魔法使いというものは勤勉である。
特に強い魔法使いほどその傾向が顕著だ。
学べば学ぶほど実力がつくのだから、そりゃあ勤勉にもなろうというもの。
まぁ僕はどうせ死なないし、知り合いも多いからそんなに勤勉である必要はない。
が、しかし。
それは不測の事態で死んでもいいってことじゃあない。断じて。痛いし。
そういうわけで、僕は多少の苦難があっても生き残れるように、今日も大図書館で勉強中だ。
右手に紅茶。左手にグリモワール。合わせて超勉強体勢。

「本に紅茶零さないでよ」

僕の師匠であるパチュリーの呆れたような声が聞こえた。
確かに他人の本に紅茶を零すのはよくないだろう。
でも……

「心配しなくても、これは僕のだよ」

そう言って、この間霊夢経由で貰った本を持ち上げて軽く振る。
結構書いてある内容は幅広く、初心者から上級者まで御用達のいい本だ。
そういえば京は魔法使いだったのかな? まぁ今考えても分かるはずないか。
僕は思考を切り替え、本に視線を落として、

「ん?」

視線を感じたので振り向いてみた。
そこにはパチュリーがいて、パチュリーは心底意外そうに僕を見ている。
あれ、いつから僕はパチュリーに見惚れられるほど美青年になったんだ?
んなわきゃねぇだろと自分の考えを溝に捨て、僕も彼女を見つめ返す。
あれ、パチュリーが自身の読書もそこそこに立ち上がったぞ?
どこに行くんだろうとその姿を視線で追おうとすると、一切目を動かすことなくその姿を追うことが出来た。
そりゃ動かさなくてもいいよな。だって真っ直ぐ近づいて来てるんだから。

「良也の?」

そう言って嘘を言ってないか見破るように僕に顔を近づけてくるパチュリー。
本の話ね。はいはい。
あ、ちょっと待って、近いって!!
僕は椅子に座ったまま体を反らすようにして答える。

「この間知り合った友人からもらったんだ。分かったらちょっと離れてくれ」

僕の声を聞いているのかいないのか、パチュリーは離れることなく、むしろ顔を近づけてきた。

「知り合い?」

再び頑張って身を引く。

「ふ、不慮の事態で知り合ったんだよ」

近づいてくる。

「何時、何処で、どのように?」

すっごく頑張って身を引く。

「な、なぁパチュリー。いや、パチュリーさん? キャラがアグレッシブな方向に変わってますよ?」

再び近づいてくる。普通にズキューンとか出来そうな距離だ。

「いいから答えなさい」

僕はさらにもっと頑張って身を引こうとしたが、流石に限界だったらしい。
重心がとんでもなく後ろに傾いた椅子は、僕の最後の抵抗によって引っくり返った。

「うわっ!?」

「きゃあ!?」

お約束と言うべきか、パチュリーを巻き込んで。
って言うかパチュリーが女の子らしい悲鳴を上げるなんて。いかん、超ときめくんですけど。
でも、そんな事を考えた瞬間に、後頭部を強く床に打ち付けた。
……痛い。

「あたたたた、パチュリー、大丈夫か?」

痛かったが、自分よりも先に一緒に転げたパチュリーを心配する。下心は少ししかない。
何せパチュリーは病弱だからね。衝撃で喘息貧血その他諸々起こらないとは限らないし。
が、心配は杞憂だった。
さっさと自分だけ魔法で姿勢を制御して、見事に転倒を回避して見せたパチュリー。
その瞳にもはや僕は一切映っておらず、僕が持ってきたグリモワールを丁寧に、そして熱心に読んでいる。
その、話しかけたら殺すと言わんばかりの集中力に僕は声を上げることも出来なかった。





やがて、パチュリーは読み終わったのかパタンと本を丁寧に閉じると、僕に渡した。
ちなみにさっきまで使っていた席は占領されてしまったので、僕は自分で椅子を持ってきてパチュリーの隣で今までの復習していた。

「良也」

そして彼女は重々しく口を開く。
その雰囲気は、良也さんが来たときに血を吸いたがるお嬢様のようでした、と後に小悪魔さんは語ってくれた。

「そいつを連れてきなさい」





「……で?」

「来てくれないか?」

半ば呆れたように僕を見る京。
この男こそ、僕にグリモワールを与え、今回の騒動を引き起こした張本人だ。
別の幻想郷出身の最強系オリ主。
いやね、本来なら会うことはないから無理だと思ってたんだけど。
偶然にも『こっち』の博麗神社にやってきたからこれ幸いと事情を全部説明した。
そういえば何で『こっち』に来たのか聞いてなかったな。

「『人の縁は奇なるもの。一度交わったなら、折角だから長い間交わっているべき』そう言ったのは君だろ?」

「待て、微妙に違ってるぞ」

まぁ別に構わないけど。
っていうか心を読むな。

「お茶淹れたわよ」

「ああ、霊夢さんきゅ」

「お、どうも」

「いえいえ、ゆっくりしていってください参拝客様」

以前の高額の賽銭を覚えているのか、すごく対応が丁寧な霊夢。
お茶っ葉にしたって、グラム単位で取引されてる高級なやつだし。
霊夢はお茶を出すと、箒を持って神社の裏に行ってしまった。
京はお茶を少し啜ると、はーっと一息ついた。

「それにしても君は変わってるなぁ」

「ん? そうかな?」

「ああ、変人だ」

いきなり断言された。
いや、変態呼ばわりされた事はあれども、変人言われたことは初めて……いや、あんまりない。
……ちょっと心にダメージを受けた。

「僕は普通の社会人だが?」

「蓬莱人が何言ってやがる。っていうか論点はそこじゃなくてだな」

そういって京は再び呆れたように僕を見た。

「まぁ言い方が悪かったかな。個性的って言った方がいいね」

「そうでもないと思うけど」

極々普通の社会人だ。せいぜい変といえば、特技に空が飛べるとか書ける位だろう。

「だってパチュリーから魔法を習いつつ、妖夢や美鈴から接近戦の手ほどきを受けて、それなのに何にも身につかず人里でお菓子を売る日々」

「うっさい、ほっといてくれ」

自分が弱いことの自覚くらいありますよーだ。

「それに俺は同類を結構見たことがあるが、幻想郷と外の世界を往復出来て、それでいて最強系じゃないなんて初めてだぞ」

「この能力は強いのか弱いのか分かんないからなぁ」

ちなみに僕は自分のことをボケ系だと思っていたが、幻想郷に来てツッコミ系になった。
あと、断じて地雷系ではないということを言わせて貰おう。

「まぁ個性的なのはいい事だよ。特に俺たちオリ主にとってはね」

「……よく分かんないけど」

むしろ個性的なのはここの住人たちだと思うんだけど? と僕が続けて言うと、京は首を横に振った。

「確かに個性的ではあるんだが、ある程度は他の幻想郷でも一緒なのさ。その点、俺らオリ主は同一の存在がいないからこそ、個性が重要視される」

「重要視って言われても……誰にさ?」

「これはあくまで俺の持論なんだがね。全ての存在は神、もしくはそれに準ずる何かによって描かれているんだよ」

「……いきなり突拍子もない理論が来たな」

神って言うと神奈子さんと諏訪子かな。

「その二人も含めて、だ。そして神は飽きると描くのをやめてしまうのさ」

「ふーん、いまいち実感がわかないけど。描くのをやめるとどうなるんだ?」

僕が何気なく聞くと、京はにやりと笑って答える。
どうでもいいが、ちょっと今の笑い方は怖かった。

「その世界が滅びる。世界にいた奴らは全て無かった事にされ、蓬莱人であろうと避けられない死が訪れるのさ。実際、そうやって滅びた世界をいくつも見てきたしな」

「そいつは怖いな。でも、それじゃあ飽きられないように祈るしかないじゃないか」

僕の当然の台詞に、京はその通りと頷いた。
なかなか怖い話だ。蓬莱人でも死ぬ世界の終焉か。
僕が暗黒神が空からやってくるビジョンを想像していると、京は、でもと前置きして。

「俺たちが個性的であれば神は描くことに飽きにくい。それに、なんと言っても神は一人じゃないしね」

「そうなの?」

「平行世界はそれこそ無限に広がってるのさ。この世界を描いてる神が他の世界を描いてる神に評価されると、それはそれで描くことをやめられないだろう」

「あの、仮に僕が描かれてる存在だとして、生存は絶望的なんですが」

無個性、無実力、基本的に平凡な日々を過ごしている僕だ。
評価されるなんて事あるはずが無い。ましてや神に。

「まぁ自分のいいところなんて分かんないもんさ。ってこの前も言ったような?」

「それでも自分が評価されてるところに想像がつかないわけだが」

「まだ滅びてないって事は神の間で人気があるって事じゃないの? まぁ具体的には知らんけどね」

「そもそもその話自体あまり信じてないけどね」

流石に突拍子もない理論を完全に信じるほど僕もお人よしじゃない。
別に無神論者って訳じゃないけど、流石にそんな神様がいるとは思えないしね。

「俺としても、良也にはずっと生きていてもらいたいなぁ」

「うーん、まぁいざとなったら外の世界に逃げるし」

「……分かってないみたいだから言わせて貰うけど、神が描くことに飽きると、君がいる世界が滅びることになるんだよ」

「……あれ、もしかして逃げ場なし?」

「だから、生き残るしかないのさ。ずぅっと個性的であれば、他の神が君の『もしも』を描いてくれるかもしれないし」

……ちょっと分かんなくなってきたから纏めてみよう。
世界には神がいる。
幻想郷という世界がまずオリジナルだ。
そして、この世界は例えて言えば二次創作。
神は僕ら、すなわちオリ主を中心として世界を描いているらしい。
そして、神はたくさんいる。表現を変えれば、二次創作作家が何人もいるといったところか。
その二次創作作家の描く存在を他の神が描く。要するにそれは。

「三次創作か」

「ふむ、いい例えだな。幻想郷というオリジナルがあり、俺らの世界みたいに二次創作な平行世界があり、さらにそこで長く生き残っていたり個性的であったりすれば、『IF』すなわち三次創作が描かれると」

「めちゃくちゃな理論だな」

それだと一般的に言う平行世界というものはどうなるんだろう?
とかまぁ、難しいことを考えるなんて僕のキャラじゃないし、考えたって答えなんかでないんだけど。

「あの時あーしていれば、って言う理論は、そもそも成り立たないのさ。レミリアから運命について聞いたことは?」

「ああ、そういえば。世界が『こうあるべき』と定めたレールだとかなんだとか」

「俺らの世界は神によって描かれてるわけで、すでにレールに分岐が存在しない。決められた道を歩くだけだ」

「でも僕は不確定要素って断言されたぞ」

その後記念すべき初の献血。忘れられない思い出さ!
僕が血の涙を流していると、京はへーっと感心してから、

「ああ、そうなの? じゃあもしかしたら神も良也の奇行について行けなくなる事があるのかもしれないな」

「それは褒められてるんだろうな?」

「まぁ、不確定要素として褒めてるのかもね」

適当にはぐらかされた。
さて、と呟いて京が立ち上がる。

「久しぶりに長話をして疲れた。何せオリ主と交友関係を持ったのは初めてなんでね。いなくなんないでくれよ? お前を見るの楽しみにしてるんだから」

「僕の意思で何とかできるのか分かんないけど、まぁ頑張るよ」

何を頑張ればいいのかはよく分かんないけど。
あ、そういえば。

「じゃあ俺はそろそろ帰るわ。またその内来るよ」

「チョイ待ち、ちょっと頼みが」

「ふむ、友人の頼みだ。何でも聞いてやろう」

「紅魔館の地下大図書館に来てくれ」

「さーて、帰るかな」

「おいこら」

即答された。いや、むしろ無視されたというべきか。
少なくともついさっき友人の頼みを聞くといった奴の態度じゃない。
僕が鋭く突っ込むと、京はめっちゃ顔をしかめて僕を見た。

「あのなぁ、折角あんなに露骨に話をそらしてなおかつ難しい話をしたんだよ? 少しは察してくれてもいいんじゃない?」

もしかして、魔法使いに会いたくない理由とかあるのか?

「めんどぉい……」

「一瞬でも深い事情を勘繰った僕が馬鹿だった」

本気で面倒そうだ。

「あーっと、あんまり他の世界に渡っているわけにもいかんだろ。そろそろ帰らないとね」

「何がいけないのかよく分からないわけだが」

「ほら、きっと世界に歪みが生じて異世界の化け物とかが出現しちゃったりするかもよ?」

「そもこの世界の管理人が異世界からわいて来る化け物な訳だが」

瞬間、僕の頭に落ちる懐かしき感触。
出来れば二度と思い出したくなかったそれは、まぁ平たく言えば金ダライだ。
水も入った強烈仕様だったが。

「化け物であることは否定しないけど、それでも言い方って物があるんじゃない?」

「出たな、スキマ」

僕の後ろに上半身だけ出現するスキマ。全く、こいつは本当にいっつも気まぐれだ。
京はその光景を驚愕の目で見ている。

「すっげぇ、ゆかりんの事を本人目の前にしてスキマ呼ばわりする奴初めて見た」

「ごめん、本気で吐き気がやばい」

この得体の知れない妖怪をゆかりんて。危険が危ない。
そもそもそんな可愛らしい呼称で呼べる年齢じゃないだろうとか思うわけっでぇ!!?

「女性に年の話はしない。タブーよ」

「……そもそも話はしてねぇよ」

「思っても考えないこと」

「いや、それこそ無理だろ」

タライのおかわりが降って来た。ちなみに、水は増量してあった。

「あーっと、じゃあそろそろ帰るわ。じゃあまた」

「……僕のこの惨状を見て心配もしてくれないのか?」

「じごーじとくでしょうに」

「全くですわ」

酷い。
っていうか本当に京は帰ろうとしてるらしい。今帰られても困るので、僕は素直に今現在不安なことを告げる。

「ところで、パチュリーに僕はなんて言い訳すればいいんだ?」

あんなに興味津々で僕に頼んで(命令ともいう。いずれにしろ僕は逆らうことが出来ない。主に暴力的な意味で)きたパチュリーの頼みを反故にする。
うん、殺されかねん。三回くらい。

「ん? ああ。そうか。そりゃそうだ。流石に友人が練成の材料にされたりするのは忍びないからな。じゃあこれを」

そう言って京が何処からともなく取り出したのは一冊の本だった。

「『賢者には見れず、愚者のみ見ることが出来る。知識を求めて賢者になるかわりに愚者の烙印を落とされるか、見ずに賢者として生きるか。また、開かずとも内容が理解できればそれが一番の賢者也』と一言一句違わずに伝えといてくれ」

「なんだそりゃ」

少なくとも僕は一切内容を理解出来ない。ああ、本の話だからね? 流石に伝えてくれって事くらいは理解できるよ?

「んじゃ、またその内」

そういって京は姿を消した。
その場には僕とスキマの二人が取り残された。
ん、そういえば。

「何しに来たんだスキマ?」

「良也に会いに来たに決まってるじゃない」

「欠片も嬉しくないんだが」

トラブルの配達人に近づくのは得策ではない。
僕はこれでまた君子に近づいた。

「そうね、本当は幻想郷に入ってきた異物を確認に来たんだけど」

「異物? ここには何も落ちてないぞ」

「違うわよ。さっきのあいつ。あんまり関わらない方がいいわよ?」

京が異物?
うーん、いくらスキマといえども僕の友人に対してその言い方はちょっと容認できないぞ。
僕はすこし語調を強めて反論しようとしたが、お見通しなのかスキマは扇子を僕に突きつけた。

「あいつは確実に、私の知らないこの世界の仕組みを知ってるわ。下手に関わると存在を消されかねない、そんな危うい何か。それでも、貴方は彼のことを友達と言えるのかしら?」

まぁ確かに。さっきの話は推論とかじゃなく、むしろ確信を持って話していたような気がする。
でもね。

「言えるよ。そもそも、関わると危うい存在なんて、この幻想郷の住人ほぼ全てに当てはまるじゃないか」

難しく考えるのはあまり得意じゃない。
っていうか、妖怪なんてもの自体、関わり方を間違えれば命の危険があるし。
それに、

「関わり方を間違えなければ、きっとこの世界の住人と同じで楽しくやっていけると思うしね」

宴会で皆と飲む酒は美味いし、旨いし、何よりも一人で飲むよりも断然楽しい。
そうやって妖怪と楽しくやってるんだから、京に対して同じことが出来ないなんて事はないだろう。
それを聞いて、スキマは少しだけポカンとしたが、すぐにいつものように、いや、いつもよりもっと怪しく、そして楽しそうな笑みを浮かべて、

「貴方は本当に個性的ね、良也」

……さっきも言われたけど、それって褒められてんのかね?






後日、僕は再び図書館にやってきた。
見た目からして重そうな貰った本は、期待を大きく上回りめっちゃ重い。
広辞苑とかと同じ位の大きさだが、重量はその比じゃなかった。
持ち運ぶのも大変なので、少し浮いて本を持つ。
こうするとなぜか軽くなるのだ。空を飛ぶって素敵。

「というわけで、残念ながら連れて来れなかったが、本を預かってきたぞ」

「どういうわけか知らないけれど、とにかく手ぶらよりはいいわ」

僕は慎重に本を机の上に置く。
これは下手したらパチュリーには持ち上げられないんじゃなかろうか。

「そうそう、言伝もあるんだ」

「なにかしら?」

京が最後に言ってた言葉を思い出しながらパチュリーに伝える。
ちなみに、スキマはこの本を能力を使って中身だけ覗き見ていた。
確かに開かないで理解したわけだし、流石妖怪の大賢者ということだろう。
僕が中身について聞くと、『見れば愚者、という言葉に偽りは無かったわよ』と曖昧な言葉を返された。
僕も中を見ようとしたが、先にパチュリーに渡したほうがいいかな、と思って未だ見ていない。

「ふーん、まぁいいわ」

パチュリーは京の言伝を一瞬だけ考えたようだが、すぐに迷わず本に手をかけた。

「いいのか? 見れば愚者になるらしいけど」

「私が求めるのは知識のみよ。賢者の称号が欲しいわけでもないし、愚者と言われてもなんとも思わないわ」

そう言って本を持つ手に力を込め、

「……ん?」

「…………開かないわよ、これ」

本は微動だにしなかった。
いくら非力とはいえ、ページくらいは何とかなるだろ。
そんな風に馬鹿にしながら僕も本を持ち、

「………ぐぐぐぐぐ、なんだこれ?」

「何か魔法的なロックがかかってるのかしら? 良也、何か鍵とか預かってこなかったの?」

「いや、言伝だけ」

まるでページとページがくっついてるかのように本はびくともしなかった。
魔法的な何かなら僕よりパチュリーに任せるべきだな。

「愚者だけ見れる……愚者……愚者ならば立ち塞がる難題に対してなんと答えるか……」

ふんふん。パチュリーが真剣に考え始めた。ってことはあの本が開くのも時間の問題だろう。

「……分かったわ。この本を開くには」

すごい、もう分かったのか。伊達に僕の師匠じゃないな。
……調子こきました。すいません。

「『諦める』よ」

カチリと本から音がした。
パチュリーはわずかに微笑むと、その本に手をかけて開く。
本は不自然に真ん中のページだけ開いた。
……邪魔するのもなんだし、僕はまた復習でもしてるかね。

「良也、ちょっと来なさい」

っと、僕が大学ノートを開こうとした瞬間にお呼びがかかった。
断る理由も無いので、呼ばれたとおりにパチュリーに近づく。

「これ、どういうことかしら?」

「ん? …………!?」

パチュリーが示したのは当然のごとく僕が持ってきた本。
この本、殆どのページがくっついており、このページしか開けないようになってる。
他のページが見れないか本を光に透かしてみると、他のページは中央を大きく四角に切り取られており、その中になにやら金属が詰められていた。
道理で重たいわけだな、あっはっはっは。

「で、何か言うことはあるかしら。私はレミィよりは慈悲深いつもりだけど」

本を僕から奪って大上段に構えて問うてくるパチュリー。すごい力と迫力だ。
彼女が怒るのも無理は無い。あのページに書かれていたことはたったの一言。

「まぁ、確かに愚者が見るものだったよな。あ、でも勘違いするなよ? 僕は決してパチュリーのことを愚者だなんて思ってないだからその手に持った凶器を下ろしてくげぁ!!」

『あほが見る』と一言だけだったのだから。
















後書き
この話にはオリキャラが出張ってます。
というのもこの話のコンセプトは『なんかメタい』ですからね。
事情を知る彼は出さなければならないのです。
っていうか続編とかwwww俺調子乗りすぎwwwwついでに俺設定全開キャッハーwwww
なんかすいませんです。
あ、後蛇足になりますが、彼は喋り方を統一していません。
違和感を覚えた方も多いと思いますが、これも個性です。今回の話のテーマです。
やっぱり良也君は最終的に不幸で悲惨な目に遭うとか、これも個性っすよね。
それにしても、三次創作というものは難しい。
なんか良也君っぽく無いところがあったら、それは一重に私の技量不足なんです。精進します。
それでは、久櫛縁様と、そして他の神様方の作品を楽しみにしつつ、後書きを締めさせて頂きます。



戻る?