透き通るような青い空、頬を撫でる少し冷たくて少し暖かい風
今日も快晴の空模様の空に向かって、僕は地を軽く蹴り舞い上がる。ある時から日課になったあることをする為に・・・



霊夢が亡くなってからもうずいぶんと時がたった。今の博麗神社の巫女は、僕と霊夢の曾孫にあたる娘だ。時が立つのは本当に早くて遅かった。
霊夢の墓は博麗神社には無い。そもそも代々の博麗の巫女の墓の場所は特に決まっていなかった。
博麗の巫女の仕事は幻想郷の安定を維持することにあるが、人間である以上、人に害をもたらす妖怪を退治することもまた望まれている。
そのため死に場所が畳の上とは限らない。スペルカードルールが出来る前なら尚更で、時には遺体が残らないことも珍しくは無かった。
故に巫女の在任期間は基本的に短期間である。能力の衰えにより次代に託すのも当然なので尚更である。
おそらく霊夢の在任期間は最長であろう。幻想郷の実力者達に打ち勝ってきた実力もさながら、霊夢いわく娘に任せていると、『異変の解決が遅くて逆に面倒』と言って巫女として君臨し続けたからだ。
本当は娘が心配だったことは僕が良く知っている。なんだかんだ言って娘を可愛がっていたから。

霊夢の墓を博麗神社に建てる必要がないと知った時、僕はあの場所に建てることにしたんだ。
自然の美しい幻想郷の中でも、特に美しいあの・・・・・・太陽の丘に・・・・・・






ひまわりが咲き誇る太陽の丘に、ひまわり以外の花が咲き乱れる一角がある。その中央には一つの墓。
ここが霊夢の・・・・・・僕の愛する妻の眠る場所。

毎日手入れをしているので特に雑草も生えておらず、ただただ色とりどりの花が咲き乱れるが、咲けば枯れるのも当然で、枯れた花を片付けて持ってきた種をまく。

育符『ウェイクアップワールド』

僕の能力である『自分の世界に引きこもる程度の能力』の一部である時間加速を利用して種の成長を促進させる。
すぐに芽が出て、ぐんぐん育ち蕾を付け、そして花が咲く。

これが僕の日課、土樹良也の生きがい。


「何時までもご苦労な事ね」
花を咲かせた後、墓石の掃除をしていると日傘をさした幽香がやってきた。
この太陽の丘は当然ながら彼女の縄張りで、霊夢の墓を建てる時、最初は拒絶すると思っていた。しかし、予想外に彼女は快く引き受けてくれた。
一般的に妖怪は縄張り意識が強い。
引き受けてくれたのは嬉しかったが何故かを聞いてみると『葬式の後言っていたでしょ?墓の周りは花を植えたいと。私は花の妖怪、花を愛でる行為を否定したりはしないわ』と言って微笑んでいた。
だから僕は、霊夢への想いと、幽香への感謝を込めて毎日花を咲かせるのだ。

「月日が経つのは本当に早いよ・・・でもだからと言って無くならない思いも確かに有る。」
「まあ、あなたらしいと言えばらしいのかしら?」
幽香は時々こうして僕の日課の様子を見に来る。それが花を愛でる為か、僕の様子を見に来てくれているのかは良くわからない。

「でも・・・寂しいのも確かだよ。」
幽香との付き合いもだいぶ長くなった、だからこうして時々ポツリと本音が出てしまう。

幽香は先ほど僕が咲かせた花の花びらを優しく撫でながら呟く。
「もう直ぐ春ね。」

体をやさしく撫でる風は、大分暖かくなってきた。草木も芽吹き始め、動物達の活動も少しずつ活発になってきた。
この分だと、喧しくも楽しげにリリーが春を告げるのも数日の内だろう。
「霊夢が好きだった季節、僕が好きな季節、始まりの季節、全ての生命が祝福する、生命の誕生と成長を司る・・・・・・僕とは無縁になった季節」
こうして実際に年月を重ねてみると、妹紅が言っていた不老不死の苦悩を感じるようになる。

「生命はあなただって持っているでしょうに、蓬莱人、ただ死なないだけよ。」
丘から見下ろす位置には人里もある。もう僕が始めて幻想郷に来た頃の人間は生きてはいないけれど・・・
「虚しく感じる事もあるけどね、でも・・・向かっていくさ、そうしないと霊夢に怒られそうだ。」

「ガーベラの花言葉に究極の愛というのがあるわ、似合ってはいないけど・・・・・・あなたに良いかも知れないわね。」
「・・・・・・今度はガーベラを植えようか。」
頬が少し熱い、まったく、ガラじゃないんだけどなぁ

クスクス

「良いんじゃない?どんな意味が込められていようとも花を添えられて喜ばない事はないでしょう?」


「しかし・・・本当に似合わないな、まったく。」
「何時か似合う男になりなさいな。」
そう言いながら幽香は去っていく。こうやって取りとめもない話をするものも、最近の楽しみの一つだ。






ひまわりが咲き誇る太陽の丘は、ひまわり以外の花も咲くようになった。
何時しか『太陽の丘』は、楽園の巫女が眠る『花が咲く丘』と呼ばれるようになり、一人の男の永遠の愛と共に人々の記憶に残り続けていくのだった。






あとがき

どうも、始めましてぽぽーいと申します。
久櫛縁さんが描き、マイマイさん初めとした多くの方が、さらに色付けしていく東方奇縁譚の魅力に私もやられてしまい、久々に筆を取る事にしました。

霊夢が亡くなってしまった後の良也を描いてみましたが、如何でしょうか?
不老不死として、年月を経た良也にはしっとりした話も良いかと個人的には思っております。

それにしても・・・・・・久しぶりに筆を取るとダメですなw
書き方とか忘れてます、本当にw
まぁ、私が昔書いたのは今見直すと恥ずかしすぎる駄文ばっかりですがw


さて、今回は少し遊びも入れてみました。
ヒントは会話です。
無理したせいで話がおかしくなってますけど、それは私の力量不足ですなww


ご感想は頂ければ嬉しいです、レスを直ぐに返せるかは怪しいですが・・・

コンゴトモヨロシク



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