

「あぁ、僕も一緒に過ごせて、とっても楽だった」


 それは僕たちにとっての一番の幸せだった

 お互いが一緒に居れば楽だった

 一般的にみれば変な表現かもしれないけど、「楽」だった

 それが一番近い表現な気がするんだ



「……うん、そろそろ限界っぽいわね」

「そっか」

「うん」

「……なぁ」

「……」

「……お前の事、大好きだよ…霊夢」

「……」

「……」

「逝っちゃったか………小町の奴、普段はサボってるのに珍しくちゃんと
仕事しやがって……」

「……………」

「判ってたけど、辛いなぁ、……辛い、予想、以上に、辛い、なぁ」





気が付いたら、僕は泣いていた





博麗 霊夢 享年100歳

老衰による自然死

 夫であり蓬莱人の博麗 良也(旧姓 土樹)にみとられながらの大往生
だった




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